あんな話 こんな話  128
 
白澤卓二著  PHP新書
『ボケたくなければ、これを食べなさい』
より その4
 
 
第4章 雑穀類――
「機能ユニット」を丸ごといただく
 
 
● 穀物の『気脳ユニット』後と食べると脳が活性化する
 
雑穀は「固い」「ごわごわしている」などの理由でどうしても敬遠されがちですが私はやはり白米より玄米、小麦粉であれば全粒粉を使ったものをおすすめします。
その理由は、前者は人の手によって精製されたものであり、精製の過程で穀物が本来持っている機能を失っているからです。
 
では、その機能とはいったい何なのでしょうか?
たとえば、玄米なら稲の種子が発芽しようとする機能です。
もともと稲の種子である米には、白い部分には発芽の際のエネルギーとなるでんぷんが、表面に近い「ぬか」の部分にはそのでんぷんをエネルギーに変える成分が含まれています。
 
発芽時のエネルギーを作る仕組みは、人間の脳でエネルギーが作られる働きに似ています。
そのため玄米の成分には、脳の働きを助けてくれる効能もあるのです。
要するに、この機能が脳への酸素供給量を増やし、脳の血流を活性化させて、脳細胞の代謝機能を高める働きをしていてくれるのですが、言い換えれば雑穀の「機能ユニット」が、人間が自前で行わなければならない脳の化学反応を助けてくれるわけです。
 
逆に、精製された白米を食べるときはこの効果が期待できず、私たちはいつもどおり、自前で脳のパフォーマンスを上げなければならなくなります。
ですから白米というのは、いわばガソリンは入っているけども、エンジンがない車のようなものなのです。
 
また雑穀には、カルシウム、カリウムなどの鉄分やビタミン類、食物繊維が多く含まれています。
食物繊維を多く含んでいる食品は、固いがゆえに普段より多く噛まなくてはならないので、噛むことにより満腹感が増し、結果的に多くの量を食べずに済みます。
抗肥満効果があるだけでなく、噛むことで脳の血流が良くなり、ボケ防止にもつながるのです。
 
この食物繊維には2種類あり、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分けられます。
粘着性を持つ水溶性食物繊維は、第2章で紹介したネバネバヌルヌル食品の海藻やエシャロット、ニンニク、ゆり根などに含まれています。
 
食物繊維は消化管内のコレステロールなど、体にとって不要なものを吸収しながら、最終的に腸の中を進んで一緒に排泄してくれます。
これにより腸内の悪玉菌がなくなり、善玉菌が増えて整腸作用がもたらされるのです。
 
一方、不溶性食物繊維を含んでいるのが本章で紹介する雑穀類です。
これは水に溶けずに消化されるので、腸内で膨れ上がり、少量でも満腹感をもたらしてくれます。
つまり肥満抑制に効くわけです。
 
メタボリックシンドローム(メタボ)は、WHO(世界保健機構)の定義によると「内臓肥満によってインスリンの効きが悪くなり、そこに高血圧、糖尿病、高脂血などが起こると、動脈硬化が進み、心臓病や脳卒中を引き起こす」とされています。
 
本書で強調している「3つの食品」にはどれも抗肥満効果がありますが、雑穀を主食にすれば、このメタボとも縁遠くなることができるでしょう。
ただ、いきなり玄米や雑穀だけというメニューでは、白米に慣れている人は抵抗を感じるでしょうから、白米にこれから紹介する雑穀を少しずつ混ぜて炊くことをおすすめします。
雑穀の量は20%程度であっても、健康に十分良いことが証明されています。
 
雑穀をおいしくいただくコツは、炊く前に水に浸してアク抜きをすることです。
市販されている雑穀は、ほとんどがすぐに炊ける状態になっていますが、水に浸すことでより食べやすくなるでしょう。
 
