あんな話 こんな話  126
 
白澤卓二著  PHP新書
『ボケたくなければ、これを食べなさい』
より その2
 
 
第1章 発酵食品
新しい栄養素を作り出す力
 
 
● 「日本の伝統食」――発酵食品の4つの機能
 
発酵食品といえば、あなたは何を思いつくでしょうか?
味噌、納豆、醤油、漬物だけでなく、じつはパンやヨーグルト、ビール、ワインなども発酵食品です。
 
そもその発酵とは何かというと、細菌や酵母などの微生物が人間の体によい物質を作り出すはたらきをいいます。
発酵食品はいわば「日本の伝統食」であり先人の知恵が詰まった食品です。
そして発酵には、次に挙げる健康長寿によく効く4つの重要なメリットがあります。
 
@栄養素が分解され、体内に吸収されやすくなる
A食品がもつ栄養素を分解し、効能を高める
B食品が本来持っていない新たな栄養素を作り出す
C食品がもつ毒性を消す
 
この中では、B、の新しい栄養素を生み出す力というのが、他のどの食品にもない大きな特徴といえるでしょう。
 
たとえば、大豆を発酵させて作る納豆や味噌です。
これらが発酵する過程で、大豆には本来ないペプチドやビタミンKといった老化を防いでくれる栄養素が出てきます。
そしてコレステロールの低下や中性脂肪の抑制など、もともと大豆にはなかった新たな効能が生まれてくるのです。
 
また、発酵していない大豆だけを食べた場合、体内でそのタンパク質を分解しなければなりません。
ところが食品を発酵させていれば、人間の体内で栄養素を分解する必要がないので、からだが栄養素を吸収しやすい環境を整えられるのです。
つまり、体に負担がかからないということがいえます。
 
ただ、発酵に関わる菌、すなわち微生物は熱処理で死滅してしまうことに注意が必要でしょう。
加熱は60度が限度ですから、味噌汁の場合は、過熱を終えてから味噌を溶くようにするのが大切なポイントです。
 
 
● 発酵食品の強みは整腸作用
――アレルギー症状も改善する
 
発酵食品は、発酵する過程で乳酸菌が増殖していきます。
乳酸菌は私たちの体内ですでに住み着いている「善玉菌」であり、お腹の調子を整える「整腸作用」をもたらしています。
 
日本人は古来から、雑穀など食物繊維をたくさん摂取するような食事をしていたので、欧米人に比べて腸が長くなっています。
 
よって整腸作用がある食品は、日本人の体質に向いているといえます。
日本の伝統食が、日本人の体に良いのは歴史が証明しているのです。
 
乳酸菌は発酵食品によって性質が異なります。
ヨーグルトやチーズの乳酸菌は動物性乳酸菌であり、味噌や納豆が含んでいるのは植物性乳酸菌です。
植物性乳酸菌は、動物性乳酸菌よりも整腸性が高く、アレルギー反応を抑える働きを持っています。
 
発酵食品によっては、乳酸菌の量にも違いがあります。
たとえばスプーン1杯の白味噌には、ヨーグルト100gと同じ分量の乳酸菌が含まれているといいます。
このように、発酵食品の中でも植物性乳酸菌を多く含んでいるのが味噌なのです。
 
また、アレルギー反応を抑える働きを抗アレルギー作用といいます。
人間は腸の中の免疫バランスが崩れてくると、アレルギー症状が出てきます。
これに対して植物性乳酸菌が腸の免疫環境を整え、アレルギー症状を改善してくれるわけです。
 
これはどういうわけかというと、人間の腸内免疫についてはTh1、Th2と呼ばれるタイプの違う免疫があり、この2つのバランスが大事なのですが、現代人は添加物が多い食事などにより、Th2優位の状態になりがちです。
 
