あんな話 こんな話 (63)
 
森下敬一 『食べもの健康法』 より その4
 
● ピーマン
 
ピーマンが日本の食卓に完全に定着したのは昭和35年ごろで、以来、どこの八百屋の店頭でも見られる。
それは大変に結構だが、最近では一年中並べられている。これは完全な行き過ぎだ。
季節はずれのピーマンでは、薬効よりも害作用のほうが大きいと考えて、まず間違いない。
 
ベル形をし、果皮が厚く、辛味がなく、特有の香りのあるこの食品を、ピーマンというのはフランス語の呼び方。英語ならスィート・ペッパー(または単にペッパー)だ。
 
ともあれ、夏の健康に欠かせないビタミンAとかCが、他の野菜に比べるととびぬけて多いのだからありがたい。
A、Cとも体の抵抗力を強化して、夏ばての防止・回復に卓効をあらわす。
両者とも、細胞と細胞をしっかりとつなぎとめるニカワ質の生成に不可欠な成分なのだ。
 
ニカワ質が十分につくられれば、組織がたるんだり、毒素に対する防衛力が弱くなる弊害などは避けられる。
 
熱い季節には食欲がなくなりがちで、口当たりのいいさっぱりとした食物や冷たい飲み物を多くとるから、組織もたるみがちで、暑さ負けしやすい。
またそんな人は涼しい季節になって食が進むようになると、組織は膨張して肥満になりやすい。
 
だから、夏場は涼しく過ごすための工夫のほか、組織の抵抗力を維持・強化することも併せ行うことが重要である。
その際、ピーマンが大いに役立つのだ。
 
ピーマンは脂肪代謝をスムーズにする作用を持ち、血液中に中性脂肪が過剰になったり、コレステロールが血管に沈着するのを防止するから、動脈硬化や高血圧に有効である。
 
それと同時に、物質代謝全般を活性化するので、糖尿病、肥満体の人も大いに活用するとよい。
また、神経細胞の抵抗性を高めるので、ノイローゼの防止にも役立つ。
 
視力強化作用を持つのも、ピーマンの特性の一つ。
物質代謝が促されて、老廃物の排泄が進むと、血液はきれいになる。
それにビタミンA効果がプラスされ、目の疲れが取れ、機能も回復されるのだ。
同じ作用によって、髪や爪の色艶もよくなる。
 
ピーマンには、カルシウム、鉄も含まれ、毛細血管を強くするビタミンPもある。
そのため、皮下出血や血行不順を防いで、紫班症などの皮膚障害を直す。
また、メラニン代謝を良くする作用もあり、皮膚の抵抗性を強めるビタミンDも含まれるから、色黒、シミ、ソバカス、かぶれ、吹き出ものなどの美容障害に効く。
 
ピーマンは生のままサラダに加えても、独特のほろ苦さが味わえて楽しいが、油炒めにすれば薬効的にはより望ましい。
油(植物油)を用いると、ビタミンAの利用率が高まるのである。
なお、加熱すると軟らかくなり、カサも少なくなるから、摂取絶対量も多くなる。
これは他のビタミンにおいても同様で、結局は効率よく摂取できるのである。
 
 
■ 玄米ピーマン詰め
材料(3人分)
・玄米ご飯・・・300g  ・たまねぎ・・・100g  ・にんじん・・・70g
・小女子・・・適宜  ・植物性粉チーズ・・・大さじ1  ・ピーマン・・・6個
・自然塩、こしょう・・・少々  ・ごま油・・・大さじ1
作り方
@たまねぎ、にんじん、小女子をみじん切りにしておきます。
Aピーマンは半分に切り、中身をきれいに取っておきます。
B鍋を熱し、大さじ1杯のごま油で、みじん切りにした材料を炒め、ご飯を加えてさらに炒め、塩、こしょうで調味します。
Cピーマンの内側に、塩を少々ふり、Bをつめて上をなめらかにし、植物性粉チーズを少々ふりかけます。
D180度のオーブンで、8分ぐらい焼きます。
トマトソースなどをかけて召し上がってください。
 
 
 
