帯津良一・幕内秀夫 著   三笠書房
「なぜ「粗食」が体にいいのか」  より その7
 
 
● 「旅館で出す和菓子」には
「お客の食欲を落とす役目」があった?
 
4番目に大切なことは、白砂糖、および異性化糖に入った食品はなるべく食べないようにすることです。
 
異性化糖というのは、ブドウ糖加糖液糖といって、ジュースによく入っているものです。これは砂糖より悪いんです。
この異性化糖が増えた理由は、砂糖よりも安いからなんですよ。
今、ジュースやお菓子などには、砂糖よりもむしろ異性化糖がよく使われるようになっているんです。
 
女性に、ご飯を食べないで甘いものをやめましょうなんて言っても、やめられるわけがありません。
ご飯をまずしっかり食べてから、甘いものをやめることが大切なんです。
ご飯もろくに食べないで甘いものを先にやめたら、ストレスだけがたまります。
 
ですから、ご飯をまずしっかり食べる。
それから砂糖の入ったものはなるべく控える。こう考えてください。
ちなみに、砂糖がどれほど食欲を奪うものなのか、そのすごさが一番わかるのは、昔の旅館の話ですね。
 
旅館では客が来ると、必ず最初に、緑茶と和菓子が出ます。
実は、これには深いわけがあったんですね。
 
昔、日本人は今よりもご飯をたくさん食べたものですが、その中にはとんでもない量を食べる人もよくいたんです。
たとえば、農家の人は、稲刈りが終わって、秋口に温泉に泊まりに来ると、一人で一升もご飯を食べてしまったものなんです。
 
今と違って、昔の米はたいへんな貴重品でしたから、旅館にとっては、そんなに食べられたら困るわけです。だから、何か手を打つ必要があったんです。
それが、夕食の前に和菓子を食べさせることだったんですね。
 
和菓子には砂糖が大量に入っていますから、血液中のブドウ糖の量を上げてしまうんです。これで、旅館は客に大飯を食われるのを防止したんですよ。
まんじゅうの1個や2個に含まれる砂糖でも、それほど食欲に影響したんですね。
 
だから、まんじゅう一口、クッキー2枚といえども、夕飯に対する影響は大きいわけです。砂糖というのはそのぐらい食欲を落とします。
だから、何気なく「ジュースを1杯」と軽く考えるべきではありません。
このことは、覚えておいてください。
 
 
● 「飲む点滴」・・・
「果樹100%ジュース」はこんなに怖い!
 
甘いものを食べたがる女性には2つのタイプがあります。
まず、お菓子やケーキを食べたときに「おいしい」と思う人。
このぐらいなら普通です。
 
怖いのは、「幸せだ」とまで思う人です。これは危ないんです。
そういう人は、お菓子が恋人になっているんです。
これはご飯をずっと食べないで、砂糖でエネルギーをとる習慣をつけてしまった結果なんですね。こうなってしまうと、なかなかお菓子をやめられません。
 
この場合、せめて洋菓子ではなく和菓子を食べるようにしてください。
ケーキやクッキー類は到底勧められません。
最もよくないのは、糖分が大量に入った飲料水です。
 
たとえ果汁100%のジュースでも多くならないようにしてください。
かむ必要がなくて、おなかがいっぱいになってしまうんですから。こういう甘い飲み物ばかり飲んでいる子供のことを、「点滴をする子供たち」ということがいえます。
まさにこれは飲む点滴なのです。
 
甘いものに関して言えば、できれば、甘栗、乾燥イモ、焼イモぐらいでごまかす。
それでごまかしきれない人は、干しブドウ、プルーンなどのドライフルーツあたりでごまかす。
それでもごまかせない人は大福、饅頭、羊羹などの和菓子で歯止めをかける。
何とか洋菓子にはもっていきたくないですね。
 
洋菓子と和菓子では全然違います。
なぜなら、大福などの和菓子には、防腐剤などの添加物もあまり入っていませんし、香料や着色料なども入っていません。問題なのは砂糖だけですからね。
 
ところが洋菓子の場合、砂糖だけでなく、油脂類や乳製品はもちろん、人工着色料や香料などの化学物質が使われる場合がたいへん多いんです。
だから、意志の弱い人は何とか和菓子で止めることです。
 
 
● 副食は「野菜が三・豆が1・魚介類が1」
が理想です!
 
