あんな話 こんな話  131
 
白澤卓二著  PHP新書
『ボケたくなければ、これを食べなさい』
より その7
 
 
第5章 健康長寿食を生かす
「食べ方のルール」
 
 
● 健康長寿食」を生かすも台無しにするのも食べ方次第
 
「何を食べるか」と同様「どう食べるか」も非常に大切ことは序章に触れたとおりです。
 
よってこの章では、食べ方、食べる量、食べる順番、食べる所要時間、食べる時間帯など「どう食べれば健康長寿に結びつくか」について、前章までの内容と一部重なる部分もあるかもしれませんが、改めて解説していきたいと思います。
 
まず健康長寿のためには「3食きちんと摂る」ことが大前提です。
その中で朝食、昼食、夕食をどういった位置づけで考えればいいのでしょうか。
 
朝食は食事の中で最も重要重要です。
それは、朝の起き抜けは1日に中でいちばん空腹になっている時間帯であり、体が早く栄養を欲しがっているからです。
午後8時ごろ夕食を食べたとしても、朝食までの睡眠を鋏んだ時間が、栄養摂取の空白として最も長い時間であり、さらに寝ている間も私たちの体は決して休んではいないのです。
 
これは基礎代謝で考えていただければ、簡単にお分かりいただけるでしょう。
基礎代謝とは、呼吸や体温調整など、人間が生きていくうえで欠かせない生命活動に費やされるエネルギーのことです。
もちろん私たちは、寝ている間も呼吸や体温調整をしているので、基礎代謝は起きているときと同様に休んではいないわけです。
つまり寝ている間というのは、エネルギーを消費しているのに、エネルギー摂取がまったくない時間帯であるわけです。
 
朝起きて頭がボーっとしているのは、こうした栄養不足が原因なのです。
栄養不足で脳がきちんと機能しない状態は、認知症のもとにもなります。
 
また、忙しいからといって朝食抜きで昼食を食べると、後で触れるように一気に血糖値が上がります。
つまり普通の食事をしたにもかかわらず、まるで甘いものを食べているような状態になるわけです。
 
これが習慣になれば当然、肥満を引き起こします。やせたいなら食事を抜けばいい、というのはまったくの間違いです。
食事を抜くことが、逆に肥満になる体質を招いているのです。
 
 
● 朝食抜きはメタボと老化の始まり
 
冒頭で述べたように、寝ている間に基礎代謝によって失われたエネルギーを補うのが朝食の役割です。
 
後で詳しく説明しますが、夕食の食べすぎは肥満のダイレクトな原因になります。
食事の量は朝、昼、夜と時間の経過ごとに少なくするのが、健康長寿のために役立つのです。
 
これに沿って考えると、やはり朝食はもっとも栄養が必要な食事です。
朝食を抜いて1日を始めてしまうと、体がいちばん栄養を欲しているときにエネルギーなしで動くわけですから、体に負担がかかり、前章で触れた老化のシンボルである活性酸素の発生を招いてしまいます。
 
 
● 朝食を抜いて昼食を食べると血糖値が急上昇する
 
朝食を抜いた状態でいきなり昼食を摂ると、体はいったいどんな反応をするのでしょうか。
先にも触れたように、これでは血糖値が一気に上がってしまいます。
 
睡眠を鋏んで栄養補給がまったくない状態が長く続いた後に突然、糖質が体の中に入ってくるわけですから、こうなるのは当然なのです。
 
これは朝食に限ったことではなく、長時間食事を抜くと、次の食事のときに血糖値が急上昇してしまいます。
血糖値が上がりやすい食品とそうでない食品は、第2章の「ネバネバヌルヌル食品」のGI値の説明ですでにいくつか紹介しましたが、朝食を抜くことによって、せっかく血糖値のあがりにくい食品を選んで食べても、まったく意味を成さなくなってしまうのです。
 
 
● 血糖値の急上昇、急降下でイライラした精神状態に
 
朝食抜きで昼食を食べたり、糖質を多く含んでいる食品を摂った後は、血糖値が急激に上がりますが、今度はインスリンが大量に分泌され、3時間程度で血糖値はいつも以上に急降下します。
 
