あんな話 こんな話  132
 
白澤卓二著  PHP新書
『ボケたくなければ、これを食べなさい』
より その8
 
 
第6章 健康長寿は
「食と運動」がセットである
 
 
● 『一口30回』かめば、早食いや過食も予防できる
 
本書の最後に「食べる」という動作の重要性から、健康長寿に効く「運動」について考えてみたいと思います。
体によい「食べ物」「食べ方」「生活習慣」、この後に「運動」がプラスされて初めて、健康長寿は達成されるのです。
 
食べるという動作自体が、健康長寿に効くことは序章で少し触れたとおりです。
食べるという動作とは、噛んだり飲み込んだりする運動と考えましょう。
噛むことの重要性はいうまでもないですが、きちんと噛むには、左右のあごの筋肉を伸ばしたり縮めたりしなければなりません。
 
100歳を越えても健康だった三浦敬三さんは、一口あたり60回かむことを習慣にしていました。
現実的に考えて、私たちがいきなりそれを真似するのはハードルが高いので、まずは30回を目安にしましょう。
30回も噛めば、固い食品でも楽に消化できます。
また、たくさん噛むことを習慣づけることで、前章で述べたような早食いが防止され、満腹中枢も刺激し、健康長寿に効くゆっくりな「腹7分目」の食事が実現できます。
 
一口30回噛めば、1回の食事に30分はかかるはずです。
これは「30分の運動」をしていると考えてもいいわけです。
 
 
● 自前の歯が少ない人ほど、ボケやすい?
 
この噛むことに関連して、自前の歯の本数とアルツハイマー病の関係が明らかになってきました。
ある医療機関が、70歳以上の高齢者を対象に行った調査があります。
この調査では、自前の歯の本数が少ない人ほどアルツハイマー病の疑いが濃く、記憶をつかさどる脳の海馬付近、また意思や志向の機能を担う前頭葉の容積が減っていたという結果が出ています。
つまり自前の葉が少ない人ほど、ぼけやすいという事実が判明したのです。
 
もし虫歯や歯周病などの病気で歯を失っても、入れ歯にすればいいと思っている方は少ないかもしれませんが、この調査を見れば明らかなように、自前の歯があってこそ健康長寿が実現できるのです。
自分の歯を大切にすることも、健康長寿の実践法として欠かせない要素だといえるでしょう。
 
また噛む動作の効能は、自前の歯で噛むことによってもたらされることも重要です。
自分の歯で食べ物を砕き、唾液と混ぜ合わせて消化管に送り込む。
この一連の動きが歯茎に刺激を与えて脳を活性化させます。
要するに、歯と脳の間には強力な神経のネットワークがあり、自前の歯で噛むことで脳の血流が良くなり、脳の代謝も活発になるのです。
 
虫歯がひどくなると神経を抜く措置がとられますが、これはそうした脳の活性化に反する行為です。
つまり神経のネットワークが寸断されてしまうので、脳の活性化が促されず、アルツハイマー病にかかる懸念が高まってしまうのです。
 
ちなみに、脳梗塞を起こして喋ることが覚束なくなってしまった方が、食べるときだけでなく日常的に歯を噛み合わせていたところ、麻痺していた部分の症状が緩和され、話せるようになったという例もあります。
 
このように噛むという行為は、リハビリになるほど脳や体を活性化させるのです。
 
 
● 健康長寿に不可欠な「唾液の量」を増やすには?
 
私たちは物を食べる際にツバ、つまり唾液が出なければ体内に食物を取り込むことができません。
この働きを細かく見ると、唾液はさまざまな作用を果たしていることがわかります。
唾液は消化を助ける消化液であり、歯の表面を掃除し虫歯から歯を守っています。
 
怪我をしたら「ツバでもつけておけ」といわれた経験がある人は多いのではないでしょうか。
これはあながち迷信ではなく、唾液には抗菌作用があるのです。
成人が1日に出す唾液の量は、0.5〜1.5リットルとかなりの量ですが、これは私たちが健康に過ごすために必要な量であります。
私たちはこの唾液の量を保つように意識しなければなりません。
 
実は、唾液の減少は老化とイコールの関係にあるのです。
「緊張して口の中がカラカラになった」という経験をお持ちの方も多いでしょう。
これが、唾液が出なくなっている「ドライマウス」と呼ばれる状態です。
緊張だけでなく、イライラしたり、ハラハラしても唾液の分泌量は減ります。
 