5番目、6番目をまとめてお話しますと、副食は季節の野菜を中心にし、動物性食品は魚介類を中心にするということです。
 
副食と主食の分量ですが、見た目は半々ぐらいがいいでしょう。
 
私は塩分計算、カロリー計算なんかすべきではないと思っています。
大きな量的目安として、半々ぐらいということでけっこうです。
計る必要なんてありません。計ろうとすると悩みますから、見た目で十分です。
 
副食のうち、季節の野菜が3、大豆などの豆類が1、魚介類や卵が1、という割合が目安となると思ってください。
あくまで見た目での分量で大雑把に決めてください。
 
ご飯、味噌汁、漬物、お茶という基本パターンは非常に重要です。
ただし、味噌などはただしょっぱいだけのものではひどすぎます。
 
ご存知のように、スーパーなどでは、みそ100グラム19円などというのがありますが、あれは表示を見てわかるように、脱脂大豆です。
 
つまり、おからで味噌を作っているわけですよ。おからそのものを食べることは悪いことではないんですよ。ただ、おからで作った味噌は、本当の味噌ではないのです。
やはり、味噌にはおカネを使うべきだと思います。
後、漬物も、赤や緑の色水に浸しただけのものではダメです。
漬物ぐらいはやはり糠で漬けたいものです。
 
でも、生活パターンの中でそれが無理だったら、せめて、いわゆる自然食品点や、よく八百屋さんの前で樽で売っている糟漬(かすづけ)にしたいですね。
味の素や何かが入っているかもわかりませんが、それでも色水に浸しただけものよりまだましです。
 
糠漬、ご飯、味噌汁は、家で言えば土台と柱と屋根に当るものです。
それにお茶ですね。これらの基本になるものが、大事なんです。
 
 
● 野菜は「安いものを買えばいい」
と考えてください!
 
土台がしっかりすると、副食も悪いものにはならないものです。
なぜなら、前項のパターンがしっかりすれば、「毎日サラダを食べる」なんていう人はいませんからね。
パンを食べる人には「毎日サラダ」という人がいます。
 
ご飯を食べている人は、冬にれば、きんぴらごぼうとか、里芋が出てきますよ。
だから、木造の土台にすれば、障子も畳も入ってくるというわけですね。
土台にはおカネも手間もかけるべきだというのが肝心なのです。
 
土台の次だと考えるべきなのが、副食なんです。
その中でまず大切なのは、野菜、海藻、イモ類です。
 
しつこいようですが、野菜類に関してはただ一言、季節の野菜を食べるのみということです。
 
ニンジンにベータカロチンが多かろうが、レタスにビタミンEが多かろうが、そんなことを考えているうちに、おかしな野菜の食べ方になるんです。
 
本屋さんに行ってみてください。
「生野菜健康法」という本の隣には、そのバーバラ○岡さんの書いた、「生野菜が女をだめにする」なんていっている本が並んでいるんですからね。
両方の本を読んだら、どちらが正しいのかわけがわからなくなります。
しかも、両方ともいい加減なんです。
 
野菜は季節のものを食べることです。
それでもまだわかりにくければ、「安いものを買えばいい」と考えてください。
 
旬でもない冬のレタスを買えば、高いのは当たり前です。
こんな野菜の買い方を避ければいいんです。
 
 
● 目を覚ませ、汗をかけ・・・・・・
「旬の野菜」の声をもっと聞こう
 
「安いものを買う」という目安で十分なんですが、それでも一応、季節ごとにどの野菜がいいのか、大まかに言います。
 
春は、「目を覚ませ」という季節です。
フキノトウ、タケノコ、セリ、ウド、フキ、ワラビ、ゼンマイなど、あくの強いものか、緑の濃いものを食べる季節です。七草なども創ですよね。
緑の濃いものとあくの強いものだと思っておけばいいでしょう。
 
だいたい、春の野菜を生で食べる人はあまりいませんね。
タケノコやフキなどのように、火を通さないと食べにくいものが多いのです。
 
夏は、「汗をかけ」の季節です。
ウリ、キュウリ、スイカ、メロン、トマトなど生野菜や果物を食べるのもいい季節です。
そして、夏、食欲がなくなるのを抑えるために出てくるのが、香辛野菜です。
そば、うどん、そうめんなどを食べるときの薬味になるような野菜ですね。
 
私は夏に自分の体で実験してみたんですが、たとえば、オオバ、ミョウガ、ラッキョウといった香辛野菜を薬味につけないと、とたんに食欲が出なくなるんです。
薬味なしの素麺なんて、食べる気がしなくなるんです。
 
うまく季節は教えてくれるものなんですね。
ミョウガなどたっぷりつけると、食欲がなくてもたくさん入ります。
夏場に香辛野菜が出てくるというのは、実にうまくできているなと思います。
 