血糖値が急に下がると空腹感を覚えますから無性に何か食べたくなります。
本当は3時のおやつに甘いものは要注意ですが、小腹が空いたところで甘いものを食べると、またまた血糖値が急上昇します。
 
この急上昇と急降下が繰り返されると、そのとき消費されなかった余分なブドウ糖が脂肪として蓄えられ、肥満の原因になるのは先述したとおりですが、こうした習慣がつくと血糖値が下がったときに、ブドウ糖を唯一のエネルギー源とする脳が「血液中の糖分を上げろ」とひんぱんに指示を出すようになります。
 
このやりとりが、アドレナリンなどの交感神経の働きを活発にするホルモンを余計に分泌することを招き、イライラしたり落ち着かない精神状態となり、これも老化を促進する活性酸素のもとになるわけです。
 
 
● パンよりご飯の朝食をおすすめする「2つの理由」
 
それでは朝食を摂るのは当然だとして、どんな食品から1日の始まりのエネルギーとなる糖質を摂ればいいのでしょうか。
これは、やはりパンよりご飯をお勧めします。理由は2つあります。
 
一つはご飯のほうが、おかずの種類が増やせるからです。
健康長寿はなるべく多くの種類の食品を食べることからはじまります。
 
もう1つはご飯のほうが、ネバネバヌルヌル食品といっしょに食べやすいからです。
これはすでに紹介したように、ネバネバヌルヌル成分のムチンが絡みついて糖質の分解を遅らせ、血液中に吸収されるまでの時間稼ぎをします。
 
つまり急激に血糖値が上がるのを阻止してくれますから、インスリンの分泌がゆっくりで、しかも少量で済むわけです。
これは肥満の予防や膵臓の負担軽減にも役立ちます。
 
 
● パンでもごはんでも、品目のバランスを取るのが重要
 
朝食はトースト1枚とコーヒーだけで済ますという人も見受けられますが、朝食に適した糖質には、果物に含まれる果糖もあります。
 
これはリンゴ、梨、ブドウなどに多く含まれており、パンやご飯、麺類など炭水化物の糖質よりも早く体内に吸収されます。
 
だからといって朝食から果物をたくさん取ればいいというわけでは、もちろんありません。
血糖値の急上昇を抑えるには、品目のバランスをとるのが大事なのです。
 
 
● 発芽玄米、味噌汁、納豆、焼きサケ・・・理想の朝の食事
 
100歳をすぎても現役だった三浦敬三さんが朝食に欠かさなかったのが、納豆などのネバネバした食べ物です。
ネバネバ成分のムチンが糖質をコーティングして、体内への吸収を遅らせ、インスリンの分泌を遅らせるという働きはすでに紹介したとおりです。
 
朝食には、脳の栄養となる糖質は欠かせませんが、同時にインスリンが大量に必要となるような状況は避けなければなりません。
 
三浦さんを参考に、理想の朝の食卓の例としては、発芽玄米、ワカメの味噌汁、納豆、キムチ、焼きサケ、皮つきリンゴ、野菜ジュースといったものがおすすめです。
 
朝は「パン党」という方は、全粒粉のパンにネバネバ成分を含んでいるハチミツを塗ってください。
にんじんやブロッコリーなど、多くの種類の野菜を使ったサラダも忘れずに並べたいものです。
 
 
● 一品料理の丼もの、コンビニ弁当
・・・昼食での外食はご用心
 
健康長寿に大切な栄養バランス、これは多種類の食品を摂ることで実現できます。
 
朝食と同じく仕事を抱えている人は昼食の時間も限られていますから、どうしてもカレーや丼もの、ざるそばなど一品料理を選びがちです。
最悪なのは、コンビニ食やファストフードでさっさと済ませるタイプです。
 
いくら時間がないからといって、あわてて胃の中にかき込んだり、こうしたメニューを毎日選んでいては、健康長寿は実現できません。
そこで外食の場合、なるべく多くの食材を食べられる小鉢などがついた定食を選ぶようにしましょう。
昼食は、品目の多さでメニューを決めることをおすすめします。
 
ところで、なぜコンビニ弁当やファストフードがいけないのでしょうか。
こうした商品は激戦を強いられているので、各社ともいかに一口でおいしいと感じてもらえるかに血道を上げています。
その結果、どうしても塩分や糖分が多くなり、化学調味料や添加物などもたっぷり使った、味つけの濃い食品が出来上がるわけです。
 
