あんな話 こんな話 (65)
 
森下敬一 『食べもの健康法』 より その6
 
 
● 大根
 
ナマでよし、乾燥させてよし、煮てよし、根も葉もすばらしい薬効を持っている大根は、大変に重宝な野菜である。
 
冬大根は、ふろふき、おでん、鍋物などにすると特別の味わいがあるけれど、薬効を得るには「ナマが一番」なのだ。
大根おろし、または漬物として用いるのが望ましい。
 
大根おろしは、腸内の異常発酵を防止する。
腸内に異常発酵が起こると、有害な毒素が発生する。
その毒素が血液中に入り全身を巡るようになると、組織に炎症が起こりやすくなる。
胃炎や肝炎が炎症であることはその文字からわかるだろうが、実がガンもレッキとした炎症。毒素の発生が著しくなると、発ガンしやすくなるのである。
 
大根おろしが異常発酵を防止するのはジアスターゼ、アミラーゼなどの酵素、および繊維が豊富に含まれているからだ。
酵素は消化液の分泌を調節して消化作用を円滑にし、繊維は腸壁を刺激して腸壁細胞の働きを活発化するとともに、蠕動運動を適正な状態にする。
 
このため、大根おろしを常用していると、胃炎、胃酸過多、便秘、下痢など胃腸病全般に大いに有効である。
特に、胃にもたれやすい天ぷらやモチなどを食べる時には、大根おろしをたっぷり添えたい。
 
大根おろしは、ぜひ皮付きで作りたい。
皮には、ビタミンPやカルシウムなどの有効成分が含まれているからだ。
ビタミンPは毛細血管強化作用を持つ。
皮付き大根おろしは、高血圧、糖尿病に有効で、脳出血の予防に役立つ。
皮付きのよいのは、何も大根だけに限った話ではない。
皮には、外界から内部を守るという特別な任務が負わされているために、有効成分がより高密度に配置されているのだ。
 
大根おろし汁にはちみつを適宜加えて飲むと、セキ、声がれ、のどの痛み、二日酔いに効く。
大根の葉も大いに活用したい。
大根の葉と根に、しょうが、自然塩を加えた一夜漬けは、性ホルモンの分泌を促すので、精力増強に有効。
 
また、葉は植物油で炒めて食べていると、葉に含まれる葉緑素やビタミンAの効果が十分に生かされて、ニキビや吹き出ものを治し、目の充血や歯ぐきの出血を防止できる。
 
漬物は、塩漬けにしてその火のうちに食べたりする浅漬けの場合は、大根おろしとほぼ同様の効能があると考えてよい。
昔ながらの方法で長期間漬け込んだタクアンは、脱水された上に、カドの取れた塩分が加わり、発酵によって生じた酵素が含まれるので、別の薬効が加わる。
 
それは一言でいうと、体質を陽性化し、体を引き締める作用だ。
寒さに弱い人、太り気味の人、虚弱体質の人、疲れやすい人はタクアンを積極的に摂りたい。勿論、人工の甘味料や着色料などの使われていない本物のタクアンでなければダメだ。
 
 
■ 一夜漬け
材料
・大根・・・1/2本  ・大根の葉・・・1本分  ・しその実・・・大さじ3
・赤とうがらし・・・少々  ・根しょうが・・・中1かけ  ・ゆずの皮・・・1/2個分
・自然塩・・・大さじ2
作り方
@千切り大根に塩大さじ1杯をふりかけ、20分ぐらいおいてしぼります。
A葉は熱湯に通して細かくきざみます。
B赤唐辛子は種を取り細かく切り、しょうが、ゆずの皮は千切りして材料全部に大さじ1杯の塩を足し混ぜて重石をしておきます。
 
■ おろし和え
材料(6人分)
・大根・・・350g  ・油揚げ・・・2枚  ・ねぎ・・・30cm  ・しょう油・・・小さじ4
作り方
@大根はおろして水気を切り、油揚げは熱湯をかけて油抜きし水分を取り、焼いて細かく切り、ねぎは小口からきざみます。
A材料を全部混ぜてしょう油を加えて調味します。
 