● キャベツ
 
原産地は地中海沿岸だから、はじめにキャベツの味に親しんだのはギリシア人たちであろう。それが、北欧の国々に伝えられ、厳寒地でも栽培できる、しっかりと玉に巻く品種に改良された。
わが国でキャベツが一年中出回るようになったのは戦後になってからで、そのうちでも3〜5月が旬の新キャベツは最も味がよい。
 
キャベツというと、最近は胃潰瘍に効くということで大もてだ。
確かにビタミンA、B1、C、U、カルシウムなどの抗潰瘍成分がたっぷりと含まれている。
 
キャベツに含まれるカルシウムは、量的にも多く、しかも吸収されやすい。
このカルシウムが、崩れた組織の補修をして潰瘍を治す。
同時に、骨へのカルシウム補給を促すので、高齢者の骨折防止に役立つ。
また神経を落ち着かせてイライラを防止するから、寝つきの悪い人は利用するとよい。
さらに、高血圧の人の興奮性をおさえるのにも有効だ。
 
ビタミンUは抗潰瘍性ビタミンといわれているもので、キャベツにはたくさん含まれている。
そこで、キャベツの中のUを抽出して抗潰瘍薬にするという発想も当然生まれてくるわけだが、より自然に、より確実に潰瘍の根治をはかるためには、天然の食品であるキャベツをそのまま用いて、各種の成分を総合的に取るほうがよい。
ジューサーでキャベツ・ジュースにして利用する方法が最も効果的だ。
 
キャベツの中のビタミンCも、潰瘍に有効だ。
Cは、粘膜や内臓の出血傾向を防止する作用を持っているからだ。
また、C欠乏では、疲れやすくなり、睡眠障害を起こしやすいが、キャベツの常食によってこれらも防止できる。
 
キャベツの美容効果もすばらしい。
クエン酸、コハク酸などの有機酸が新陳代謝を盛んにして、肝臓を強くする。
各種酵素は腸内の異常発酵を防止して胃腸を健全にする。
このため、整腸、浄血、貧血防止がはかられ、皮膚生理は正常化される。
キャベツを常食していると、シミや吹き出物が自然に治っていくというのも当然の話であろう。
 
料理のつけ合せには、キャベツの千切りが盛んに用いられる。
キャベツには蓚酸などのアク成分が少なく、適度の甘味(糖分)と辛味(硫黄化合物)が含まれ、繊維も比較的軟らかい・・・・・・ナマ食にはおあつらえ向きの特性を備えているからだ。
 
その千切りキャベツをパリッとさせるために、たいていは切ってから水に浸す方法がとられている。
確かに口当たりはよくなるけれど、水に溶けやすい成分が溶け出してしまうから、なるべくなら、冷蔵庫に入れて適度に冷やす程度にとどめたい。
 
体の冷えやすい人は、十分に加熱したものをとるようにしたい。
たとえ熱に壊されるビタミンがあったとしても、有効成分のすべてが失われてしまうわけではないし、加熱することによって、利用しやすくなる成分もある。
体の機能が減退して元気のない人には、加熱の薬効が有効である。
その際は煮汁も一緒に利用することが大切だ。
 
 
■ ロールキャベツ
材料(5人分)
・キャベツの葉・・・5枚  ・グルテンバーガー・・・100g  ・玉ねぎ・・・30g
・にんじん・・・20g  ・くず粉・・・大さじ1  ・パン粉・・・1/2カップ
・ごま油・・・大さじ1  ・自然塩・・・小さじ1/2  ・だし汁
・ローリエ・・・2枚  ・完全粉(小麦を皮ごと粉にしたもの)  ・パセリ・・・少々
作り方
@キャベツはサッとゆでて、軸をうすくそぎ、たまねぎ、にんじんはみじん切りに。
A、@の具を全部混ぜ、5等分に分けておきます。
Bキャベツの葉の水気をふき、まな板に広げて、軽く完全粉をふります。
Cキャベツの軸の上に具をのせ、中頃まで巻き、両端を折り、先まで巻いて楊枝で止め、鍋に並べ、だし汁をひたひたに入れ、煮込みます。
塩少々、野菜くず、ローリエも入れて弱火でゆっくり煮込みます。
D味を調え、器に盛りスープも入れて、パセリを飾ります。
 
