あんな話 こんな話 (68)
 
森下敬一 『食べもの健康法』 より その9
 
● きくらげ
 
同じキノコの仲間でも、硬質のものには、しいたけやシメジ、エノキなどの軟質のものとは違った、特別の効能をもったものが多い。
 
すなわち、霊芝(れいし)、木耳(もくじ)、サルノコシカケなどの大変に硬い質のキノコ類で、いずれも、知る人ぞ知る抗ガン・不老長寿薬なのである。
 
霊芝、サルノコシカケは高価だが、木耳は安価で、水に戻せば軟らかくおいしくもあるので、積極的に活用したい。
 
木耳、すなわちきくらげである。
本家の中国では形が耳に似ているところから木耳と呼ばれ、わが国では、歯当たりのシコシコしたところが水クラゲに似ているところから木のクラゲと呼ぶようになったのである。
 
このきくらげの成分組成は、7割以上がミネラル、1割が粗蛋白というきわめてユニークなもの。
きくらげは多様な薬効を持っているが、そのすべてに、ミネラル補給が裏づけになっていると考えてよい。
 
特にカルシウムが多いから、カルシウムの不足しがちな日本人は毎食事に食べていいぐらいのものだ。
 
きくらげの粗蛋白は、水分を吸うと、ネットリとした粘液質になる。
すなわち、植物性のニカワ質蛋白質なのである。
このニカワ質には、めざましい止血作用と養肌(ようき)作用がある。
 
止血作用をあらわすのは、血管外に出た血液を素早く凝血させる働きがあるため。
その効果は大変なもので、消化管や痔に出血が起こった場合は、きくらげと黒砂糖を煎じて飲むとすぐに出血が止まるほどだ。
 
昔から、きくらげが、結核、胃潰瘍、痔の特効食品として利用されてきたのもこのためである。
 
養肌作用をあらわす理由の一つは、肌に適当な水分を保つ働きがあるため。
だから、肌が枯れてシワができて困る人はせいぜい利用するとよい。
また、養肌作用をより強力に支えているのは、一種の性ホルモン的な作用だ。
 
きくらげは婦人科の妙薬で、貧血、産後の体力回復、こしけなどに著効を表す。
女性特有の機能を健全化する薬理作用が、同時に、女性らしい水水しい肌を生み出すのである。
 
もちろん、きくらげは男性にとってもありがたい食品。
ヌルヌルしたものは男性のセックスを強くする作用を持つといわれている。
それはともかくとして、ミネラルと粗蛋白がたっぷり含まれているから、大いに強壮・強精効果は期待できるものだ。
 
なお、白きくらげもあって、これは深山の老朽木に生ずるもので、強壮・不老食といわれている。
昔の中国の金持ちたちは、大金を払ってこの白きくらげを常食したそうだ。
日本でも市販されているが、かなり高価で、色・形・歯ざわりなどいかにも上品だ。
しかし、薬効的にはふつうの黒いきくらげもほとんど変わりがないから、これを活用すればよい。
 
 
■ 麩ときくらげの白和え
材料(4人分)
・庄内麩・・・1枚  ・きくらげ・・・10g  ・だし汁・・・1/3カップ
・しょう油・・・小さじ2  ・みりん・・・小さじ3  ・油・・・大さじ1/2
・自然塩・・・小さじ1/2  ・自然酒・・・大さじ1/2  ・豆腐・・・1/2丁
・白ごま・・・大さじ1と1/2
作り方
@麩はぬれぶきんで包み、湿らせてから細く切り、だし汁としょう油みりん小さじ1杯で薄味をつけます。
きくらげはもどして石づき取り、油で炒め、小さじ4分の1杯弱の塩と自然酒で下味をつけます。
A豆腐は水切りをして熱湯にくぐらせて付近で十分水気を取っておきます。
B白ごまを炒り、ていねいにすり、Aの豆腐を入れてさらによくすります。
みりん小さじ2杯と小さじ3分の1弱の塩で調味します。
C、@の麩ときくらげをBに入れて和えます。
庄内麩はぬれぶきんに包み、ていねいに扱いませんと、くずれてきれいに出来上がりませんので注意してください。
 