Th2優位の状態では、体内でいろんなアレルギー症状が出やすくなります。
味噌に多く含まれる植物性乳酸菌はTh1を増強し、バランスを整える働きがあるのです。
 
先に述べたように乳酸菌はもともと腸内にある善玉菌ですが、乳酸菌が増えるような腸内環境づくりが大切です。
 
その点で発酵食品は、すでにそれ自体が乳酸菌を増殖させた環境を持っているので、発酵食品を食べると、乳酸菌そのものと、それを増やす環境の両方をいただくことが可能です。
つまり、私たちが体内で自力で行わなければならないことを発酵食品が代わりに行ってくれるので、この点でも体に負担がかからないわけです。
 
ちなみに発酵食品の種類の違いは、発酵に使う菌の違いです。
味噌の発酵に使うのは麹菌で、納豆は納豆菌です。
麹は白米などに麹菌をつけて繁殖させます。
微生物の違いは、栄養素の違いに大きく関わってきます。
 
こうした働きを持つ発酵食品の中でも、特に健康長寿に効くものを紹介します。
 
 
● 味噌――コレステロールと中性脂肪を減らす「ダブル効果」
 
味噌は、米味噌、麦味噌、大豆味噌などの原料別に分類されますが、ここでは一番ポピュラーな米味噌について見ていきましょう。
 
米味噌の原料は、大豆、米、塩のみです。
まずは米麹を作るところから、味噌作りははじまります。
 
蒸かした米に麹菌をつけて室で寝かす。
この過程で発酵が起こり、米麹が出来上がります。
ここでの微妙な発酵条件が、味噌が大量生産できない理由になっています。
 
しかし、こうした難しい条件があるがゆえに、全国各地にさまざまな味わいの味噌があるという特徴も作り出しています。
たとえば、信州味噌は長野県でしか作れませんし、八丁味噌は三河地方でしかできないのです。
 
次に、つぶした大豆に米麹と塩を混ぜ合わせ、再び発酵させることで味噌が完成します。
この発酵は、長い時間をかけるほど栄養素が増えるといわれています。
 
味噌の効能の代表は何といっても、コレステロールと中性脂肪を減らす2つの効果です。
味噌に含まれるサポニンが悪玉コレステロールを減らし、さらにペプチドが中性脂肪を減らす作用を持っています。
 
味噌の調理法としては、やはり栄養吸収に効果がある「煮る」方法がいちばんです。
つまり、味噌汁が最適なわけです。
サポニンやペプチドといった栄養素が煮汁に溶け出しますので、非常に体に吸収しやすくなるのです。
 
また味噌汁の具として、もっともおすすめしたいのが高野豆腐です。
高野豆腐は豆腐を凍結乾燥させた保存食で、一度凍らせてあるため体内でたんぱく質が吸収されにくいというという特徴を持っています。
 
朝は1日の中で最も栄養が不足している時間帯ですが、かといって急に血糖値も上げたくはありません。
このメカニズムについては後ほど詳しく説明しますが、高野豆腐のたんぱく質は体内に吸収されにくいので、血糖値また上がりにくいわけです。
 
その他、味噌の効能で注目すべきは、放射性物質を体の外に出す働きです。
 
納豆にも含まれるジピコリン酸という成分には、たとえば放射性ストロンチウムなどの重金属を吸着し、体外へと排出する働きがあります。
つまり万が一、放射性物質に汚染された食品を食べても、内部被爆を抑えることができるのです。
 
なお味噌を選ぶときは、保存料や調味料などの添加物が使われていない天然醸造のものをおすすめします。
 
冒頭で述べたように、米味噌なら本来は大豆、米、塩のみが材料で、成分表示はこの3つだけで十分なのです。
 
 
● 赤味噌――赤の色が濃いほどアンチアンジングに効果あり
 
米味噌は、大別して「赤味噌」と「白味噌」に分類されますが、赤と白の違いは大豆と麹の配合比率です。
赤味噌は白みそよりも、大豆の配合比率が高いのが特徴です。
 
赤味噌の栄養素の代表格は、赤の成分であるメラノイジンと呼ばれるものです。
メラノイジンには「抗酸化作用」があり、色が濃いほどアンチエイジングに効果があります。
赤味噌も同様に発酵年数が長く、赤の色が濃いほどメラノイジンが多く含まれているのです。
 
