自然農法
戸田歯科医院HPより
1.医食農同源
 
医食同源と言う言葉は一般によく使われていますが、農がどうして同源なのか私なりの解釈をしてみたいと思います。
三重大学の一般教養過程で「食と農」の講座があり、毎回違った先生が各専門の分野の講義をしています。
食文化や食物の流通など様々です。
私は「ある歯科医からみた日本の食生活」の演題で講義を担当しています。
簡単に言えば虫歯や歯周病になりにくい食事はこんなのがありますよという話です。
 
このような講座があるということからみても、また農から生まれた野菜を食して生きている私達は食と農は切り離しては考えられません。
気候や風土の違いによる食文化や農法、農場から食卓までの流通や保存の問題などいろいろありますが「食と農」は同源と言えるでしょう
しかし農は私達から少し遠い存在に成りつつあります。
実際私達が関わっているのは野菜をどのように料理し、どのような考え方で、どのようにして食べるかの問題の方が身近になっています。
 
「医と食」を同源にする考え方は東洋医学の考え方で、食により病気にもなるし治療にもなるということです。
医学の父といわれているヒポクラテスも「食べ物で治せない病気は医者でも治せない」と言っています。
東西を問わず医と食は切っても切り離せません。
 
「医と農」が同源だとする考え方は少し理解しづらいかもしれません。
医=食 食=農 故に医=農という数学的な図式ではなく、「医は農に、農は自然に学べ」と解いている人もいるぐらいです。
理由として
1) 医は人(動物)を農は植物を対象にしていますが、どちらも生物であるということです。
生物の特徴として環境に左右されるため、環境をいかに快適にするかを考えなければなりません。
2) 栄養は、人は腸の絨毛より植物は根の毛根より吸収されます。
3) 腸内細菌や土壌細菌によって健康が左右されます。
善玉細菌をいかに増やすかが健康作りや野菜作りの基本になります。
 
まだまだ共通点はたくさんあると思いますが、医と農を同源と考える理由です。
以上このような考え方で医食農同源と考えています。
相違点としては人と野菜の寿命が違うことです。
人は80年、野菜は半年と短いため野菜の一生からいろいろなことが学べるわけです。
温度、水、光、風、細菌、栄養、虫などの環境を観察することで、野菜を通じて人の生き方を教えてくれます。
 
2、農法の分類
 
農法には様々な方法があり、人それぞれやり方が少しずつ違います。
理解しやすいように方法の違いにより図1のように分類してみました。




 
 農法 自然農法   有機農法   一般農法
 耕起
 肥料
 草
 農薬
無耕起    耕起     耕起
無肥料    有機肥料   化成肥料
無除草    除草     除草
無農薬    無農薬    農薬
 
1) 自然農法は最初に畝を作ってからは一度も耕すことなく草は生えるに任せます。ただ野菜の種を播く時や苗が小さい時は草の影にならないように草を刈ってやります。
決して草を根から抜くことはしません。
肥料も与えることは基本的にはしませんが、刈った草を野菜の根元においてやります。
草の根と刈った草が堆肥化してきます。
このような状態が2、3年続くと虫や微生物が住み着き、草と虫の糞や微生物により肥料を与えなくても自給出来る状態になってきます。
当然バランスのとれた状態ができあがり、農薬の必要はありません。
要するに自然の循環に任せる農法で人は手助けをするだけです。
簡単なようで結構難しく10年ほど思考錯誤しています。
自然を観る眼が無いのか野菜の声が聴けないのか、いずれにしてもまだまだ未熟者ではありますが、最近ようやく理解できるようになっていました。
 
2) 有機農法は通法に従い有機肥料の元肥を入れ耕し、畝を作り、種を播き、草が生えれば除草をする。
時々有機肥料の追肥を行ないます。
農薬は基本的には使用しません。
しかし現実には低農薬とか収穫前に農薬を控えたりした様々な方法があるようです。
家庭菜園でする場合はこの農法が適していると思います。
しかし有機肥料だけでは栄養分の偏りや、完熟していないと虫が付き易く結構難しいです。
追肥には化成肥料など少し配合して工夫をすれば大体作ることが出来ます。
私も大半がこの農法です。
 