また人間は年をとると、だんだん唾液の分泌量が減っていきます。
薬を飲んだ場合も副作用として、唾液の量が減ることがあります。
こうした状態は、体内に活性酸素が発生している状態でもあり、老化を早めます。
要するに、唾液の分泌を維持することが、健康長寿にとっても重要ということです。
唾液には、老化防止に役立つ「成長ホルモン」も含まれています。
 
では、健康長寿に必要な唾液の分泌量は、どうやって増やせばいいのでしょうか。
これは単純に、普段からなるべく多く噛むことでもたらされます。
噛めば噛むほど体内での消化を助け、脳が活性化して唾液が増える――。
ここでもかむという行為の重要さを理解していただけるでしょう。
 
 
● 成長ホルモンの分泌は老化防止につながる
 
さらに、老化を防止する成長ホルモンについても解説しておきましょう。
人間の骨や筋肉を成長させる成長ホルモンは、おもに睡眠中に分泌されます。
この成長ホルモンには、食物の栄養を体の組織に変えたり、代謝を促進したり、血糖値をコントロールしたり、成長以外に関するさまざまな働きもあります。
それらの働きは老化防止にもつながるので、成長ホルモンは健康長寿に関係しているといえるのです。
 
では、どのように睡眠をとれば、成長ホルモンの分泌を活発にできるのでしょうか。
睡眠時間の長短と、健康長寿の関係はまだ研究段階ですが、成長ホルモンの分泌は午前2時から4時までがピークとされています。
ですから、この時間帯には、グッスリ眠っている状態になるように、日ごろから心がけましょう。
 
 
● 食事、栄養、病気・・・舌は大切な健康のバロメーター
 
しっかりと食物を噛んで飲み込む。
この動きを維持するには、どうすればいいのでしょうか。
実はこの一連の動作では、舌が重要な役割を果たしています。
食物を唾液と混ぜ合わせるとき、細かく見ると舌はとても複雑な動きをしています。
舌が「食べる」と言う行為を、うまくサポートしていることは間違いありません。
 
また次項で紹介する「舌出し体操」は、食べる力を養うだけでなく顔の筋肉も動かしますから、顔のシワやたるもを防ぐ美容効果も期待できるでしょう。
とどのつまり、食べる力を維持するには舌の健康にも気を使うことが重要です。
 
普段の生活では気にすること少ない舌ですが、舌は健康のバロメーターといわれるとおり、体の健康状態は舌を見ればわかります。
例えが病気でお医者さんにかかったとき、「舌を見せて」といわれた経験がある人は多いでしょう。
栄養が不足すると、発疹やしびれなどの影響は舌に如実に現れます。
舌が出している危険信号は、病気や老化が進むサインだという意識を持ちましょう。
 
舌の健康を維持するためにはやはり、いままで紹介してきたような日々の食事など健康長寿の実践法を心がけることが必要です。
栄養のある食物を規則性をもってゆっくり食べることが舌の健康にもつながります。
また舌の健康のために避けるべきは、マウスウォッシュや口内スプレーなどです。
これらの行為は口に中の最近バランスを壊し、口の中の乾燥、のどの渇き、味覚障害などを引き起こす口腔熱感症候群の原因にもなります。
 
 
● 食べ物を飲み込む「嚥下力」を鍛える舌出し体操
 
序章で成田きんさんの言葉の「歩く」の部分を言い換えて「食べられんようになったら、人間おしまいだ」と述べたように、健康長寿とは自分で歩くことができ、自分で食べることができて初めて実現できるものなのです。
ですから本章の冒頭から説明しているとおり、私たちは「食べる力」を日常から鍛えておかなくてはなりません。
 
その1つである食物を飲み込む「嚥下力」ですが、こちらも年齢とともに衰えていきます。
人間は年を取ると、自由にものが食べられなくなりますが、この栄養分をきちんと摂れない状態が老化をますます加速させていくのです。
だから嚥下力は日常から鍛えておく必要がありますが、これには三浦敬三さんが行っていた、舌を思い切りだして左右に動かすという「舌出し体操」が有効です。
 
私たちが長く生きていくための基本となる力、それは食べる力であり、ひいては飲み込む力なのです。
 
 
● 健康長寿は「食と運動」がセット・・・脂肪細胞を太らせない
 
健康長寿は、食事に気を使っているだけではもちろん実現できません。
健康長寿は「食と運動」が対になって初めて体をなします。
ただ運動といっても、後述のように別に激しいトレーニングは必要ありません。
坂を上る、起きたら首の体操をする、背筋を張って良い姿勢を心がける、といったことも立派な運動になるのです。
 