 
● 玄米――米の豊富な栄養素は『ぬか』にこそ集中している
 
玄米は、私たちが主食としてとるべき穀物です。
玄米は米から籾殻だけをとったもので、色が茶色いのは米の栄要素のほとんどが集中している「ぬか」が残っているからです。
 
玄米の豊富な栄養素である豊富なビタミン類、ミネラル、食物繊維はこのぬかに含まれています。
つまり白米とは、食べやすさと引き換えに、米の栄養素が精製の過程でほとんどなくなってしまったものと考えてもいいでしょう。
 
玄米は、毒素を輩出するフィチン酸、白米の6倍の食物繊維、さらにビタミンB1、ギャバ(GABA)、ナイアシン、亜鉛、リン、マグネシウム、カリウムなどもバランスよく含んでおり、特にフィチン酸が摂れることから有害物質除去作用の強い食品です。
 
ですから白米のような食べやすくするための「精製」は、健康長寿に逆行する場合が多いのです。
そして玄米の中でもおすすめしたいのが「発芽玄米」です。
100歳を超えても元気だったプロスキーヤーの三浦敬三さんの主食は、この発芽玄米でした。
 
先ほど述べたように、発芽機能は人間の脳でエネルギーがつくられる過程と似ているため、脳の働きを助ける特徴があります。
発芽玄米はさらに新芽効果も加わって、栄養素をたくさん含んでいるのです。
 
この中で特に注目すべき栄養素はギャバです。
第1章の「白みそ」の項でも触れましたが、アミノ酸の1種であるギャバは抑制系の神経伝達物質で、ストレスを緩和して精神を安定させる作用があります。
また脳の血流を良くし、脳細胞の代謝機能を高める作用や、中性脂肪の増殖を抑える作用、肝臓や腎臓の働きを助ける作用もあるなど、実に多彩です。
 
他にも玄米によってもたらされる効能には、消化促進、血液サラサラ、動脈硬化の予防、肝機能の向上、解毒作用といったものがあります。
 
玄米を手早くおいしく炊くには圧力釜を使うのがベストですが、発芽玄米なら一般の炊飯器でも、白米を炊く要領で手軽に調理することができます。
 
 
● ゴマ――老化の原因となる『活性酸素』を強力にブロック
 
私たちが普段食べているゴマは、穀物の一種で薬用植物の種です。
ゴマには私たちが体を正常に機能させるための効能がたくさんあります。
 
ごま油というイメージがあるだけに脂質が気になる人がいるかもしれませんが、ゴマ油はゴマの効能が凝縮された健康的な脂質です。
ごま油は、少しぐらい多めに摂っても肥満の心配がないだけでなく、悪玉コレステロールを抑制してくれる働きがあります。
また、便秘、皮膚病、やけど、目まい、貧血、にきびに対する効果も認められているのです。
 
ゴマには「白ゴマ」と「黒ゴマ」がありますが、成分的には大きな違いはありません。
ただし一般的には、白ゴマのほが近年の研究で発見されたゴマに含まれるゴマリグニン類(セサミンやセサミノールなどで抗酸化力が強いのが特徴〉の量が多く、黒ごまにはタンニン形のポリフェノールが含まれているとされています。
 
ところが最近の調査で、黒ゴマにも驚異のパワーが潜んでいることが分かりました。
黒ごまを4週間にわたり毎日食べ続けた人と、まったく食べない人について調べた結果、黒ごまを食べた人のほうが血液が下がって安定し、血液中のビタミンレベルが上がったという報告が出ています。
 
もともとゴマ油が酸化しにくいことは古くから知られており、そこから注目されたように、黒ゴマにも強力な抗酸化作用があるのです。
血圧を下げて心臓病を予防する働きの他、老化の原因となる活性酸素が引き起こす酸化ストレスをブロックする効果もあります。
 
ゴマがもつその他の有効成分には、食物繊維、ナイアシン、銅、マグネシウム、鉄、ビタミンB群、ビタミンEなどが挙げられており、鉄分とビタミンが豊富であることが分かります。
 