じつは、赤味噌は朝のスタートにピッタリの食品です。
朝は、体のエンジンをかけるために代謝を高めたい時間帯です。
 
ここで効いてくるのが、赤みその配合率が高い大豆パワーからいただいたイソフラボンです。
このイソフラボンには、基礎代謝を活発にする働きがありますから、朝には赤味噌がおすすめなのです。
 
また、イソフラボンやサポニンなどの大豆が元来もっている栄養素は、大豆が発酵することによって、体への吸収が早くなります。
 
つまり朝1杯の味噌汁を飲むことが、健康長寿には効果的なのです。
塩分の多さを気にする方もいるかもしれませんが、味噌汁1杯に含まれる塩分は1g少々。
おかわりをしなければ、1日3食に1杯ずつ飲んでも、体に悪いことはありません。
 
 
● 白味噌――
夕食にピッタリの安眠、ストレス軽減、空腹を抑える効果
 
白みその有効成分で特筆されるのは、赤味噌にはない豊富なぎゃが(GABA)です。
ギャバは、脳の興奮を抑えてくれる神経伝達物質で、脳や体を落ち着かせたい夜にはピッタリの食品なのです。
 
このギャバの働きにより、健康や長寿に不可欠な「快眠」がもたらされるだけではありません。
さらに「空腹」という脳の興奮が抑えられることで、食事の量を減らしたい夕食にはふさわしいといえるでしょう。
 
脳の伝達物質は、興奮系と抑制系で成り立っています。
興奮系にはグルタミン酸などいくつかの物質がありますが、抑制系はギャバしかありません。
 
ですから、もしギャバが枯渇すると脳が興奮し、先ほど述べた空腹、不眠、イライラなどの症状を引き起こします。
 
ギャバは白味噌に多く含まれる麹に含まれており、白味噌は赤味噌より麹の配合率が高いため、そのポテンシャルを存分に発揮できる食品なのです。
 
赤味噌の効能と比較すると、「朝は赤味噌」「夜は白みそ」の味噌汁を飲むのが、健康長寿のための正しい味噌の取り方といえます。
 
ちなみに代表的な白みそには、さいきょう味噌、府中味噌などがあります。
 
 
● 黒酢――
血糖値の上昇や食欲を抑える、優秀なダイエット食品
 
最近は「糖質オフ」という言葉が頻繁に使われるようになりましたが、黒酢もまた優秀な糖質オフの食品です。
 
私たちの身近には、血糖値の上昇率が高い「高GI食品」がたくさんありますが、黒酢はこの血糖値の上昇を抑えてくれる働きがあります。
 
GI値(グリセミック・インデックス)については第2章でくわしく触れますが、特に高GIの白米や菓子パンは、黒酢と一緒に食べると血糖値の急な上昇を抑えられ、健康長寿に効果的です。
酢飯などはその代表でしょう。
 
さらにいうと、健康長寿なら酢よりも黒酢です。
アスリートがドリンク剤として使用している例もある黒酢は、筋肉疲労を和らげ、エネルギーレベルを上げてくれます。
 
その他、黒酢には、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸が豊富に含まれており、ガン細胞の増殖抑制、抗菌作用、感染症の予防、解毒作用、コレステロールと中性脂肪の低減など、さまざまな効能があります。
 
さらに黒酢には、食欲を抑制する効果から食事の量をコントロールすることができ、ダイエット食として考えることもできるのです。
 
この働きは酸味のもとであるクエン酸によるもので、食品を摂取し、エネルギーに変え、老廃物を体の外に出すという代謝活動を促進します。
 
この一連の流れを「クエン酸サイクル」と呼びますが、もし適正な代謝が行われないままだと、生活習慣病にかかりやすくなってしまいます。
これを防いでくれるクエン酸を豊富に含んでいるのが、黒酢なのです。
 
黒酢の黒い色は、主原料が玄米であるためです。
一般的な米酢は精白米を使います。
 
このため精製された白米とは違い、黒酢は米ぬかの部分の栄養価をそのままいただくことができます。
 
発酵には最短でも1年かかりますが、発酵期間が短いと有効成分は少なくなります。
発行期間が長いほど色が黒ずんで栄養素も豊富になり、黒酢の本場とされる鹿児島県福山町では5年熟成させたものもあります。
 
