旬野菜の選び方と保存法 (その2)
きゅうり

暖かくなり、初夏を迎え、陽射しが強くなるにつれ、たっぷりの水分とみずみずしい涼やかな香り、シャキッとした歯ざわりが美味しい「きゅうり」のシーズン。
ハウス栽培が多くなって、季節を問わず年中食卓にのるキュウリですが、露地栽培ものが出荷されるの5月から8月が旬といえましょう。
この時期のきゅうりは、ビタミンCの含有量が他の季節に比べて2倍ふくまれるといいます。


  キュウリは、インドのヒマラヤ山脈が原産地といわれ、インドでは三千年前から栽培されていたそうです。日本への伝来は8〜9世紀とのことです。
胡瓜という字は、漢の時代に西域から中国に伝わったため、胡(西域)の瓜、胡瓜と呼ばれるようになりました。また、昔はキュウリが熟して黄色くなっってからを煮て食べるのが主だったので黄瓜と呼ばれたそうです。
(私も幼かったころ、田舎では大きく成長した黄色いきゅうりを、皮をむき縦に二つ割して種を取り除き、それを料理に合わせて適当な大きさに切り、煮物、あんかけ、なます、味噌汁、漬物などで食べた記憶があります)
インドから西へ伝わったキュウリは欧米でサラダやピクルス用として発達しましたが、日本では、江戸時代になると早熟栽培が始まり、明治時代には温室栽培も始まりました。昭和30年以降にはビニールハウス栽培が始まり現在のように1年中出回るようになりました。


硬くハリがあり、ミズミズしく、イボが痛いくらいしっかりしているものが新鮮で、多少の曲がりは気にしなくてよいでしょう。
しかし、成り口から先までスンナリ太さが均一なものがよく、極端に先が細くなったものや、先っぽが太くふくらんだものは良品とはいえません。


水分が失われないようにラップに包む鳴りビニールの袋に入れて冷蔵庫の野菜室に。
夏場の高温で育ったきゅうりは、5℃以下に冷やすと低温障害にかかり、傷みやすいので注意が必要です。また、きゅうりを低温で長く置くとビタミンCなどの成分が大きく減少し、香りも無くなってしまいますので、早く召し上がっていただくのが一番です。


キュウリはそのほとんどが水分で、96%と多く、栄養的にはビタミン、カロチン、カリウムなどが含まれますが、量は少なく、暑い季節に涼味のあるさわやかな歯ざわりやサッパリとした味覚を味わいます。
キュウリ単体で栄養を摂取するというよりも、いろんな料理において夏場の食欲を増進するキュウリを用いることで、他の素材や調味料からしっかり栄養分を摂取するのに効果的な食材といえます
キュウリは古くから渇きを癒し、利尿を促進し、心臓病や腎臓病、尿毒症、高血圧症に効くといわれてきましたが、キュウリに含まれるカリウムは、体内でナトリウム(塩分)を排するといいますから、高血圧や腎臓病の方にお勧めの野菜です。
なお、利尿作用や体の老廃物を排出する効果のあるイソクエルシトリンという成分を含んでいて、むくみをとるのに効果がありま、急性の腎炎や膀胱炎、二日酔いにも効くとのことです。
キュウリにはビタミンCを壊す酵素アスコルビナーゼが含まれていますから、他の野菜と一緒にサラダなどにする時は、レモン汁やお酢を加えることで、ビタミンCの損失を抑えることができます。

 


キュウリは食塩、もろみ、マヨネーズ、ヨーグルトなどで食べる生食のほか、酢もみ、漬物(醤油漬、ぬかみそ漬、ピクルス)、煮物、炒め物等の歯切れを活かした各種の調理に広く利用されます。
昔ながらのキュウリのぬか漬けは、理想的な食べ方で、ビタミンB1をはじめ、骨を丈夫に保つビタミンK、ビタミンCが生よりもグンと増えます。腸内を整える植物乳酸菌もたっぷり含まれ、整腸効果も期待でき、疲労回復にも効果があります。
キュウリを生食塩を振り、まな板の上で手のひら転がすように「板ずり」をして水洗いする。イボが取れ色もよくなり、表皮も適度にやわらかくなって口当たりがよくなります(調味料が浸透しやすくもなります)。

 暑いときには、キュウリとわかめの酢の物が最高ですね。
きゅうりは小口切りしたキュウリを塩もみしてしんなりとしたら水で塩を洗い流して、水気を切り、わかめを水に戻して食べやすい大きさに切る。しらすを混ぜ合わせ、お好みで作った甘酢(純米酢に砂糖、天然塩、だし汁)で和える。


キュウリの表面イボが付いていますが、これが白いものと黒いものとがあります。
黒いぼ系は低温に強く、もともと春から初夏取りの早生種で全国的に栽培されていました。皮が厚くて肉質がやわらかいのが特徴です。
白いぼ系は、皮が薄くやわらかく、緑色が美しくどんな料理にも向気、食味が優れているとして好まれるようになりました。
ハウス栽培の技術や品種改良などで白いぼ系が通年収穫できるようになったことから、現在では白いぼキュウリが生産量の9割以上を占めるようになりました。


10年くらい前までのキュウリの表面には白い粉が、ふいたようについていました。これは「ブルーム」と呼ばれ、キュウリから自然に出てくるロウ物質で、このブルームは雨をはじいたり乾燥から果面を保護するための成分です。
  この白い粉、ブルームが農薬ではないのかと消費者から誤解され敬遠されるということが多く、新しく開発されたのがブルームの出ない「ブルームレスキュウリ」です。
この「ブルームレスキュウリ」はキュウリの幼苗をブルームのでない「カボチャ」の台木に接ぎ木することによって作られます。現在では市場に出回るキュウリのほとんどが、この「ブルームレスキュウリ」です。
しかし、「ブルームレスキュウリ」について、ブルームキュウリを知る人からは「目ばえはいいが皮は硬いし、昔のような食感が無くなった。お漬物にしても以前のようにおいしくならない」と、昔のブルームキュウリを懐かしむ声が聞かれます。歯ざわりがよく本来のおいしさを持ったきゅうりとして昔のブルーム付きキュウリが、見直され始めています。


「もろきゅう」は、普通のキュウリを10センチくらいの小さいうちに若採りしたもので、 品種ではありません。若いキュウリにモロミを付けて食べるところからこうよばれるようになりました。寿司のカッパ巻きや、味噌をつけてそのまま食べるのに使われます。
「花丸きゅうり」は、さらに小さい花がついたままの、長さ3〜4cmほどの愛らしいもので、刺身に妻などに使われます。

 


長さ40cm前後になる長いキュウリで。ちりめんのように表面にしわが寄った白いぼです。見た目があまりよくないですが、シャキッとした歯切れ感がよく、漬物にしてもとても美味しいキュウリです。
盛夏から初秋にかけて多く出回ります。