あんな話 こんな話  140
 
船瀬俊介著  徳間書店
「長生き」したければ、食べてはいけない!?
より その8
 
第7章 老化たんぱくと
長寿遺伝子のふしぎ
 
■ なぜ食べる量を減らすと、
長生きできるのだろう?
 
● 「子は少し飢えさせ、震えさせて育てよ」
 
「自由摂取動物に比べ、カロリー制限(30〜40%)動物の寿命が40〜50%延長し、ガンなどの加齢関連疾患の発症や生体機能の低下が遅くなることは半世紀以上も前から知られています」
 
これは後藤佐多良・東北大学名誉教授のネットコラム『健康長寿』の書き出し。
同教授によれば老化抑制研究として、食事制限の動物実験は「ほとんどの場合、離乳期あるいは若年期から生涯にわたって行われている」という。
つまり「幼い頃から食事制限したほうが、延命効果は高まる」と言うことであろう。
「中齢期以降の制限でも、寿命延長と功老化作用がある、という報告がある」という。
 
人間の場合なら、中高年期から「腹6分」などの食事制限をしても、長生き効果はある、ということだろう。
しかし、子供の頃から食事制限をしたほうが長生きするというなら、これまでの栄養学、医学常識とは180度逆の理論である。
 
フォイト栄養学を筆頭に、近代栄養学も医学も「栄養をたくさん摂ったほうが健康になる」という教えだった。
フォイトなどは「良い栄養は摂り過ぎるということはない」とまで断言していたのだから、今にして思えばメチャクチャな”理論”である。
よくもなあ、こんな暴論を100年以上も人類はツユも疑わずに信じてきたものだと、呆れ果てる。まさに、サル以下の知識である。
 
そういえば、江戸時代の学者、貝原益軒の有名な『養生訓』には「子供は少し飢えさせ、震えさせて育てよ」という一文がある。
つまり、少しの「ひもじい」思いと「寒い」思いをさせることが、強靭な身体と長寿の体質を培うのである。
今なら「幼児虐待」で訴えられかねない。
しかし、西洋医学より、この東洋医学のほうが、はるかに真理を唱えている。
「貧家に孝子出ず」という諺。まさにそのことかと、思い至る。
 
 
● 「大男、大女に長命なし」の教訓
 
そういえば「大男、大女に長命なし」とも言い伝えられいる。
若いころからの栄養過多は短命に終わる、という戒めだ。
100歳を超えるような長寿者は、みんな小柄だ。
 
逆に医者の世界では“石原裕次郎”症候群なる奇妙な「病名」がささやかれている。
それは幼年期から栄養豊富な美食三昧で体格ばかり大きくなり、成人後は病気の問屋となりはて早死にするタイプを指す。
女性の場合は”和田アキ子”症候群。
やはり、体格は大きいが病気の問屋であることに、変わりはない。
 
しかし、わたしが小学校の頃は、健康優良児を選抜する制度があった。
各学校から男女ひとりずつ健康優良児を選抜して町や郡の大会にのぞむ。
そこを勝ち抜くと県大会が待ち受ける。そこで優勝すると全国大会・・・・・・。
まるで甲子園球児と同じ。
 
各小学校で健康優良児に選ばれるのは、体格の一番大きな男児と女児であった。
何のことはない。早熟な生徒が、それだけで”健康”とみなされ選抜され町大会、郡大会へと出場させられるのだ。
今にして思えば、体格だでかけりゃ優良と判定したわけで、牛馬の品評会となんら変わりはない。
 
 
● 体位向上運動、赤ちゃんコンテストの愚
 
当時、体位向上運動が声高に叫ばれていた。
1センチでも身長を伸ばし、1キロでも体重を増やせ、という掛け声。
そこで、学校給食には脱脂粉乳が毎日出て、飲まされた。
 
そういえば、あの頃町内で赤ちゃんコンテストなる奇妙な催しが、当たり前のように行われていた。
優勝すると森永ドライミルク1人前!
何のことはない、乳幼児粉ミルクメーカー主催だった。
牛乳は今や「百害あって一利なし」の飲料であることは常識だ。
 
しかし、当時は「母乳は赤ちゃんの体に良くない」と仰天のウソで、粉ミルクを提供する医師がゴロゴロいた。
産婦人科には粉ミルクの見本が陳列されているのが、あたりまえだ。
今にすれば正気の沙汰とは思えぬ”商売”が横行していたのだ。
これら大衆の狂気を煽った源泉こそが、あのフォイトニセ栄養学なのである。
 
しかし、「食べるほど健康」「大きくなるほど健康」と言う「近代栄養学」の虚妄は、すでに崩壊している。
「食べるほど病気になり」「大きくなるほど不健康になる」。
それを数多くの科学的実験が続々と証明しているのだ。
そのメカニズムも解明されてきた。
 
 
 
■ 異常な”老化たんぱく“が加齢を加速する
● 年をとっても食事改善は効果あり
 
前述の後藤教授は、ラットなどを使った実験を繰り返している。
教授によれば「ラットなどは人の30倍の速さで老化する」という。
よって研究にはヒトの60歳から65歳くらいに相当すると考えられる24ヶ月齢から26ヶ月齢のラット(あるいはマウス)を用いている。
 
自由に食事を取らせたマウスと老齢期から食事制限したマウスの体重変化。
食事制限は23.5ヶ月から開始。
最初は自由摂食群のの80%(腹8分)、24ヶ月からは60%(腹6分)に制限した。
その結果、実験開始から約1ヵ月後には体重は約40%減少して、それから後はほぼ一定で横ばい状態になった。
つまり「少食ネズミはスリムで引き締まったからだ」になった。
 
さらに教授らは、加齢によって体内の起こっている「変化」に着目する。
それこそが、加齢という老化現象の「原因」か、あるいは「結果」とみなせるからです。
 
 
● 少食で老人斑(シミ)が3分の1に!
 
教授によれば「加齢によって体内に(異常な)”特殊たんぱく”が増加する」という。
そのたんぱく質は「熱安定性」や「分子活性」が低下した「酵素」の修飾を受けている、という。さらに「酸化」などの影響も受けている。
素人のはわかりにくい表現ですが、はやくいえば”変性”した異常たんぱく質
それが老化によって体内に増えていくと、教授は指摘する。
 
たとえば高齢者になると体表面に色素沈着が怒ります。
老人斑と呼ばれるシミです。
これも、異常たんぱく(老化たんぱく)が沈着したものでしょう。
 
ところがアルツハイマー型ネズミを使った面白い実験があります。
「カロリー制限」したネズミには老人版画3分の1に減少したのです。
明らかに「カロリー制限」が老化淡白を激減させ、若返らせたのです。
逆に高脂肪食を与えたねずみは老人斑が2倍に急増していました。
脂っこい食事は急激に老化を招くのです。
揚げ物やお肉大好きなあなたは、要注意です!
 