 
 
● にんじん
 
ニンジンのきれいなだいだい色は、主にビタミンAの源となるカロチンによるものである。英語でニンジンをキャロットというのも、カロチンに由来するものだ。
 
ビタミンAが豊富なので、目の疲れを取り、目に力をつける。
また、粘膜の抵抗性を増して、喘息や胃腸病の予防に役立つ。
さらに、皮膚の生理を正常に保ち、皮膚病を起こしにくくし、なめらかできれいな肌をつくる。
 
ニンジンを常用していると、体力は確実に増強される。
だから、虚弱体質の人、精力減退気味の人、母乳の出が悪い人、特に激しく疲労した場合などには、より積極的に利用するとよい。
 
体力増強に著効をあらわすのは、ニンジンには必須アミノ酸がすべて含まれていて、そのうちでも日本人に不足がちなリジン、スレオニンがたくさん含まれていることも理由のひとつ。
それに、酵素の作用も加わると思われる。
 
ニンジンには、ビタミンCおよびカルシウムもかなり含まれている。
このため、ニンジんを常食していると、病気に対する抵抗力が増す。
組織に炎症が起こりにくくなって、糖尿病、気管支炎、ガンなど、すべての病気にかかりにくくなるのだ。
 
また、女性の生理機能の健全化効果も著しく、性ホルモン的作用もあるらしい。
特に、生理不順、のぼせ、寝汗などの更年期の不快な症状の解消に威力を表す。
 
加えて、すぐれた保温作用を持っていて、血液循環を良くし、冷え性、シモヤケを根治する。
寒さに当ると、顔が紫色になりやすいのは、皮膚血管の反応性が鈍っているためで、これの解消にも、ニンジンは有効だ、
 
さらに、ニンジンには副腎皮質ホルモンの分泌を盛んにする作用もある。
そのため、ストレスによる自律神経機能の失調も防止できるから、肌荒れや病的脱毛が防止でき、弾力のある若々しい肌をつくり、髪の色つやもよくする。
 
以上のような効果は、普通にニンジンを料理に使っておれば得られるものだけれど、体質にあった用い方をすれば、いっそう効果的だ。
すなわち、暑がりでのぼせやすい体質(陽性体質)の人は、ニンジンジュースとして活用するとよい。
このジュースは貧血、結石症にとくに有効だ。
一方、体が冷えやすい陰性体質の人は、じっくりと軟らかく煮込んで食べるのが望ましい。
 
それから、ニンジンは皮付きで用いるとともに、植物油と一緒にとる工夫をしたい。
ビタミンAは脂溶性ビタミンで、油に溶けて吸収されるからである。
 
 
■ にんじんコロッケ
材料(12個分)
・にんじん・・・300g  ・かぼちゃ・・・200g  ・くず粉・・・大さじ3
・パン粉・・・2/3カップ  ・植物性バター・・・小さじ1と1/2  ・自然塩・・・少々
・ナツメグ・・・少々  ・パン粉  ・パセリ  ・揚げ油
作り方
@にんじんは蒸してつぶします。かぼちゃも蒸して皮をとり、つぶします。
Aつぶしたにんじんとかぼちゃを合わせ、そのなかへくず粉、パン粉、バター、塩とナツメグを混ぜます。
12等分して、にんじんの形を整え、パン粉をまぶして、冷蔵庫で冷やします。
B油で揚げ、パセリを刺し、にんじんの葉に見立てます。
 
■ にんじんジャム
材料
・にんじん・・・350g  ・ミネラル水・・・1カップ  ・米飴・・・大さじ2〜3杯
・塩・・・少々  ・レモン・・・1/2個
作り方
@人参をすりおろし、水を加えて中火で煮込み、米飴、塩で調味し、煮つめます。
A冷めてからレモンを絞り混ぜます。
 
 
 
