故相馬暁先生

スイートコーン(とうもろこし)の話

1.とうもろこしの古里と由来
スイートコーンは、トウモロコシの中の甘味種に属するもので、”コーン”とか”トウモロコシ”とも呼ばれるイネ科の一年生草本です。
トウモロコシの原産地はメキシコから南アメリカ北部地域とされていますが、その原種・原産地は未だ定かでありませんが、メキシコ、グアテマラ、ホンジュラスのトウモロコシ畑に見られる雑草テオシント(teosinte)が野生祖先種であると言う説が、現在、有力視されています。
しかし、起源ついては諸説あり、決定打はまだありません。
しかし、少なくても数千年前に栽培化され、南北アメリカ大陸の主要農作物として広く分布していた事は揺るぎ内事実です。
コロンブスと彼に続く人々によって、種子がまずスペインにもたらされた後、ヨーロッパ諸国に伝播し、ついでインド、中国、日本などに伝わっりました。

1) 南北アリリカ大陸の諸文明を支えたトウモロコシ
考古学的資料によりますと、トウモロコシの野生種は、少なくても紀元前5,000年頃にはメキシコに分布しており、栽培型が成立したのは紀元前3,000年頃と考えられます。
また、現在の様な穂形が成立したのは紀元前2,000年頃のことと言われています。
まさに有史以前から、大切な主食穀物として広く利用されてきました。
そして今でも、メキシコの人々は、トウモロコシをよく食べます。
トウモロコシを使った料理も数多いのですが、中でも有名なのはトウモロコシ粉に水を加えて焼いたトルティーヤです。
トルティーヤに、味付けした挽肉や魚、野菜を巻き込んでチリソースをかけたものが、あのタコスなのです。

一方、北アメリカへの伝播は、現在のニュー・メキシコ州に伝わったのが最も古く、その付近のコーラ川とグランデ川の支流域が北アメリカへの伝播の起点となっています。
そこからユタ州のグリーン川を遡って伝播したルートと、ロッキー山脈の東麓を通って伝わったルートと二つの伝播ルートがあります。
後者はコロラド州からさらに中央平原(グレートプレーンズ)を経て、コロンブスがアメリカ大陸に到達する以前の1,400年代始めまでに、ミズーリ川とオハイオ州の流域で広く栽培されるようになっていました。
アメリカ合衆国の中央平原は現在もトウモロコシの大規模な生産地帯となっていることは、中学の地理で習った通りですが、そのトウモロコシ栽培の歴史は、この様にコロンブス以前から行われていたのです。
インディオと呼ばれる人々は狩猟民族の様に、アメリカ映画は描きますが、それは嘘。
彼らはトウモロコシを栽培し、カボチャの作り方を白人に教えた優れた農夫でもあったのです。

2) 世界の三大主食への道を歩んだトウモロコシ
ヨーロッパへの伝播は、コロンブスらが到着したキューバなどからスペインに持ち帰ったのが最初です。
その後、僅か30〜40年足らずの間に、フランス、イタリア、トルコ、北アフリカにまで伝わり、アフリカ各地には16〜17世紀の間に広がりました。

アジアへの伝播は、16世紀の初め、ポルトガル人によってまずインドに伝えられ、インドからチベット経由で中国へも伝播しました。
この他、中国へはトルコ、イラン経由の大陸ルート、いわゆるシルクロード経由でも伝えられています。

こうしてトウモロコシは、大航海時代を経て世界中に広まっていったのですが、その当時、野蛮なスペイン人によって征服され、破壊されるまで、南アメリカ大陸では、インカ文明、マヤ文明が栄えていました。
そのほかにもアンデス山中には独自の文化が形成されていました。
これらの文明を支えた生産基盤はトウモロコシであるとも言えます。
人びとの主食はトウモロコシで、マヤやインカ文明の芸術作品にはトウモロコシが多く描かれています。
なお、現在でさえ中米の人びとのカロリー摂取の75パーセントはトウモロコシに依存しており、世界的に見ても、今では麦、米と並んで世界の三大作物と言われる様に成りました。

3) キビの一種と間違えられたトウモロコシ
    日本への伝播は戦国末期
日本にトウモロコシを伝えたのは、ポルトガル人で、天正7年(1579年)に長崎に伝わっりました。
その後、四国の山間地帯や阿蘇及び富士の山麓で漸次栽培されるに至ったようです。この地域では、主に主食や飼料用として利用されていたようです。
なお、この頃、栽培されていたトウモロコシは後で述べる所のフリント種であって、現在栽培されているスイートコーンそのものではありません。

