帯津良一・幕内秀夫 著   三笠書房
「なぜ「粗食」が体にいいのか」  より その2
 
● 『わかめは髪にいい』「レバーは貧血に効く」
・・・・・・こんな錯覚を信じるな
 
こんな歴史の中でつくられた常識のせいで、私たちは、食生活に関する3つの錯覚を植えつけられてしまったんです。その錯覚を取り去らなければ、食生活の本を読めば読むほど、人の話を聞けば聞くほどわからなくなってしまいます。
 
そこで、3つの錯覚とは何かについてお話します。
1つ目が、「肉を食べて筋肉もりもり」という錯覚です。
 
例えば、いいにくいことなんですが、私の患者さんの中にユニークな人がいました。
その人は、髪が薄くて困っていたらしいんですが、一生懸命何かを食べていたわけです。
何だかわかりますね。わかめなどの海藻類を懸命に食べていたわけです。
海藻を食べることはいいことだと思います。ただ、そこには大きな錯覚があります。
私は笑いをこらえるのに必死でしたね。
 
もしその人が考えるように、海藻を食べると海藻のように髪が生えるなら、もずくを食べるともずくのような髪の毛が生えてくるんですかね。
そうすると、とろろ昆布を食べたらストレートヘア、ひじきを食べたら5分刈りかなと、その人を見ながら想像してしまったんですよ。
でも、この人のような短絡的な錯覚は結構多いんです。
 
例えば、今でも保健所では、赤ちゃんのためのお母さんの授乳教室で、「おっぱい
をよく出すためには牛乳を飲んでください」と平気で言っているところがあります。
これも笑い話ですよ。
牛乳を飲んで、それがそのまま胸から出てきたら、母乳ではなくて牛乳ですよ。
飲んだ牛乳が、そのまま胸にまわってくるわけではありませんよね。
ところが、いつの間にか、そのような言葉が普通になってしまうんです。
 
私たちは食べものを消化するわけです。
消化するというのは、まさに消して化けるということです。
 
例えば、ご飯には、おっぱいを作る成分があるわけですよ。
体の中でさまざまな食べ物を消化し、おっぱいを作るのであって、牛乳を飲めばそのまま出てくるわけではないんです。
それなのに、そういう錯覚が実に多いんですね。
 
骨粗しょう症と牛乳についても、同じように錯覚しているんです。
牛乳にはカルシウムが多い、骨にもカルシウムが多い。だから、牛乳を飲めば骨が丈夫になる。これも錯覚なんです。
そんなにカルシウムがとりたかったら、セメントをなめればいいんです。大量にカルシウムがありますからね。それで骨が丈夫になるというのと同じということです。
 
あるいは、「貧血の人はレバーを食べろ」というのも同様の錯覚です。
たしかにレバーは赤いですよ。
でも、レバーを食べても、それが血管に入っていくわけではありません。
食べものからおっぱいも血もつくっているんです。
 
だから、昔のある年齢以上の人は、おっぱいを出すには牛乳を飲めだなんて、そんな駄洒落のようなことは言いませんでした。
その代わり、伝統的に全国的には三つの食品を共通してすすめていたものです。
一番多いのは餅ですね。二番はコイです。そして、三番目が味噌汁です。
これらの食品を母乳の出ない人に勧める例が、全国的に多かったんです。
この三つの食品がいいというのは、経験的に出てきたんでしょうね。
 
もし、レバーを食べて貧血が治るのなら、レバーより血を飲んだほうが手っ取り早くていいですよ。
でも、私たちの体というのは、そんなふうにはできていません。
いろいろな食品から体に必要なものをつくりあげているのです。
 
そうでなければ、私たちの胃袋や腸はこんな複雑な構造をしていないと思います。
便秘するほど複雑な構造をしているというのは、化けるという作業をやっているからなんですね。
 
 
● 朝は「ご飯・味噌汁・漬物・納豆」で、
驚くほど健康になる
 
2つ目が、「欧米型食生活が理想だ」という錯覚です。
 
あとで詳しく話しますが、ご飯を食べることほど大事なことはないのです。
たしかに添加物や農薬など、考えなければならないことが数々あります。
しかし、一番大切なことは何かといったら、間違いなく、米のご飯をきちんと食べることなんです。
 