また、ゴマに関してはサプリメントとしても人気を集めていますが、第2章の最後でも触れたように、ゴマの強力なパワーをすべていただくためには、ゴマそのものを摂るのがベストでしょう。
 
ただ難点は、外皮が固く消化されにくいことです。
これを避けるには、ゴマ油やゴマペーストの形でとることで吸収率がアップしますし、炒ることでも外皮が破れて消化・吸収がよくなる他、加熱による変化でゴマの抗酸化作用が高まる点もメリットです。
 
 
● 五穀米――
見た目がカラフルになるほど健康長寿に効果的
 
もともと白米を食べ慣れた人が、いきなり玄米100%に切り替えたりすると、味や食感の違いによって挫折してしまうというケースが多いという理由から、「五穀米」などの雑穀のブレンドが生まれました。
 
もし雑穀を食べるのが初めての方なら、白米や玄米や数種類の雑穀をプラスするだけでも栄養価が高まり、ぐんと食べやすくなります。
一般的に加える量は白米の5〜20%で、20%になると医学的な効果も高まるといわれています。
市販の雑穀なら味のバランスも調整されていますので、手軽においしく食べられるでしょう。
 
そのようにブレンドされた雑穀には「十穀米」「十八穀米」「二十穀米」などさまざまな種類がありますが、ミックスした雑穀の見た目がカラフルであればあるほど、健康長寿には効果的です。
その中でも、もっともポピュラーな存在といえるのが、やはり五穀米でしょう。
 
雑穀ミックスの良いところとして、まず複数の栄養素が取れること、白米よりもたくさん噛むようになることなどが挙げられます。
たくさん噛むことが満腹中枢を刺激し、食べ過ぎによる肥満も防いでくれるのです。
また脳の血流がよくなるほか、雑穀のおいしさは噛めばかむほど増していきます。
 
実は、五穀米にどの穀物を入れるかという明確な定義はないのですが、一般的には白米、麦、あわ、ひえ、豆といった白っぽい穀物を、雑穀が苦手な人用にブレンドしたものが多いようです。
五穀米に慣れてきたら、徐々に雑穀の種類を増やしていくのがポイントです。
 
先ほども述べたように、ミックスする穀物の種類が多いほど、健康長寿への貢献度は高まります。
たとえば、十八穀米を3ヶ月間、肥満体質の方に毎日食べさせた調査があります。
これによると、体重や皮下脂肪が減少し、メタボリックシンドロームの指標とされているBMIも驚異的に下がったそうです。
 
また普通のパスタと、雑穀パスタを食べたときの血糖値の変化を比較した調査では、雑穀パスタのほうが血糖値の上昇が穏やかで、インスリンの分泌も抑えられるという結果が出ました。
 
もし体を温めたいのなら黒米、黒まめ、血糖値を下げて消化を促進し、便秘を防ぎたいのなら食物繊維が豊富な麦などを混ぜることをお勧めします。
 
次に、おもな雑穀の効能などを紹介しましょう。
 
 
● はとむぎ・・・代謝能力を高めてくれる「デドックス雑穀」
 
麦茶でお馴染みのはとむぎは、大麦よりも一回り大きいサイズの種類です。
たんぱく質が穀類の中でも多く、私たちの体を形作っている必須アミノ酸が豊富に含まれています。
古くからイボの除去に効果があるとされ、薬用としても用いられてきました(漢方ではヨクイニンと呼ばれます)。
 
抜群の代謝能力が特徴で、「デトックス雑穀」というイメージでいいでしょう。
他に含まれる栄養素としては、カルシウム、鉄、カリウム、ビタミンB郡などが豊富で、美肌効果、利尿作用、解毒作用といった効能もあります。
 
粒が大きく固いので、水で溶いたから圧力釜で炊くと食べたすくなります。
 
 
● あわ・・・味が食べやすく、多くのミネラルと美肌効果が特徴
 
あわは、縄文時代から栽培されていた日本最古の穀物です。
今でも、あわぜんざいやあわおこしに用いられており、あっさりと癖がない味のため、雑穀類の中でも食べやすいのが特徴です。
 