 
● 老化異常たんぱくを減らせるか?
 
「異常たんぱく質(老化たんぱく質)は、なぜ増えるのか?」教授は問い掛ける。
「異常たんぱく質は、そのたんぱく質の機能低下のためだけでなく、新たに獲得した有害機能のために老化を促進する可能性があります」(同教授)
 
現実に、体内には若い頃にはなかった異常たんぱく質が蓄積して、アルツハイマー病や白内障など、さまざまな病気を引き起こしている
文字通り、これらの老化たんぱく質は、老化をさらに促進するのです。
「わたしたちは、このような明確な病態以外にも加齢による生体機能の低下に異常たんぱく質が関わっていると考えています」(同教授)
 
つまり、体内に蓄積する異常たんぱく質が、さらに老化促進作用を発揮している。
それなら、加齢とともに体内に蓄積した異常たんぱく質(老化たんぱく質)を排除すれば、老化原因の一つを取り除くことができるはずです。
 
後藤教授らは「老齢マウスの組織内に『熱不安定酵素』が増える」ことを発見しています。
これも一種の異常たんぱく質(老化たんぱく質)。
老齢気の動物組織には、すでに構造が部分的に変性した酵素が存在します。
このたんぱく質は、少し加熱しただけで機能が壊れてしまう。
 
 
● 歳を若い頃の状態にリセットする
 
教授らは、この異常たんぱく質(老化たんぱく質)が、食餌制限によって、どのような影響を受けるかを実験しています。
 
その結果、脳組織、肝臓組織いずれでも、老齢化で増加した「熱不安定酵素」が、食餌制限により、若年レベルまで低下しています。
 
脳組織 での異常酵素は、食餌制限を開始して2ヵ月後には、ほぼ若齢マウスと同じレベルに減っている。
肝臓 での異常酵素の減少は、さらに顕著で、制限から1ヶ月で若齢レベルになっている。
「このことは、食餌制限によって、異常たんぱく質の分解・除去が亢進し、たんぱく質が若齢化し得ることを、しさしています」「つまり食餌制限は歳を若い頃の状態にリセットできる可能性があると言えます」(同教授)
 
わかりやすくいえば空腹や飢餓状態におかれると生体は、体内の異常な老化たんぱく質を分解・除去して排泄してしまうのです。
こうして体内はクリーンで、若々しくなれば、それは一種の「排毒作用」です。
 
「断食」2大効用は、「治癒力」の増大と「排毒力」の増大です。
それが異常たんぱく質レベルでも立証されたのです。
 
 
● 老年から食事制限でも若返りは可能
 
老化で増える異常たんぱく質(老化たんぱく質)は「熱不安定酵素」だけではありません。
「酸化修飾たんぱく質」と呼ばれるタイプも加齢で増えることが確認されています。
やはり老化たんぱく質の仲間です。
それも同様に食餌制限で減らせれば、体質を若い頃にリセットできたことになります。つまり、食餌制限が若返りさせるメカニズムの証明になる。
 
後藤教授らは、この異常たんぱく質を検出する方法を開発しています(免疫学的検出法)。それにより、加齢変化を観察することが可能となりました。
 
教授らの観察ターゲットとしたのは細胞内のミトコンドリアのたんぱく質。
老化ラットでは、その中で「酸化修飾たんぱく質」の増加が観察されています。
そこで老齢期ラットに「少食」でカロリー制限させると、なんと『ミトコンドリアたんぱく質の酸化障害」が若齢レベルまで減少したのです!
 
「このように、加齢で増えたたんぱく質(老化たんぱく質)の酸化障害が老齢期からの食餌制限で軽減することがわかりました」(同教授)
 
つまり、若返りは、年をとってからでも可能ということです。
中高年からの「少食」実践でも老化防止、若返りを促すのです。
あきらめることはありません。
 
年をとってからの腹6分でも若返る。
それは次の実験でも証明されています。
まず23ヶ月齢マウスのエサの量を60%に制限して60日間飼育した。
高齢の腹6分マウスです。
「肝臓細胞を取り出して、(卵白など)たんぱく質の分解半減期を調べてみると、老齢期に延長した半減期が、制限食群(腹6分群)では、若いマウス並に短縮していた。
したがって(老化原因の)異常たんぱく質が、蓄積しにくくなっている、と考えられます」(同教授)
腹6分マウスの肝臓たんぱく分解機能は若者並みにアップしているのです。
 
 
● 食事制限でたんぱく分解が加速される
 
普通の健康体の成人ならたんぱく質の合成と分解のバランスが取れている。
これを「動的平衡」といいます。
 
「少食」で、どうして「老化原因」異常たんぱく質が分解・除去されるのでしょう?
それは外部からとる食事量が減るほど、肝臓でのたんぱく質分解が勝るからです。
つまりインプットよりアウトプットが勝り、有害たんぱく質が除去される
こうして全体のたんぱく質量は減少します。
 
少食や断食により、たんぱく質のインプットが減るか無くなる。
するとたんぱく質のバランス(平衡)を保つために、その老化たんぱく質が分解、除去され、若返り現象が起こる、というわけです。
 
 
 
■ 「少食」で遺伝子DNAが19個も若返った!
● 遺伝子のオン・オフが若さを決める
 
「少食で遺伝子も若返る!」
こういうと、わが耳を疑うでしょう。
たんぱく質だけでなく遺伝子も若返るとは!
 
米カリフォルニア大学のS・スピンドラー教授はマウスを使って画期的な実験を行っています。
(A)群:青年マウス:人間なら18歳くらい。
(B)群:老年マウス:人間なら70歳くらい。
 
まず、これら両群のマウスごとに、すい臓細胞のDNA(遺伝子)約1万1000個を観察してみた。
すると、(A)若いマウスと(B)老年マウスに、DNAの違いがあることがわかりました。
その違いは約1%(約1000個)の遺伝子に確認された。
そのうち46個の遺伝子に搗いては、すでに役割も判明している。
これら46個中20個の遺伝子は、(A)青年期には「オフ」であったものが、(B)老齢期には「オン」に変わっていたのです。
これら遺伝子がつかさどっていた生理機能は(1)炎症反応、(2)ストレス反応、(3)アボトーシス反応です(細胞自然史)。
 
(1)炎症反応:これは炎症反応が若いときは「オフ」で、老齢になると「オン」になる。
つまり若いときは炎症反応が起こらないが、年を摂ると炎症が起こりやすくなるのです。
 
