あんな話 こんな話 (71)
 
森下敬一 『食べもの健康法』 より その12
 
 
● どくだみ
どくだみというと、生葉を外用することはよく知られているけれど、食べれば、体質改善に大いに役立つことはあまり知られていない。
 
どくだみという名前は、毒をためる働きがあるところからつけれれたという説もあるとおり、めざましい解毒作用を持っている。
胎毒下しの妙薬として昔から珍重されているのもそのためだ。
ちなみに胎毒とは子供が母体内で受けた毒素の意味で、乳幼児がアレルギー体質で湿疹ができやすい場合を指す。
多方面にわたるどくだみの薬効は、いずれも解毒作用が土台になっていると考えてもよいものである。
 
どくだみは特異臭を持っているけれど、高温加熱すると消えてしまう。
天ぷらにするのが一番いいようだ。
独特の軟らかい口当たりがあっておいしい。
また、乾燥した葉茎を煎じてお茶代わりに飲むことによっても、同様の効用が得られる。このどくだみ茶もなかなか味の良いものだ。
 
どくだみは、まず第一に、動脈の老化を防止する。
どくだみにはルチン用の物質が含まれて入れ、毛細血管を丈夫にする作用があるからだ。
どくだみを常用していると、動脈硬化や高血圧の予防に役立つ。
 
どくだみにはすぐれたり尿作用もある。
そのため、むくみ、膀胱炎、冷え性に有効だ。
濃く煎じたものを、毎日お茶代わりにどんどん飲んで淋病や梅毒を治した人もいる。
この効用についてはクレームをつける専門家もいるけれど、原理的に考えれば、奏功するというほうに軍配は上がる。
性病になるのも、もとをただせば体質が悪いからで、浄血を行えば快方に向かうはず。その意味で、解毒・浄血の著しいどくだみは、試してみる価値を持っている。
 
同じく、緩下作用もめざましい。
便秘は血液を汚す最大の原因で、すべての慢性病のモトだから早く治してしまわなければならない。
 
どくだみがニキビに卓効をあらわすのは、いわば胎毒下ろしの思春期版といったところ。
“青春のシンボル”などというと、あたかも肉体的若さを象徴するもののように思われがちだが、それは完全な錯覚。
ホルモン分泌のアンバランスに加えて、血液の汚れがあるのが原因だ。
甘い物、肉食を極力控え、どくだみを活用すれば、必ずきれいな肌によみがえる。
どくだみはメラニン色素の代謝も促すので、色黒の悩みも同時に解消されよう。
 
さて、最も伝統的療法である、生葉の汁を塗ることが、なぜ偉力をあらわすかというと、あの特異臭の成分中に、糸状菌やブドウ球菌などの病的細菌の働きを阻止する因子が含まれているからだ。
そのため、カミソリ負け、絆創膏かぶれ、クツずれ、湿疹、あせもなどに有効だ。
また、蓄膿症には、どくだみ茶を飲む一方、生葉を塩でもんでクルクル巻いたものを、片方ずつ鼻孔にさし入れる。
これを1日3回ぐらいずつやっていると、膿状の鼻汁が早く出て、卓効が得られる。
 
 
■ どくだみの天ぷら
形がよく大型の葉を選んで、洗って水気をふきとります。
両面に衣をつけ、やや高めの温度で揚げます。
葉が膨らんでくるようでしたら、竹串でちょとつついてください。
両面に衣をつけるのは高熱によって葉の緑色が変色するからです。
臭激成分デカノイド・アセト・アルデヒドは、熱に合うと分解されます。
したがって、200度近くの高温で処理する天ぷら料理がいちばんです。
 
■ どくだみのみそ和え
なるべく若い葉をとり、自然塩ひとつまみを入れた熱湯でよくゆでます。
水をとりかえながら、数時間さらし、水気をしぼって適当な大きさに切り、みそ和えにします。
みそはだし汁とみりんでときます。
 
 
 