あわの栄養素の特徴としては、豊富なミネラルが挙げられます。
鉄が白米の6倍、マグネシウムが5倍、カルシウムが3倍含まれているとされ、また肌荒れに効果があるパントテン酸が、雑穀類の中ではもっとも多く含まれていることから、美肌効果も認められています。
 
他の有効成分には、ポリフェノール、ビタミンB群などがあり、抗酸化作用、疲労回復、肝機能の強化、貧血予防にも効能があります。
 
 
● 押し麦・・・豊富な食物繊維が腸内環境をきれいにする
 
大麦を精白して蒸し、ローラーで平たくしたのが押し麦です。
モチモチとした食感と麦ならではの風味があります。
 
押し麦の特徴は、穀物には珍しく水溶性の食物繊維が豊富なことです。
先にも触れたように水溶性の食物繊維は、食べ物が消化される過程で悪玉コレステロールなどの有害物質にからみつき、体外に排泄するのを助けてくれる働きがあり、特に腸内環境を整える効能をもっています。
 
押し麦はビタミンB群、カリウム、カルシウム、食物繊維といった栄養要素が豊富で、整腸作用や便秘解消の他、デトックス、がん予防の効能があります。
 
 
● きび・・・黄色の色素のポリフェノールに抗酸化作用
 
いわゆる「きび団子」でお馴染みのきびは、見た目の鮮やかな黄色が何よりの特徴です。
この色素はポリフェノールの1つで抗酸化作用があり、健康長寿のもとになります。
 
生育期間が短く乾燥に強いという特徴は、きびの栄養素に集約されており、老化を促進する活性酸素を除去し、代謝を高めて肌を美しく保ち、生殖機能の健全化、味覚機能の低下を防ぐなど多くの効能があります。
 
もち種とうるち種があり、日本で栽培されているのはもち種がほとんどです。
比較的甘いのが特徴ですが、おいしくいただくには炊く前に水洗いしてアクを出すのがコツ。
 
きびはポリフェノールの他、ビタミンB1、ビタミンB6、ナイアシン、亜鉛が豊富で、抗酸化作用以外にも動脈硬化の予防、高血圧の予防などの働きがあります。
 
 
● 黒米・・・古代米の生命力が、がんや生活習慣病を予防
 
野生の稲の特性を受け継ぎ「生命力が強い」といわれる古代米ですが、ぬかの部分にその生命力、つまり栄養が集約されています。
白米に混ぜてたくと、白米が紫になるほどパワフルです。
 
この黒い色素は、ポリフェノールの1種であるアントシアニンで、強い抗酸化作用をもち、ガンや生活習慣病を予防して老化を防いでくれます。
こうした栄養素が流れていかないように、黒米はさっと水で研ぐのがポイントです。
 
黒米はアントシアニンの他、ビタミンB群、ナイアシン、ミネラル類が豊富で、抗酸化作用以外にも、生活習慣病の予防、血管の老化予防、胃腸の機能強化などに効能が認められています。
 
 
● 小豆・・・豊富なカリウムで高血圧やむくみを解消
 
小豆はあんこのもとであり、和菓子には欠かせない材料です。
穀物の中でもカリウムが豊富で、体内の余分なナトリウムを排斥し、高血圧の予防やむくみを解消してくれます。
 
また、小豆の赤い色素であるアントシアニンと、苦味成分であるサポニンには強力な抗酸化作用があり、生活習慣病をブロックします。
これらの色素と苦味成分の強力なタッグが、健康長寿を実現してくれるのです。
 