たとえば、インドなどの暑いところでは、日本のものよりも、もっときつい香辛野菜が食べられているんですね。
 
それは何かというと、あのカレーです。
カレーに入っているものは、横文字で書いてあるから香辛料にしか見えませんが、漢字に直したらみんな漢方薬なんですよ。
だから、カレーとは、漢方薬の塊としか思えないようなものすごい料理なんです。
暑くて食欲が出にくく、しかも衛生状態の悪くなりやすいインドのようなところで、漢方薬をふんだんに使った料理を食べるのも、大切な意味があると思います。
 
日本では、インドほど強烈な香辛野菜ではなくて、ラッキョウ、ミョウガなど、少しにおいの強いという程度の野菜が、夏にちゃんと出てきます。うまくできています。
 
秋になると、「エネルギーを蓄えろ」という季節に入ります。
冬眠に備えて蓄えるというわけです。
もちろん実際には冬眠しませんが、秋になると、米、麦、栗、イモ、キノコ類が出てきます。
米、麦、栗、イモなどは、体にエネルギーを蓄えるにうってつけのものですから、意味はそのままわかります。ところが、きのこが出てくる意味は、こじつけをいろいろ考えているんですが、いまだにわかりません。
それでもきっと意味があるんだろうと思います。
 
冬になってくると、霜が降りますから、どちらかというと、根菜類が増えます。
レンコン、ニンジン、ネギ、ゴボウ、里イモなどですね。
これが冬の季節の野菜ということでしょう。
 
このように、季節ごとに必要な野菜が出てくるんです。
それを食べるということが、そのまま体のためになることで、それでいいんです。
「生野菜健康法」だの「生野菜は女をだめにする」なんて、余計なお世話ですね。
 
 
● 豊かな食生活、貧しい食生活……「豆」が決めて!
 
野菜類に続いて考えるべきなのが、豆、種子類でしょう。
今の生活の中では豆があまり食べられなくなっていますが、やはり豆をもっと食べたいものです。
ただ、豆ほど食べるのに厄介なものはありません。
 
また、ギンナンやクルミなども、子孫を残すために固いからをかぶっているため、食べるのは厄介です。「そう簡単に食べられてたまるか」というわけですね。
栗はトゲをいっぱい出して、しかも、その内側にはかたい殻があり、おまけに渋皮まであるという凄い防備なんです。
 
もし、栗に渋皮もイガもなかったら、あっという間にみんな食べられてしまいますが、あれだったら、鳥もそう簡単に栗を食べられません。
種が熟さないうちは、口を開きませんね。ちゃんとうまくできているんです。
 
しかし、エンドウマメやソラマメなどはあまりかたい殻をかぶっていません。
では、これらの豆は自分をどうやって守っているかというと、体に毒を塗っているんです。
だから、インドなどで、豆を大量に食べる人の中には、ソラマメ病やラチルス病といった、豆の毒が原因の病気が結構あるんです。
 
日本人は、長い歴史の知恵で、あくを抜くという方法で豆の毒を取り除いてきたわけですね。
でも、あくを抜くためには、いったん煮て水を捨てるといった手間がかかるため、今の生活では豆を食べるのは厄介だと思われて、敬遠されるようになってきたんです。
もっとも、以前の日本には、煮豆やさんがたくさんあったことでもわかるように、昔の人にとっても、豆というのはなかなか厄介な食べものでした。
 
だけれど、豆はいい食べものなんです。だからもう少し豆を見直したいですね。
大豆だけが豆ではありません。
 
うちにはいつも5、6種類はおいてあります。
といっても、乾燥だけでなく、ふかし豆という缶詰なども使います。
デパートやスーパーなどで売っているんですが、あければそのままスプーンで食べられます。味はついていないんですが、食べられる状態にはなっているわけです。
後は砂糖を入れて甘く煮ようが、しょうゆで煮ようが、大根おろしに乗せようが、お好みの調理法で食べられるわけです。
 
豆腐、納豆以外の形でも、もっと豆を食べたいものです。
じっくりとまめのアク抜きをする暇もないという意味では、今の食生活は貧しいですね。そんな暇があるのは、よほど豊かな人だけですものね。
でも、暇がない人も、缶詰のような便利なものを利用して、豆を食べるべきです。
 