● ごぼう
 
シベリア、満州(中国東北部)、北ヨーロッパなどには、野生のごぼうがあるそうだが、栽培はされておらず、食べる習慣はまったくない。
中国では昔は食べたこともあるらしいが、現在では食べていない。
というわけで、世界広しといえども、ごぼうを食するのは日本だけなのだ。
 
それも、かなりの執着を持って食べられている。
蛋白偏重の現代栄養学の尺度によって、多くの食品がハネられ、冷遇されている今日だが、「主成分のイヌリンは栄養価値がない。ミネラル、ビタミンにも見るべきものはない」などといわれながらも、ごぼうは健全なのである。
 
香りと歯ごたえが日本人好みであること以上に、生理的に不可欠の要素を持っているせいであろう。
 
ごぼうの繊維は腸壁を刺激して、消化物の移動をスムーズにする。
穀物中心食であるわれわれ日本人の体には、栄養成分の吸収効率を高める上でも、老廃物の排泄を促すためにも、繊維分を十分にとらなければならないのだ。
とくに便秘気味の人にとっては、ごぼうの価値は大きい。
 
ごぼうには鉄分が多いから、貧血の防止に役立つ。
もっとも、最近めだって増えている貧血症は、ほとんどが高蛋白性の貧血である。
だから鉄分の補給だけではダメで、体蛋白から赤血球をつくる機能を改善しなければならない。
 
ごぼうの持つ酵素成分はすぐれて整腸作用を持っていて、造血力の回復にも威力をあらわすから、その点でも好都合である。
 
この酵素成分による整腸作用は、カゼにも卓効をあらわす。
ごぼうをすりおろして、熱湯を加え、はちみつで適当に甘味をつけたものを飲むのである。
すりおろし汁のカスを除いてストレートで飲めば、酵素が腸内の異常発酵を抑え、腸壁細胞を鎮静させるので、ひどい腹痛もケロリと治ってしまう。
 
また、すぐれた保温作用を持っているのも、ごぼうの特性の一つ。
ごぼうは土の中で育つ根菜である上に、寒地原産の植物であるため、耐寒作用が強く、体を温める効果を表す。
 
このため、ごぼうの常食は、冷え性、神経症、肩こり、低血圧などにすばらしい効果を発揮する。
生理不順の人は、ごぼうを細かく刻んでガーゼの袋にいれ、それを1週間ほど浸した日本酒を、毎日盃一杯ずつ飲むとよい。
 
ごぼうは皮後と用いることが薬効の決め手だ。
最近は、きれいに洗ってほとんど皮がなくなってしまっているものや、キンピラ用にきざんで水にさらしたものが売られているけれど、これでは本当においしいごぼうは食べられない。味はともかくとして、薬効はほとんど期待できない。
なるべく泥つきのものを買って、表皮をいためないようにタワシで泥を落として使うようにしたい。
 
 
■ きんぴら
材料(4人分)
・ごぼう・・・70g  ・れんこん・・・40g  ・にんじん・・・40g  ・ごま油・・・大さじ2
・しょう油・・・大さじ2  ・だし汁・・・大さじ3  ・白炒りごま・・・少々
作り方
@ごぼう、にんじんは細切り、れんこんは薄いいちょう切りにします。
A鍋をよく熱し、ごま油を入れ、ごぼうを炒めてから、れんこん、にんじんと順次炒めます。
Bだし汁を加えてフタをし、しばらく煮て火が通ったらしょう油で調味します。
汁気がなくなるまで炒めつけ、器に盛ってからごまをふりかけます。
 
■ ごぼうの丸煮
材料
・ごぼう・・・1本  ・ごま油・・・大さじ2杯  ・しょう油・・・大さじ4杯
・だし汁・・・1カップ  ・白ごま・・・少々  ・こんぶ
作り方
@ごぼうを洗い、長さ10cmに切ります。
A油で1を炒め、昆布を敷いてだし汁を入れ、よく煮てしょう油で調味し、汁気がなくなるまで煮ます。
B長さを揃えて4つぐらいに切り、切り口にごまをふります。
 
 
 