江戸時代の「本朝食鑑」には、トウモロコシは煮たり、粉末を餅にして食べてると記されています。
また、宮崎安貞の農業全書には、トウモロコシは蜀黍(モロコシキビ)の一種として玉蜀黍と表記され、ナンバンキビと呼び、その穀粒は玉の様で、菓子の原料に適していると紹介しています。
ところで、蜀黍とはモロコシのことで、唐黍(トウキビ)とも表記されます。
イネ科の一年草で、現在、世界中の熱帯・温帯に広く栽培され、日本にも古くから伝わり、今でこそ殆ど栽培されていませんが、昔は全国至るところで作られていました。コーリャン、マイロ、ソルガムなど多くの系統があり、穀実を食用や飼料に用いています。
本来、トウモロコシはこのモロコシとは属を異にする作物ですが、当時は十分な知識がなく、誤ってモロコシの一種と考えたようです。

トウモロコシの本格的な栽培は明治以降になってからです。
北海道開拓史が、一説にはケブロンやエドウィン・ダンらが、アメリカから数多くの優良品種を導入し、栽培に適した北海道に定着しました。
と言っても、最初に持ち込まれたのは、主にフリントコーンと言われる家畜のエサで、現在、食べているようなスイートコーンでありませんでした。
そのままでは、あまり美味しくはなく、焼いてバターをつけたり、醤油をつけたりし、美味しく食べようと言う工夫をしていました。
従って、石川啄木が「しんとして 幅広き街の 秋の夜の 玉蜀黍の 焼くにほいよ」と、詠ったトウモロコシは現在のスイートコーンではなかったことになります。

ところで、日本で、スイートコーンとしてのトウモロコシが、最初に記録されたのは明治の農学書「西洋菜栽培法(1873年)」であります。
しかし、スイートコーンの本格的な栽培が始まったのはもっと遅く、1904年(明治37年)にゴールデンバンダム種が導入されてからです。
その時も、今日の様な野菜的利用はまだ定着せず、野菜としてのスイートコーンが急速に普及したのは、アメリカからゴールデンクロスバンダムが導入され(1949年)、この品種の甘味が強く、栽培しやすい優秀性が評価されて、採種体制が確立された1960年(昭和35年)頃からです。

4) その名前の由来
トウモロコシは玉蜀黍と表記されます。
その語源は、穀粒が玉の様な蜀黍(モロコシキビ)と言う意味です。
江戸時代には、先に述べました様に、トウモロコシは蜀黍(モロコシキビ)の一種と考えられていました。
蜀黍は元々、日本古来の黍に対して、中国(三国時代の蜀)の黍と言う意味で、蜀(モロコシ)の黍(キビ)と名付けたものです。
このモロコシキビが後年、そのキビが略され、モロコシと一般に呼ぶ様になりました。
その頃、新しく入って来た黍を唐(中国の意味)のモロコシと言う意味で、唐黍、唐モロコシと呼んだのです。
なお、別名を南蛮黍(ナンバンキビ)、高麗黍(コウライキビ)とも言います。


2.トウモロコシの生態とその特性
1) 生態と形態的特性
トウモロコシはカボチャと同じ雌雄異花
トウモロコシは、被子植物門・単子葉植物綱・顕花目・イネ科に属する一年生植物で、野菜には仲間が少ないイネと兄弟の作物です。
なお、タケノコは数少ない仲間です。

トウモロコシは茎が直立し、その高さが1m程度と比較的低い物から、品種によっていは4mの高さまで伸びる物まであります。
葉(節)数は一般的に14〜16枚の物が多く、余り分枝しません。
葉は互生し、大きいもので幅5〜10cm、長さ1m以上にも達します。

トウモロコシは、カボチャと同様に一株に雌花と雄花が別々に付く、雌雄異花の植物で、初夏に開花します。
同じ株では雄花が雌花より2日ほど早く咲きます。
茎頂にススキ型の雄の穂(雄花穂)付け、葉腋(茎と葉の付け根)に数枚の包葉に包まれた雌の穂(雌花穂)を付けます。
雌穂の先端からは、絹糸(シルク)と呼ばれる糸状の花柱を出し、これに雄花の花粉がついて、受精が行われる代表的な風媒花です。
その時、自分の亭主(同じ株の雄花)よりも、お隣の亭主(違う株の雄花)の花粉によつて受精する、浮気型の他花受精作物です。
最近、そんな女性も増えてきましたが、トウモロコシはズッと昔から実行していたのです。
ところで、シルクと呼ばれる絹糸一本一本がトウモロコシの一粒一粒の粒に成ることを知っていますか。また、一株に子実(雌花穂)は二つ三つ付きますが、普通は最上位のみが結実します。
家庭菜園で一株から二つ子実を収穫出来たらラッキーと喜んで下さい。