 
● キムチ――
生野菜を食べるよりはるかに高い『脂肪燃焼』効果
 
韓国の伝統食品であるキムチは、最近は日本でも食材としてポピュラーな存在になりました。
 
あの刺激的な辛さや塩分を気にする方がいるかもしれませんが、健康長寿食としては実は日本の漬物をしのぐほどの発酵食品です。
 
ビタミンB、Cやミネラルが豊富で、キムチの辛味のもとであるカプサイシンという成分は、アドレナリンの分泌を活発にし、発汗を促します。
 
韓国の人は肌がきれい、太っている人があまりいない、と思ったことがある方も多いのではないでしょうか。
じつは、この源泉がキムチなのです。
 
同じ種類、同じ量の野野菜を生で食べたグループと、キムチにして食べたグループを比較した調査では、一定期間での体内の脂肪燃焼が、キムチにして食べたグループのほうがはるかに上回ったという結果が出ています。
 
また、発酵によって生まれるヨーグルト並みの大量の乳酸菌が、腸内細菌のバランスを整えて免疫力を高めてくれるほか、基礎代謝を高めて便秘を予防してくれます。
 
このようにキムチには、豊富な栄養素を含みながら、ダイエット効果もある優秀な食品なのです。
 
なお、キムチの真っ赤な汁には、栄養素がいっぱい染み出しているので、捨ててしまわないようにしてください。
 
 
● マッコリ――
乳酸菌がヨーグルトの100倍含まれる驚きの整腸作用
 
キムチと同じようにマッコリは韓国で一般的に親しまれている濁り酒で、日本では「どぶろく」に相当します。
 
原料は多くの場合、米と麹のみで、これを発酵させて作ります。
いわゆるマッコリの酸っぱさは、乳酸菌が豊富な証拠なのです。
 
時間をかけて醸造されるので、乳酸の濃度が高くなることにより、酸味が強くなります。
冷蔵庫に入れるだけで、乳酸の濃度が上がっていくほどです。
 
マッコリには、乳酸菌の1つであるラクトバチルスが、ヨーグルトの約100倍含まれており、整腸作用において驚きのパワーを持っています。
 
これにより腸内細菌が整えられ、代謝が活発に行われ、美肌効果だけでなく肌の老化防止にも役立ってくれます。
 
本章の冒頭で腸内免疫について触れましたが、Th1を増強するにはナチュラルキラー細胞の活性化が不可欠です。
ラクトバチルスには、このナチュラルキラー細胞の働きを活発にする作用があるわけです。
 
また、免疫細胞のナチュラルキラー細胞は、ガン細胞を殺す作用についても知られており、あらゆる感染症から体を守ってくれます。
 
その他、マッコリには豊富なビタミンや食物繊維、コリン、ナイアシンも多く含まれており、疲労回復、更年期障害の抑制にも効果を発揮してくれます。
 
栄養分が豊富ですから、健康飲料としても考えられますが、その場合やはり甘味料が入っていないものをおすすめします。
 
マッコリのアルコール分は6%から10%と、日本酒より低いですが、ビールよりは高めです。
当然、たくさんの量を飲めば酔いますし、カロリーが低いからといって飲みすぎには注意しなければなりません。
 
 
● 麹――「食品の母」であり『万能調味料』としても大活躍
 
麹とは、米・麦大豆などの穀物を蒸して寝かし、麹菌(コウジカビ)を繁殖させたものです。
あらゆる食品の発酵、醸造に使われています。
 
麹は発酵の過程でさまざまな酵素を生産し、栄養素を生んでいきます。
そのまま食べてもおいしくありませんが、実は驚くほど私たちの生活へ浸透しており、欠かせない存在となっているのが麹なのです。
 
