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あんな話 こんな話 144
ナクモクリニック総院長
南雲吉則著
『「空腹」が人を健康にする』
「1日1食」で20歳若返る!
健康は「見た目」に現れます。
「生命力遺伝子」を活用して
美しく元気に生きる方法!
サンマーク出版 より その2
■ 第2章
あなたも必ずできる『1日1食』生活
●食事の量を減らす簡単な方法「1汁1菜ダイエット』
ダイエットの基本は、摂取カロリーをコントロールすることです。
厚生労働省では、カロリー計算表を出して、換算表を見ながら一日に摂取する食事を計算するよう推奨しています。
茶碗1杯のごはんが何カロリー、アジの開きが中くらいのもので何カロリー、野菜炒めが何グラムで何カロリー・・・・・・。
これは私もメタボだった頃、まずはじめにやってみましたが、その感想をひと言でいえば、「こんなばかげたこと、やってられないよ!」。
カロリー計算は医学生のとき勉強しましたし、医者になってからも糖尿病や肥満の人には、栄養科に頼んでカロリー計算による食事指導を行ってきました。
しかし自分でやってみて、こんなに面倒で煩わしいことを、よく今まで患者に強いてきたものだ、と心から反省しました。
目で見て楽しみ、香りを嗅いで楽しみ、味わいや舌触りを楽しむ「食」というものを、カロリー計算という数字に置き換えてしまうのですから、なんとも味気ない!
こんなことを考えた人間も、続けられる人間も頭がおかしい(失礼しました)、と思うほど苦痛だったのです。
納得いかない道理は受け入れることはできません。
結局、3日とは続けられませんでした。
そこで注目したのが「一汁一菜」です。
古来、日本では質素な食事をよしとする習慣がありました。
これは前述してきた観点からも、じつに理にかなっているといえます。
品数で摂取カロリーをコントロールすることができるからです。
さらに今までと同じものを食べていても、茶碗と皿のサイズを小さなものに変えることによって、簡単にカロリーを減らすことができます。
家族と別な献立を作る必要もないのです。
食器の容量が今までの8割ならば「腹8分目」、6割の大きさならが「腹6分目」が簡単に達成できるのです。
これを「一汁一菜ダイエット法」と名づけました。
まず用意するものは子供用の食器です。
アンパンマンを描いてあるような小さいご飯茶碗とみそ汁のお椀を用意します。
ご飯は白米でも玄米でも、炊き込みご飯であってもチャーハンであってもかまいません。
量は確実に減っているのですから、好きなものを召し上がってください。
お汁も通常のみそ汁でも良いですし、お吸い物、具沢山のみそ汁、けんちん汁でも結構です。
おかずを盛る皿は、コーヒーカップの下に敷くソーサーにします。
そうすればそこにのせる料理は、肉料理であろうが魚料理であろうが、なんでも結構。皿からおかずがはみ出したりこぼれたりしなければ山盛りでも結構です。
家族のいる人は同じものを楽しんでください。
ただし、おかわりはしません。
3度の食事はこの食器でいただきます。
コンビニ弁当にするときはこの食器に盛り直して余った分は捨ててください。
規則正しく一汁一菜ダイエットをして、腹6分目を達成すれば、太っている人は必ずやせます。
また、やせ過ぎの人は、逆にに太ることができるでしょう。
一般的にダイエットというと、やせることだけをさすと思われがちですが、本来のダイエットとは、「正しい食事療法」のことです。
その人にとっての適正体重になることが、ダイエットの本当の目的なのです。
太りすぎの人はやせることができるし、適正体重の人はその体重を維持できる。
やせている人の場合には、太ることができるというのが、正しいダイエットなのです。