塩分の摂りすぎは、腎臓に負担をかけ血圧を上昇させますし、糖分は血糖値を上げてインスリンの大量分泌を引き起こしてしまいます。
糖分に関しては甘みを避ける、脂分では鶏肉の皮などを裂ける、といったことで十分ですが、問題は塩分です。
日本人は1日の塩分摂取量が11gとWHOの規定にある5gに比べるとだいぶ多い状況にあります。
 
味つけがしっかりしている、または濃いと感じられる料理は、総じて塩分が多いと考えていいでしょう。
塩分は高血圧を引き起こす点がよく問題にされますが、味が濃いことで食べる量も多くなり、結果的に肥満を招いてしまうのも同様です。
 
またコンビニのメニューに多い揚げものや動物性脂肪の食材は、脂質やカロリーが高いので同じく肥満の原因になります。
さらに食品添加物は、老化を加速させる活性酸素の発生を招きます。
 
特に、コンビに弁当で大量に加えられている防腐剤は有害な物質ですから、体内に入ると人体がストレスを感じて、活性酸素を大量に発生させてしまうわけです。
そして、細胞を傷つける状態になってしまい、あらゆる体の不調や老化を引き起こしてしまうのです。
 
ただでさえ昼間は忙しくて、精神的にも落ち着いた状態にないことが多いですから、もともと活性酸素が発生しやすい状態になっています。
ですから健康を第一の考えるなら、仕事の段取りをきちんと組んで、昼食はゆっくりと時間を使い、心と体が休憩できるように取ることを心がけなければいけません。
 
 
● 昼食に多い『早食い』「ドカ食い」は肥満の原因
 
「ゆっくり昼食など食べている時間などない」という気持ちは分かりますが、これを長期的に考えてみると、猛スピードで昼食を摂る習慣が、健康に支障をきたす可能性は高いわけです。
 
自分の健康状態が保てなければ、体力・気力の衰えや通院などの必要が生じて当然、仕事にも大きな影響が出ます。
つまり仕事を理由に「時間がないから」と早食いを正当化している人は、本末転倒になってしまう危険性をはらんであるのです。
 
アメリカでは、肥満は仕事のできない人(自己管理のできない人)の特徴に挙げられています。
早食いは過食になりがちなど肥満の原因になりますので、あらゆる理由からもゆっくり食べるべきなのです。
 
もちろん、昼食においても大切なのは「腹8分目」ではなく「腹7部目」ですから、午後の時間帯にお腹が減ることもあるでしょう。
こういうときのために、第4章で紹介したアーモンドを鞄の中に入れておくのがおすすめです。
アーモンドはお腹も満たされて、老化防止にも効く一石二鳥の食材です。
 
 
● 夕食は少なめに・・・消化・吸収の時間は限られている
 
食事の量は、朝、昼、夜とだんだん少なくしていくことが重要です。
朝や昼は1日の活動のエネルギーが必要ですから、ある程度の量が必要になります。
 
ただ、夜は、消化・吸収の時間があまりないため、量を少なくしておいたほうが体への負担が減ります。
 
理想は、朝起きたときにお腹が空いているという状態です。
朝たっぷりと食べるためにも、夕食は少なめにする必要があります。
これは睡眠状態になると、消化・吸収能力が弱まるという理由もあるからです。
寝る前など夜遅くに食べると、消化・吸収の時間が足りず、朝まで胃腸に食べたものが残るような状態を招きます。
 
すると、朝食がしっかり食べられない、あるいは朝食を抜いてしまうという悪循環にはまってしまうので、これがますます肥満の原因になるわけです。
 
 
● 理想とは逆に、いちばん食べすぎの危険性が高い夕食
 
仕事が終わってほっとひと息。
朝、昼と忙しくしっかり食べられなかったから、帰ってからの夕食は「ストレス解消」とばかり好き勝手に食べている、そんな生活習慣の方も多いのではないでしょうか。
 
特に気になるのが、お酒を飲みながら、テレビを見ながら、本を読みながら、人と話をしながらの「ながら食い」です。
実はこの「ながら食い」は健康長寿の大敵で、食べていることに集中していないため、ついつい量を食べ過ぎてしまうのです。
 