運動は、健康長寿に大きな効果を発揮します。
いちばん象徴的なのが、脂肪細胞を太らせないことです。
運動不足は肥満の元であり、同時に老化を促進するもとなのです。
 
たとえば、傷ついた血管を修復したり、肝臓や筋肉に脂肪を燃やすように指示をするホルモンのアディポネクチンは脂肪細胞が分泌するのですが、死亡細胞が運動不足で太ってくると分泌しなくなってしまいます。
こうした事態が、心筋梗塞や脳卒中の原因となり、老化を促進させるのです。
だから私たちは、あらゆる手立てをもって、脂肪細胞を太らせないように意識しなくてはなりません。
とどのつまり、適切な食事も運動もこのためのツールといえます。
 
また運動は筋肉を作ります。
年をとってからの筋肉の衰えは大力・気力を弱め、行動範囲も狭まり、急激な老化を招いてしまいます。
ただ筋肉は何歳になっても鍛えることができます。
しかも次項で述べるように、厳しい筋トレなどまったく必要ないのです。
 
 
● 激しい運動は活性酸素を発生させ、老化予防に逆効果
 
運動が必要というと、スポーツ選手のような厳しいトレーニングを想像するかもしれません。
しかし健康長寿に関しては、激しい運動は活性酸素を発生させるので、むしろ逆効果になります。
よくスポーツ選手が「アドレナリンが出て体が動いた」などとコメントしていますが、実はアドレナリンというホルモンは健康長寿にはよくありません。
 
体を過度に動かしたり、興奮したりすると分泌されるアドレナリンは血圧や血糖値を上げ、心臓に負担をかけてしまうホルモンなのです。
スポーツの中でも運動量が多いとされるサッカー選手が、競技中に亡くなったりする原因の1つとして、アドレナリンが多量に分泌され、心臓などからだが悲鳴を上げるような状態が上げられます。
 
スポーツ選手でない私たちでも、急に走ったりすると「ハアハア、ゼイゼイ」と息が上がったり、心臓の鼓動が急に早くなったりします。
これもアドレナリンが「もっと頑張れ」と脳に命令を出し、いつもより余計に心臓を働かせ、体に負荷がかかっている状態なのです。
つまり体に良くありません。
 
老化予防や健康長寿に効く運動とは、こうした息が上がってしまうような激しい運動では決してないのです。
 
 
● 「ゆっくり」と「速く」を交互に行うインターバル速歩
 
ではどのような運動が健康長寿に効くのでしょうか。
それは、まず歩くことが何よりですが、「ただ歩く」ことに少しルールを加えて実践すると、効果倍増になります。
 
よくいわれるのが「1日1万歩」です。
これは歩幅で差が出ますが、1時間半はかかってしまいます。
これを日常的に行うのは難しいですから、目安としてはまずは、毎日500歩を設定してみてください。これは距離にして350メートル程度で、時間にして5分くらいで済むでしょう。
 
いちばん大切なのは、最低でもこの程度は毎日歩き続けることです。
最寄の駅までは歩く、時間があれば遠回りして目的地に行くなど、歩く工夫は簡単にできるはずです。
習慣として歩くことが身についたら、徐々に歩く行為のパフォーマンスを上げていきましょう。
5分の次は20分を目安にしてください。
 
これくらいの時間を歩いて、やっと基礎代謝が向上し、脂肪細胞の肥大を防ぐ効果だ出てきます。
いくら歩いても歩きすぎにはならないので、自分の体力と相談しながら、少しずつでも距離を伸ばしていく努力を続けるのが大事です。
 
また歩き方でおすすめしたいのが、「ゆっくり」と「早く」を交互に行うインターバル速歩です。
はじめの3分間はゆっくり歩きます、そして次の3分間は早歩きです。
これを繰り返せばいいのですが、限度は30分間にしておきましょう。
繰り返しになりますが「体がキツイ」と思わない程度を意識することが大事です。
 
このように歩く速度を変えて心拍数を上げ下げすると、心肺機能が高まり、有酸素運動の効果も高まります。
 
 
● 坂道を歩くときは「登り、下り」両方を入れる
 
効果的な歩き方の次のステップが「スローピング」――つまり坂道を歩くことです。
たとえ緩やかでも坂道を登ると、運動量は平地の倍に相当します。
ですからスローピングは、速度を意識する必要はありません。
ゆっくり歩いても十分に効果はあります。
なぜなら、登るときと下るときでは使う筋肉が違うからです。
 