食べても太れないという人もいますが、そういう人は、やはり食べる量自体が少ないケースがほとんどです。
一定量の食事をきちんと摂れば、必ず適正体重になるでしょう。
●1日1食に無理なく移行するには
さて「一汁一菜ダイエット」によってダイエットの楽しさを学んだ方は、いよいよ「一日一食ダイエット」に進みましょ。
一日一食を基本とする食生活にする場合、メインの食事をいつにするかは、大きな問題です。なぜなら1日一回にすると、その一回の食事がよりいっそう大事なものになるからです。
朝食は何もとらなくて結構ですし、とるなら水分とフルーツ程度の軽めにします。
出勤時間ぎりぎりまで寝ていて、時間がない中で起き抜けに良く噛まないまま朝食をかき込み、駅まで走っていくというような自殺行為をするくらいなら、朝は水分だけにし、何も食べないほうが、よほど体にはいいのです。
前の晩のお酒が残っていたり、前の晩に食べ過ぎて胃がもたれたりしているときはなおさらです。
医学的にも、胃を休めるために絶食が必要です。
水分補給だけにしておきましょう。
胃潰瘍で入院すると、何日間も絶食して点滴されます。
みなさんは点滴で潰瘍が治ったと思っていますが、あれはただの水です。
絶食によって消化管を休めることが体の治癒力を引き出しているのです。
カバンの中や会社の引き出しにはクッキーなどを常備しておいて、ちょっとお腹がすいたら、1,2枚つまんでおけば、それで十分です。
小麦粉やバター、タマゴなどが原材料になっているクッキーは、ほぼすべての栄養素が含まれている「完全栄養食品」。
全粒粉のものなら、栄養バランスもととのっていてなおいいでしょう。
ちなみに私のお気に入りは、干しブドウやナッツが入っている、全粒粉の甘味を抑えたクッキーです。
赤ちゃんがミルクだけで育つことができるのは、ミルクが「完全栄養」だから。
ミルクの中には、ビタミンやミネラルなど、すべての栄養素が備わっています。
タマゴも同様で、全卵一個の中には、孵化すれば一羽のニワトリになる、つまりニワトリ1羽分の元となる、あら夜栄養素が含まれています。
ちょっとつまみ食いをするときはホットミルクやゆで卵、甘味を抑えたクッキーといった食品で完全栄養を摂りましょう。
間違っても甘いお菓子は食べないこと。
少量でもインスリンという消化ホルモンが出て、内臓脂肪が増えますし、腹持ちが悪くなり、ますますお腹がすきます。
昼食を摂るとしたら、これもできるだけ少量にして、眠くなるほど食べないこと。
午後の会議の最中に居眠りをして上司から注意されたり、お客と商談中に眠くて神経が集中できなかったりしたことはありませんか?
昼食後、眠くならないように煙草をスパスパ吸ったり、濃いコーヒーを飲んだりしているサラリーマンも良く見かけますが、こんなに体に悪いことはありません。
動物は腹いっぱいになれば眠るようにできているのです。
食後昼寝ができない人は、昼食そのものを控えてください。
もし食べるなら、GI地(グリセミック指数)が低いもので、血糖値が一気に上がらないようなものをおすすめします。
主食は、白米や白パンよりも、玄米や全粒穀物からつくられたパンなどにします。
また糖やデンプンよりもたんぱく質を主体にしたほうがよいでしょう。
私自身も15年ほど前までは昼食を摂っていました。
「腹が減っては戦ができぬ」と思っていたからです。
しかし弁当でお腹がいっぱいになってしまうと、午後の診療はいつも睡魔との闘いでした。
患者さんの話を聞いているうちに、眠くなってしまい自分の膝をアザができるほどつねったりしたのはご愛嬌としても、もっと危険なこともありました。
手術の最中に眠くなってしまうのです。
看護婦さんに頼んで首元に冷たいアルコール綿を当ててもらいながら、何とか手術を終えましたが、こんなことではいつか事故を起こしてしまいます。