 
 
● ほうれんそう
 
緑黄色野菜というと、たいていの人はほうれんそうを思い浮かべるほど、なじみの深い野菜だが、このペルシャ原産の青菜は、ほかの野菜とちょっと毛色が違っている。
 
すなわち、リジン、トリプトファン、シスチンなどのアミノ酸が多いというように、蛋白質の組成が動物性蛋白質のそれに似かよっているのである。
もちろん、ほうれんそうは植物性食品だから、消化器官に余分な負担をかけて血液をひどく汚す、ということもない。
 
優秀な蛋白組成は有効に生かされる。
その結果、体蛋白の合成が促され、体力の増強が図られる。
ほうれんそうを食べて元気モリモリ・・・・・というポパイの話も、まんざらデタラメとばかりはいえないわけだ。
 
また、下垂体ホルモンの分泌を滑らかにする。
下垂体の働きが順調になると、内分泌機能全体のバランスが回復されるために、太りすぎの人は体を引き締め、やせすぎの人は健康的な肉付きの体になる。
 
勿論、いまあげたような薬効は、ひとりたんぱく質がもたらしてくれる功績ではない。
ほうれんそうに含まれたビタミン類、ミネラル類も大いに力となっている。
 
ほうれんそうが貧血、カゼに卓効をあらわすのも、それらの有効成分が総合的に働くためだ。
すなわち、豊富に含まれるビタミンCは、胃酸分泌を正常化させ、ビタミンAは粘膜の抵抗性を強化し、鉄、葉緑素、葉酸、ビタミンKなどは赤血球の造成を促す。
いずれも、貧血やカゼの防止に重要な条件ばかりだ。
 
貧血でも足のむくみやだるさはおこるが、脚気でもおきやすい。
ほうれん草にはビタミンB1も多く含まれるから、脚気にも有効である。
 
ビタミンAを豊富に含むほうれん草は、美容効果もきわめて大きい。
皮膚の過敏症を直し、肌荒れやニキビを治し、肌のたるみを防止する。
 
また、とく主成分のピオチンがあって、脱毛や湿疹を治す効果を持っている。
ところで、ほうれん草は蓚酸を多く含んでいるので、調理上、ちょっと注意が要る。
蓚酸は大量に摂ると、カルシウムの吸収を悪くしたり、結石症を起こしやすいから、ナマで大量に食べることはやめたい。
必ず、ゆでるか、油炒めして十分に加熱して用いれば、蓚酸はすっかり処理されるから、まったく心配はいらない。
 
特に油で調理すると、ビタミンAなどの脂溶性ビタミンの吸収が効果的に行われる。
 
繊維が軟らかいことに加えて、独特の甘味とヌメリがあることが、ほうれんそうの特有のうまさを生み出しているが、それが子供のほうれんそう嫌いを招いているのだから皮肉である。
無理に食べさせることはないけれど、みすみす捨て置くには惜しい薬効食品。
スープの実にする、ごまで和える、のりで巻く・・・・・・など、おいしく食べられる工夫をして、活用したいものである。
 
 
■ ほうれん草とモチの炒め物
材料(8人分)
・ほうれん草・・・1束  ・干しモチ・・・1切れを16枚に薄く小口切りしたもの48枚
・桜エビ・・・1/3カップ  ・にんにく・・・1片  ・ごま油・・・大さじ2
・自然塩・・・小さじ1  ・しょう油・・・少々  ・揚げ油
作り方
@ほうれん草は、サッと塩茹でして水に取り、水気をきって長さ3cmに切ります。
にんにくはみじん切りにし、桜エビは熱湯をかけてザルに上げ、水気を取ります。
A大さじ2杯のごま油でにんにく、塩を加えて炒め、さらに、ほうれん草を加えて強火で手早く炒めます。
B、Aに桜エビ、揚げモチを加えて炒め、鍋肌からしょうゆ少々ふり香りをつけます。
手早く仕上げるのが、美味しく作れるコツです。
鍋に入れたままにしないで、すぐに器に盛りましょう。
 
 
 