2) トウモロコシの仲間
トウモロコシは温暖な気候を好み、生育は30度前後が適していますが、寒さにも比較的強い性質を持っています。強健な葉・茎・根を持ち、環境適応力が強いと言えます。
元々は、穀類として利用されていましたが、現在の日本では、未成熟な子実を食べる野菜としてのトウモロコシが主流で、農林統計でも未成熟とうもろこしと区分されています。

そのため、日本ではスイートコーンと呼ばれる甘味種が主ですが、トウモロコシとしては、他に硬粒種、軟粒種、爆裂種(この品種でポップコーンを作ります)などがあり、種の色も黄色の他に赤黄、白紫などがあります。
子実の形質・特性によってグループ分けしますと、

(1) 世界で最も栽培量が多いのはデントコーン(馬歯種)で、主に家畜の飼料やデンプン(コーンスターチ)の原料として利用されています。
子実の側部に硬質デンプンが、内部と頂部に軟質デンプンが分布するため、子実が成熟して乾燥しますと頂部が凹(くぼみ)み、馬の歯状になるため、日本では馬歯種と呼んでいます。大形で子実収量が多いのが特徴です。

一方、(2) 子実の側部も頂部も硬質デンプンで出来ているのがフリントコーン(硬粒種)です。頂部は丸く光沢があり、内部に軟質部がわずかに含まれています。
概してデントコーンより早生で、特に、早生硬粒種はアメリカで栽培されるトウモロコシの内、最早生です。
従って、高緯度地や高冷地など栽培可能期間の短い地域でも栽培することが出来ます。食用にも利用されますが、飼料や工業原料として利用されることが多い品種です。

(3) ポップコーン(爆裂種、ハゼキビ)も馴染み深い品種です。
スナック菓子として親しまれているポップコーンはこの種の子実が爆裂してはぜかえったものです。
粒全体が硬粒デンプンで堅く包まれ、内部に僅かに軟質部があり、ここに水分を含みます。
そのため加熱すると水分の急激な膨張によって子実がはじけるのです。
子実は小さく、粒の先が尖っているもの、丸いものと形状はさまざまで、色も白、黄、赤褐色など多様であす。

これらのほか、
(4) 子実全体が軟質デンプンで出来ているソフトコーン(軟粒種)や、
(5) 加熱すると強い粘性を示すワキシーコーン(もち種)、
(6) 一粒一粒が皮(穎:えい)に包まれたポッドコーンなどがあります。
しかし、これらの栽培は世界的にみてもあまり行なわれていません。

3) 野菜としてのトウモロコシ・スイートコーン
1900年(昭和43年)に、飼料用トウモロコシ(デントコーン)の突然変異によって生まれたスーパースイート種は、今までのスイートコーンとはまったく粒質の異なった品種でした。
このスーパースイート種(代表品種はハニーバンタム)がアメリカから1900年(昭和43年)に輸入されました。
野菜としてのトウモロコシ時代の幕開けです。

この品種は、粒の皮は厚いのですが、スイート種の2倍以上の糖分があり、甘味がきわめて強く、かつ収穫時の食味が2〜3日は維持できるため、消費者に大歓迎され、爆発的な人気を得て、それまでのゴールデンクロスバンタムに替わりました。
さらに最近、黄色粒と白色粒が混ざる新しいタイプの品種が登場しました。
この品種は、ハニーバンダムに代表されるイエロー系の品種よりさらに甘く、種皮が軟かいため、かすが口に残らず好評を博しています。
この新しいタイプの品種をバイカラー系(2色)品種と言い、代表品種にピーターコーンがあります。
今やバイカラー品種がスイートコーンの代表選手になりました。

この様に、最近のスイートコーンの品種改良は目覚ましいものがあります。
農作物のある成分(糖分)がこんな短い期間の内に、倍以上にも向上した実例は、スイートコーン以外にはありません。