睡魔と闘うつらさから逃れるために、昼食の量を少しずつ減らしていったのです。
どんなに減らしても、食べてしまえばそれがおにぎり1個であっても、やっぱり眠くなってしまうのです。
以来、昼食はいっさい摂らないようにしました。
もし、何か食べるとすれば、夏ならモモ1個、秋ならナシかリンゴを半分程度というように、季節の果物をいただきます。
また、リンゴやナシ、カキ、ブドウなどは皮ごと食べます。
果物は、この皮がすばらしいのです。私はモモも皮ごと食べます。
気になる表面の産毛も、布巾でキュッキュッと拭けば取れてしまいます。
果物の皮には、傷を治す「創傷治癒作用」と体の細胞を酸化から守る「抗酸化作用」があるので、これを食べていれば傷ついた消化管の粘膜も肌も治療されますし、老化から身を守ってくれる。
もちろん、カゼもひきにくくなります。
日中お腹がすいた時にはそうした果物や全粒粉のクッキーを少量食べてください。
眠気を催さずに空腹を感じなくなります。
もし今消化器系の調子が悪いという人であっても、あとで述べる「一物全体」の完全栄養による「一日一食」の食事にして、早寝早起きを52日間(体の細胞は52日間で一新されます〉実行すれば、適正体重になって体調がよくなります。
それも、外見上も若々しく見えるようになるという、うれしいおまけつきです。
●1日のいつ食べるのがいいか
「一日一食」にする場合、その一食はいつ食べるのか。
私がおすすめするのは、1日の最後を締めくくる「夕食」です。
外で働く男性の場合、マイ茶碗をもって仕事に出かけることはあまり現実的ではないですし、夜のつきあいもあるでしょう。
食事をほとんど家で食べ、外食をしないという主婦などの方で昼寝の時間があるなら、一日の中心となる食事を昼食にしても結構です。
しかし30分以上の昼寝をすると体内時計が狂ってしまい、余計にだるくなります。
夜も寝付けなくなりますので、昼寝の時間は15分以内としてください。
また夜に家族と団欒を楽しみたいという方は、1日2食摂ってもいいですが、一汁一菜は守ってください。
朝食も同様です。
朝食をお腹いっぱい食べた後には、やはり眠気が襲ってきます。
試験や大事な会議など、午前中に頭を働かせる必要がある場合、本当は何も食べないことをおすすめしたいくらいです。
ましてや試験の前日、緊張で睡眠不足のようなときにはなおのこと、朝食を食べ過ぎてしまうと、試験中に眠くなるのは必死です。
もし何か食べるのであれば、早朝に済ませてしまうか、果物かジュース程度の軽いものにしたほうがいいでしょう。
脳は糖分しか利用できないからといって、ことさら糖分を摂ることをすすめる人もいますが、これは非常に短絡的な考え方です。
糖分に限らず、脂肪もタンパク質もデンプンも、体の中ではブドウ糖に変わり、ちゃんと脳に届けられるように人間の体はできています。
甘いものを食べなくても、血糖値は十分に上がりますから、脳のためにわざわざ糖分をとる必要はないのです。
脳が疲れたとき糖を摂るという人もいます。
しかし、そもそも脳が疲れるということはありません。
脳というものは、生まれてから死ぬ瞬間まで、一度も休むことがないのです。
もし一瞬でも休むようなことになってしまったら、それは即刻、死を意味します。
なぜなら、心臓を動かしているのも、呼吸をつかさどっているのも、すべて脳。
寝ている間に脳からの指令がなくなったら、心拍や呼吸は止まってしまいます。
仕事や勉強を、根をつめてやったから脳が疲れた、という人もいますが、それは目が疲れたり、精神的に疲れを感じたりしているだけのこと。
この世に生まれた瞬間から、1年365日、1日24時間、一度も休まず働き続けているのが脳なのです。
では、そうした脳が、いちばん冴えているときはいつでしょう。