(2)ストレス反応:若いときは遺伝子が「オフ」なので、同じストレスを受けても、それをストレスと感じない。つまり反応しない。
それは若さゆえと思いますが、ちゃんと遺伝子が、感じないように「オフ」にしてくれていたのです。
ところが老齢化すると、遺伝子が「オン」になり、その同じストレスが気に触るようになる。精神的苦痛で悩むようになります。
老人がグチっぽいとは、こういうことでしょうか。
 
(3)アポトーシス抑制:アポトーシスとは「細胞の自殺」という意味です。
ガン細胞などは、いわば”できそこない“細胞。
生体には、これら不完全細胞を、”自殺”させるメカニズムを備えています。
それがアポトーシスです。
若いときは抑制遺伝子が「オフ」なのでガン細胞などは自ら消滅しています。
しかし、老齢期では「オン」となりがん細胞の”自殺”は抑制される。
するとガン細胞はドンドン増殖する。
つまり老人は若者よりガンにかかりやすくなる。
 
 
● 老化は遺伝子スイッチで進行する
 
さて、46個の残り26個の遺伝子は逆です。
(A)若いときに「オン」で(B)老いたときに「オフ」となることが判明しています。
それら遺伝子の役割は・・・・・・。
 
(4)異物代謝:若いころは「オン」なので、食中毒のように悪いものを食べたときでも異物代謝機能が良く働き中毒症状を起こさずにすみます。
しかし、年よりは「オフ」なので食あたりしやすいのです。
 
(5)傷ついた遺伝子修復:われわれの体内では、常に遺伝子は活性酸素などの攻撃を受けて傷がついています。
しかし、若い頃はDNA修復遺伝子が「オン」なので、もとの正常な遺伝子に回復するのです。
ところが老人では、その修復遺伝子が「オフ」なのでDNAが傷ついても修復できない。
それが繰り返されるとついに細胞はがん化してしまいます。
 
(6)アポリボたんぱくE遺伝子:これは聞きなれない難しい名前です。
この遺伝子は痴呆症の一種であるアルツハイマーを予防する働きがあります。
これが「オン」なので、若いうちはアルツハイマーになりにくいのです。
しかし、年を重ねるごとに「オフ」になって生き、それに比例してアルツハイマー発病リスクは高まります。
 
――以上の解説は、少食健康法の第一人者として知られる甲田光雄医師が、著書『少食の実行で世界は救われる』(三梧館)で述べているものです。
あなたの遺伝子は一生変わらないと思っていたことでしょう。
ところが、遺伝子は以外に簡単に変化するものなのです。
 
 
● 4週間少食で遺伝子19個が若返った
 
さて――。いよいよスピンドラー教授によるマウスの少食実験です。
それまで実験用マウスは、1匹当たり1週間で95キロカロリーのえさを与えられていました。
 
対象:老齢マウス  人間で言えば約90歳というから長高齢!
2週間(前半): エサの量を1週間当たり80キロカロリーに減量。
2週間(後半): さらに53キロカロリーに減量した。
 
この長高齢マウスは、4週間の「少食」実験に突入したわけです。
その成果やいかに?
 
なんと「この4週間の減食で、19個の遺伝子が若返ったのです」(甲田医師)
「カロリー制限」が遺伝子DNAを若返らせる!
これは歴史的発見といえます。
これら遺伝子は、すべて老化を防ぐので、広い意味では”長寿遺伝子”といえます。
 
「もしこの実験をもっと長く続けておれば、さらに多くに遺伝子が若返るという結果が出るのではないか」と甲田医師も興奮をかくさない。
 
つまり(1)炎症反応、(2)ストレス反応、(3)アポトーシス反応、(4)異物代謝、(5)傷ついた遺伝子修復、(6)アポリボ蛋白E遺伝子。・・・・・・などの遺伝子も若返る。
遺伝子そのものが若返るのです。
少食で老化を防ぎ、若々しくなるのも当然でしょう。
「甲田医院では、少食療法をされた患者さんたちの中で、白髪が目に見えて黒くなってきたとか、いったん止まったままなかった月経が復活して若返ったといった報告をされる方が少なくありません」
「これらの患者さんたちの肌の色も本当につやつやしていて、いかにも女性ホルモンがよく分泌されているなと思われる」(甲田医師)。
 
 
● 免疫力アップで風邪もリュウマチも完治
 
甲田医師は「少食が免疫力を高める」ことも臨床的に証明している。
甲田医院では、来院する患者さんすべてに腹7分の「少食」健康食を指導している。
3年以上、実践している患者さんたち300人にアンケート調査を行い247人の回答を得た。それによると「少食」の効果は絶大である。
回答者の76%が「風邪を引く度合いが目に見えて減ってきた」と回答しています。
「これを見ても腹7分の少食で身体の抵抗力が明らかに強くなったことがわかるでしょう」(甲田医師)。
 
その他「手や足にケガをして傷ができても化膿しないで早く治る」と言う回答も多い。
これも免疫力(自然免疫)が強くなったことの証です。
「アトピー性皮膚炎」「気管支炎」「アレルギー性鼻炎」「花粉症』などアレルギー疾患も腹7分の実行で激減していた。花粉症は85%が「完治」したと回答。
「これは免疫(獲得免疫)が正常化したことを示します」(甲田医師)
 
またリウマチなど自己免疫疾患も完治していく。
甲田医院で少食療法を受けた慢性関節リウマチの患者さんが「完治」した体験記を2005年、1冊の本で出版している。
タイトルは『少食の力』(春秋社)。
リュウマチでお悩みの家族は、是非一読してほしい。
「この体験記を読むと、関節リュウマチはどうして起こるのか。またどうしたらよくなるのか。本当に手にとるようにわかります」(甲田医師)
 
 
 
■ 線虫は飢餓状態で
長寿遺伝子が働き1.5倍生きた
 
● 飢餓感で長寿遺伝子がスイッチオン
 
「エサ2日おき、線虫長生き――京大、老化関連の遺伝子発見」(『日経新聞』08/12/15)
これは「老化遺伝子」の新発見を伝えるニュース。
「京都大学の西田栄介教授らは、餌を毎日ではなく2日おきに与えて、あえて飢餓状態をつくると、寿命が大幅に延びることを線虫を使った実験で突き止めた」(同紙)
 
つまり、カロリー減で飢餓感を与えると、線虫の寿命が大幅に延びたのです。
さらに京大チームは長生きする鍵となる長寿遺伝子も発見している。
「実験結果が人間に当てはまるとは限らないが」と西田教授らは断りながらも
「ヒトでも同様の長寿遺伝子があることがわかっている」と言う。
 
この京大論文は英国の科学誌「ネイチャー」(12/15)に掲載され反響を呼んだ。
これまで述べたように「カロリー制限」でさまざまな動物の寿命が1.5〜2倍延びることは確定事実として科学者に知られている。
 
京大グループは、線虫が成虫になった後餌を毎日から2日おきに減らすと、線虫の寿命はなんと50%延びた。
えさを自由に食べさせると平均20日しか生きなかった線虫が、約30日も生き続けたのだ(これは毎日の給仕がやりすぎだった!)
 