たとえば、コンビニで夕食をつい買いすぎて「ちょっと量が多すぎたかな」と思いつつも、テレビでサッカーを見ているうちに結局、全部食べてしまったという感じです。
 
最悪なのが、居酒屋などで飲んだ後の「締めのラーメン」というパターンでしょう。
これこそ深夜の食べ過ぎの象徴で、もちろん肥満の大きな原因になります。
 
特に仕事を持った一人暮らしの方は、「朝食抜き」「昼は早くい」「夜に1日分まとめてドカ食い」の典型に陥りやすいのではないでしょうか。
 
健康長寿のためには、夕食の量はいちばん控えめにするのが理想的ですが、油断するともっとも食べ過ぎの危険性が高いのも夕食なのです。
 
 
● 夕食が深夜になりそうなら、早めに軽食を
 
いまや働く人の4割以上が女性です。
仕事が忙しくて夕食の時間がどうしても9時をすぎてしまう女性の方も多いでしょう。
 
そうした場合におすすめしたいのは、夕方に時間を見つけてサンドイッチなどの軽食を食べておき、あまり夜中にお腹が空かない状態をつくることです。
 
どうしても、1日の仕事を完全に終えてからリラックス(食事)したい、途中で軽食なんて食べていたら余計に変える時間が遅くなる、と思ってしまう気持ちも分かりますが、健康と美容のためと思ってぜひ心がけてみてください。
 
また、夕食は特に食べる順番を意識することが大切です。
詳しくは次項で触れますが、基本は野菜、肉や魚、ご飯といった順番です。
この順番を守ることが、血糖値の急上昇や急降下を防ぎ、ひいては精神の安定をもたらし、質のよい眠りを招きます。
 
いうまでもなく睡眠は免疫力を高めるなど、老化の防止に役立ちます。
しっかりとした睡眠をとるためにも、夕食は量と食べ方、そして時間帯にも気を遣うべきなのです、
 
 
● 野菜、肉、ご飯・・・・・・
食べる順番は『和食のコース料理』が理想的
 
「野菜」→「肉・魚」→「炭水化物」。
このように料理を食べる順番を意識したことはあるでしょうか。
お気づきの方もいると思いますが、これは和食のコース料理の基本的な順番でもあります。
 
体に良いものを食べるときは、その順番をきちんと整えることで、食材に含まれる効能を最大限に発揮させることが出来ます。
大切なのは、まず野菜から食べることです。
 
野菜の食物繊維は、肉などの動物性脂肪に吸着して体外に排出するのを助けてくれます。
だからはじめに野菜をとっておけば、先に食物繊維が脂肪を待ち構えることができるわけです。
 
そして野菜を食べた後は、いわゆるメイン料理の肉・魚といったたんぱく質や脂質を取り、最後がご飯やパンなどの糖質となります。
普段から、和食のコース料理のような順版で食べることを意識するのをおすすめします。
 
 
● 糖質はできるだけ体の中にゆっくり入れる
 
なぜ、ご飯やパンといった糖質を最後に食べると良いのでしょうか。
何度も強調しているように、血糖値の急上昇と急降下のくりかえしは、健康長寿の大敵である肥満の大きな原因になります。
 
ですから、食事の最初に血糖値を急上昇させないためにも、等質は体の中にできるだけゆっくり入れることが重要なのです。
つまり食事のはじめにご飯や麺類を胃の中に入れると、血糖値が急激に上がって大量のインスリンが必要になります。
 
続いて、大量のインスリンによって血糖値が急降下して空腹感を感じますから、またイライラして何かを食べて血糖値が急上昇して・・・・・・といったことが繰り返されると、インスリンを分泌する膵臓が疲弊し、だんだん血糖値の上昇を抑え切れなくなります。
 
その結果、糖質が体の中に残ってしまうようになり、肥満や糖尿病の原因にもなるのです。
こうした健康長寿のセオリーを台無しにしてしまう、丼ものを猛スピードでかきこむような食べ方はやめましょう。
 
 
● 満腹中枢・・・なぜ『早食い』の人は「過食」になりやすいか?
 