長生きを実現するには、普段からできるだけ多くの部分の筋肉を使っておくことが重要です。
ウォーキングのコースには、10分程度でも毎日のメニューにスローピングの箇所を入れることをおすすめします。
転倒やケガに注意が必要ですが、スローピングは後ろ向きで行うと、さらに別の筋肉を使うことができます。
これも上り下りを含みます。
 
人間は普段、後ろ向きでは歩きませんから、今まで使ったことにない筋肉を使うことで脳の活性化も促進します。
またウォーキングは、アルツハイマー病を予防するという研究結果も数多く出されています。
ウォーキングは単に運動の効果だけでなく、外の空気に触れる刺激もあり、これも脳の活性化につながっているのです。
 
人間は歩くと、β‐エンドルフィンというホルモンが分泌されます。
このβ‐エンドルフィンは、美しい風景を見たり、気持ちが落ち着いたりすると分泌されるホルモンで、アドレナリンとは逆の働きを持っています。
β‐エンドルフィンは、ストレス解消や疲労回復、不眠の解消をもたらすだけでなく、活性酸素を除去する効果も持っており、健康長寿には欠かせないホルモンということができるでしょう。
 
 
● 体を支える下半身と、インナーマッスルを意識して鍛える
 
老化防止に効く、もっと手軽な運動は沢山あります。
掃除をする、荷物の上げ下ろしをする、といった家事も立派な運動です。
また階段も坂道ですから、坂道がなければ建物の中でもスローピングはできるのです。
 
意識的に、鍛えるポイントを足腰に置くことも重要です。
100歳を超えても元気な人達のスポーツを見ると、フェンシング、日本舞踊、スキーといった運動が思い浮かびますが、これらの共通点はぐっと腰を落として、足をよく使っていることです。
このように、健康長寿運動の基本は、まず体を支える下半身を鍛えること。
特に、ふくらはぎを鍛えると足の筋肉増強だけでなく、下降する血液を押し上げ、体全体の血流をつかさどる働きを活性化することができます。
 
加えて大事なポイントは、「インナーマッスル」を鍛えることです。
インナーマッスルとは、外見からは見えにくい関節などについている筋肉で、いわゆる筋トレといわれる運動ではなかなか鍛えにくい箇所です。
私たちが普段、筋肉と呼んでいるのは、見た目で確認できる「アフターマッスル」の場合が多いでしょう。
 
その中でもおすすめしたい「お尻運動」は、骨盤の内側を鍛えるトレーニングです。
まず仰向けに寝て両ヒザを立て、肛門をギュッと締めて5秒間そのままにし、力を抜いて10秒間休む。
これを3回繰り返すのですが、大事なポイントは呼吸をとめず、お腹の力は入れないことです。
 
また、寝た状態で首を上げたり下ろしたり、左右に曲げたりする首の体操も、肩の筋肉をほぐし、首の関節が固まってしまうのを防ぐ効果があります。
最近、流行の「バランスボール」は、インナーマッスルを鍛えるための格好のアイテムですが、効果的に使う骨は背筋を伸ばし、また背筋を垂直に床へ突き刺すように座ることです。
バランスボールはきちんとした姿勢をとらないと、すぐにバランスが崩れてボールが転がってしまいますが、このきちんとした姿勢を保つ動作が、体の内側の筋肉を鍛えてくれるのです。
 
筋トレというと、すぐに腕立て伏せや腹筋などを思い浮かべるかもしれませんが、インナーマッスルを鍛えるのに強い力は必要ありません。
インナーマッスルを鍛えるには、このように「いつも体を引き締める」意識を持つことが大切なのです。
 
 
● 運動能力の衰えから老化が加速
・・・ロコモティブシンドロームに注意
 
年を取って体を動かす機能が衰えて、歩くのがおっくうに感じたり、実際に歩けなくなってしまうことを「ロコモティブシンドローム」と呼びます。
人間は「ヒザが痛い」「腰が辛い」という部分的な症状で、つい体を動かすこと自体を面倒くさく思ってしまいます。
これがロコモティブシンドロームの始まりですから、普段から体のさまざまな筋肉を鍛えておくことが重要なのです。
ロ子モティブシンドロームが進行すると、本当に動けなくなって介護が必要な状態に陥ってしまいます。
そうなると外部の刺激が受けられず、だんだん思考も衰えずアルツハイマー病を誘発するだけでなく、あらゆる老化が加速することになります。
 