他にはビタミンB群、カリウムなどが豊富で、疲労回復や便秘解消、高血圧の予防に効果があります。
 
 
● 人間の活動に欠かせないエネルギー源である糖質
 
これまでに紹介した雑穀は、主に私たちが脳や体のエネルー源として摂るべき糖質を含んだ食品です。
 
炭水化物といえば、イメージいやすいでしょう。
私たちが主食と考えている炭水化物は、実は糖質の塊で、でんぷんといわれる糖質がいくつも集まった多糖類に分類されます。
 
これは複数の糖質が集まっていできていますから、分解されてブドウ糖となり、吸収されエネルギーに変わるのに時間がかかります。
 
つまりからだの中に吸収されにくい特徴があるため、次章で取り上げる他の糖類よりもインスリンの分泌で時間稼ぎができるというメリットがあります。
 
 
● 単糖類、二糖類、多糖類・・・・・・
インスリンの分泌に大きく関係
 
その一方で糖質が1つのものを単糖類といい、ブドウ糖や果糖が挙げられます。
ブドウ糖はすでに説明したように、でんぷんなどが分解されて体の中に吸収される糖質の最終形です。
果糖は果物に含まれる糖質で、多糖類よりも体への吸収が早いという特徴があります。
 
果糖は体内への吸収が早い分、インスリンの分泌を急がねばなりませんが、エネルギー変換が素早くできるので、即座に脳や体を目覚めさせることができます。
だから「朝の果物は金」という言葉があるように、果糖を多く含む果物は、朝の栄養を求める体にピッタリというわけです。
 
それと平行して脳と体のエネルー源をしっかり補給するのは、やはりインスリンの分泌に負担をかけない(血糖値を急激に上げない)という点で、朝食ではパンよりもごはんが好まれるものです。
 
さらに赤味噌のお味噌汁など、体の代謝を上げる食品を摂るとなお効果的です。
また砂糖、乳頭、麦芽糖は二糖類に分類されます。
 
乳頭は哺乳類の乳汁、つまり母乳や牛乳などに含まれている糖質です。
麦芽糖は、米あめやサツマイモなどに含まれています。
二糖類の特徴は、多糖類と単糖類の中間に当たるという点にあります。
 
● 今の日本に栄養失調がある?
ーーたんぱく質をとることが栄養の基本
 
雑穀類には多くの植物性たんぱく質が含まれていますが、本章の最後で少したんぱく質全般や、体のバランスを整える栄養の考え方について触れておきたいと思います。
 
「今の日本に栄養失調の人がいる」というと、違和感を覚える方も多いでしょう。
ところが今は、食べたいものを食べたいだけ食べることができるため、極端に栄養が偏った結果、栄養失調と診断されるケースもあるのです。
 
医学的に栄養が足りているかどうかは、血液中のアルブミンの量を測ることで分かります。
アルブミンとは、血液中に含まれる代表的なたんぱく質で、この量を調べることでたんぱく質が適正に摂れているかどうかが分かるのです。
 
体内のたんぱく質の量は、からだの栄養状態を把握するバイオマーカー(生物学的指標)として考えることができます。
つまり栄養摂取においては、たんぱく質を摂ることが基本となるのです。
 
 
● 魚ばかりで肉を食べないとタンパク質が不足する
 
アルブミンが体内に不足すると「栄養失調の状態」とされるだけでなく、体が正常に機能しなくなります。
体を動かすには植物性たんぱく質だけでなく、動物性たんぱく質も必要です。
 
重要なのは栄養のバランスですが、「肉よりも魚が健康によい」といったイメージが流布することで、まるでたんぱく質が嫌われているような状況にあります。
実はこれはあまり良くないことなのです。
 
たとえば、すき焼き用の牛肉300gには、たんぱく質が90gも含まれていますが、アジ1匹塩焼きにして食べても15gぐらいしか摂れません。
 
1日に奨励されているたんぱく質の摂取量は、男性で60g、女性で50gですから、すき焼きだと十分に摂れるのですが、アジだけだと1日に4匹も食べなくてはなりません。
 
魚はDHA、EPA(どちらも不飽和脂肪酸)など、老化防止に役立つ栄養素をたくさん含んでいますが、こればかりに目が行って肉を食べるのを疎かにすると、栄養の基本であるたんぱく質が欠乏してしまいます。
 