● ねぎ
 
駅の構内にある立ち食いそば屋のおやじさんがいうには、ねぎを入れる人と入れない人は半々ぐらいだそうだ。
 
食物の好き嫌いは微妙なもので、ねぎそのものは嫌いではないが、そばに入れるのはいやという人もいるだろうし、衛生を考えての辞退かもしれない。
だから、いちがいにねぎを食べない人が多いとは言えないけれど、現代日本人の体質改善に大いに役立つ食品だから、極力食べたいもの。
 
ねぎには特有の辛味とツンと鼻にくる匂いがある。
それは硫化アリルが含まれるためで、この硫化アリルは、ビタミンB1効果を著しく高める作用を持っている。
 
まず、B1と結合することのよって、B1分解酵素であるアノイリナーゼの作用から、B1を守る。その上、B1の吸収をよくし、無駄なく利用されるようにする。
 
ビタミンB1不足になると、炭水化物の代謝が傷害されて、乳酸などの中間代謝産物をはじめとした老廃物が組織に停滞してしまう。
その結果、疲れやすい、根気がない、イライラする、冷え性、寒がりなどのいろいろの障害が起こりやすくなる。
ビタミンB1効果を高めるねぎを大いに活用すれば、それらの障害を防止できるわけだ。
 
白米や白パンなどの精白食品や、食品添加物入り食品などを常食していると、間違いなくB1不足になる。
食品自体にB1が不足している上に、腸内アノイリナーゼを大量発生させるからだ。
ねぎを積極的に摂取する必要があるゆえんである。
 
また、体を温める作用を持つのも、ねぎのすぐれた特性の一つ。
これは、ねぎの原産地がシベリアという極寒の地であることとも関連がある。
大きな耐寒能力を蔵しているわけだ。
 
この体を温める作用は、内臓の働きを盛んにし、血液循環をよくする効果となってあらわれるから、基礎体力は増強され、スタミナも強化される。
 
また、発作・利尿が促され、タンの排出も促進される・・・・・・という具合に、体内の余分な水分や蛋白性老廃物が速やかに排除されるので、血液はきれいになり、新陳代謝は盛んになる。
 
このため、ねぎを常食していると、胃腸病、冷え性、むくみが治り、不感症や陰萎も解消し、結核や脱毛の防止に役立つ。
ねぎは、なるべくナマか、ナマに近い状態で利用したほうがよい。
 
なお、次のような手当て法を知っておくと便利。
カゼの引きはじめで、頭痛や鼻づまりのあるときは、ねぎの白い部位を細かくきざみ、味噌、少量のおろししょうがを加えて熱湯を注いでかき回し、熱いうちに中身ごと飲んで寝ると卓効がある。
シモヤケには、ねぎを煎じた汁に患部を浸すと有効。
また、ねぎの煎じ汁と塩を入れた薬湯は、リウマチの痛みを解消させる効果がある。
 
 
■ ねぎとコーフーのぬた
材料(6人分)
・長ねぎ・・・2本  ・コーフー(小麦蛋白で麩の原料)・・・140g
・生わかめ・・・50g  ・しょうが・・・1かけ  ・しょう油、だし汁・・・少々
・白みそ・・・80g  ・米酢・・・大さじ1  ・自然塩・・・少々
作り方
@長ねぎは5cmのぶつ切りにし、太いところは縦半分に切り、塩を少々入れた熱湯に通し、ざるに上げて水気を切ります。
Aわかめも熱湯をかけて水に取り、水気を切って3cmぐらいにきります。
Bコーフーは厚さ5mm、長さ2cmのたんざく切りにして、だし汁、しょう油を少々入れて、下煮しておきます。
Cしょうがはごく細い千切りにします。
D白みそ、米酢、塩をよく溶き混ぜて、材料を和えます。
 
■ 焼きねぎの味噌汁
材料(4人分)
・長ねぎ・・・1本  ・うずまき麩、粉さんしょう・・・少々
・だし汁・・・4カップ  ・みそ・・・80g
作り方
@長ねぎを3cmにぶつ切りし、網でこげ目をつけて焼き、味噌汁に麩とともに浮かせます。
 
 
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001