そうです。お腹がすいているとき、脳はもっとも活発に働きます。
頭を使う、大事な仕事が控えているようなときは、むしろ食べないほうがいいと私がいうのはこのためです。
何か食べる場合は、血糖値が急激に上がらない程度のものにします。
ヨーロッパでは、昼食後、夕方4時くらいまでシエスタなど昼寝の習慣がある地域さえあります。
昼寝ができるような環境であれば、お昼を食べてもいいし、お酒を飲んでもいいでしょう。残念ながら、日本ではそんな習慣を取り入れる会社などはありません。
そうなると、一日のメインの食事をいつ摂るかといえば、普通に外で働く男性の場合、やはり夕食にすべきでしょう。
もっとも職業によっては、いろいろな時間帯で働いている人もいるはずですから、必ず夕食でなければならないということではありません。
そのあたりは各人の生活パターンに合わせてください。
ただし、成長期の子供、閉経前の女性で血糖値が下がりやすいタイプの人はこの限りではありません。
空腹ではもたないので、朝食も昼食も一汁一菜できちんととることが必要です。
●1日1食なら、何を食べてもOK
「1日1食」の生活は、食事の時間にはもうお腹がペコペコ。
そこで何を食べるのかが問題になります。
基本的に、食べたいものであれば、何をどれだけ食べてもOKです。
空腹時にはそれこそ何でも食べたくなるのではないかと思われるかもしれませんが、1日1食になると、決してそんなことはありません。
せっかくの1食をカップラーメンやコンビニ弁当で終わってしまったらもったいない、と考えるでしょう。
体のほうも、本当に欲するものを求めてきます。
それはすなわち、体に必要不可欠な栄養ということです。
理想の食事量は腹6分目(前日、ほとんどカロリーを摂っていなければ腹8分目〉ですが、満腹感が欲しければ、最初のうちはどれだけたくさん食べてもかまいません。
そのうちに、だんだん体が欲しなくなります。
私の知人は身長180cm、体重が103kgあり、1日1食をはじめたのですが、夜は今までどおり暴飲暴食を繰り返していました。
にもかかわらず、なんと体重が82kgまで減ったそうです。
つまり1日1食になったら腹6分目でやめなくても、1日量は確実に減っている。
肥満の方は体重が減るということです。
またやせてくると食事の量も自然と減ってきます。
お酒も弱くなってあまり飲めなくなりますし、飲みたくもなくなってくるのです。
私の場合、何を食べたいかときかれれば「玄米と具沢山のみそ汁、野菜のおひたし、一夜干しの魚があればいいが、なければ納豆」と答えます。
野菜中心なので山盛り一皿食べたとしても、カロリーオーバーになりませんし、これを食べれば本当に疲れが取れます。
私の夕食メニューを見て、質素でわびしいと思う人もいるかもしれません。
しかし逆に、今の世の中では質素なメニューこそ最高のご馳走だと思っています。
皆さんご馳走というと、ステーキやお寿司、すき焼きなど、高価なものでなければいけないと考えているのではないでしょうか。
ここで中華料理の大家の言葉を紹介しましょう。
ある料理番組でアナウンサーが「どうして家庭でつくった中華料理は、お店のような味にはならないのでしょう』と聞きました。
それに対して中華料理の大家はこう答えたのです。
「油たくさん使う、調味料たくさん使う、味濃くする」
私はその言葉を聴いて、あまりの正直さにひっくり返りそうになりました。
そして、それこそ料理の真髄だと悟って、その料理人のことを心から尊敬しました。
家庭での食事は日常のことです。
材料費を倹約するためにも健康のためにも、薄味にして油も調味料も控えめにします。
だからあまり美味しさを感じないのかもしれません。
それに対して、飲食店は非日常を味わう場です。
