茶碗蒸しが美味しい
から揚げが美味しい
百合根
 
柔らかな甘味とホクホク&モッチリとした歯ざわりが百合根の持ち味です。
ヨーロッパの人たちはユリの花が大好きなので、「ユリの根を食べる」と言うと驚きますが、和え物、蒸し物など、関西で特に好まれる食材です。
鱗片がたくさん合わさっているところから「百の根が合わさる」という意味で百合根という漢字があてられました。
 
ユリを栽培するだけなら、痩せた土地でも鱗形やムカゴ(オニユリの場合)を植えるだけで育ちますが、 大きなユリネを作るためには大変な手間がかかります。
植付けから収穫まで3年かかり、その間ずっと蕾(つぼみ)を取り (花に栄養を取られると球根が大きくならないので)、病気にならないように気をつけていなければなりません。
収穫の時も、傷つけないように一個づつていねいに掘り出してオガクズに詰めて出荷します。
 
ほとんどが北海道産で、霜が降りる10月頃に収穫し、正月用の食材として12月に出荷のピークをむかえます。
収穫してから2〜3ヶ月経った頃の方がデンプンが糖分に変わって甘味が増しています。 正月が過ぎて値が下がった頃が買い得ですね。
 
鱗片を一枚づつ剥がして使うのが基本です。ゆでる時は塩を多めに入れるのがコツです。
家庭料理としては、茶碗蒸し、カツオだしのあんかけ等にする事が多いと思いますが、私はシンプルな唐揚げが一番好きです。
ユリネ本来の持ち味を十分に引き出していると思います。
 
日本での年間生産量は約4,000トン。95%が北海道産です。
一方、その70%が関西圏で消費されます。
 
◆ 百合根の茶碗蒸し
材 料】(4人分)
 ・百合根 12片 ・卵 3個 ・だし汁 2.5カップ
 ・薄口醤油 小さじ1/2 ・みりん 小さじ1 ・塩 少々
 ・他の具材はお好みで(鶏肉・かまぼこ・銀杏・椎茸・海老・三つ葉・ゆずなど)
【作り方】
1、温かいだし汁に他の調味料を入れ人肌になるまで冷まします。
2、ボールを2個用意して、一つのボールに卵を溶いたら茶漉しで卵液を濾します。3、1と2をあわせます。
4、茶碗に具材を入れ3の卵液を静かに注ぎます。
5、湯気のたった蒸し器に茶碗を入れ強火で2〜3分、弱火にして12〜13分蒸しま
す。串を刺して穴から透明なだし汁が出るようなら火からおろし、三つ葉やゆずを入れて出来上がり!!
 
 
相馬暁先生 ゆり根の話
● ユリの古里とその由来
ユリ科は被子植物、単子葉植物綱、ユリ目ユリ科に属する植物の総称です。
ユリ科の植物はほぼ全世界に分布し、キク科、マメ科、イネ科などに次いで繁栄し、種子植物の中では大きな科です。
ユリ科の植物は一般的には草本ですが、リュウゼツランの様に木本の物も少数ながら存在します。
このユリ科には、ユリ亜科(ユリ属、チューリップ属など)を筆頭に、シュロソウ亜科(イヌサフラン属など)、ネギ亜科(ネギ属など)、ツルボ亜科(ヒヤシンス属など)、リュウゼツラン亜科(リュウゼツラン属など)、アスパラガス亜科(スズラン属、アスパラガス属)など含まれています。
 
ユリ属に含まれる植物は北半球温帯を中心に、現在80〜100種程度の存在が認められています。
人(分類法)によっては世界中に96種あり、その内、59種がアジア、特に、日本、中国、朝鮮半島に多くの種類が自生しています。
日本国内でも、ユリは殆ど風土を選ばず、いたる山野に自生しています。
その数は15種で、その内6〜7種は観賞価値が高く、花卉として利用されています。
また、それらを中核とする交配によって、多くの観賞用品種が育成されています。
 
しかし、観賞用の豪華な花という一方で、中国や日本では古くからユリ根(球根=百合)を薬用、食用として利用してきました。
ユリ根は鎮咳、去痰、利尿作用があるとされるほか、高熱の予後、腫れものの解毒に効果があるとされていました。
そして苦味のないものは食用としても利用されてきました。
食用として栽培されているのはヤマユリ、コオニユリ、オニユリの三種です。
初めは自生している物(野生の物)の採取に頼っていましたが、17世紀になって栽培が始まりました。
 