 
 
● りんご
 
バラかに属する果物には不思議な薬効を持っているものが多く、リンゴもその一つ。
かの有名なバーモンド療法は、リンゴを発酵させて作ったりんご酢とはちみつを混ぜ、適当に水に薄めて飲む方法である。この飲み物を常用しているアメリカのバーモンド地方に長寿者が多い、というわけで長寿法として知れわたった。
 
健康法や長寿法に目を変えるのは機械文明の先進国だ。
すなわち肉食の欧米各国だから、そこで効果があったからといって、必ずしも穀菜食民族である日本人に有効だとは限らない。
 
日本人の健康長寿法をはばんでいる最大の原因は、肉食と精白食品。
だから、玄米・菜食中心食に切り替えるほうが、バーモンド療法よりどれだけ効果的か知れない。
 
ともあれ、バーモンド療法に限らず、リンゴが肉食の害の解消に有効であることは確か。
リンゴにはカリウムがたくさん含まれている。
このカリウムが、肉食による体内の過剰塩分(ナトリウム)の排泄を促す。
このため、高血圧を防止し、脳卒中の予防にも役立つ。
 
一般には、食塩を取りすぎると高血圧になるといわれているけれど、体内の塩分過剰を引き起こして高血圧をはじめいろいろな慢性病を招くのは、食塩よりむしろ肉食過多なのだ。
食塩で問題になるのは、摂取量ではなく質なのである。
 
アダムとイブ、ニュートン、ウイリアムテルなど、欧米にはりんごにまつわる話が多いのも、肉食との関連があるのかもしれない。
アメリカの牧師ジョナサンは、何を考えたのか、説教などはそっちのけで開拓時時代の西部の村々にりんごの種をまいて歩いた、という。
このジョナサンによって、わが国のりんご好きがもっとも喜ぶ紅玉も生み出された。
 
穀菜食民族であるわれわれがりんごの格好を得るためには、過食にならないよう適度にとることが大切だ。
果物による体の冷やしすぎを防止するのである。
体の冷えやすい人は、焼きりんごにしたり、塩味だけで煮たものをパイに用いたりするとよい。
 
さて、りんごの薬効で特にめざましいのは、整腸作用である。
りんごにはペクチンがたくさん含まれる。
ペクチンは、腸壁にゼリー状の膜を作って便通をよくする。
腸内の異常発酵を抑えるとともに、異常発酵によって発生した毒素の吸収も阻止する。
このため、常食していると、高血圧、肌荒れ、頭痛、めまい、ノドの痛みなどに有効。
 
昔は、病人職といえば決まってりんごのすりおろしを与えた。
どの病気も元凶は腸機能の乱れにあることを考えれば、実に合理的な手当て法だったわけだ。
もっとも、いまの病人では、ミネラルや酵素などの絶対的不足も発病の重大な要素になっているから、りんごのすりおろしだけでなく、胚芽、葉緑素、酵素を補給することが不可欠であるが。
 
りんごのさわやかな酸味は、リンゴ酸、クエン酸によるもの。
これらの有機酸は、代謝を促進して疲労を回復する。
 
 
■ りんごのスナック・サラダ
材料(5人分)
・紅玉りんご・・・1個  ・角パン・・・2枚  ・紅花油・・・大さじ2
・ごま油・・・大さじ2  ・玉ねぎ・・・1/4個
・マヨネーズ(粉末豆乳大さじ3、紅花油大さじ4、和がらし小さじ1、自然塩小さじ1弱、こしょう少々、米酢大さじ1)
作り方
@りんごは皮のまま1cm角に切り、塩水に漬けて水切りしておきます。
A角パンも1cm角に切り、紅花油とごま油の混ぜたもので、こんがりキツネ色に炒めます。
B玉ねぎは薄切りにしておきます。
C粉末豆乳、からし粉、自然塩、こしょう、米酢を混ぜた中に、紅花油をごく少量ずつ加えて、よく混ぜてゆき、なめらかな植物性マヨネーズをつくります。
D材料を全部、マヨネーズで和えて召し上がっても、お皿に盛りつけて、かけながら召し上がっても結構です。
 