贅沢な材料を使うことはもちろん、油も調味料もたっぷり使い味を濃くしている。
そのことによって日常の料理の常識をくつがえすことが大切なのです。
しかし、そんなご馳走を毎日食べたらどうなるでしょう。
年配のご夫婦が温泉旅行に出かけ高級旅館で食事をすると、松坂牛や伊勢エビが出てきます。
日ごろ食べたことのない食材と味付けに舌鼓を打ちます。
しかしそんな豪勢な料理が3日も続けて出てきたら、必ず具合が悪くなるはずです。
つまり、たまには不摂生もいいが、普段は素材も量も味付けも質素なほうが体にいいということなのです。
トマトひとつにしても、店ではスライスしたわずかなトマトにドレッシングをたっぷりかけて食べます。しかし家庭では、朝摘みのまだ露がついているような露地もののトマトにそのままかぶりつきます。
それはご馳走でも料理でもない質素な名食べ物ですが、どちらが体にいいか、みんなさんもおわかりでしょう。
自然の恵みである食べ物と、からだの中の魂が共鳴するような食事こそが、健康にとって最上のものです。
「1日1食」の食事とは、まさにそういうことを大事にしたもので、食べることを決しておろそかにしたものではありません。
1日一回の食事に懸けているわけですから、間違ってもインスタントラーメンやジャンクフードで済ませたりしたくなくなるのです。
●お腹が『グーッ』と鳴るのを楽しむ
私は朝食を摂ることはほとんどありません。
昨晩の消化し切れていない食事や、血液中に残ったアルコール、そして内臓脂肪を消費して朝食代わりとしているのです。
お茶も水も必要としません。
朝起きて顔がむくんでいるということは、細胞と細胞の間の「間質」というスペースに摂りすぎた水分があふれているということ。
そういうときにのどが渇いたらガムを噛みます。
唾液がどんどん出てきてのどは潤されますし、出勤までにむくみも取れます。
私の場合、むくんだ顔で患者さんに会ったらイメージダウンになるので避けなければなりません。
もちろん前の日にあまり食事を取っていないときは、自分でサンドイッチをつくったり、季節の果物を皮ごといただいたりします。
診療のある日は、朝7時半ごろに病院に到着。
夕方6時まで、外来、手術、会議と集中して働きますが、その間は緊張しているので、お腹がすくことはまずありません。
それでも、さすがに夕方になってくると、お腹が「グーッ」と鳴ってきます。
お腹が「グーッ」と鳴るのは、空腹を知らせるサインですが、だからといって、あわてて食事をかき込んだりはしません。
しばらくは、この「グーッ」の時間を楽しむようにします。
なぜなら、このときこそ、「生命力遺伝子」の「サーチュウイン(長寿〉遺伝子」が発現しているからです。
この遺伝子によって体じゅうがスキャンされ、壊れた箇所が修復されて、若返って健康になっている、というイメージを膨らませるようにしています。
このように、しばし空腹を楽しんでから、いざ夕食! とテーブルにつくわけです。
私にとっては、一日で唯一の食事です。
それだけに、かけがえのない大事な時間でもあるわけですから、食べたいものだけをよく味わっていただきます。
だからといって、一日分を取り戻そうとして、ガツガツたくさん食べたりはしません。
飢餓状態に置かれたときには、「倹約遺伝子」がよく働いて、非常に栄養効率がよくなっていますから、少量の食事でも十分に内臓脂肪がつき、体を維持することができるからです。
日中は、お腹がすかなければなにも食べない、喉が渇かなければなにも飲まない。
つまり自分の体の声に耳を傾ければいいということ。
逆にのどがからからに渇いたの感じたら飲んでもいいし、お腹がグーッと鳴ったら少しは食べてもいいのです。
●空腹時にお茶やコーヒーを飲んではいけない
空腹時にコーヒーやお茶を飲んで、具合がわるくなった経験はありませんか?