江戸時代の農学書である農業全書によりますと、当時、関東ユリ、薩摩ユリと言われていた白いユリは薬用に、オニユリを食用に利用していたようです。
また、ユリの新しいものは蒸して食べても、肉と一緒に煮てもよい。
乾かした物は粉にして餅として食べても旨い。
塩湯でゆがき、菓子としてもよいし、その他、吸物、煮〆などにも使えると、書かれています。
同じ時代の貝原益軒の大和本草では、ヤマユリ、ヒメユリ、テッポウユリなどを指して、苦み多く、食用にならないと記載されています。
オニユリのみを食用に勧めています。
 
なお、花も暑い夏の最中に咲いて美しいから、一般家庭にも必ず植えるとよいと、述べています。
大農学者・宮崎安貞も知らないことがあったのですね。
実は、食用ユリの花は蕾の内に摘蕾しなくてはなりません。
花を咲かせますと、食べる部分・球根が大きくならないし、球根に苦みが着き易いのです。
 
ところで、ユリと言う名の由来は、大きな花と長い茎が風に揺れる様子の「揺る」が「ゆり」に転じたと言われています。
また、「百合」の字が当てられるのは、いくつもの鱗片が、例えば、百も重なり合っていること、によると言われています。
 
● ユリの生態と食用ユリ品種の特性
一般にユリネと呼ばれる食用に供する球根は、ラッキョウやタマネギ、チューリッブなどと同じく、肥厚した鱗片が重なり合ったものですが、タマネギやチューリップには全体を包む皮(鱗皮)がありますが、ユリネにはありません。
そこが異なります。
なお、球根は正しくは鱗茎と言う地下茎の一種で、中心の短縮茎を囲んで、葉が変形した白い鱗片が重なり合い、球状になったものです。
 
この鱗片が肥大して地中の茎に「木子」とよばれる小球をつけますが、ユリの栽培は普通この木子を使って栄養繁殖を行います。
葉は笹の葉状のものが多いです。
花は、ヤマユリの場合は白い大輪の花を着けます。
コオニユリの花は赤橙色、オニユリは黄みを帯びた赤色の花を着け、花片が外に反転し、内側に暗紫色の斑点を持っています。
なお、一般的に観賞用に栽培されているユリの根は苦みがあって、食用には向きません。
食用ユリの条件としては、ユリネに苦味がないか、あってもわずかであることです。
また、強健で栽培、増殖が容易であることも必要です。
 
食用とされるのはコオニユリが主体で、オニユリ、ヤマユリも食用とされます。
また、ワダユリ、タツタユリ等も食用となります。
 
コオニユリは日本全域と中国北部〜ロシアの極東南部に自生しています。
球根は扇球形で、中型のユリネです。
球根の径は5〜8cm、その重さは80〜100gで、鱗片は白色で全く苦味がありません。
花は斜め下向きに着き、朱紅色で赤紫色の斑点があり、花弁の先端が反転しています。
 
オニユリは日本をはじめ、中国の中、北部、ロシアの極東地域に広く分布しています。
球根は扇球形で、中型のユリネです。
その球根の径は5〜8cm、重さ100g程度です。
鱗片は黄白色でわずかに苦味があります。
花は大型で、朱赤色で暗紫色の大きな斑点があります。
 
ヤマユリは日本原産のユリです。
北海道南部、本州、四国、九州の一部に分布しています。
球根は扁球形で、大型のユリネです。
球根の径は7〜10cmで、その重さは100〜120gです。
鱗片は黄白色で先端に桃色の斑点があるのが特徴です。
花はユリ類中で最大で、色は純白です。
花弁の中央に淡黄色の条があり、紅〜紫色の斑点があり、香気が強いことが一つの特色です。
 
● ユリの生産・流通
ユリネの栽培は風土、土壌を選ばず、日本じゅうどこでも栽培が可能ですが、比較的冷涼な気候を好むことと、暖地ではウイルスなどの病害を受け易いこともあって、寒い地域のほうが品質の優れたものが取れます。
明治の末ごろには北海道、東北をはじめ、関東各地、京都、岡山、島根などでも栽培されていましたが、次第に暖地での栽培は減り、近年は、コオニユリを中心に生産する北海道産が全体の95%も占め、出荷先は、比較的ユリネを常用する関西地方がメインと成っています。
 
近年、ユリネ栽培はウィルスフリー化種苗を利用するようになってきました。
フリー化苗は肥大性に優れ、効率の良い栽培が出来ます。
ただし、ウィルスフリーとは、「病気にかからない」という意味ではなく、一般販売用に畑に植えるまでは、寒冷紗による隔離栽培、ならびに、健全な輪作体系の中での栽培が必要です。
 