麹は、味噌、酢、漬物、醤油、みりん、日本酒、焼酎などが発酵する過程でなくてはならない存在で、このように麹が使われている食品が多いことに驚かれる方もいるでしょう。
 
麹は「発酵食品の母」であり乳酸菌の供給源なのです。
また発酵以外の調理の面でも用途は広く、塩麹が肉に魚に「万能調味料」として活躍しているほか、甘酒、べったら漬け、イカの塩辛、にしん漬け、酒まんじゅうと、さまざまな料理にも使われています。
 
ただ、麹菌は60度以上になるとその効能を失ってしまうので、調理の際には注意する必要があります。
 
麹で特に注目すべき栄養素は、レジスタントプロテインと呼ばれるものです
これは消化・吸収されにくく、そのまま人体の外に排泄されてしまうたんぱく質です。
しかし、腸内で脂肪をとらえてから体外に排泄されるため、悪玉コレステロールを減らし、腸内環境を整える効果をもたらすことが明らかになっています。
 
また麹は、疲労回復に効くビチオン(ビタミンB7)をはじめとするビタミンB群が豊富なことも特徴といえるでしょう。
後で紹介する納豆は優秀な健康長寿食ですが、このビタミンBは含んでいないのです。
その他、脂肪肝を防ぐイノシトールや、腸内の善玉菌を増やしダイエット甘味料としても知られているオリゴ糖といった成分も含まれています。
 
日本人が麹の効能を手軽にいただくには、甘酒がおすすめです。
酒といってもアルコール分はないので、子どもにも気軽に飲ませることができます。
健康ドリンクとされる甘酒は、米と米麹、お湯だけで作られており、砂糖は入っていません。
 
この甘さのもとが麹であり、麹によっていろいろな食品にうまみが与えられていることがおわかりになるでしょう。
また日本酒の絞りかすである酒粕を料理に使っても、麹の効能をいただくことができます。
 
生麹は要冷蔵で7日間ほどしかもちませんが、乾燥タイプであれば、常温で4ヶ月間ほどは使うことができます。
さらに乾燥タイプは、生タイプと違い乾燥させてあることで体積が縮まり、栄養素も濃縮されています。
 
 
● カツオ節――
基礎代謝を向上させ、老化を予防する『回遊魚』のパワー
 
私たちに馴染み深いカツオ節も、実は乾燥の過程で「カビ付け」と言う発酵と同じ手順を踏む立派な発酵食品なのです。
 
カツオ節の強みは、うまみ成分のイノシン酸と呼ばれるものにあります。
イノシン酸は、カツオが高速で海を泳ぎ続けるエネルギー源のATPという物質が分解された成分で、これが基礎代謝の向上や細胞の活性化、または疲労回復に役立ってくれます。
人体でも作れますが、20歳ころからその量は減少し、老化が始まります。
 
またカツオ節で注目すべき成分は、人間の体では作ることができない多糖類の必須アミノ酸です。
ペプチドといえば、先にも触れた大豆ペプチドが有名ですが、このカツオ節にもアミノ酸が結合したペプチドが豊富に含まれているのです。
 
この物質には疲労物質の乳酸を分解する酵素を活性化する働きがあり、イノシン酸と同じく疲労回復、また集中力を高める効果が認められています。
さらにある食品メーカーの調査によるとカツオ節から取り出しただし汁には、ペプチドの一種であるアンセリンが溶け出していて、活性酸素を除去する効能があるという研究結果が報告されています。
 
また豊富に含まれるカリウムには、体内の余分な塩分を排出し、高血圧を予防する働きがあるのも大きな特徴です。
カツオの栄養とうまみが凝縮されたカツオ節は、塩分が少ないので、塩分過多の日本人の食卓にはピッタリといえるでしょう。
 
 
● 納豆――
万能食の中でも特筆されるアルツハイマー病の予防効果
 
納豆こそ「健康長寿食の王様」です。
その理由は何と煎っても、発酵食品の特徴と、次章で詳しく述べるネバネバヌルヌル食品の特徴を併せ持っている点にあるでしょう。
つまり整腸作用、肥満抑制に加えて、インスリンの分泌を少なく抑えてくれる働きもあるのです。
 