 
● 70歳以降は『生活習慣病』より『栄養不足』を心配すべき
 
人間は年を取るにつれ、脂っこい食べ物を敬遠しがちになりますが、これがたんぱく質の不足を招いている面があります。
先ほども述べたように、肉と魚の良いとこ取りをするためには、肉と魚を1日置きにメインディッシュにすることをおすすめします。
 
また肥満にならないように注意するのは70歳までだと考えましょう。
なぜなら、たんぱく質の不足を防ぐためです。
もちろん肉をとれば当然、脂質も入っています。
 
メタボや生活習慣病などは健康長寿の大敵ですが、年をとって食欲自体が衰えてきたときに、そのような「食品のセーブ」を続けてしまうと、先に述べたような健康長寿に必要な栄養が足りなくなってしまうのです。
 
要するに、人間は70歳以上になると防ぎたい病気が変わってくるのです。
それ以前は肥満、ガン、心臓病、脳卒中などの生活習慣病ですが、以降は体が弱って介護が必要になるような事態です。
これは介護が必要な人達に、たんぱく質のアルブミン不足が多く重なる点からも、そのように考えられるでしょう。
 
体が動かないのは万病の元です。
第6章で詳しく述べますが、体を動かさないと外出もおっくうになり、脳や体の老化が急速に進みます。
ですから、年をとって栄養不足になることは避けなければなりません。
 
メタボという言葉が一般に浸透してから、肥満に対する意識は高まりましたが、メタボを気にするのも70歳までだと考えましょう。
70歳をすぎたら「ちょい太」くらいのほうが健康長寿には良いといえます。
 
繰り返しますが、年を取ると若いときのように食べられなくなるだけでなく、胃酸の分泌も弱くなり、さまざまな栄養素が吸収されにくくなります。
70歳以降の「粗食」は体に良くありません。
たしかに若いときは、カロリー制限することが健康長寿に役立つこともあります。
ですから70歳をすぎたら、この考えを大きく切り替えましょう。
 
たんぱく質、ビタミンなどを意識して、逆に若いときより量を増やすぐらいのほうがいい場合もあります。
もちろん、いちばん良いのは20代のころと体重があまり代わらないことですが。
 
また70歳をすぎると、筋肉の減少が急速に進行します。
これが体を動かさなくなる(体を動かす意欲が衰える)原因になるので、70歳を超えたらきちんと栄養を摂って、たくさん動くという意識を持つことが大切になります。
 
 
● 健康長寿食を『特性タレ』にして毎日お手軽に食べる
 
本書では「健康長寿食」として効果のあるさまざまな食品を紹介していますが、これらすべてを食生活に取り入れるのは、現実的に難しい部分もあるでしょう。
だからといってサプリメントに頼るのは、先述のように健康長寿からは逆行してしまいます。
 
そこでお勧めしたいのが、名づけて「アンチエイジングのタレ」です。
つまり、健康長寿の栄養素を損なわず「特製タレ」にすることでダウンサイジングし、お腹を膨らますことなく毎日たくさんの栄養素を取り入れるという工夫です。
 
いつもの食事に日替わりでタレをさっとかけるだけで、健康長寿やアンチエイジングの効果を手軽にプラスすることができます。
また、タレは作り沖して保存することができるのも大きなメリットです。
 
たとえば第1章の麹の部分では、肉に魚に「万能調味料」として活用する塩麹について触れましたが、味噌工事なら味噌と麹の相乗効果が生まれます。
もともと発酵食品である醤油も、他の健康長寿食を加えるというアイディアで、しょうが醤油、にんにく醤油が考えられます。
また甘酢漬けしょうが、甘酢漬けみょうが、味噌を使えば、さまざまな調味料ができるはずです。
 
効能を簡単に説明すると、麹を使ったタレは代謝を高めて疲労回復に効果がありますし、同じく梅肉を使ったタレはストレスホルモンの分泌を抑える働きと、ストレス抑制ホルモンの分泌を増やす2重の働き、ストレスやうつの予防に効果的です。
 