3) 一般農法は大量生産する場合に適しています。
有機農法の場合大農場だと多量の有機肥料を必要とし、簡単に調達できないとコストがかかり採算が取れません。
その点化成肥料だと簡単に調達でき取り扱いも簡単です。
しかし病気や虫が付きやすくどうしても農薬を使用しなければなりません。
そのため微生物の生態系も変わってしまい、土壌も弱ってしまいます。
多量生産、多量消費のためにはこの農法が適してはいるのですが、問題が多いため最近農家の若い人達は有効な農法をいろいろ考えているようです。
 
大農場でも有機農法で成功している農家もあります。
一般農法しか方法がないと思い込まないでまだまだ工夫すれば将来希望のもてる農法がみつかると信じています。
ただ遺伝子組み替えの方向へは行ってほしくないものです。
 
3、草とどう付き合うか
 
草は農家や園芸家にとっては野菜の養分を奪い成長を妨げるため、邪魔な存在とされています。
特に夏場は生い茂る草との戦いであり、除草はたいへんな作業であります。
草とは別にもう一つ邪魔な存在として病気があります。
邪魔な存在として草と病気は似ているところがあります。
似たもの同士として少し違った面から私なりに考察してみました。
草と病気を対比するために、除草法と療法を対比してみました(図2)。
除草法と療法
1、手で取る  (重労働、選択的) → 外科療法
2、農薬を使う (簡単、半選択的) → 薬物療法
3、火で焼く  (選択できない)   → 放射線療法
4、草を刈るだけ(根は残す)     → 病気と共存
 
1) 手で取る方法は安全で確実ではありますが、広い面積には向いておりません。
外科療法も多くの人に施すことが出来ません。
2) 薬を使うのがもっとも簡単でありますが、薬害が心配です。
3) 火で焼く方法は火災や、残したいものまで焼いてしまう危険があります。
放射線療法も正常な組織を破壊する危険があります。
4) 草を刈るだけの方法は自然農法のやり方であります。
草を刈る作業もたいへんですが手で取る除草よりは楽です。
ターミナルケアやホリスティック医学にみられるように病気と共存していく医療があります。
 
草を邪魔者としていかに除去するかばかりを考えてきましたが、草はほっておけば必ず生えてきます。
それを除去することは自然の成り行きに逆らうためにかなりのエネルギーを必要とします。
 
本当に草は邪魔者なのでしょうか。
自然農法のところでも少し書きましたが、草は堆肥になりますし、草と表土10cmの間に微生物やミミズなどの生物の生態系ができあがります。
草が生えていれば乾燥を防ぎます。
また刈り取った草を野菜の根元に敷いても乾燥を防ぎます。
酸性土壌の土地には土をアルカリ性にする性質の植物が生えてきます。
他にもいろいろ役にたっていて、たとえどんな草であってもそこに存在する理由があります。
除草して耕せば微生物やミミズなどの生物の生態系が崩れてしまい、有機質成分も分解されどこかに流れてしまいます。
また土は乾燥して砂漠化します。
化成肥料や農薬を使用すれば土は酸性土壌になり硬くなってしまいます。
この悪循環を断ち切るためには人工的にますます手を入れなくてはならなくなります。
 
病気も本当に邪魔者でしょうか。
最近多くの病気が生活習慣病とされています。
生活習慣の乱れが長く続くと病気になるということです。
身体は異常があると警告を発しているのですが(未病の状態)本人(自己)は気付かないままに生活をしています。
発病して初めて自己に気付き、自己を省みるようになります。
それ故に病気は不幸なことではなく、自己を反省する機会を与えてくれ、より充実した生活を送るための神の贈り物なのです。
後悔することではなく感謝すべきことなのです。(少し宗教的な考え方ではありますが)このように病気が存在する理由であります。
 
歯科医療でも早期発見早期治療が一番良い方法とされてきたため、小さな虫歯を削って詰めてきましたが、最近は削って虫歯を大きくするよりはなにもせず経過観察をする方向へ変わりつつあります。
しかし何もしないわけではなく歯磨き指導や食事指導などを行ない、歯磨きの必要性や食生活の乱れを気づいてもらい虫歯と共存しながらそれ以上悪化しないように管理するようになってきました。
これと同じように草も抜かずに刈るだけで野菜の成長を妨げないようにして微生物の生態系を壊さずに共存しながら循環していくようにするのが自然農法の考え方で、草や病気を邪魔者扱いせずにうまく付き合いたいものです。
 