アトピーの患者さんなどは若い人が多いですから、そういう患者さんのお母さんになどには、昭和40年以降に生まれた人もいます。
 
そんな若い若い患者さんやお母さんに、「朝はご飯と味噌汁と漬物ですよ。それに納豆も食べてみたら」と言うと、「えっ?」と驚く人もいます。
パンとコーヒーと牛乳とサラダ、それが普通の朝食だと思っているんですね。
糠漬けをすすめると、ヨーグルトではダメですかと聞き返される始末です。
 
ヨーグルトがいいかどうかの話ではなく、それほど欧米の食生活が理想だという錯覚は、染み付いてしまっているんですね。
「あなたは、いくら足が長いふりをしたって、腸の長さは私とは変わらないんだよ」と言いたいんですけれどね。
 
でも、欧米の食生活をまねた中で、一番日本社会に浸透したのは、肉や牛乳をとるということではないのです。
もっとも大きく食生活が変化したのは、主食より副食を多く食べるようになったということなんです。
日本人や韓国人や中国人は貧しいから、ご飯ばかり食べておかずが少ない。
欧米の人たちは豊かだから、少しのパンにたくさんのおかずを食べる・・・・・・こう勘違いしてしまった影響なんですね。
 
つまり、欧米の食生活を理想だと考えた結果、ご飯をしっかり食べることは貧しいことなんだと思い込んでしまったわけです。
このことも考えてみれば、非常に浅はかな勘違いなんです。
 
 
● 「ソーセージ・ハム」を食べる前に
絶対に知っておきたいこと
 
欧米の場合は、パンを主食とは呼ばないんです。
ところが、日本の場合は、ご飯を主食といっています。これがなぜなのかということを少し考えれば、こんな考え方は勘違いだとすぐわかります。
 
この勘違いを生んだ日本の栄養学というのは、明治時代にドイツから学んだのが始まりです。そのころは衛生学と読んでいたんですが、ドイツの考え方が基本になっていました。
 
ドイツという国は、緯度でいうと北海道よりももう少し北にあります。
北海道は梅雨がなく寒い。だから植物が育ちにくい。
ドイツもこの北海道のような環境なんですね。
逆に、雨が多く蒸し暑く、雑草取りに苦労するほど植物がよく育つのが、本州より南です。出発点となる環境が、日本とドイツとでは大きく違っていたんです。
 
ドイツ当たりは、寒くて雨が少ないですから、パンで腹いっぱいにするほど小麦が育たなかったんです。
しかも、小麦というのは畑で作りますから、米と違って毎年同じようなペースで収穫できないんです。一度、小麦を作るとその分、土地が痩せてしまうからですね。
 
一方、米の場合は、今年は100俵、来年も100俵と、何年も続けて同じようにとれるんです。つまり、土地の生産力が落ちないんです。
だから、水田というのは、世界最高の食料生産システムといわれています。
 
ところが、畑で小麦を作ると、下手をすると、一年間、土地を休ませなければいけなくなります。だから、小麦で腹をいっぱいにするというのはむずかしいのですね。
 
どこの国でも食生活で一番困るのは、冬を越すことです。
小麦が不足するドイツの人たちは、秋になると大量に豚を殺して保存し、冬にはそれを食べて過ごしてきたわけです。
 
なぜ、豚は殺すのに牛や馬はあまり殺さないのかというと、豚は人と同じものを食べるからなんですよ。牛やうまは草を食べさせておけばいいんです。
豚は人間と同じ食べ物を欲しますから、冬飼っておくと、人の食べものを分け与えねばならなくなります。だから、豚には秋口にみんな死んでもらうわけです。
そして、保存するために塩漬け肉にして、冬の間、それを樽から取り出して、焼いたり煮たりして食べてきたわけです。
 
そして、そのうち賢い人が、腸に肉をつめたソーセージやハムといった保存しやすいものをつくったわけです。
 
そのとき、しょっぱいだけのハムを、保存よくおいしくする魔法の粉を発見したんですね。それがコショウだったんです。
コショウを入れると、肉の保存はよくなるし、おいしくなりますから、コショウの需要が一気に増えて、高価になりました。
それで、コロンブス、マゼランなどが活躍したんです。
 
ですから、ドイツのソーセージやハムは、冬を越すための長年の苦労が生んだ、すばらしい伝統の知恵だと思いますね。
 
ただし念を押しておきますが、ドイツの人たちの話であって、私たち日本人にとってソーセージが素晴らしいかどうかという話ではありません。
 
それから、スイスの山奥の人たちなども、冬になると食べものが不足するので、小屋の中にタイヤのようなチーズをたくさん積んでおいて、パンか何かにつけて食べていました。つまり、パンで足りない栄養素をチーズで補ってきたんです。
 