特にお茶には健康なイメージをお持ちの方も多いと重いますが、お腹がすいているときにカフェインを摂取すると、実は体にとてもよくないのです。
カフェインというのは、「アルカロイド」の一種。
アルカロイドとは、ニコチンやコカイン、モルヒネなどにも含まれている麻薬成分で、副交感神経に対して刺激作用があります。
つまり、カフェインを含んだコーヒーや緑茶、紅茶には、モルヒネなどの麻薬と同じような作用があるということです。
空腹時に濃いコーヒーを飲んだりすると、吐き気やめまいがして、よだれが出たり、下痢をするようなことがあるのは、副交感神経への刺激作用があるから。
自然界の動物がコーヒーの実やお茶の葉っぱをどんどん食べたら、その植物は滅んでしまいます。
そこで食べると吐き気を催すような毒をもつようになりました。
それがカフェインです。
人間は満腹のときの眠気ざましに、その毒を飲んで副交感神経を刺激しているわけです。
このように毒性の強いカフェインを、満腹のときならイザ知らず、空腹時や夜の眠気覚ましに飲むのが体によくないことは明らかです。
お茶の中には、タンニンも入っています。
ちなみにタンニンの「タン」は「なめす」という意味。
昔は皮をなめすために使われていました。
つまり頑丈なたんぱく質を変性させる性質があるのです。
なぜ、毒ともいえる成分がお茶に含まれているのか。
これは、お茶の木が生き残るための防衛作用なのです。
お茶の毒にはハナキガというガの幼虫がついてその葉を旺盛に食べます。
お茶の木もガに食べられる一方では枯れてしまいます。
そこでガの幼虫に消化吸収障害を起こさせるためタンニンという毒をもつようになったというわけです。
お茶のほか、タンニンを持っている植物としてカキやバナナがあります。
いずれも実が熟するまでの青いときには、虫や動物に食べられないようにタンニンの量が非常に多いのです。
反対に実が熟してくると、タンニンの量がぐっと減って目立つ赤色や黄色になり、いい匂いを出して、甘い味になって「どうぞ私を食べて、種を遠くに運んでください」と訴えかけるのです。
自然はよくできています。
食後にお茶を飲むと、おなかがすっとして満腹感がやわらげられるのは、このタンニンの作用で消化管の粘膜が変性を起こして消化吸収障害が起こるから。
酒を飲むときにカキを食べると酔わない、というのも同じ原理です。
人間は植物がみずからの身を守るための毒を、クスリとして用いているわけです。
ウーロン茶も同様で、油っこい中華料理によく合うのは、消化吸収障害を起こす性質があるからです。
ここで注意してほしいのは、このような毒の成分を含むお茶やコーヒーを、育ち盛りの子供に飲ませてはいけないということ。
カフェイン中毒になるだけでなく、消化吸収障害から栄養障害を起こしてしまう可能性があります。
消化器の弱っているお年寄りの場合にも、お茶はうがいをするためのもので、あまり頻繁に飲むものではないと思ったほうが無難でしょう。
どうしてもお茶が飲みたいという場合は、カフェインの入っていない麦茶やゴボウ茶にします。
ごぼうの中に入っているサポニンには、油を中和する作用があります。
必要なデンプンやタンパク質はちゃんと消化吸収し、余分なコレステロールだけは中和して体外に排出する。
あるいは血液中に入ったとき、血液中の悪玉コレステロールだけを中和して体外に排出する、非常に理想的な飲み物だといえます。
病人にも育ち盛りの子供にも安心で、なおかつメタボな大人が飲んでも効用に富んだお茶だというわけです。
ゴボウ茶の主成分は、「ポリフェノール」です。
今でこそポリフェノールといえば、赤ワインに豊富な成分で、健康にもよいことが知られています。
もともと赤ワインが注目されるようになったのは、フランス人が肉や乳製品などの高脂肪の食事をたくさん摂っているにもかかわらず、心臓病になる確率が低いという「フレンチ・パドラックス」と呼ばれる現象に端を発しています。
調べていくと、赤ワインをつくるときに使われるブドウの皮の中に含まれているポリフェノールの一種、最近話題になっている抗酸化物質の「レスベラトロール」が体に大変いいことが判明しました。
一方で研究結果からゴボウのポリフェノールは、あらゆる植物の中で最強のものであることが証明されました。
なぜかというと、たとえば同じポリフェノールをもつブドウやリンゴを土の中に埋めたらたちどころに腐ってしまいます。
けれどゴボウは土の中という非常に苛酷な環境で育つにもかかわらず、そこで腐ることはありません。
それだけ、ゴボウの皮の中に含まれていルポリフェノールは、非常に強力な防菌防虫作用、大変すぐれた抗酸化作用、そして土の中でも傷を治す創傷治療作用を持っているのです。
しかも、ゴボウにはカフェインのような中毒性もありません。
そこで私は、のどが渇いたら日常的にゴボウ茶を飲むようにしているというわけです。
ここで、ゴボウ茶の家庭での簡単な作り方を紹介しておきましょう。
ぜひご自分で作って試してみてください。
ゴボウ茶のつくり方
@ ゴボウをよく水洗いして泥を落とし、皮つきのままささがきにする。
A 水にさらさず、そのまま新聞紙の上に広げて半日ほど天日干しにする(夏なら2〜3時間でよい)。
B フライパンで油を使わず10分ほどゆっくり乾煎りする。
C 煙が出てくる寸前でとめ、そのまま急須に入れ、沸騰したお湯を注げば出来上がり。
●「1日1食」でなぜ栄養不足にならないのか?