この寿命延長のゴーサインを出した長寿遺伝子も判明した。
それは”Rheb:レブ”と命名された。
栄養やエネルギーの情報伝達に関わる遺伝子で、別の寿命遺伝子の働きを活性化させて老化を抑えていることが確認された。
研究チームが「遺伝子操作でRhebを働かないようにすると、2日おきの断続的な飢餓状態を作っても寿命は延びなかった」という。
線虫は長さ1ミリくらいの小さな線状の虫。
まさに覗き込んでの実験の日々だろう。研究者達の苦労がしのばれる。
 
 
● カロリー6割がベストの食事だ
 
「カロリー制限が老化を抑制する」という言い方は「カロリー過剰が老化を促進する」と言い換えるべきだ。
 
つまり実験動物も毎日餌を与えられている。
それが、研究者にとっても当たり前のことと、受け止められてきたからだ。
その研究者たちもまた毎日3食きちんと食べている。
それが、あたりまえの社会常識となっているからだ。
毎日一定量与えてきた実験動物の餌のカロリーを6割にしたら、寿命が2倍に延びた、と研究者は驚く。
これは、先述のように実験動物にとって、カロリー6割の餌が“理想的”なのだ。
 
それまで日々の給餌が過剰だった!
担当者の研究者も自ら3食、食うのは過剰である。
このことに気づくべきである。
 
研究者は、自分の腹6分にすることよりも、カロリー制限でミジンコや線虫の老化が抑制されるメカニズムの解明に熱中している。
いささか、本末転倒ではないか。まあ、それも研究者の性であろうが・・・・・・。
 
 
● 酵素や遺伝子はエネルギーセンサー
 
「カロリー制限」するということは「飢餓感」を生体に与えることだ。
京大の線虫実験では、その飢餓感を遺伝子”Rheb:レブ”が察知して、長寿メカニズム発動のスイッチをオンにした。よって長寿遺伝子と呼ばれる
 
「カロリー制限」が老化を遅らせる過程の研究で、特殊たんぱく質が強く関連していることが判明している。
それが”サーチュウインファミリー”と呼ばれるたんぱく質の仲間である。
酵素として作用する。
「遺伝子の発現を抑制する効果をもたらす」という。
はやくいえば遺伝子のブレーキ約。
 
「線虫の場合サーチュウインを人工的に働かせると寿命が約50%延びる」という」。
はやくいえばサーチュウインたんぱく酵母は「エネルギーセンサー」として機能し、飢餓状態で細胞内にエネルギーが乏しくなると、それを察知して遺伝子にスイッチを入れて生命活動をスタートさせ、その結果「老化を遅らせている」のである。
 
 
● 少食に変えて老人性の難聴も治った!
 
加齢性疾患の一つに難聴がある。
年をとると耳が遠くなるものです。
そんな人は大食い、早食い、肉好きではないでしょうか?
そんな難聴でお悩みの方には朗報です。
 
「少食」療法の「カロリー制限」で老化による難聴が改善されることが証明されています。
「カロリー制限」が次々に体内の生化学システムを刺激して、伝達され、最後に内耳細胞組織を酸化、老化させていた難聴原因に活性酸素レベルが抑制され、軟調機能が改善されるのです。
 
活性酸素は廊下や炎症を起こして組織を破壊、衰弱、老化させます。
まさに若さの敵。
少食は、さまざまな生理システムを経由して、最後は活性酸素を減らし、組織を若返らせるのです。
同じことが少食により、ほとんどの老化疾患の改善経過でも起こるのです。
 
 
 
■ あきらめていた潰瘍性大腸炎も
「少食」でピタリ治る!
 
● 身の毛のよだつ悪魔の「医源病」
 
難病といえば、読んで字の如く、難治性疾患の略です。
「極めて治りにくい」病気として政府(厚労省)は「難病」つまり「特定疾患」に指定しています。
その代表格が潰瘍性大腸炎でしょう。
 
1975年に難病指定されています。
それ以来、患者の数は激増という言葉も当たらないほどの増加ぶりです。
なぜこんなに患者数が増えているか?
答えは「増えているのではない、「増やしている」のです。
いったい誰が? 犯人は厚労省です。
そして、その背後でほくそ笑む製薬メーカーなど巨大な医療利権です。
 
ちなみに潰瘍性大腸炎の「症状」とは次のようなものです。
大腸の粘膜「びらん」(ただれ)や潰瘍が出来る病気です。
下痢、血便に始まり、粘液や膿が混じる粘血便、下腹部痛、発熱、貧血、体重減少・・・・・・など。
 
厚労省の解説は次の通り、「ひとたび発症すると、よくなったり、悪くなったり・・・・・・再発を繰り返し、生涯にわたる医療管理を必要とする」と背筋の寒くさるようなことを平然と述べている。
 
 
● 薬漬けにして悪化させて荒稼ぎ
 
新潟大学の安保徹教授は、潰瘍性大腸炎がロケットのような勢いで激増している原因をずばり告発する。
「それは誤った治療による薬害です」。つまり「医原病」と言う。
 
教授によれば「潰瘍性大腸炎の一連の症状は、すべて組織を修復するプロセスで生じる治療反応」なのだ。
わたしも拙書『薬は飲んではいけない』(徳間書店)でこう解説している。
「だから、下痢も腹痛も血便も治癒にしたがって次第におさまり、消えていく。
その間、消火器に負担をかけないように断食して、休めばベスト。
つまりは「食べない」「動かない」「それで勝手に治る病気なのだ」
 
ところが病院は、それでは儲からない。
そこで医者は、ここぞとばかりに下痢や腹痛を抑える目的で消炎鎮痛剤やステロイド剤を大量投与する。
これらはすさまじい副作用がある。
 
『活性酸素による組織破壊が拡大するため、病気をさらに増悪します。(白血球の一種)顆粒球の増加が原因で起こる病気(炎症)に、さらに顆粒球を増やし治療を行えば、難治化するのは当然です』(安保教授)
 
つまり厚労省が指導し、病院が行っているのは、潰瘍性大腸炎を悪化させ、治らないようにするための”治療”だったのです。
それは、もはや犯罪的というより悪魔的な血の滴る所業である。
ある女性は、結局大腸をすべて切除されたという。
 