ドイツやフランスの食生活をわかりやすくあらわしているのは、ミレーの「落穂拾い」という絵です。あの絵を見て、豊かだというイメージはわかないですよね。
何か暗いというか、厳粛な雰囲気が漂っている絵です。
これは、生活の厳しさを表したいい絵だと思いますね。
つまり、豊かだったからではなくて、食べ物がなかったからソーセージやチーズを食べてきたともいえるわけなんです。
 
ヨーロッパでも南のイタリア、スペイン、ポルトガルになると、植物が育ちやすいですから、スパゲティのようなパスタやパエリヤのようなご飯など、植物性の食べものが多くなってきます。
一般的に、寒い地方ほど動物性食品が多くなります。
 
ついでに言うと、着ているものも、北に行くほど動物の毛皮などが多くなります。
動物のものを身につけ、動物を食べるのは、植物が育たないからそうなるわけですね。
 
ところが、日本、フィリピン、タイと温暖になるにつれ、植物が多く育ちますから、植物繊維の衣服を身に着け、植物性のものを食べる傾向が強くなるんです。
一般的に言えばそうなります。
つまり、日本でご飯をたくさん食べてきたのは、自然が豊かで米の収穫量が多かったからなんです。
貧しいからではありません。
欧米の食生活が理想であるというのは、錯覚だったんですね。
 
 
● 「イカ・タコ」はコレステロルが多い?
コレステロールが少ない?
 
3つ目は、「栄養素を考えて食事をすることが科学的で正しい」という錯覚です。
これが非常に食生活をわかりにくくしているんです。
 
例えば、患者さんと接していると、まるで猫を育てるように、朝から晩まで、子供に煮干しを食べさせているお母さんがいます。
 
そういう人は、まじめなお母さんなんです。
要するに、カルシウムを子供に与えようと思って、煮干しを食べさせているんです。
ところが、そういうお母さんは熱心ですから、今度は、過酸化脂質のことを本で読んでしまうんです。
 
そうすると、「干した魚は脂が酸化しているから危険だ」と書いてあるものですから、今度はあわてて子供に、「煮干しはやめなさい」と言うことになるんです。
子供は猫ではないと気がつくんですね。
 
あるいは若い女性の中にこう言う人もいます。
「おたくのお母さんやおばあさんは、チンパンジーかオランウータンだったんでしょうか」と聞きたくなるような食生活の人です。
そういう女性は、ご飯を食べないで、果物を主食にしているんです。
好きで食べているのなら、まだ理解できるんです。
ところが、一生懸命考えて、そんなことをやっている人がいるんです。
つまり、ビタミンCということを考えているわけです。
 
ところが、そういう人が、しばらくして果糖についての本を読んでしまうんですね。
「果物を取りすぎると太る」と書いてあるのを読むと、とたんに果物をやめるんです。
栄養素を考えるとこうなってしまうわけです。
 
同様の例をいくつかお話します。
例えば、お茶についてです。
患者さんの中には、お茶をたくさん飲む人がいます。
ご飯に緑茶をかけて食べる人までいます。
お茶っぱをミキサーにかけて、粉末にしてご飯にかけて食べる人までいるんです。
 
理由は、お茶にはビタミンCが多く、ガンにいいという理屈です。
ところが、緑茶のようなタンニンの多いものを毎日飲んでいると、鉄がタンニンとくっついて出てしまい、貧血になるという本もあるんです。
両方入ってきたら、混乱しますね。
みんなそうなってしまうんですよ。
 
また、イカ、タコはコレステロールが多くて、体に良くないというのもあります。
これは昭和40年代ごろに盛んに言われていました。
ところが、最近では、イカやタコには、コレステロールを下げてくれるタウリンが多いから、体にいいといっています。
そうすると、それまでイカやタコは絶対に食べなかった人が、急に食べだすんです。
栄養素に気をとられれると、良し悪しの意見がころころと変わるんです。
 
さらに例を挙げます。
「野菜は生でしか食べません」という人がいます。
火を通すとビタミンCが壊れるからというのが理由なんです。
馬のまねをして、みんな生で食べるわけです。
 
ところが、そういう人は、「おもいッきりテレビ」かなんかでこう聞かされるわけです。
ベータカロチンという非常に大切なビタミンがある。
これは脂溶性ビタミンだからあぶれで炒めたほうがいい。
これを聞くと今度は野菜を全部炒めるようになるんです。
 