● 春菊
 
冬の青菜といえば、文句なしに春菊をあげたい。
よもぎに似たちょっとクセのある香気は、春菊らしさを主張していて、美味しさを倍増する。
 
春菊が鍋物に欠かせない料理の一つになっているのも、実に合理的な意味合いがある。
動物性食品の多食による弊害を解消する作用を持っているのだ。
冬場は、寒さに対抗して体を温めるために、どうしても動物性食品を多くとり勝ち。
それがたとえ人間の食性の範囲内である魚介類であっても、多色傾向になるとやはり血液酸毒化の心配がでる。
だから、冬季には、体を冷やしすぎないで大いに浄血効果をあらわす海藻、大根おろし、本物のみそ、漬物などを積極的にとる必要がある。
 
春菊も、それらと同様の効果を持っている。
その最大の理由は、葉緑素を豊富に含んでいることだ。
葉緑素は、腸機能を盛んにして老廃物の排泄を促すとともに、血液中の酸毒成分と直接結びついて、それの解毒をはかる。
また春菊はアルカリ性食品であることも、血液の酸毒化防止に役立つ要素である。
 
最近の若い主婦は、何度洗っても朽ち葉や砂を落としたりするのは面倒でゴミが出るのもいや・・・・・・というので、もっぱら清浄栽培のレタス、セロリ、クレソン、サラダなどを愛用している人が多い。
だが、こういう軟弱野菜ばかりをいくら食べても、血液浄化効果はそれほど期待できない。
 
さて、春菊には、そのほかにもいろいろな効用がある。
まず、ビタミンKが豊富で、病気に対する抵抗力を強める。
ビタミンKは、カルシウムを体内で有効に作用する活性カルシウム・イオンに変える働きを持っている。
こうして生まれたカルシウム・イオンは血液中の酸毒成分を除去して、血液をリフレッシュし、病気にかかりにくい体をつくる。
 
春菊の繊維は腸の蠕動を活発にして、便通をよくする。
便秘は胃腸の異常発酵をおこし、毒素を大量発生して血液をひどく汚すから、便秘症を放置しておくのは危険だ。
下痢に対しても、春菊は有効である。
葉緑素、ビタミンAなどが腸粘膜の炎症を治すのだ。
この場合は、葉だけを軟らかくゆでてすりばちでよくすりつぶし、ポタージュを作って、1日1〜2回飲むことをしばらく続けるとよい。
貧血防止効果もすばらしい。
腸機能が整うと、造血機能も正常化して、質のしっかりした血液がどんどんつくられる。
ビタミンA、Cも豊富で、皮膚や粘膜の生理を健全にして、肌や目をイキイキと魅力的にする。
カゼにも有効で、春菊、ねぎ、豆腐を実にした味噌汁を熱いうちに飲む。
そして温かくして眠るとよい。
 
 
■ 春菊とパセリのサラダ
材料(4人分)
・春菊・・・80g  ・にんじん・・・50g  ・玉ねぎ・・・50g
・玄麦スパゲティ・・・100g  ・紅花油・・・大さじ2  ・米酢・・・小さじ4
・みそ・・・大さじ2  ・白ごま・・・大さじ1  ・自然塩・・・少々
作り方
@春菊は塩湯でして水に取り、しぼって2cmのぶつ切り、にんじんも千切りして塩ゆでしておきます。
Aスパゲティはほどよくゆでてざるに上げ、玉ねぎのみじん切りをまぶしておく。
B白ごまを香ばしく炒り、すりばちでよくすった中にみそを加えてさらにすります。
C米酢、紅花油、塩も加えてよく混ぜてみそのドレッシングをつくります。
D材料をボールにまとめBで和えます。
 
■ 春菊の卯の花和え
材料(8人分)
・春菊のゆでたもの・・・1把分  ・おから・・・1カップ  ・しょう油・・・大さじ2
・ごま油・・・大さじ1  ・自然塩・・・小さじ1/2
作り方
油で卯の花をいためて調味して、春菊を2〜3cmに切ったものと和えます。
 
 
 
● あしたば
 
あしたばは明日葉。
今日葉を摘んでも、あくる日にはもう新しい芽が出てくる、というほどに生命力の強い植物だ、ということから名づけられたらしい。
別名は「あしたぼ」。
新芽が穂のように、天に向かってまっすぐに突き出る植物、というわけ。
 