(1) ハニーバンダム
1950年代に登場して以来、ピーターコーンに主役の座を奪われるまで、野菜用トウモロコシの大スターでした。
府県では、出荷時期は五月下旬から九月中旬までで、旬は六月下旬から七月中旬です。
しかし、北のサンサンと輝く太陽を一杯に浴びた北海道産のハニーが空輸され、東京の市場に並べば、府県物の陰が薄くなったものです。
鮮度、味とも保証つきの美味しさでした。

一番美味しい食べ方は、湯をわかしてから畑にトウモロコシをとりに行くことです。
なぜかというと、分単位で甘さが落ちてくるし、呼吸作用が旺盛のため、エチレンの発生が多く、追熟効果が高まるためです。

(2) シルバーコーン
ハニーバンダムの白粒種で、乳白色の粒は小粒で、大変艶があります。
粒皮はごく柔らかく、甘みも強くて、美味しいので、サラダなどにはピツタシです。
勿論、茹でてそのまま食べても美味しいです。
従来の品種では、夏の室温条件下で美味しさの主成分であります糖分量が、一晩で半減してしまいました。
それが最近では、品種の改良が進み、呼吸による糖の消耗が抑えられ、変化が小さくなりました。

(3) ピーターコーン
バイカラー品種の代表で、今や人気スターです。
黄色の実の所々に白い実が混じっているのが特徴です。
その割合は3対1。ご存じでしたか。
粒皮が大変柔らかくて、カスが残らないため、スター品種になりました。
糖度は17〜18度もあります。
ちなみに、普通のものはせいぜい15〜16度です。
粒(実)が甘いだけでなく、茎の糖度も7〜10度もあります。
また、皮が柔らかく、歯にひっつきませんから、食べ易いのも特色です。

(4) ベビーコーン
別名、ヤングコーンとも言い、スイートコーンの幼い穂です。
水煮の缶詰としても売られ、手軽な加工食品として便利です。
丸ごと食べられるうえ、サラダやシチューのアクセントにもなります。


3.スイートコーンの生産と流通
1)デントコーンとスイートコーン
トウモロコシは米、小麦と共に世界三大穀物の一つで、1985年の世界総生産量は約4億9000万トンです。
近年、生産性の高い品種の開発によって、トウモロコシの生産量は過去50年間で約4倍に伸びました。
最大の生産国はアメリカで、全世界の収穫量の45%を占めています。

日本では、穀物としてのトウモロコシ生産は少なく、その作付面積は、昭和30年代末から減少の傾向が著しく、現在の年間生産量は約3,000トン程度にすぎません。
トウモロコシ自体は家畜の餌(配合飼料)の主原料として、畜産業に欠かすことができない作物ですが、1985年の自給率は僅か0.014%に過ぎません。
そのため、日本ではアメリカから大量のトウモロコシ(デントコーン)を輸入していますが、その大部分は飼料用として用いられ、一部はコーンスターチやアルコールの原料に利用されています。
ただし、野菜としての未成熟トウモロコシ(スイートコーン)の作付面積は僅かづつですが、年々増え続け、その収穫量は36万トンにも達しています。

スイートコーンは、子実が成熟し、デンプンが形成されても、胚乳部に糖が多く残り、甘みが強いのが特徴です。
成熟した子実は半透明で、乾燥すると粒面にしわが寄ります。
主に、未熟果を食用とし、冷凍や缶詰めにも加工されます。
また、茎や葉は家畜の餌として利用されます。

スイートコーンは戦前、軽井沢に住む外人のために、軽井沢周辺で栽培されていましたが、1965年以降スイートコーンのなかでもハニーバンダムと言う品種が人気を集め、作付面積が急増しました。
その後、育成されたバイカラー種はさらに甘みがあり、種皮がやわらかく、消費者の人気を集め、栽培が急激に拡大しました。

そのため、スイートコーンの産地は長野県下一円に広がり、さらに北海道のトウモロコシ生産も従来の飼料用トウモロコシ(デントコーン)から野菜用のスイートコーンが多くなってきました。

スイートコーンは、本来は晩夏から初秋にかけての野菜ですが、最近は、ビニールハウスやビニールトンネルを使った早出し栽培が増加し、小笠原諸島や沖縄ものを組み合わせると、ほぼ周年出荷されています。
出荷のピークは6月〜9月で、栽培面積は北海道が最も多く、次いで千葉、茨城、群馬、長野と続きます。