4.農法の違いによる野菜の違い
 
農法の違いにより野菜は次のように違いがあります。
 
自然農法     有機農法     一般農法
←――――――――――――――――――――→
味が良い               水っぽい
生育が緩慢              生育が早い
虫が付きにくい            虫が付きやすい
病気になりにくい           病気になりやすい
農薬を必要としない          農薬を必要とする
収穫量は少ない            収穫量は多い
 
自然農法の最大の利点は野菜の味が良いことでしょう。
欠点は収穫量が少ないことです。
一般農法の最大の利点は収穫量が多いことです。
欠点としては化成肥料や農薬を使用しているため水っぽくて味が良くないことです。
有機農法は自然農法と一般農法の中間的な存在です。
以上のような事が人の場合も同様に考えられます。
 
仙人             俗人
自然食を食べている人     加工食品を食べている人
時間は緩やかに進む      時間は早く進む
病気になりにくい       病気になりやすい
薬を必要としない       薬を必要とする
長生きする          長生きできない
 
仙人は人が山に住んでいると書きますが、自然の中で自然食を食べのんびり過ごせば病気にもならずに長生きできると考えられ、自然農法の野菜と似たところがあります。
俗人は人が谷に住むと書きますが、町の中で加工食品を食べて忙しく生活していれば病気になり長生きできないと考えられ、一般農法の野菜と似たところがあります。
 
普通の人は平野に住み中間的な生き方をしている人がもっとも多く有機農法の野菜と似たところがあります。
しかし必ずしもこのような単純な分類で分けられるものではありません。
それぞれ農法の違いにより味も変わってきますが、どの農法でもその道の達人にかかればまた一味も二味も変わってきます。
 
このように人も野菜も生物であり生物としての共通点はあり、人の場合はどのように生きたかが問題になります。
人もいろいろな環境において皆それぞれ違った生活をして、その中でどう生きたかにより味わいが違うのではないでしょうか。
味のある生活をして味わいのある人に成りたいものです。
 
5、自然農法の応用による生ゴミの処理法
 
自然農法についていろいろと書いてきました。
自然農法には利点や欠点がありますが、利点としてはなんといっても環境にやさしい農法だといえるでしょう。
 
耕さないから耕運機が要らない。
草刈り機は必要ではあるがガソリンの消費量は非常に少なくて済みます。
また農薬も使用しなくて済みますし、家庭からでる生ゴミを自然の循環に戻してやれます。
 
生ゴミの処理法としては自然農法に順じて草を刈り取った上へ捨てるだけです。
夏はすぐに乾燥しますが、冬は原型を留めたままで時間はかかりますが堆肥化してきます。
ただし丸見えで少し汚らしい感じがしますが、草の中に捨てるためあまり苦になりません。
 
穴を掘って埋める方法は一般的ですが、この方法だと腐敗してメタンガスが発生したりして好ましくありません。
コンポストを使用する方法もありますが、蓋を開けた時ものすごい腐敗臭がします。
 
酵素やEM菌などを使って堆肥を作る方法もありますが。結構手間がかかり専門的な知識も必要で素人がすればほとんど失敗して腐敗させてしまいます。
また毎日少しずつ出てくる生ゴミの処理には難しい面もあります。
 
欠点としてはカラスや鳥たちが冬の餌が無くなった頃、畑の生ゴミを食べにきます。
でも群をなして来るようなことはありません。
 
以前、もみ殻付きの米をビニールシートに干していたことがあります。
雀に米を食べられないかと見ていたらビニールシートからこぼれた米だけ食べ、干している米には全く被害がありませんでした。
雀の世界にも礼儀か遠慮があるようです。
カラスも畑に捨てた生ゴミを散らかしていくことはありません。
餌をくわえてどこかへ飛んでいきます。
 
人間が森を乱開発したため食べる物が無くなり人間社会へ食べ物を探しに来たのであれば、少しくらい生ゴミをあげてもよいでしょう。

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001