いずれにしても、食物のもつ生命力は、それを食べるわれわれの体にも好影響を与える。
何しろ我々の体は、食物が素材になって作られている「食物の化身」なのだから。
食物の性状はストレートに体質・体調に反映するわけだ。
 
事実、乳牛にあしたばを与えると、乳の出が3割がた増えるという。
それほど、代謝を高め、体に自力をつける働きがめざましいわけだ。
ルテオリン7−グリコキシド、イソクエルチドリンなどのフラノボイドが有効因子になっていると考えられる。
 
なんとなく体の調子がふるわない人、難産を避けたい人、便秘気味の人、腎臓の弱い人などには、とてもよい食べものだ。
 
セリ科の植物で、黒潮の流れる温暖な地域に野生している。
特に、八条島や伊豆七等に群生しており、またの名を「八丈草」ともいう。
八条島に遠島になった流人が、海浜に生えていたこの植物を食べて元気をつけたからだ。
 
どうやらセリ科の植物は、健康長寿と密接な関係があるらしい。
私が数度にわたって実地調査におもむいたソ連邦のグルジアには、120歳、130歳で元気いっぱいに働いている百歳壮年が、日本の100倍もいる。
彼らが、長寿の秘訣だといって常食している青葉が、やはりセリ科の植物であって、野性味の強いペトルーシカやシュディックなどだ。
 
実際、あしたばには、体内諸機能の分泌活動をよみがえらせる作用があるので、延若効果は大いに期待できる。
 
もちろん、野性味の強い青菜だけが延若不老の秘訣ではない。
自然医学の見地から見ると、それが、未精白雑穀を主食にしていること、副食が野菜中心であること、発酵食品をたっぷりとっていることなどと、相まっているからだとわかる。
 
一般にあしたばの存在が広く知られるようになったのは、最近になってからだが、ふるい書物である『大和本草』にも、不老不死の植物として紹介されている。
秦の始皇帝がさがし求めていた不老長寿の仙薬とは、あしたばであった・・・・・・という説さえあるほどである。
 
特性の一つは、普通の植物にはあまりないビタミンB12が豊富に含まれていることである。
ビタミンB12は、悪性貧血に有益な物質だ。
また、スタミナ増強作用もある。
あしたばが本場・八条島などでは、もっぱら強壮・強性食品として愛食されているのも、B12に負うところが大きいのであろう。
 
葉はつややかな緑色。いうまでもなく、葉緑素は豊富だ。
葉緑素は、造血になくてはならない成分である。
これとビタミンB12がセットになっているわけだから、貧血症にも卓効を表す。
現代日本女性、特に若い人では半数が貧血症だ。
それも、肉食が原因の高蛋白性の貧血だから、朝食をしっかりとっても、錠剤を飲んでも治らない。
天然の葉緑素をしっかり補足することが、根治の決め手だ。
 
あしたばはセリ科植物特有の香りとほろ苦味が、食欲を増進してくれる。
また、切れ味のいい風味は、食品一般の個性が失われつつある食卓に、新鮮な喜びをもたらしてくれる。
スーパーなどでも手軽に求められるようになったのも、うれしい。
 
若葉をおひたし、ごま和え、からし和えにすると最高の味である。
また、汁の実や雑炊の具にしてもよく、天ぷらや油炒めもおいしい。
また、細かく刻んでパセリの代わりにもできる。
 
なお、茎を折ると黄色い汁が出る。
この汁は、虫にが刺されたとき、患部にぬると、かゆみもすぐとれ、あとを残さずにきれいに治る。
 
 
■ モチとあしたばの炒めもの
材料(4人分)
・もち・・・3個  ・あしたば・・・300g  ・にんにく・・・1片  ・しょうゆ・・・少々
・干しえび・・・1/3カップ ・ごま油・・・大さじ4  ・自然塩・・・小さじ1
作り方
@干しえびに熱湯をかけざるに上げ水気を切ります。
Aもちは小口から厚さ3cmに切ります。
Bあしたばは長さ3cmに切り、にんにくは薄く切ります。
C中華なべに大さじ2杯のごま油を熱し、Aのもちを炒めて取りだします。
Dごま油2杯半を加え、にんにく、塩を入れて熱し、Bのあしたばを入れて強火で手早く炒め、@の干しえび、Cのもちを加えて炒め合わせます。
E最後に、しょう油少々を鍋肌から注ぎ、混ぜて香りづけをします。
鍋にいつまでも入れておくと、水っぽくなり、味をそこねるので、炒め上がったらすぐに器に盛ります。
 