このような事態を防ぐためにも、健康長寿の運動は重要なのですが、何も難しく考える必要はありません。
これまで紹介してきたように、お尻を引き締める、バランスボールに座る、こういったことで十分なのです。
ロコモティブシンドロームを回避するには、体を動かすための筋肉をつけることが何より重要ですが、先にも述べたように「筋肉は何歳になっても作ることができる」「無理のない運動でも筋肉は鍛えられる」ことを、ぜひ覚えておきましょう。
 
 
● 刺激の多い環境が、脳の神経細胞を生まれ変わらせる
 
ロコモティブシンドロームの問題は、身体的なことだけではなく、活動範囲が狭まることで脳への刺激が少なくなる点も上げられます。
脳を常に刺激し続けていれば老化は抑えられるという研究結果が、ネズミを使った実験で明らかになっています。
 
これは「刺激の多い環境」と「少ない環境」が、ネズミの脳にどのような違いをもたらすかについて調べた調査です。
刺激の多い環境には大きな飼育箱に複数のネズミを入れ、遊び道具も用意し、逆に刺激の少ない環境には、狭い飼育箱にネズミ1匹だけを入れ、食べて寝るだけという生活をさせました。
そして一定期間を置いて、記憶力テストを実施したところ、刺激の多い環境で育ったねずみの成績は、刺激の少ない環境のネズミよりも平均して20%上回ったという結果が出たのです。
 
かつて脳の神経細胞は、年齢とともに萎縮していく一方だと考えられていましたが、現在の研究では、神経細胞は新たに生まれ変わることが明らかになっています。
そして神経細胞を生まれ変わらせるためには、脳に刺激を与え続けることが大切なのです。
 
 
● 長生きの秘訣は、いつまでも好奇心を持つこと
 
それでは人間にとって「脳に刺激を与える環境」とは、どういったものでしょうか。
日々人と接する、活発に行動するのはいうまでもありませんが、家事をすることも脳に刺激を与えます。
その代表例は料理でしょう。
 
三浦敬三さんは100歳を超えても自炊をし、自活していました。
メニューを考えて買い物に出かけ、品物を吟味する。
手や体を動かし、皿に盛り付ける。
これは立派な脳と体のトレーニングになります。
 
さらに長生きの源泉は、常に新しいことに挑戦するチャレンジ精神です。
年を取ると何事にも腰が重くなりがちですが、これが老化の促進を招きます。
常に好奇心を持ち、実践してみるクセをつけましょう。
 
100歳を過ぎても世界一周旅行に出かけ、地元・福岡から「健康長寿マイスター」に任命されている昇地三郎さんの長生きの原動力は、まさに好奇心なのです。
 
 
● 常に「自分で考える」クセが脳の老化を防ぐ
 
刺激の多い生活のポイントは、常に「自分で考える」ということです。
「これは何なのか」「こうなるのはなぜなのか」「それではどうすればいいのか」と常に頭を使いましょう。
たとえ情報が新聞やテレビだけでも、日々更新されるニュースを読んだり見たりすれば、「なぜだろう」とすべからく思うはずです。
これは脳の活性化に非常に効きます。
 
作家の曽野綾子さんによれば、「考えることはお金のかからない道楽」だそうです。
曽野さんが足を骨折し、不自由した際には「あの高いところの物を取るには・・・・・」などと考えるのが楽しかったといいます。
 
年齢を重ねると、どうしても不自由なことが増えますが、これを前向きに捉えて真剣に頭を使うチャンスだと考えることもできるのです。
つまり老化がもたらすピンチは、絶好の「考える機会」にもなるのです。
 
 
● 健康長寿は、誰もが与えられている権利
 
これまで紹介した健康長寿の運動は、誰でも簡単に、ある程度は時と場所を気にせずにできるものばかりです。
大事なのは続けることなので、やはり簡単なものがいいでしょう。
 
外でやるほうが、刺激があってよいのですが、室内でも健康長寿に効く運動は十分にできます。
要するに、ちょっとした心がけ次第で健康長寿に役立つということです。
 
かつて成人病と呼ばれた生活習慣病は、体に悪い生活習慣が病気の原因になっているという考え方から名づけられました。
これを言い換えれば、体にに良い生活習慣を身につければ、病気も予防できるし、それを治すこともできるということです。
 
そして健康長寿は、誰もが与えられている権利なのです。
 
本書の「3つの食品」を基本とした食生活、生活習慣、そして運動――健康長寿の権利を行使するための工夫は、今まで述べてきたように、そんなに難しいものではありません。
せっかくの権利ですから、余すことなく思い切り使いたいものです。
 
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001