 
● 玄米クリーム、豆腐、少食で完治する
 
さて――この潰瘍性大腸炎。
甲田医師は少食による食事療法でかんたんに完治する、という。
「食べすぎが原因です。特に、牛乳、肉、卵のとり過ぎがいけません」と甲田医師。
食事の欧米化が、発病の原因なのだ。
これら洋風食を多食すると腸内に悪玉菌だ大量発生する。
「これらが腸の粘膜に悪さをして、炎症を起こすわけです」
「実験でも、これらの菌を取り除くと、腸の炎症が起こらないことは確認されています」。
 
さらに「過食で、腸内に腐敗が起こり、カンジダなどのカビが増えて、腸の粘膜を破壊すること」で悪化する。
だから、潰瘍性大腸炎の治療は一にも二にも、悪玉菌を減らし、善玉菌を増やすことだ。
甲田先生の指導は――(1)完全菜食する。(2)朝食は抜いて青汁を飲む。
それ以外は(3)玄米スープと豆腐のみ(玄米クリームは玄米をミキサーで砕いて水を加えたもの)。
「食事療法とともに、熱いお湯と水風呂(冷水シャワー)に交互に入る温冷浴をやるといいですな」(甲田医師)
 
これほどの少食療法であっさり治ってしまう。
なら、功労賞の難病指定には、何の意味があったのでしょう。
ちゃんと、意味があったのです。
 
難病の「特定疾患」に指定すると患者には投薬など医療費が免除になります。
高価な医薬代金も国庫が払ってくれる。
だから、病院はバンバン。
消炎鎮痛剤やステロイド剤を浴びるように患者にとうよできるしくみです。
投与するほど患者は治らなくなり悪化する。
 
最後は大腸丸ごと摘出すれば、ようやく潰瘍性大腸炎は完治する。
それも当たりまえ。大腸そのものを切り捨てたのだから、潰瘍性大腸炎も消えうせた。
「もう2度と潰瘍性大腸炎になることはありませんよ」と医者は、優しくあなたの肩をたたくことでしょう。
そして、あなたは深々と「ありがとうございました」とお辞儀をするわけです。
 
 
● 少食、玄米で胃潰瘍も10日で治る
 
同じような病気に胃潰瘍があります。
「胃潰瘍は10日で治る」と著作で断言するのは食養家の阿部一理氏。
「潰瘍は、口の中に出来るいわゆる”ただれ”を、さらに、大きくした創傷のようなものです。
小さいもので5ミリ、大きいもので2センチくらいあります。
多くの場合、胸と臍の中間に激しい疼痛を伴います」(阿部氏)
 
それが10日で治るとは・・・・・・!
「胃壁のいちばん上(の層)に、新しい、腹膜を作っておおう」
「それだけでも(痛みなどの)症状を消すことは出来る」
「大出血するほどの潰瘍であっても、正しく食養を実行しさえすれば、10日間で充分可能です」と自信をしめす。
 
その胃潰瘍の治療法とは・・・・・・
(1)2、3日間「断食」:あたかも空気を食べるように、姿勢を正し、空気を噛んで、口中にたまってくる唾液を飲み込む。
飲みものは梅生番茶を1日2合以内。(*梅干し・しょうがをすりおろし番茶に注いだもの)
 
(2)2、3日間「福食」:玄米クリームを1日2合以内。
よく唾液を混ぜて飲み込む。
梅生茶か醤油番茶(醤番)を1.5合以内。
 
(3)4〜6日間:玄米ご飯に7対3割合の黒ゴマ塩をたっぷりかける(黒ゴマ7自然塩3)。一口80粒を300回ずつ噛む。
おかずは塩気にきいたキンピラか、ひじき蓮根か、葱味噌か、または鉄火味噌のいずれか1品か2品を、少しつけてもよい。
飲み物は以前と同じ。
 
(4)この約10日間:腹部と背部の両方に”生姜の温湿布”と”芋パスタ”をする。
この2つを1日に2〜4回ずつ繰り返すことが出来れば理想的。
 
阿部氏は読者に次のように注意をしている。
「せっかく病気になったのだから、この機会を大切にしてクイアラタメル(悔い改めると食い改める)こと。
そうしないのだったら、治らないほうが還って幸せかもしれない。
世界観や人生観を転換する好機だと思えるかどうか。
結局、これが決め手となるのである。
病気という難があることが“有り難い”と思えるかどうか」・・・・・・
『食用の道』(大和食養の会、1976・6台三号)
 
 
 
■ 遺伝子「オン」にすれば、からだも脳も若返る
 
● 腹7分、1800カロリーに
 
専門家は、人の細胞の中には、老化や寿命をつかさどる長寿遺伝子が50個以上もあるという。
これらの遺伝子が「オン」になればなるほど、長寿は約束される。
 
順店頭大学医学部の白澤卓二教授(日本抗加齢医学会、理事)によれば、ギネスブックの世界最高齢記録は122歳という。
130歳、140歳・・・・・・などといった驚異的長寿も伝えられているが戸籍の不備で証明がなかなか難しい。
 
驚異的な長寿者に共通するのは少食であること。
「抗齢学」で、もはや「かロリー制限」は長寿の最低条件として確立している。
それは「平均的な男性で、1日約1800キロカロリーで生活するのが望ましい」。
現代栄養学は標準摂取カロリーを2500キロカロリーとしている。
つまり「栄養学」と「抗齢学」で、これだけの格差が生じているのだ。
むろん正しいのは前者で、ほぼ腹7分となる。
ウィスコンシン大学の実験サルと同じだ。
 
腹7分サルは「肌の色艶よく」「ほとんどシワも無い」
この血液を測定すると「DHEAという若返りホルモン値が非常に高かった」という。
 
 
● 長寿遺伝子“SIRT1”発見!
 