いくら食べ物が良くて、食べる順番を整えても、それらを猛スピードで食べてしまっては台無しです。
健康長寿を実現するには、ゆっくりと時間をかけて食べることが重要です。
 
目安はよくかんで、途中で休んで、じっくり味わって30分です。
早食いは肥満のもとと何度も述べましたが、満腹中枢にお腹がいっぱいだという信号が届くまでには、食べてから20分ぐらいかかるという明確な理由もあります。
 
つまり食事を10分やそこらで済ませてしまう人は、実際は満腹になっている量であるにもかかわらず、満腹中枢にまだ信号が届かないため「もっと食べられる」と勘違いし、つい食べ過ぎてしまっている可能性が高いのです。
 
血糖値の上昇をできるだけ緩やかにし、その結果インスリンの分泌を少量にとどめるという意味でも、食事はゆっくり時間をかける必要があります。
 
 
● 『お腹いっぱい』まで食べる習慣が老化を促進している
 
肥満を防ぐことは、むやみやたらにやせるダイエットを目指すことではありません。「やせる」ではなく「太らない」ことが、健康長寿にとっては重要なのです。
 
肥満を防ぐ手立てとしては「満腹ななるまで食べない」ということが何よりですが、これを実証するデータがあります。
 
これは人に近いアカゲザルを、20年にわたって観察し続けた実験です。
まず、無作為に選んだアカゲザルを2つのグループに分け、1つのグループには満腹ななる豊富な量のエサを、もう1つのグループにはその70%のエサを与えました。
要するに「腹8分目」ではなく「腹7分目」の量のエサです。
頭数は途中で追加がありましたが、実験は38匹×2の合計76匹で行われました。
 
20年にわたる調査の結果、生存率で見ると腹7分目のグループは38匹中5匹が死んだのに対して、満腹食のグループは38匹中14匹が死んでしまいました。
病気で見ると、腹7分目のグループには糖尿病にかかったアカゲザルは1匹もいませんでしたが、満腹食のグループでは5匹が糖尿病にかかりました。
 
他の病気の発症例で見ると、ガンは腹7分目のグループで4匹、満腹食のグループでは倍の8匹、心臓病では腹7分目のグループで2匹、こちらも満腹食のグループでは倍の4匹。
脳の萎縮に関しても、腹7分目のグループのほうが少ないことがわかりました。
 
つまりお腹いっぱいまで食べないほうが、病気の罹患率や死亡率を下げるという結果を、この実験は示しているわけです。
ですから私たちも満腹よりも腹8分目、腹8分目よりも腹7分目を心がけましょう。
「お腹が膨れてもう食べられない」と言う状態は、明らかにカロリー摂取の過多であり高血糖を引き起こします。
 
つまりお腹いっぱい食べる習慣が、老化を加速させているわけです。
 
 
● 食事量を制限したほうが、健康長寿を実現できる?
 
食事制限をする同様の動物実験はアカゲザルだけでなく、ラット、グッピー、サラグモ、ミジンコでも行われており、いずれも寿命を延ばすことに成功しています。
その割合は「満腹食グループ」に比べて、ラットで1.4倍、グッピーで1.4倍、サラグモで1.8倍、ミジンコで1.7倍という結果が出ています。
 
ヒトでも興味深いデータがあります。
多くの国で食料が配給制にされた、第2次世界大戦下のことです。
イギリスのロンドンでは戦争というストレス、さらに食糧事情の悪化から、一般の国民の死亡率が高まると予想されたのですが、戦地以外では亡くなる人が予想よりも少なかったということです。
 
なぜ、このような厳しい状況下で死亡率が下がったのでしょうか。
それは満腹になれない食糧事情が逆に肥満を防ぎ、平時のときより体への負担を減らす側面があったものと考えて間違いないでしょう。
 
 
● 肥満を防ぐには
『食べた分だけ消費する』という考え方では甘い
 
そもそもカロリーとは熱量の単位で、体を動かしたり、脳を働かせたりするためのエネルギーの量です。
 
食物から摂取したカロリーが、心臓の鼓動や体温調整といった基礎代謝、日常の活動やスポーツなどの消費カロリーを上回っていると、余ったカロリーが脂肪細胞に蓄積されて肥満を引き起こします。
 