さらにワサビのもつ殺菌作用はニキビに効きますし、先ほどのしょうがやにんにく、ウコンバターを使ったタレには、免疫力アップ(整腸作用)や抗ガン作用などが期待できます。
家族の好みに合わせておいしくたべられるよう、レシピを工夫してみてください。
 
そして、特にドレッシングに活用しやすいのがオリーブオイルです。
オリーブオイルの健康長寿パワーは次章で詳しく解説しますが、オリーブオイルを醤油、味噌、日本酒などと組み合わせれ、驚きのアンチエイジングのタレが出来上がるでしょう。
 
 
● 便利な『野菜・果物ジュース』は、ぜひ手作りのしぼりたてを
 
また、アンチエイジングのタレと同じような考え方ができるのが「野菜・果物ジュース」です。
野菜や果物を固形で食べると時間もかかりますし、必要な栄養素を摂るには結構な量をたべなくてはなりません。
 
そこで便利なのがジュースの形態なわけです。
ジュースの良いところは、栄養素が凝縮されているところ。
野菜や果物ジュース1杯だけで、ビタミン、ミネラル、食物繊維などを無理なく摂ることができます。
 
また、「オレンジジュースがアルツハイマー病を予防する」という研究結果が多く出されていますので、ここでは日系米国人を対象にしたアルルハイマー病の発症リスクに関しての調査を紹介しましょう。
 
それによると、野菜ジュースか果物のジュースを週に3回以上飲む人のほうが、週1回未満の人よりも、アルツハイマー病にかかるリスクが76%も低下したとされます。
その果物ジュースの代表といえるのが、先ほど挙げた抗加齢の栄養素とされるポリフェノールをたくさん含んだオレンジジュースなのです。
 
朝食には、ぜひ1杯のオレンジジュースを飲むことをおすすめします。
ただ注意していただきたい点がいくつかあります。
ここで1杯としたのは、野菜・果物の糖質は吸収が早く、果糖は中性脂肪が肝臓にたまりやすい性質なので、1日1杯が限度だからです。
「効果があるから」といって過度な飲みすぎは、やはり体に別の面で悪い影響を与えます。
 
また野菜・果物ジュースは、手作りの絞りたてのものをお勧めします。
「フレッシュジュース」という呼び方がありますが、野菜・果物ジュースのポイントはいかに新鮮であるかということです。
その理由は、ジュースに含まれているビタミンCなどは熱に弱く、時間とともに減少していくからです。
 
ですから市販の野菜ジュースでは酵素や食物繊維なども失われやすく、絞りたてのものに比べて効能が薄いと認識しておきましょう。
加えて添加物の心配もあります。
 
 
● 年をとったら水分補給をこまめに
ーー脱水症状に鈍感になる
 
さらに野菜・果物ジュースの良いところは、栄養だけでなく水分もきちんと摂れるところです。
水分補給は、健康に重要だとよく言われます。
私たちの体は水分が約60%を占めており、この水分量が少なくなると栄養や酸素が体の仲の細胞に行き渡らなくなり、体の不調や老化の加速を招きます。
水分が、体の中で「運送の役割」を果たしているからです。
 
朝に水を飲むと良いとされるのは、寝ている間は一切水分補給できず、汗などでどんどん水分が失われる状態が続いた後だから、というのがその理由です。
1日に摂る水分の量の目安は、体重の30分の1程度。60キロの人なら約2リットルとなりますが、これは意識しないと飲めない量です。
 
また年をとると、水分が不足して「のどが渇いた」と信号を送る脳の視床下部の機能が衰えるため、夏などは熱中症にかかりやすくなります。
その他、体温を調整する機能や、暑さ寒さを感じる機能も年齢とともに低下するため、朝1杯のオレンジジュースや野菜・果物ジュースでの水分補給だけでなく、常に水やお茶を持ち歩いて、水分補給を欠かさないように心がけましょう。
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001