「1日1食」というと、「それで栄養不足にならないのですか?」とよく尋ねられます。
食べる量が少ないことに対して、不安や心配を持つ人が多いのです。
栄養について考える時一番大事なことは、栄養は「量」ではなく、「質」だということ。
たくさん食べたからといって、栄養が満たされるわけではありません。
たとえば、スナック菓子やファストフードばかり食べている人もいれば、粉ものが好きでデンプンや炭水化物ばかり摂っている人もいます。
そうした食生活では、いくら量が満たされても、栄養的には非常に偏ったものです。
しかも栄養が偏るだけでなく、体にとって毒になるようなものまで一緒に摂っている場合も多くあります。
その毒を代謝するために、よけいに必須の栄養素が消耗されてしまいます。
高カロリーの食事を満腹するまで摂ったあとに、必ずデザートのスイーツを、これまたたっぷり食べるというのが習慣になっている多くの欧米人。
さらに、足りない栄養素はサプリメントで補おうという考え方が、先進国と呼ばれる国々に住む人々の考え方です。
けれども、何百種類のサプリメントを飲んでも、すべての栄養素を摂ることはできません。
栄養素には、数え切れないほどの種類があります。
体の中で合成されない必須栄養素だけでも46種類もあります。
さらに、まだ発見されていない未知の栄養素もあるかもしれません。
そのうち、何かひとつでも欠けてしまったら、すべての栄養の連携がうまく取れなくなってしまいます。
単一の栄養素によってつくられたサプリメントを何十種類摂っても、食事のバランスが悪ければ必ず不足する栄養素が出てくるのです。
では、どうしたらよいか。
食べる量は少なくても、すべての栄養素をバランスよく含んだ「完全栄養」を摂ることが重要なポイントとなります。
完全栄養とは、前にも触れたように、牛乳やタマゴがその一例です。
赤ちゃんはミルクを飲んで育つわけですから、その中にひとつでも栄養素がかけていては困ります。
タマゴも同様です。1個の卵が細胞分裂を起こして、それがひとつの生命を作るわけですから、大人のニワトリとまったく同じ比率の栄養素がその中に含まれていると考えられます。
何か一つの栄養が欠けても、ニワトリに成長することはできなくなってしまうのですから。
逆に、何かの栄養素が過剰に含まれていても害になってしまいます。
これについては、後ほどお話しましょう。
●「一物全体」で完全栄養を摂る
完全栄養といえ、大の大人が牛乳やタマゴをそのまま摂取するだけでは「食事」とはいえません。
それに、乳製品や卵は非常にコレステロール値が高い食品。
そんなものばかり食べていては、これまたラバランスを欠いた食事になってしまいます。
そこでバランスの取れた栄養とはどうゆうものかを考えましょう。
それは、私たちの体を構成している栄養素と同じ種類の栄養素が、同じ比率で含まれているもの。
具体的には牛やブタを丸ごとそのまま食べれば、おそらく人の体を構成しているのとほぼ同じ栄養素が含まれているでしょう。
しかし、牛やブタを丸ごと一頭食べるなんて、現実的には無理な話。
そこで、魚の登場です。
生物学的に見ても、人類が誕生する以前までさかのぼって考えれば、地球上の生物は、すべて海で誕生しました。
私たち人類の祖先も、もとをたどれば、すべて魚に行きつきます。
だとすれば、魚を丸ごと一尾食べるののが、もっとも人の体を構成している栄養素と近い、バランスの取れたものということになります。
けれども、いくら一尾丸ごととはいっても、マグロのような大きな魚を丸ごと食べるわけにはいきません。
トロや赤身の部分など、限られてしまいます。
それでは、栄養バランスの面からいうと、偏った栄養になってしまうというわけです。
そこで『小魚』を丸ごと食べることをお勧めします。
昔、江戸の町人が食べる魚の天ぷらは、必ず「手一束」といって、手のひとつかみの中に入る程度の、江戸前で取れる小さな魚だけでした。