 
 
● トマト
 
本物のトマトが食べられる季節には、トマトの薬効を大いに利用したい。
これはどういうことかというと、太陽の光をたっぷりあびて育った自然のトマトを、われわれの体の受け入れ態勢の整っている夏に摂ることによって、トマト特有の薬効が得られる、ということである。
 
最近では、トマトは一年中、店頭に並べられているけれど、季節はずれの食品は、食品自体が不自然な育てられ方をしており、われわれの体の生理との適応もしっくり行かない。
そのため、むしろ体の生理の自然性はそこなわれて、体が冷えやすくなったり、カゼを引きやすくなったりする。
 
そこから次第に、いろいろな慢性病を起こしやすい体質に変えられていく。
食品分析表にのっている栄養価が、いつ食べても体にプラスされると考えるのは、大変な間違いなのである。
 
そういうわけで、現代では完全な実行は無理としても、極力、季節季節の食品を食べるように心がけることが大切である。
 
トマトは脂肪の消化を助け、肝臓の負担を軽くする作用を持っている。
これはビタミンB6の働きが主体となっていると考えられる。
このためトマトは肥満、動脈硬化、糖尿病、皮膚病にきわめて有効だ。
 
また、トマトは肉食の毒を中和する作用をもっている。
トマトに含まれる酵素が、整腸・浄血効果をあらわすのだ。
血液を酸毒化する肉食は極力避けるべきだが、やむを得ず食べる場合は、トマトを多めに摂るとよい。
 
ヨーロッパには「トマトのある家には胃病なし」ということわざもある。
肉の常食によってもっとも障害を受けやすいのは胃腸をはじめとした消化器系。
トマトはその弊害を取り除くのに有効なのだ。
 
酵素作用に加えて、A、B1、B2、C、ニコチン酸、K、P、葉酸、ルチンなどのビタミン類も豊富。
このためトマトを適度に摂っていると、胃腸機能の強化、虚弱体質の改善、体力増強などの効果が得られる。
特にPは毛細血管を強くし、葉酸は造血機能を高める。
 
他の野菜と異なっているトマトの特色の一つは、天然のアミノ酸が豊富に含まれること。グルタミン酸やガンマーアミノ酪酸は、頭脳の働きを活発化する。
トマトは健脳食品でもある。
 
トマトのもつクエン酸、リンゴ酸などの有機酸は、食欲を増進し、疲労回復を促す。
それにビタミンA、Cの効果が相まって、皮膚の新陳代謝を促進し、うるおいのある肌をつくる。
 
トマトはナマ食するだけでなく、加熱食しても有効だ。
特に貧血症、冷え症、精力減退気味の人は、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、カリフラワーなどと一緒にじっくり煮込んだスープやシチューを摂ると、血が急に増えたように感じるはず。
 
 
■ 五香トマト
材料
・トマト・・・適量  ・しょう油・・・大さじ3  ・くず粉・・・小さじ1  ・黒砂糖・・・小さじ1
・しょうがのすりおろし・・・大さじ1  白ごま・・・大さじ  ・ミネラル水・・・大さじ3
作り方
@しょう油、くず粉、黒砂糖を混ぜ、さらにミネラル水を加えてタレを作り、しょうがのすりおろし、炒った白ごま(切りごまにして)も加えて火にかけます。
A、@を冷やし、トマトも冷やしておいて、1.5cmぐらいの厚さに輪切りにして、@をかけて供します。
 
 
■ トマト・ソース
材料
・完熟トマト・・・5個  ・長ねぎみじん切り・・・5本分  ・油揚げ・・・2枚
・にんにくみじん切り・・・小さじ1  ・くず粉・・・大さじ2  ・しょう油・・・大さじ3
・みりん・・・大さじ2  ・自然酒・・・大さじ2  ・自然塩・・・小さじ1
・ごま油・・・大さじ2
作り方
ごま油でにんにく、ねぎを炒め、油揚げのみじん切り、トマトのぶつ切りも加えて煮込み、調味し、くず粉でとろみをつけます。
 