 
● 「塩分との一番頭のいいつき合い方」教えます
 
ご飯、味噌汁、漬物という食生活パターンが完成したのは、鎌倉時代だといわれています。これほどすばらしい食生活パターンはないと思いますね。
ただし、このような食生活を勧めると、塩分が多くなりすぎないか、という疑問を持つ方もいるかもしれません。
何しろ、保険所など行政の栄養指導では、減塩、減塩と塩さえ減らせば健康になるといわんばかりの指導をしています。
 
これは、昭和54年に厚生省が、日本人の一日あたりの食塩摂取は12.3グラムであり、これを「1日10グラム以内」にするのが望ましいと指導してからのことです。
 
また、それに先立って、昭和35年ごろから始まった秋田県の減塩運動は、それまで県民の最大の死因であった、脳卒中が激減したことで大きな成果を収めました。
これは脳卒中の原因である、高血圧が減ったからですが、この結果は減塩がいかに高血圧、脳卒中の減少に有効であったかの裏付けになっています。
 
当時の秋田県では1日に30から40グラムもの塩分を取っていました。
これは明らかにとりすぎだと思います。
 
ただし、このような習慣が悪いことだったのかといえば、少し疑問があります。
昔から“霜枯れ時”という言葉があります。
昔は、東京などでも正月から春先までは野菜がほとんどなくなってしまったものです。そのため、暮れになると、たくさんの漬物を漬けたんですね。それを春先まで食べてきたわけです。
 
当然、秋田などの雪国では、この時期、ほとんど野菜は取れなかったはずです。それを漬物という保存方法でまかなってきたわけです。すばらしい知恵だと思います。
 
その結果塩分が多くなりすぎたのかもしれません。しかし、その期間、漬物がなかったら、ほとんど野菜のない生活になっていたはずです。しかも毎年のことです。
もっともっと大きな健康問題になっていただろうと思いますね。
 
いずれにしても30、40グラムもの塩分が減ったことが、高血圧や脳卒中を減らしたことは事実だと思われます。
ただし、現在の私たちは1日に12.8グラム(平成5年栄養調査)をとっているに過ぎません。それを10グラム以下に抑えることにどれほどの意味があるのか疑問です。
 
むしろ、わずか数グラムの塩分を減らすために、神経を使いストレスになることのほうが問題だと考えるべきです。
 
現在のあらゆる慢性病は、たった一つの要因で語れるものではないのです。
高血圧にしても、年齢、ストレス、肥満、性、運動、遺伝、人種・・・・・・さまざまな要因が重なっていることがわかっています。
けっして、食塩だけで語れるものではありません。
 
 
● 「菜食主義のうそ」にだまされるな
 
次にお話しするのは、動物食品についてです。
動物性食品には、主に魚介類、卵、肉があります。
私の本を読んでくださっている人には、おそらく「肉ばかり食べればいい」「牛乳は健康にいい」などという考えに疑問を持っている人が多いだろうと思います。
中には「菜食主義がいいのでは」と考えている人も多いだろうと思います。
 
ここで、そうした人たちに一言、警告しておきたいことがあります。
たしかに「菜食主義」のようなことを勧めている人は少なくありません。
でも、その人たちは患者さんを見たことがないんです。
 
患者さんが本当に菜食主義なんて始めてしまったら、すごい人は、肉も卵も牛乳も魚も動物性食品は一切食べなくなるんですよ。それほど真剣に考え込むんです。
ところが、菜食主義を勧める本を書いている人間は、誰もそこまではやっていないんです。自分たちがやっていないから、いいかげんなことを書くんです。
 
私たちが完全に動物性食品を食べなくなると、どうなると思います?
体重が20キロ台になるんですよ。
 
私たちのところに、よくそういう人が来ます。
マクロバイオティック(玄米菜食主義)をやって、玄米ときんぴらごぼうばかり食べて、自分の体のほうまで本当にきんぴらごぼうのようになった人が。
色が黒くなって、げっそり痩せているんです。
そういう人には、年間10人くらい接しますかね。
 
相談に来る人はだいたい女性です。
男性は、ああいうものがいいと思っても、仕事の付き合いもありますから、家の外ではできません。
だから、男性で菜食主義なんていう人は、家ではやっているけれど、外では肉や魚も多少は食べてしまうという人が多いんです。結局、ほどほどしかできないんですね。
 
ところが女性の場合、一口も動物食品を食べない生活もできてしまうんです。
それで、ごぼうみたいになって、私たちのところに相談に来るんです。
そんな人は、だいたい離婚問題にまで発展しているんですよ。
生理がないどころの話ではないんです。
 
だから、菜食主義なんて書いている人には、はっきりこういいたいですね。
「あなたは本気でなくても、読んでいる人は本気にやるんですからね」と。
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001