そういう小さな魚を、「皮ごと骨ごと頭ごと食べる」というのが、江戸の町人の考え方であり、それがとりもなおさず、江戸時代の健康法でもあったのです。
多少大きな魚でも、頭の部分は素揚げにして食べ、骨の部分は骨せんべいにして、頭から尻尾まですべていただきました。
もちろん、エビのしっぽを残すなどという、もったいないこともしません。
江戸前の天ぷらダネといえばアナゴが筆頭ですが、実は江戸時代には、アナゴのように大きな魚は使わず、ギンボというウツボのこのような、小さな魚を使っていました。
彼岸の時期にはハゼを食べました。
そうしたものを、「皮ごと骨ごと頭ごと」食べることによって、完全栄養を摂ることができたのです。
こうした食に対する考え方を「一物全体」といいますが、もともとは仏教用語で、生物は何かひとつがかけていても生きていけない、地球上の生物もどれひとつとっても無駄に存在しているものはないという意味です。
同様に、人間が食べるもの〈魚、穀物、野菜など〉も、自然界の命を丸ごといただく「丸ごと食」が、生命体としてのバランスをとるのにもっとも望ましいということになります。
一部分を食べるのではなく、丸ごと食べるのがよいとなれば、動物にしても魚にしても、大きいものより小さいもののほうが人間の食べ物としてふさわしいといえるでしょう。
一方、戦前までの日本では、栄養失調や栄養の偏りから命を落とすケースが珍しくありませんでした。
そうした食をめぐる環境の中では、食べ物が薬になるという「医食同源」の考え方が食の基本となっていました。
つまり、肉も魚も野菜も穀物も、食べ物はすべて薬となるものであり、全体を食べること自体が、そのまま生きていくのに欠かせない「養生」になっていたわけです。
かつての日本人は、誰もがこうした「一物全体」「医食同源」にもとづく完全栄養を、それと意識することなく取り入れていました。
それが庶民の当たり前の食事だったのです。
●野菜に捨てるところなんかない!
野菜を食べるに当たっても、「一物全体」「医食同源」の考え方は同じです。
基本は、「葉ごと皮ごと根っこごと」。
つまり捨てるところは何一つなく、丸ごとすっかり頂くという考え方です。
たとえばダイコン。
ふろふきにするとき、葉は捨て、皮(実の表面)を厚くむいたりしていませんか。
ダイコンの実の部分は、ほとんどデンプンです。
葉の部分にはビタミンとミネラルが豊富で、皮の部分には、ゴボウやブドウと同様にポリフェノールという傷を治す効果や抗酸化作用にすぐれた栄養素が含まれているのです。
江戸時代には、殿様が実の部分を食べ、葉や皮は下々の者が食べていました。
ところが、長生きするのは葉や皮を食べていた下々の者で、実の部分だけを食べていた殿様は栄養失調で早世するケースも珍しくなかったといいます。
このことは、何をどう食べたらよいかを教えてくれています。
昔は大根の葉ひとつとっても、保存用に日に干して乾燥させ、決して捨てたりしませんでした。
この干葉は、冬の間の大切なビタミン減となっていました。
太い実の部分はふろふきにして、川はキンピラに、母味噌汁の部や油味噌炒め煮すれば、一本丸ごと、余すところなく食べきることができますね。
ほうれん草も、ビタミンとミネラルが豊富な葉の部分は押した市に、デンプン質で当分形かいけっこのピンク色の部分は水炊きにすれば、酵素がデンプンを分解して糖度があがり非常に甘くなるので、辛し和えなどにピッタリです。
こんなふうに工夫しながら料理すれば、一つの素材から無駄なく何品も料理ができて、楽しくなります。
捨てるところなど、ひとつもないはずです。
それが、飽食の時代となる以前の日本の、ごく一般的な野菜の食べ方でした。
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石川県認定 |