2)スイートコーンの育つまで
スイートコーンは、八方美人名作物で、比較的土地を選ばず、何処にでも育つタフなイネ科の野菜です。
但し、寒さには弱いので、気温が15℃以上にならないと、種は蒔けません。
府県では4月下旬〜5月上旬に種を蒔き、絹糸(ヒゲ)が茶色くなり出す6〜7月に収穫します。肥料をよく吸うので充分に与え、倒状を防ぐため株元に土寄せをします。

スイートコーンの種子は10℃以上で、90%ほど水を吸うと発芽します。3日後、種子根が地中にのび、子葉が地上に頭を出し始めます。
10日後、本葉はトウモロコシの葉らしくなり、下の節から養分を吸う冠根が出て来ます。この頃、種子の養分は使い切られ、萎びて腐ります。
約3カ月後、茎の先に雄花穂、中ほどに雌花穂が出ます。
雌花は雄花より2日ほど遅れて咲き、先に述べた様に、他の株の花粉で受精します。
雄花穂は、20本ほどに枝分かれし、その節々に雄花が2個ずつ付いています。
各雄花には3本の雄しべがあって、沢山の花粉を風で散らします。
雌花穂は太い軸に多数の子房が付、何枚もの苞が包んでいます。
絹毛は子房一つ一つから伸びており、受粉・受精すると粒(実)になります。
そして、4月下旬に種をまいたトウモロコシは、早くも6月下旬には青々とした茎に成長、しっかり実を付けます。

収穫適期の判定は、絹糸が出てからの日数を目安とします。例えば、関東地方では20日前後となります。この時期が食味・風味ともに最高となります。
また、トウモロコシは鮮度低下が激しい野菜で、時間と共に甘さが半減します。
鮮度を保つち、食味・風味を維持するためには、収穫時の品温や収穫後の温度管理が重要です。温度が高いと品質の低下が早くなります。
そのため、農家は味の良いスイートコーンを消費者に届けるため、品温の上がらない早朝、まだお日様の上がらない4時頃から収穫に入り、収穫後は出来るだけ早く、品温を下げる様に心がけています。

さらに、集荷場に集められたトウモロコシは、5℃の予冷庫に5時間おき、品温を下げます。
実は、スイートコーンは収穫後も生きていますので、呼吸をしています。
そのため、ダンボールの中に熱が篭って、熱くなり、鮮度が落ち、食味・風味が低下します。それを防ぎ、鮮度を保つために冷やすのです。


4.スイートコーンの旬と選ぶポイント
1)夏場のスイートコーンが本物
    毛(絹糸)が黒くなったら食べ頃
どんな食べ物にも食べごろ、旬があります。
一年中と言っていいほど、スイートコーンは店頭に出回っていますが、7月末から9月初めにかけての一ヶ月チョツトの間が旬でしょう。
かつては極早生種のアーリーキングに始まり、早生種のゴールデン・ビューティー、そして中生種のハニーバンダム、ピリカスイート、北缶三号、クイーン・アン、最後が晩生種のゴールデン・クロス・バンダム、メローゴールドなど、各々の味が楽しめました。

スイートコーンの場合、大切なのは食味、特に、甘味と特有の香味がポイントになります。
昔から「スイートコーンは、お湯をかけてから採りに行け」という言い伝えがある様に、鮮度の低下が激しい作物です。
その変化は、苞皮の退色、子実色などの外観的なものと、糖分や水分の減少および澱粉の増加など直接食味に関係するものとに現れます。

しかし最近では、収穫後、数時間たっても甘味が減らないハニーバンダム種が増え、さらに、品質、特に糖度が安定なバイカラー品種が圧倒的人気を博し、市場を独占しつつあります。
この様に品種も大きく変わりました。しかし、旬は変わりません。
ハウス栽培の春ものより露地栽培のスイートコーンの方が、間違いなく、美味しいです。

選ぶポイントは、まず皮の色は緑が濃いものほど新鮮です。白っぽいものは、古くて味が落ちている恐れがあります。
実は先の方までギッシリと詰まったもの、指でなでてみてすき間のないもの。押して粒がへこむぐらいのものが若くて美味しいです。
毛が褐色、または黒褐色になっているのは完熟している証拠です。

ところで、スイートコーンは、収穫後の時間の経過による糖分の低下が激しく、気温10度では一日で17%程度低下し、気温30度では50%も低下します。気温の高い季節に収穫される野菜ですが、高温に弱いのです。
美味しく、栄養分を逃さないで食べるためには、とにかく早く食べることです。
すぐに食べない場合はなるべく早く茹でて、冷凍してしまう。