老化防止に働く特殊な遺伝子も発見されている。
発見者はマサチューセッツ工科大学(MIT)、レオナルド・ガレンテ教授。
同氏は『不老への探求』という著書もある。
その遺伝子は「サーチュウインSIRT1)と命名された。
論文は科学し『セル』オンライン版に掲載。
この遺伝子の活性化で線虫の寿命が2倍になった、という。
いわば長寿遺伝子の代表的バッター。
「カロリー制限」するというまでも泣く肥満は解消される。
 
「カロリー摂取と体細胞の老化ペースに脂肪が直接関わっている」
脂肪細胞は特殊ホルモンを生成し、全身に(悪い)影響を与えている」(ガレンテ教授。これは医学的に「脂肪毒」と呼ばれている。
 
このように肥満も老化も促進するのだ。
「脂肪毒」という言葉は初耳だろう。
体内に蓄積した脂肪は”毒素”を排出していることが最近の研究でわかってきた。
それは老化を促進し、さまざまな疾病の元凶となる。
さらに、肥満は血管を詰まらせれば心臓病や脳卒中、血糖値を上げて糖尿病・・・・・・と、生活習慣病から死に至る近道でもある。
 
肥満者の死亡率は約3倍にも増加するという。
だから肥満解消は、長寿への第一歩である。
 
 
● 長寿遺伝子が腹7分サルに増えていた
 
科学雑誌「サイエンス」(09・7.10)にウィスコンシン大学20年間の研究結果が発表されたが、その内容は驚愕的。
前述のようにカロリー制限しなかったサルは半分が死んでしまった。
ところが腹7分に「カロリー制限」した群は8割生きている!
 
この老化抑制に長寿遺伝子「サーチュウイン」が働いていた。
この遺伝子発見者ガレンテ博士はラット実験で「カロリー制限」(なし)と(あり)では、各臓器の「サーチュウイン量がどれだけ異なるかを比較した。
 
脳、腎臓、肝臓ともに1日で「カロリー制限」した組のほうが長寿遺伝子量が明らかに増えていた
研究者は、これを「子孫を残すための生き残り作戦」とみている。
 
 
● 長寿遺伝子は他遺伝子を傷から守る
 
ウィスコンシン大学実験の2匹のサル「カント」と「オーウェン」の違いは、与えたカロリーの差しかない。
それは両者の長寿遺伝子の量に決定的な格差を与えた。
少食サル「カント」は長寿遺伝子をたっぷり持つ。
飽食サル「オーウェン」は長寿遺伝子が少ない。
 
なぜ「腹いっぱい」食べたら長寿遺伝子が「減った」のか?
長寿遺伝子は「他の遺伝子を『”傷“から守る』働きをしている』ことが、判ってきた。
つまり、「老化』とは「遺伝子の傷」が原因で起こる「肉体の変化」なのだ。
 
遺伝子は、ふだんの生活の中で常に「活性酸素」や「紫外線」などで「気ズ」をおっている。
その遺伝子の「傷」が細胞分裂とともに各細胞に引き継がれていく。
こうして肉体は衰えていく。
これが「老化のメカニズム」だ。
 
長寿遺伝子は、他の遺伝子を「傷」から守り老化スピードを「遅らせている」のだ。
長寿遺伝子は、どんな人間でも体内に存在している。
問題は、それが「オン」になっているか?「オフのままか?・・・・・・ということだ。
長寿遺伝子が「オン」の人は、サルの「カント」のように若々しい。
長寿遺伝子が「オフ」の人は、サルの「オーウェン」のように老け込む。
 
違いは何か? もはや歴然だ。
長寿遺伝子にスイッチを入れるベストの方法が「カロリー制限」なのだ。
 
 
● カロリー過多ではスイッチが入らず
 
長寿遺伝子は、常に他の遺伝子を「傷」から守る「酸素」を出している。
「カロリー制限」すると、その「酵素」が、働きを「助ける物質」と合体して、活動を開始する。すると、すべての遺伝子の「連結が強化」され、老化の原因の「活性酸素」や「紫外線」の「傷」から守られる。
これがスイッチ『オン』の状態である。
 
ところが「カロリー過剰」の場合、その「酵素」を「助ける物質」が大きくなりすぎて合体できない。よってスイッチが入らず、そのため「老化」を促進する「活性酸素」などのダメージをもろに受けてしまう。
これが、満腹サル「オーウェン」が早く年をとった理由だ
 
人間にも、同じことがいえる。
「俺は、”普通”に食べているから、大丈夫」。
それがおおまちがい。現代人の”普通”は、もはや大幅に過食レベルなのです。
あなたは、「オーウェン」と同じ人生をたどっています。
今からでも遅くは無い。「カント」の生き方にシフトしましょう。
 
 
● 野菜・果物は全体食」がおすすめ
 
長寿遺伝子を「オン」にするのは「少食」だけではない。
「運動」「抗酸化食」もスイッチをオンにしてくれる。
 
白澤卓二教授(順天堂大学医学部)によると、ある物質を食べると長寿遺伝子が「オン」になることがわかったという。
その中でも「レスペラトロール」という物質は高齢学界で注目されている。
それは赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種。
ブドウの皮に大量に含まれている。
だから赤ワインがおすすめなのだ。
白ワインでは皮を除去しているので、効果はない。
さらに林檎の皮、ピーナッツの皮などにも多く含まれる。
 
つまり、身近な野菜や果物の皮に多く含まれる成分である。
何のことはない。
野菜、果物を丸ごと食べればよい。
いわゆる「全体食」を心がければ、さらに老化は防げる
 
では、カロリー制限はどうしたらいいか?
白澤教授は、複雑な計算式を提案している。
しかし、それもまたカロリー神話の呪縛に陥っているようだ。
 
カロリー制限は、明日からでも出来る。
それは朝食を抜いて1日3食を2食にすることだ。
それは甲田医院が、すべての患者に指導して目覚しい成果を上げている。
きちんとした医学的・臨床的な実績があるので、心配することはない。
 
最初は、誰でも腹が減ってたまらないだろう。
しかし、朝食を食べないでいると、食欲中枢は抑制されてくる。
体重が減っても心配ない。
それはやがてV字カーブで回復してくる。
 
 
 
■ 戦時中の食糧難が人々を
逆に「健康にした」皮肉
 
● 血圧、コレステロール、血糖値の改善
 
「・・・・・・カロリー制限が人に対しても同様の効果があるかどうかを決定する手段は、実際にヒトに対して実験を行うおかない。
しかし、そのような研究を自由生活を営む人間に対し、実行することは非常に困難である」(論文・寿命延長におけるカロリー制限の役割」福島工事ほか)。
 
実際ウィスコンシン大学のサルの実験では76匹のうち半数に、厳密にカロリー70%にコントロールした食事を20年も与えている。
客観的データを得るには、それだけ地道な観察が必要なのだ。
前論文は「長期にわたるカロリー制限効果に関する有用な情報はわずかである」という。
 
それでも、有効な研究成果は歴史的にも残されている。
とりわけ第二次世界大戦中の食糧不足が、逆に国民を健康にしたという、皮肉な報告もある。
 
■スカンジナビア報告:
これは人に対する「カロリー制限」効果の最初の報告といえる。
第二次世界大戦中の1940年代。
当時のスカンジナビアの人々は、戦中の食糧難のため、国民全員が約20%「カロリー制限」された食生活を送っていた。
その結果、「老化に伴う症状の1つである心臓病の発症率が減少した」という報告がある。
 