これらの例でもう十分だと思いますが、栄養素を考える人は、ころころ態度が変わってしまうんです。
栄養素を考えていると、食生活をどうすればいいのか、本当にわからなくなりますよ。
忘れたほうが言いというのが私の結論です。
そのほうが、食生活はすっきりとわかりやすくなるんです。
 
 
● 「煮干し=カルシウム」といった
短絡的な発想はよくありません
 
栄養素を考えるということが正しい食生活だという錯覚で、一番被害を受けた食品が卵です。
卵ほどかわいそうな食べものはありません。
私が子供だったころ、病院にお見舞いに行く時には、新聞紙に卵を10個包んでお見舞いに持っていったものです。
 
また、私がカゼを引くと卵酒を飲まされたものです。
遠足へはゆで卵を持ってゆき、弁当のおかずは卵焼きでした。
お母さんたちの中には、何を勘違いしたか、お父さんに生卵を飲ませる人までいました。
よからぬことを考えて飲ませていたんですね。
なぜ、これほど卵が好まれていたのかというと、タンパク質が豊富だからという理屈だったんです。
 
ところが、昭和40年代ころから脳や心臓の血管が詰まる病気が増えてきて、その原因としてコレステロールが話題になってきました。
そうすると、卵の黄身にコレステロールが多いから、卵を食べると体によくないということにされてしまったんです。
すると今度は、卵が急に売れなくなってしまいました。
 
意見をころころ変える栄養学は、卵をもてはやしたり、けなしたり、散々に振り回してきたんです。
それでは、栄養学では今、何といっているかというと、コレステロールにも善玉と悪玉があるといっているんです。
さあ、今度は卵はどうされてしまうんですかね?
 
しつこくもう一つ例を挙げます。
患者さんの中に、味噌汁を1日7杯ぐらい飲む人と一切飲まない人がいるんです。
一切飲まない人は保険所や厚生省(厚生労働省)の意見に従っているんですね。
「塩分が多いから、高血圧、脳卒中になる」という意見です。
味噌汁を食塩水と勘違いしているんでしょうね。
一方、7杯飲む人は、国立がんセンターの平山先生という人の意見を信じているんです。
平山先生が、「味噌汁を飲む人には胃ガンが少ない」と発表したんですね、
 
何を言いたいかというと、栄養学に振り回されると、味噌汁を飲むこと一つにしても、胃ガンか脳卒中か、自分で選ばざるを得なくなるということなんです。
それが現状なんです。
 
なぜそうなってしまうのか、少し失礼な例えで言うと、こういうことだろうと思います。
 
一人の女性を見て美人かどうか考えるとき、Aさんは、手だけ見て美人だといっているわけです。
Bさんは、足だけを見て美人ではないといっているわけです。
つまり、AさんもBさんも、手と足だけを見て、その人の全体をみていないんですよ。
 
煮干しの例について言えば、ある人は煮干しは骨だけで泳いでいると思っているんでしょう。
カルシウムしか見ていないわけです。
ところが、過酸化脂質という本を読んだ人は、煮干しの皮だけしか見てないんです。
でも私たちは、煮干しの皮も骨も全部食べるんですよ。
 
もっとわかりやすく言えば、ビタミンCという食べ物を食べたことがありますか?
カルシウムという食べ物を食べたことがありますか?
ないんですよ、そういう食べ物は。
勿論薬にはありますよ。
でも、そういう食べ物はありません。
食べ物にはビタミンCやカルシウムが含まれているだけなんです。
 
ところが、いつの間にか煮干しがカルシウムの代名詞になってしまうわけです。
 
ですから、栄養学を考えると、何を食べていいかわからなくなるんです。
栄養士などの仕事をする人は別です。
仕事にしている人は栄養素のこともしっかり勉強しなければいけないと思いますが、普通の人が明日からの食生活の改善を考えるなら、コレステロールとかタンパク質とかを忘れたほうがいいんです。
そうすれば、食生活は非常にわかりやすくなります。
 
ここで3つの錯覚を整理しますと、
1つ目が、肉を食べたからといって筋肉モリモリになるわけではないということ。
2つ目が、欧米の食生活が理想ではないということ言うことです。
欧米の人には理想かもしれませんが、日本人にとっての理想ではないんです。
3つ目が、栄養素を考えると食生活はわからなくなるということです
 