● じゃがいも
 
フランス語では、じゃがいもはポンム・ド・テール、すなわち「大地のリンゴ」という素敵な名前で呼ばれている。
これはおそらく、薬効の類似性に着目してつけられたものだろう。
じゃがいもも、リンゴもともに整腸作用が著しく、とくに肉毒の解消に威力を発揮するものだ。
 
すぐれた整腸作用をあらわすのは、ぺクチン質がたくさん含まれているため。
ペクチン質は、水を吸収して軟らかくふくれて、刺激物から消化管を保護すると同時に、便の通貨をよくする。
腸の働きを健全に保って、便秘も治すのである。
 
肉毒を消すのは、第一にカリウムが多く含まれるため。
すなわち、過剰なナトリウムと一緒に肉食性の老廃物を体外に排泄することによって、血液の酸毒化を食いとめる。
そのため、血圧は下がり、それと同時に、脳卒中や心臓病になる危険性もそれだけ薄らぐ。
 
肉料理の付け合せにじゃがいもがよく用いられるのも肉食民族の生活の知恵だ。
したがって肉食をする場合は、せいぜいじゃがいもの薬効を生かすといいのだが、それよりもはるかにいいのは、血液を汚す肉食を極力避けることであろう。
 
もっとも、肉食と関係なく、適度にじゃがいもを活用しても確実な薬効はえられる。
たとえば、白米や甘いものの過食によって太っていて、血圧も高いという人は、じゃがいもスープを作って、汁だけを飲んで、カリウムの効用をちゃっかりちょうだいする、という手もある。
 
この場合、じゃがいもをよく水洗いし、皮つきのまま薄切りし、水を加えて湯侘びでじっくり煮込むと、カリウム分はほとんど汁の中に溶け出してしまう。
 
反対に、食が細い虚弱体質の人は汁も実も一緒にとる。
肝臓機能は強化され、アレルギー体質も治る。
とくに消化不良や下痢を起こしやすい子供の体質改善に有効だ。
じゃがいもは、主食代わりにもなる。
澱粉質が主体で、しかも糖分が少なく、各種のミネラルも結構含まれているからである。
 
しばしば冷害に見舞われる北海道では、昔は米はもちろんムギ、キビなど粒食できるものがほとんどとれない時期もあったが、じゃがいもだけはよくとれた。
それも、過酷な条件下では紛質のうまいものができるものだから、天の摂理とは大したものである。
 
じゃがいもの特性でとくに注目したいのは、ビタミンCが意外に多く含まれている点だ。オレンジ類には及ばないけれど、他の果物類よりは多い。
しかも熱に強いから、加熱食からC補給ができ、体を冷やしすぎる心配もない。
 
というより、じゃがいもは根菜類に属し、チロシナーゼという酵素も含まれ、血液循環をよくするので、適量を常食していると、体は温まり、寒さに強い体になる。
ただ発芽すると芽や皮に毒素(ソラニン)が生じるから、芽をよくとり、皮も厚くむくこと。
 
 
■ じゃがいもいなり
材料(8人分)
・じゃがいも・・・350g  ・植物性バター・・・大さじ1  ・自然塩・・・小さじ1と1/4
・油揚げ・・・4枚  ・グルテンバーガー・・・150g  ・玉ねぎ・・・100g
・にら・・・1/3束  ・ごま油・・・大さじ1と1/2  ・地粉・・・大さじ2
・揚げ油・・・適宜
作り方
@油揚げは熱湯で油抜きをし、2つに切り、開き、袋にしておきます。
Aじゃがいもは芽を深く取り、皮つきのまま4つ切りにしてやわらかく蒸します。
熱いうちに皮を取り、すりばちで、むらなくつぶして、自然塩小さじ1/4杯、植物バターを混ぜます。
Bごま油を熱し、玉ねぎのみじん切りをよく炒め、にらの細かく切ったもの、グルテンバーガーも加えてさらに炒め、塩小さじ1杯で調味します。
C、ABを混ぜ合わせ、8等分して油揚げにつめ、口を水溶き地粉ではり合わせ、180度くらいの油でからりと揚げ、2つに切ります。
 
 
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001