■ノルウェー・エストニア報告:
やはり戦争中1940年代、ノルウェー・エストニアでも「カロリー制限」した食事を強いられていた。
当時の人々のその後の健康状態が興味深い。
1980〜2000年代まで生存した人々の結腸直腸ガンの発生率がういの低下していた。
これも当時の低カロリー食の”恩恵”と見られている。
 
■沖縄リポート:
沖縄の100歳以上の高齢者を調べた研究では、日々の低カロリーの食事が長寿と健康をもたらしたと示唆されている。
 
■オプティマル栄養協会報告:
これはボランティアによる「カロリー制限」研究。
市民団体カロリー制限オプティマル栄養協会」の会員達の参加で実現した。
参加者36名を(A)「カロリー制限」18名、(B)「通常食生活」18名の2グループに分けて、なんと6年間、追跡調査を行った。
その結果、(A)「カロリー制限」グループは、体重、血圧、血中コレステロール、血糖値の著しい減少が確認された。
これは”バイオスフェア実験”(前で)と全く同じ結果であった。
そして、注目すべきことは欧米諸国での主要死因のひとつであるアテローム性動脈硬化症の発症率が減少した。
 
■ 肥満医療リポート:
過体重の成人に対する肥満治療で25%の「カロリー制限」を行うと、体重減少以外にも効用が確認されている。
それは長寿のバイオマーカー(生理指標)でもある体温と血中インスリン濃度の低下をもたらす。
つまり、体重は減り、寿命は延びる、という一挙両得である。
 
■ セントルイス大学リポート:
米セントルイス大学・健康科学ドイジ校のエドワード・ウィス準教授(栄養学)らが発表。
対象は50〜60歳の男女。
彼らは健康だったが運動不足。全員ノンスモカー。
事前の健康チェックで心血管疾患、糖尿病、肺病、高血圧、ガンでないことが確認されていた。
参加者は無作為に3グループ(A)(B)(C)に分類された。
(A)低カロリー食:毎日のカロリー摂取は300〜500キロカロリー減。
(B)運動グループ:通常の食事を続け、定期的に運動をする。
(C)比較対象グループ:通常の食事を続け、運動もしない。
 
1年後・・・・・・。
(A)(B)両グループは(C)に比べて、体脂肪と体重が減少。
(A)低カロリー群は平均6.8キロ減。(B)運動群は5.5キロ減。
ところが(A)だけが血液中の甲状腺ホルモン(T3)の値が有為に低下していた。
ウィス準教授は「低カロリー食でT3レベルを減少させることで老化が遅くなるだろう」という。
T3は内臓や骨格などの発育を促進する作用がある。
T3低下は、その発育(老化)抑制につながる。
つまり「運動より低カロリーのほうが老化を防ぐ」と言う結論である。
 
 
● がん予防、骨再生、記憶力、脳活性・・・・・・
 
さて、「カロリー制限」すると肥満解消にプラスして、長寿遺伝子「サーチュウインのスイッチが「オン」になり活発に働きだす。
 
マウス実験でも
@メタボ改善、Aがん予防、B骨を再生する・・・・・・などの機能が確認されている。
 
長寿遺伝子「サーチュウインを「オン」にするのは空腹ストレスだ。
カロリーが入ってこないのは、生体にとって一種に危機状況。
そこで、空腹感がアラームを鳴らし、長寿遺伝子を「オン」にする。
こうして、内臓や組織の細胞を活性化させ若返らせる。
C心臓病:心疾患を防ぐ。
D肝臓・すい臓:糖尿病を防ぐ。
E大腸:ガンを防ぐ。
F脳:神経の障害を防ぐ。
 
専門家は「サーチュウインをオーケストラの指揮者にたとえる。
いろいろな臓器に指令を出して各々の機能を長寿に向かわせる。
 
「カロリー摂取の制限により活性化される長寿遺伝子「SIRTI」が、記憶力強化や脳活動の活性化にも貴重な役割を果たしている可能性が高いとの報告が、英国科学誌「ネイチャー」(2010・7・11)に掲載された」
「研究はマサチューセッツ工科大学の神経生物学者プログラム責任者の研究チームが行った。
(SIRTI)遺伝子が作り出すたんぱく質が(マウスなど)げっ歯類の老化プロセスを制御する効果があることは、すでに明らかになっている。
さらに研究チームは、この酵素(ヒトではSIRTI)が、記憶力を強化し、脳内の神経細胞の発達を促進する効果もあることを突き止めた」
 
長寿遺伝子は老化を防ぐだけではなかった。
脳機能も活性化していたのだ!
研究チームは、発見が「アルツハイマー病や衰弱性神経疾患の治療薬の開発に役立つ可能性もある」と言う。
 
 
● アルツファイマー、認知症を防ぐ
 
同チームは、すでにマウス実験で、「サーチュウイン」が「神経細胞の寿命をのばす」事を発見している。
 
今回の実験では「サーチュウイン」遺伝子を欠損させたマウスの発達を観察した。
結果は、「サーチュウイン」欠損させたネズミは、脳細胞の一部である「海馬」への電気刺激に対する反応が鈍かった。
「海馬」は長期記憶と方向感覚に貴重な役割をはたしている。
つまり長寿遺伝子が衰えると物忘れがひどくなり、徘徊などがはじまるのだ。
 
「海馬」はアルツハイマーでは、脳の中でも最も早く損傷を受ける部位だ。
つまり過食のひとは「サーチュウイン」が「オン」にならないため老化が早まり、アルツハイマーになりやすい。いいかえると少食健康法を実践している人は認知症やアルツハイマーになりにくいことの証明でもある。
 
(「サーチュウイン」欠損)実験マウスは、さらに神経細胞の密度低下が観察された。そして、記憶力テストでは「古い物」と「新しい物」を区分けする能力も低下していた。
これは記憶障害が進行していることの証しもある。
 
「3パターン記憶実験を行ったが、すべてにおいてSITRI遺伝子を欠損させたマウスは、対象マウスと比較して能力低下が見られた(同チーム)
また、同実験では「サーチュウイン」が「記憶力増虚うたんぱく質」を発現させることも確認されてる。
 
つまり、「サーチュウイン酵素」は、健康なひとにとっても、さらに「記憶力の強化」「脳機能の向上」を約束してくれている。
 
ただし、「サーチュウイン」も約50個はあるといわれる老化防止遺伝子の1つに過ぎない。
他の遺伝子は、まだその詳細が明らかになっていない、というだけのはなしだ。
 
 
 