 
 
● かぼちゃ
 
かぼちゃは救荒食品の旗頭の一つである。
精が強く、穀物に不敵な土地にもよく生育し、かなりの収穫を上げることができる。
そのため、開拓史に必ず登場する食物で、日本でも北海道の開拓地でコメのとれないところでは、カボチャを主食にしていた。
 
もっと記憶に新しいところでは、戦争中や終戦直後はどこの家でも軒にタナをつくってかぼちゃのツルをはわせていたものだ。
それがたわわに実をつけ、われわれ日本人を救ってくれた。
 
そんな大役を果たしえたということは、カボチャに準主食としての適正があることを示している。
実際、炭水化物が豊富で、その質もいたってよろしい。
それゆえ、体力を増し、虚弱体質を治す効果も著しい。
 
かぼちゃはまた、糖尿病の特効食品として、民間療法では盛んに利用されている。
糖尿病は、精白食品、すなわち白米や白砂糖の摂りすぎでおこる。
だから、これをやめ、良質の炭水化物食品、すなわち玄米やかぼちゃなどの常食に切り替えれば、自然に治るもの。
 
もっとも、糖尿病では物質代謝全体が混乱しているために、肥満ら精力減退がおこり、動脈硬化も必ず併発してくる。
だから自覚症状はともかく、突然死の恐れも濃厚だから、かぼちゃとともに胚芽・葉緑素・酵素などの体質改善食品を活用することも不可欠。
 
ともあれ、かぼちゃがと糖尿病に奏効するのは、膵臓機能の復活を助けて、血糖値を正常化させるホルモン(インシュリン)の分泌をスムーズにするからだ。
 
また昔から、冬至にかぼちゃを食べると「カゼを引かない」とか「中風にならない」とかいい伝えられている。
 
かぼちゃの果肉の黄色い色素はカロチノイド。
これは体内でビタミンAの働きをする。
そしてビタミンAは、粘膜や皮膚の抵抗性を強化する働きをもっている。
だから、かぼちゃを常食していると、カゼにかかりにくくなる。
 
また、かぼちゃは炭水化物が主体の食品ゆえ、果物や生野菜のように体を冷やしすぎるマイナス面もなく、豊富なビタミンCはそっくり有効に生かされる。
Cは、血管を柔軟にし、肝臓が解毒作用を営む際に重要な役割を果たす。
それゆえ、脳卒中を予防し中風すなわち半身不随にもならない、というわけ。
 
かぼちゃは夏野菜だが、保存がきくから、自然のものを秋冬に食べることも可能だ。
なお、かぼちゃの種は行って食べられる。
これはリノール酸や粗蛋白がたくさん含まれ、高血圧症に有効で、母乳の出もよくする。
 
また、中国人に前立腺肥大がほとんど見られないのは、彼らが実によくかぼちゃの種を食べているためだといわれている。
 
 
■ かぼちゃのクリーム煮
材料(5人分)
・かぼちゃ・・・中1/4個  ・玉ねぎ・・・小1個  ・植物性バター・・・大さじ2
・地粉・・・大さじ5  ・豆乳・・・1と1/2カップ  ・ごま油・・・大さじ2
・自然塩・・・小さじ1
作り方
@かぼちゃは3cmくらいの角切りにし、ごま油で炒め、ひたひたの水を加えて串が通るまで煮ます。
A玉ねぎはみじん切りにし、植物性バターでよく炒め、地粉を加えて、焦がさないように炒め、豆乳を温めて、少しずつ加えて練り、ホワイトクリームをつくります。
B、@にAを注ぎ込み、塩で調味して、弱火でゆっくり煮込みます。
かぼちゃを煮くずさないように、きれいに仕上げましょう。
 
 
■ かぼちゃジャム
材料
・かぼちゃ・・・400g  ・梅干し・・・2個  ・米飴・・・大さじ2
・自然塩・・・少々  ・シナモン・・・少々
作り方
かぼちゃを蒸してつぶし、梅干しも種を取ってみじん切り、水飴も加えて火にかけ、弱火で練り上げ、塩とシナモンを混ぜます。
 
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001