つまり私たちは脳や体を動かすために、エネルギーを摂取しているわけですから、摂った分だけ考えたり動いたりしなければならない、という意識を持つべきなのです。
しかし肥満を防ぐ手立てとしては、「食べた分だけ消費する」という消極的な考え方よりも、「消費する分を見越して、余らないように少なめに食べる」という一歩進んだ意識が重要になります。
 
 
● 健康長寿には「腹七分目」の食事が理想的
 
最初から食べる量をセーブしてカロリー制限することで、肥満を防ぎ、消化器系にも負担をかけずに済みます。
「腹8分目に医者炒らず」という格言がありますが、先ほどのアカゲザルの実験からも明らかなように、「腹7分目」が最新の健康長寿の実践法として効果大なのです。
 
ここで100歳の現役医師である日野原重明さんの、カロリー制限の実践法を見てみましょう。
日野原さんは、自分の基礎代謝量にその日の活動状況を加えて、1日のカロリー摂取量を決めています。
たとえば、医師としての通常業務、講演、執筆という1日の予定があった場合には、1300キロカロリーぐらいに設定しているそうです。
 
70歳以上の普通の男性では、1日の摂取量の目安が1850キロカロリーですから、日野原さんの摂取量はその7割程度で、まさに腹7分目なのです。
 
 
● 自分の代謝能力を把握してバランスの取れたカロリーを
 
日野原さんのように健康長寿を実現されている人は、自分の代謝能力に合わせて毎日摂取する食べ物の、カロリーをコントロールしている場合が多いのです。
 
20代のころに比べて10キロ以上体重が増えている人は、肥満の状態といっていいでしょう。
こうした人には、やはりカロリー制限が必要です。
その目標は、体重の5%減です。
 
また、逆の状態にも注意しましょう。
1日のカロリー摂取量が、消費量を大きく下回ってしまうようなケースです。
1日中移動しなければならないなど、たくさんカロリーを消費することが見越せる日は、それなりに食べなければ体に負担をかけます。
「ちょうどいいダイエット」といって無理をすると、エネルギー不足は空腹のストレスとなり活性酸素が発生して、かえって老化を早める原因にもなります。
 
ですから体重計に毎日乗り、自分の体重の推移を見ながら、食事の量をこまめにコントロールすることをおすすめしたいと思います。
 
 
● 『ノンカロリー食品』の添加物、食べすぎにご用心
 
食品売り場を見ると、「ノンカロリー」「ゼロカロリー」を冠した商品がたくさん並んでいます。ただ、これもサプリメント同様注意が必要です。
 
こうした食品の多くは、カロリーを抑えるために余計な添加物が使われていることが多いのです。
つまり摂取するカロリー自体は抑えられても、添加物の負荷により体内で活性酸素が発生して代謝が落ち、その結果として肥満になりやすい状況が生まれるのです。
 
またサプリメント同様、カロリーが抑えてあるという安心感で、かえって量を多くとってしまう懸念もあります。
 
要するに「ノンカロリー」「ゼロカロリー」を謳っているような食品は、逆に肥満を促進させてしまう可能性があると認識しておきましょう。
 
 
● 満腹信号を送り、食欲コントロールするホルモン
 
先ほど説明した満腹中枢は、胃が拡張して血糖値が上がると「お腹がいっぱいでもう食べられない」という信号を脳に発する役割を果たしていますが、この信号を送るホルモンがレプチンとインスリンと呼ばれるものです。
 
ところがレプチンの分泌が変異している人は、いくら食べても満腹感が得られず、常に食べ続けて肥満になってしまいます。
 
一時、レプチンは脂肪細胞にあるので、太っている人はたくさんレプチンが分泌されているのではないかとともいわれていましたが、肥満になっている人はレプチンを受け取るシステムに異常があることがわかっています。
 
またインスリンも、血糖値が上昇してくると分泌量が増えますが、この過程で満腹中枢が刺激されます。
つまり、インスリンの分泌が多くなると「食べ過ぎ注意」という信号が送られるわけです。
 
「食った、食った」と思わず口に出ることがありますが、これはレプチンとインスリンが脳に満腹信号を送ってくれている証拠です。
 
体の声に耳を傾けて、ホルモンの信号を無視しないようにしましょう。
最後に繰り返しますが、やはり満腹になるまで食べないことが、健康長寿を実現する近道になるのです。
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001