■ 筋肉をきたえれば、
長寿遺伝子「オン」で若返る
 
● 運動で長寿遺伝子AMPKがオン
 
「カロリー制限」のほかにも長寿遺伝子をオンにする方法がある。
それが「運動」である。
たとえばAMPKという長寿遺伝子は運動することでオンになることが証明された。
筋肉が収縮すると長寿遺伝子AMPKはオンになり活性化する。
 
それならフルマラソンをすればいいか? これは難しい。
過度の運動は活性酸素を取り入れ過ぎて、逆に老化を加速してしまうからだ。
プロスポーツ選手は10歳くらい早死にするといわれている。
適度な運動にも個人差はあるが、やりすぎは禁物だ。
 
筋肉を動かすと筋肉から一種の生命活性物質が分泌されることが、最近の研究でわかっている。
その数は30種類ほど。マイオカインと総称されている。
一種のホルモン様物質、わかりやすくいえば筋肉ホルモン。
それは、老化防止、若返り、演繹向上・・・・・・などプラス作用を発揮する。
間違いなく、その発現には長寿遺伝子AMPKも作用しているはずだ。
 
 
● 若返りホルモンは25歳から激減
 
筋肉強化による若返り法を実践している医師がいる。
春山茂雄医師(医学博士)である。
氏はかつて400万部という驚異的な売り上げを記録したベストセラー『脳内革命』の著者として有名だ。
講演を聴いて驚いた。もう70歳というのに神は黒々、肌の針も若々しく、どうみても40歳くらいにしか見えない。
 
春山医師によれば、老化の大きな原因は「成長ホルモン」の血中濃度の低下という。なるほど、その濃度は25歳を頂点に激減していく。
だから「成長ホルモンの減少を防げば、老化が防げる」と言う。
「その働きの一つは燃えない脂肪を燃える脂肪に変えること。
脂肪からは”脂肪毒“という毒素が排出されており、それが老化やさまざまな疾病を引き起こすのです」。
だから「燃える」脂肪」変えれば”脂肪毒”も燃えてなくなる。
 
肥満体のひとは、全身に“毒素”をためこんでいることになる。
運動で筋肉を鍛えることは、結果として「毒素脂肪」を減らすことにつながる。
 
 
● 筋肉強化で成長ホルモンを分泌する
 
もう一つの老化防止法は、成長ホルモンを増やすこと。
加齢で激減するホルモン分泌をどう上向かせるか?
 
春山医師は「3つの方法」をすすめる。
 
(1)「加圧トレーニング」
成長ホルモン分泌を促すのは乳酸である。この乳酸は「筋肉が疲労するときに出来る」。
つまり・・・・・・加圧トレーニング→乳酸分ピ→特殊ベルト→乳酸蓄積→生長分ピ→老化防止→若返り・・・・・・というプロセスをたどる。
「「加圧トレーニング」を行うと、通常の100倍量の成長ホルモンが出来ます」(春山医師)。
「加圧トレーニング」とは、耳なれない。どんな筋肉強化法だろう。
「腕に特殊なベルトを巻きつけ、圧力を加えていく。すると血流が制限されて、筋肉内にできた乳酸も出て行きにくくなる。そのため、乳酸の量がどんどん増えて、成長ホルモンが大量に分泌される」(春山医師)
 
通常トレーニングでは相当ハードに運動しないと乳酸は出ない。
しかし「加圧方式だと、大量の成長ホルモンを出せるので、非常に効率的です」。
 
 
● 筋肉は若さホルモンを分泌する!
 
(2)「若い筋肉をつくる」
「若い筋肉は、一種のホルモン器官ということがわかってきました」(春山医師)。
これがマイオカイン。
成長ホルモンは、若い筋肉を作るときに分泌が促進され、壊れた細胞を修復する。そのため肌が若返り、血行が促進され、老化が防止される。
 
「筋肉は入れ替え制。若い筋肉をつくるには、まず古い筋肉を壊すことが必要。それには、筋肉を伸ばして振動を加えれば、簡単に壊れてくれる」(春山医師)
家庭で行うなら「ヨガがおすすめ」という。
 
ポーズをとるとインナーマッスル(内在筋)、スリーピングマッスル(休眠筋)が、ミクロの振動運動を行う。
それも「腰から下の筋肉「大腰筋」「大腿四頭筋」「ヒラメ筋」など、片手で握れないような大きさの筋肉を”壊す“と効果的です」(春山医師)
 
(3)「深い睡眠」
成長ホルモンの分泌を促す3番目の方法は「深い睡眠」をとること。
リラックス効果で睡眠脳波が出て、成長ホルモンが分泌される。
深い呼吸法による瞑想も、やはり成長ホルモンを分泌させる。
 
 
● スタローンは、なぜあんなに若い?
ハリウッド俳優で、わたしがその若さに感心するのがシルベスター・スタローンだ。
もう60代半ばというのに、全く老けていない。
2010年秋に「エクスペンダブルズ」という最新アクション映画を見たが、胸板も厚く、腕の太さはまったく衰えていない。
つまり、かれは日々、徹底的に筋肉トレーニングで鍛えているのだ。
春山医師のいう「古い筋肉を破壊し」「新しい筋肉を生成している」。
そのとき大量に分泌される成長ホルモンが、このアクション俳優の驚異的若さを保っているのだろう。
 
わたしも筋肉から若さを保つホルモンが分泌されることを知って、意識的に筋肉を鍛えるようにしている。
わたしの筋肉強化法は”アイソメトリックス”と呼ばれる方法。
筋肉は最大付加量の8割以上の力を5秒以上加えると急速に発達する。
それは、大量に分泌される成長ホルモンのなせる技だろう。
 
お年寄りが寝たきりになると、みるみる痩せ衰えて老化していく。
それは車椅子も同じだ。
筋肉の衰弱は、即、生命力の衰弱につながる。
 
沖正弘導師の教えは貴重だ。
「ベッドに寝たきりでも、指1本動かせるなら、それを全身全霊をこめて動かせ。
すると全身の筋肉も同調して回復してくるのだ」。
 
さらに、沖先生は次のようにも、諭しておられる。
「・・・・・・サラリーマン達は、エレベーターを使わず、階段を1日何回も上がり下がりしなさい。これは運動不足を解消し、足を通じて全身強化する大変よい方法だと教えています」
「現代文明は便利の面においては、著しく発達を示したのですが、だんだんと自分の持ち物を十分に使用しなくてもよいような状態になってしまいました。
この特典が不使用能力を低下失調させてしまったのです。
眠っている力を呼び覚ます方法、それは“それを使うこと”です」
 
――少食と運動――それは理想の長寿への2大教法である。

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001