スイートコーンの主流となっているハニーバンダムやバイカラー種は、糖分含有量が多く、その減少割合も他品種に比べると小さいですが、それでも低温保存しても、3〜4日で風味が落ち、市場価値がなくなります。
そんな意味で、上手な保存法はと聞かれますと、「すぐに茹でて、胃袋にしまって置くこと」と答えることにしています。

しかたなく、保存する時は、皮付きのまま、立てて、野菜ボツクスに入れておきます。
一晩、横に寝かして置くか、立ててしまって置くかで、美味しさの主成分・糖分が30%以上も差がつきます。
圃場で茎から天に向かって飛び出す様に付いているコーンは、茎の一部です。
コーンは風邪に吹かれて倒れても、自分で立ち上がります。これを走光性(背地性とも言う)と呼んでいます。
私達・男もそうである様に、立たせるためには、エネルギーが必要です。そのエネルギーが糖であり、アミノ酸なのです。そのため、寝かして置くと、立とうとして、糖を使い、美味しく無くなるのです。男を立たせる様に、スイートコーンも立たせて下さい。立つ間が男なんですから・・・

2)北海道産のスイートコーンが日本一美味しい理由
北海道の夏は日照時間が長く、胚乳に糖分をタップリ蓄えることができるうえ、気温の日較差が大きく、昼は高温で太陽の光を十分に受け、光合成が大いに促進され、糖分が蓄えられます。
その上、夜の気温が低いため、呼吸による糖分消費が抑えられ、昼に蓄えた甘み(糖分)が失われることが少ないのです。
このため北海道のトウモロコシは日本一甘くて美味しいのです。
これはジャガイモやカボチャ、メロンやスイカもみな同じで、日本中に誇れる北海道産の味の秘密です。

私はこれを、府県のコーンは、昼間セツセと稼いだご亭主が、夏の熱帯夜に寝つかれず、ビヤガーデンで昼間の稼ぎを使ってしまうのに対して、北海道のスイートコーンは、夜の温度が急激に低下するため、亭主がビールどころでなく、家に帰って寝てしまうため、昼間の稼ぎがそのまま蓄えられる状態、と説明しています。

だから、九州よりは信越、信越よりは東北といった具合に、北に上るほど食べて美味しいトウモロコシができるのです。
それから適期収穫も重要。
毛が出てから早生種で22日、晩生種で25・6日くらいが収穫適期です。
遅れると、デンプン質が増え、極端に味が落ちます。食べて歯にねばりつくのは収穫期が遅れたものです。


5.とうもろこしの栄養価と機能性
スイートコーンも栄養的に見ますと、野菜て言っても穀物的性格をも持ち、デンプン質・糖質が主で、高カロリーな食べ物です。また、タンパク質や脂肪も豊富です。
ただ、このタンパク質には必須アミノ酸でありますリジン、トリプトフアンが含まれていません。その点が泣き所です。
トリプトファンが欠乏すると、胃腸障害や皮膚炎を起こすペラグラて言う病気になりくす。

一方、胚芽の部分には、ビタミンB1、B2、Eが多く含まれています。
ビタミンEは若返りのビタミンとも呼ばれ、動脈硬化、老化防止に効果を示します。また、不妊、貧血、脳軟化症等の予防にも役立ちます。
ビタミンB2は,体の生長と細胞の再生を助けます。欠乏しますと粘膜や皮膚の炎症を引き起こします。
さらに、スイートコーンには、セルロースを含め食物繊維が100g中2gも含まれていて、美容の大敵・便秘を改善してくれます。その効果たるや、スイートコーンは即効性の便秘薬と言えるでしょう。
ところで、食物繊維は肥満防止、高脂血症の予防に役立つます。

こうして見ますと、スイートコーンは肥満を防ぎ、美肌を維持し、若返りに貢献し、子宝を授けるなんて、女性に必須の野菜と思いませんか。

コーンの受粉前の雌しべの長い花柱(絹糸:いわゆる毛)は、利尿作用があります。
そのため南ヨーロッパでは、これを陰干しして膀胱結石の治療に用います。
中国では腎臓病や浮腫に、ソ連では胆嚢炎、胆石などの治療に用います。
日本ではこれを南蛮毛と称して、これを炒って、適度にこがします。
それを煎じると香ばしい玉茶ができあがります。
玉茶の玉は玉蜀黍の玉です。
これは昔から、腎臓病の薬として利用されていました。
また、根や葉にも利尿作用があり、膀胱結石の治療などに用いられます。

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001