また納豆は、ビタミンの中でも珍しいメナキノン‐7やPQQ(ピロロキノリンキノン〉を含んでいるほか、ネバネバ成分であるムチンとポリグルタミン酸、脂質のレシチン、渋み成分のサポニン、酵素のナットウキナーゼと、他の食品では容易に代替出来ない栄養を多く含んでいる点の特筆されます。
 
このように重要な栄養素が非常に多いので整理しておきましょう。
納豆が多様に含んでいる栄養素の中でも、まず注目すべきものはメナキノン‐7とイソフラボン、ナットウキナーゼの3種類です。
 
ビタミンK2の1種であるメナキノン‐7は、血液中のカルシウムを骨まで運び、沈着させて骨を強化する働きがあり、骨粗しょう症予防の一番手と考えられます。
これは同じような働きを持つビタミンK1よりも10倍の効果があるとされ、骨への吸収がスムーズです。
味噌、チーズなどの他の発酵食品にモメナキノン‐7は含まれていますが、納豆は飛びぬけて含有量が多いとされています。
 
大豆に含まれるイソフラボンは、摂りすぎが体に良くないとされていますが、納豆で吸収する分には気にする必要はないでしょう。
またナットウキナーゼは、大豆が発酵する際に微生物が作り出す「納豆オリジナル」の酵素です。
 
血栓を防ぎ、血液循環をスムーズにするため、「心臓病の薬になる」といわれているほどの高い効能を持つため、酸素や栄養が体の隅々にまで行き渡ります。
その結果、がん細胞の抑制(がん細胞は酸素の少ない状態で育つ)や関節炎の緩和、さらに脳機能を活性化させるなどといった万能の働きがあるのです。
 
ほかにも、人間の体内にあるプラスミンという酵素は年をとるにつれて少なくなり、血管が固くなって脳卒中や心臓病を引き起こす原因になるのですが、これもナットウキナーゼが補ってくれます。
そして、ナットウキナーゼの多くの働きの中でも特筆すべきは、アルツハイマー病をブロックしてくれることです。
 
そもそもアルツハイマー病とは大脳が萎縮し、記憶障害などの症状が出る病いです。
これにかかると脳の表面、つまり大脳の神経細胞の外側に「老人班」と呼ばれるシミのようなものが出てきます。
加齢とともに外見の肌に現れてくるシミ、つまり「老人性色素班」と同じようなシミが、実は脳にも現れてくるのです。
 
これは、脳の表面に「βアミロイドタンパク」と呼ばれるたんぱく質が沈着している状況です。
これが脳の神経細胞に毒性を発揮すると考えられており、このシミが増えると、いわゆる痴呆と呼ばれるような症状がすすんでしまいます。
ナットウキナーゼは、この「βアミロイドタンパク」を分解することが明らかになっているのです。
 
また納豆は、カロリーやコレステロールが低いことも特徴の一つです。
納豆に含まれるレシチンは脳、神経細胞の情報伝達物質の原料となり、栄養分と不要な物質の選別をしています。
そして脂質でありながら、悪玉コレステロールなどを排除し、脂肪分をブロックする働きおあります。
 
それだけでなくレシチンはビタミンの吸収を助け、血管を柔らかくし、集中力を高めるといった、脳の働きを助ける効果もあるなど万能さを備えています。
 
さらに発酵の過程で発生するポリアミンは、納豆がどの食品よりも含有量が多いとされており、これは免疫力を高め、抗炎症作用も認められています。
 
納豆にはビタミンA、Eなど含まれていないビタミンもあるのですが、注目は最近になって発見されたビタミンPQQです。
ビタミンPQQの人への効能はまだ、皮膚にとって重要な働きを持つということがわかってきたほか、はっきりしていませんが、ネズミの実験ではPQQが欠乏した固体はきちんと発育しなかった、という結果が出ています。
 
納豆にはこれらに加えてサポニンやセレニウム、ムチンなど、多数の老化防止に有効な成分が含まれていますので、まさに冒頭で述べたように「健康長寿食の王様」と呼ぶにふさわしいでしょう。
 
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001