おそらく皆さんには、錯覚されていた人もいるだろうと思います。
 
 
● 「化学物質が増えたこと」より
  「ご飯を食べなくなったこと」が問題だ!
3つの錯覚を整理しますと、
1つ目が、肉を食べたからといって筋肉モリモリになるわけではないということ。
2つ目が、欧米の食生活が理想ではないということ言うことです。
欧米の人には理想かもしれませんが、日本人にとっての理想ではないんです。
3つ目が、栄養素を考えると食生活はわからなくなるということです
 
この3つの錯覚と、戦後の食生活改善論や栄養改善普及運動によって、日本の食生活がどう変わったかについて、一般論で言えばこうなると思います。
 
まず、あまりにも食生活が欧米化したこと。
次に、あまりにも農薬や食品添加物のような化学物質が増えたこと。
ここまで気づけば、かなりまともな考え方をしている人だと思います。
 
しかし、一番変わったのは、ご飯が減ったことなんです。
 
食品添加物については、今よりひどいころもあったんです。
私が子供のとき、ジュースの素というのがありました。
当時の私はおいしいと思ったんですけどけどね。
うろ覚えですが、今考えてみればあれは、オレンジ色の着色料と、サッカリンか何かの合成甘味料と、みかんの香りのする香料だけでできていたんだと思っています。
本当のみかんなんてまるで入っていない。
つまり、食品添加物のかたまりだったんです。
それを水で溶かして飲んだんですよ。
 
それから、これもうろ覚えなんですが、もっとすごいのは、駄菓子屋で売っていた紙に絵が描いてあったお菓子です。
ピンクや水色をした紙が、お菓子だったんです。
若い人には信じられないでしょうが、それをなめたんですよ。考えられます?
着色料と甘味料をなめていたんです。
 
今はいくら何でもそんなものは売っていません。
たしかに、化学物質の総量は今のほうが多いんですが。一つひとつの食品では今より危険なものが昔にはあったんです。
ですから、昔の食生活と比べて一番変わったのは、化学物質のことよりも、やはり、ご飯が減ったことだと思います。
 
昔の日本人はご飯中心の食生活でした。
労働量にもよるんですが、一日にご飯を7杯も8杯も食べていたんです。
あと主食につきものの、味噌汁、漬物を基本に、副食として野菜、魚を食べるという食生活でした。
地方によっては、ご飯が芋であったり、麦であったりしましたが、こういう食生活を長い間私たちは続けてきたわけです。
 
ところが、誤った知識が広まって定着した昭和40年ころを境に、「ご飯は残してもいいからおかずを食べなさい」という、現在の食生活に変わってしまったんです。
 
 
● なぜ「乳がんの患者さんは、
ご飯をあまり食べない人が多い」のか
 
私が病院で接する患者さんには、乳がんの患者さんが一番多くて、年間何百人と接するんですが、ご飯をほとんど食べなかった人ばかりです。
朝、昼、晩、たった一杯のご飯さえ食べていなかったという食生活の人ばかりなんです。
中にはゼロという人もいますね。
 
ところが、現在の日本人の食生活ではご飯が減ったので、茶碗何杯分か胃袋がすいてしまったわけです。
そのままではおなかがすいて生きていられませんから、その分、何か別のものですいた胃袋を一杯にすることになるんです。
 
そして、ご飯を減った分を埋めたのが、パン、パスタ、砂糖、油、果物、アルコール、このどれかなんです。
 
勘違いしてはいけないのは、ご飯は残して野菜を食べるという人はいないということです。
野菜ではおなかがいっぱいにはなりません。
食べた直後はいいんですが、すぐにまたおなかがへってくるんです。
ただ、野菜でいっぱいにできる方法がひとつだけあります。
それは炒めることです。
これは油をとるからなんです。
要するに油のカロリーでおなかを一杯にしているだけなんですね。
 
だから、結局、パン、パスタ、砂糖、油、果物、アルコールのどれかで、おなかをいっぱいにするのです。
そして、ご飯が減った分、増えたものがあるわけです。
 
その増えたものとは、女性の場合、パン、砂糖、果物という人が多いでしょう。
男性の場合、どちらかといえば、油、アルコールという人が多いのではないのでしょうか。
こうしたものでご飯が減った分を埋めて、さらに残った胃袋の隙間を牛乳や乳製品と肉や肉の加工品で埋めてしまうわけです。
 
厚生省あたりに言わせれば、昭和20年代のころは、しょっぱくて、貧しい食生活。
そして、今、豊かな食生活となったわけです。
この境目は昭和40年だろうと思いますね。
豊かな食生活になって、中学生、高校生の足も長くなったし、めでたし、めでたしだったんですよ。
途中まではね。

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001