食用ユリが花をつけるのは、7月から8月にかけてです。
人の腰の高さほど背丈が伸びた頃に蕾をつけます。
けれども、よい球根をとるためには花より根に栄養が行って欲しいので、摘蕾(てきらい)といって、すべて蕾の内に切り取ります。
これは大変な作業です。
 
しかし、一番手をかけるのは掘り取りの作業です。
そう、収穫期は北国・北海道では、晩秋というよりは初冬と呼びたい10月下旬から11月初旬です。
冬の寒さの中での作業です。
この時はもう、腫れ物にさわるような扱いです。
掘り取って根を切り、洗ってからオカクズとともに箱に詰めますが、乱暴に扱うとゆり根にすれ傷がついて赤く変色してしまいます。
ユリネ本来の白さ、光沢が失われないよう、慎重に扱います。
こうして一つずつ丁寧に掘られたユリネは、主におせち料理用として、関西をはじめ全国に出荷されます。
 
ユリネの栽培面積は、1990年には425ha、生産量は3754tでした。
このうち94%の 398haが北海道に集中します。
残り3%、13haが東北で栽培されています。
生産はこのところ漸増しており、10年前より倍増しています。
 
● 旬と目利きのポイント
冷蔵技術が発達して、一年中出回っていますが、冬場が旬です。
10月ごろに収穫したものを冷暗所に貯蔵し、順次出荷して行きますが、11月から2月ごろになると、フラクタンと呼ばれる貯蔵養分がある程度、糖化(糖分に変わること)も進み、ほんのりと甘味がのり、最も味がよいです。
 
選ぶ時は、外皮に傷があったり、サビと呼ばれる変色している物は避け、色が白くて、張りがあり、よく締まった重みのある物を選ぶことです。
紫がかった物はやや苦みがあります。気を付けて下さい。
最も、毎晩午前様の亭主に苦い思いをさせるのも、良いかも知れませんね。
芽が二つ或は三つある「二つ芽」、「三つ芽」の球根も収穫されることが多いのですが、理想は「一つ芽」です。
一つ芽が最上級のユリネとされています。
 
ユリネの保存は、新聞紙に包んで、風通しのよい涼しい所に置くか、オガクズなどに入れて置くと、結構長持ちします。
鱗片を真空パックした掻きユリネは、保存の手間を省き、調理にも便利です。
 
● ユリネの栄養価・機能性
ユリネは昔から滋養、強壮に良いとされ、中国や日本では広く薬用として利用されていました。
漢方では、百合と書いてビヤクゴウと読み、ハカタユリ、イトハユリ、オニユリなどの鱗茎の鱗片、俗に言うユリネを、消炎、鎮咳、利尿、鎮静薬として、喉の痛み、咳、精神不安などに用います。
また、健胃、せき止め剤として、古くから民間療法でも利用されていました。
さらに、すりおろしたユリネに酢を混ぜたものを、打ち身や乳腺炎の初期に塗れば治りが早いと言われ、できもの、腫れ物の吸い出しにも効果があるとされています。
 
栄養的に見ましても、糖質に富み、結構な高カロリー食ですが、隠された機能として、ナトリウム含量1に対してカリウム含量が730と非常に高く、カリウム野菜の横綱と言えます。
カリウムはご存じの通り、体内でナトリウムの害、高血圧、心臓病等の成人病を防ぐのに、約立ちます。
 
● ユリネ料理の色々 京料理に欠かせぬ食材
ユリネは、そのほんのりした苦みと甘み、ねっとりした舌ざわりを生かして、甘煮、含め煮、茶碗蒸しの種に利用します。
また、きんとんやユリご飯も良いですね。
昔のアイヌの人達は、山野で採取したユリネを大切に貯蔵しておき、来客の折には、ユリネダンゴやユリネご飯を作って、もてなしたと言うことです。
 
食用にするのは、コオニユリ、オニユリ、ヤマユリでした。
白ユリは、食べると下痢を引き起こすので要注意です。
ユリネは鱗片をはずし、汚れたり傷んだりしているところを包丁できれいに取り除いて、よく洗い、塩をひとつまみ入れた湯で、ゆでてから料理します。
関東ではあまり食べませんが、京都ではよく使われます。
京料理の煮物、蒸し物、あんかけ、和え物の材料として欠かせない素材です。
関西では料理店だけでなく、一般家庭の食卓にもよく登ります。
また、中華料理にもユリネはよく用いられます。
衣もをつけて揚げ、あめをからめた抜糸百合という点心は代表的なものです。
保存用の乾燥品もあり、温湯でもどしてから料理に使います。
(故相馬暁博士が北海道立中央農業試験場長在任中に作成したものです。)

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001