■ からし和え
作り方
@色よくゆで、水にとって冷まし水切りしたあしたばを2cmぐらいにざく切りします。
Aしょう油を少々ふりかけて、水気をしぼります。
B酒炒りしたあさり(むき身)とともに、からしじょうゆで和えます。
 
 
 
● くず粉
 
コメを中心とする穀物が日本人の主食となるまで、主食の役割を果たしてきたのは、ドングリやくるみなどの木の実澱粉および、くず、ヒガンバナ、ユリなどの根菜澱粉だった。
これらの特性は野性味が強いことで、われわれの体のバイタリティを強める効果をもっている。
 
ただ、それら古代の澱粉質食品には、人体では利用できない繊維や有毒成分が含まれている。
それらを除去するための手間ヒマがかかることも、主食の座をコメに明け渡した理由の一つなのであろう。
 
その中でも今日まで変わらず利用されているのは、くずである。
それは、くずが日本の山野にたくさん自生していること、味にクセがないことに加えて、滋養・薬用効果が著しいために違いない。
 
クズ澱粉すなわち本くず粉の、最も手軽で代表的な活用法は、くず湯として用いることだ。
くず湯は、カゼの妙薬である。特にカゼのひきはじめに、葛湯を飲んで暖かくして眠れば、ウソのように治ってしまう。
くず湯の作り方は、200ccの水に本くず粉大さじ1杯ぐらいをといて火にかけ、透明状態になったら火をとめ、しょうがのおろし汁、はちみつで味を調える。
これは、カゼ薬として有名な漢方薬・葛根湯に、優るとも劣らない効きめがある。
 
くず湯がカゼに卓効をあらわすのは、主に薬効成分であるダイゼンという配糖体によるもの。
すなわち、体を温め、血液循環を促進して、発汗を促すとともに、気分を落ち着かせて熟睡をさそい、疲労回復を早めるのだ。
 
なるべくなら、丸一日絶食して、くず湯を飲めば、さらに効果的だ。
一般には、ビールスが体外から入ってくるために風邪を引く、といわれているけれど、それはウソ。
病的なビールスは腸の中で自家生産され、それが血液中に吸収される。
それで体の抵抗力の弱ったときに鼻やのどの粘膜に漂着して、炎症を起こすのである。
その証拠に、過食や肉食をやめて、腸内の異常発酵をおこさないようにすれば、けっして風などはひかなくなる。
 
くずは二日酔いに効くほか、冷え性、肩こり、低血圧、神経痛、リュウマチの防止にも有効だから、いろいろ工夫して常食するとよい。
たとえばごま豆腐やくずモチをつくるのもよく、本くず粉でつくったくず切りを汁の実や酢の物に利用するのもよい。
 
 
■ くず桜
材料(12個分)
・くず粉・・・50g  ・ミネラル水・・・2カップ  ・桜の葉・・・12枚
・黒砂糖、塩少々で味付けした小豆餡・・・12個分
作り方
@鍋に、くず粉と水を漬けておき、溶けてきたらよく混ぜて火にかけます。
中火で煮つめ、焦げつかないように、きべらでよく練ります。
鍋底から固まりはじめましたら、手早く混ぜ、全体が半透明になったら火からおろします。
A餡は12個に丸めておき、@の熱いうちに、水でぬらした手に取り、餡を包みます。
B蒸気の立った蒸し器に、ぬれぶきんを敷き、5〜6分蒸します。
透明になったら出来上がりです。
さましてから桜の葉に包み、冷やします。
*くずは、練ってから、冷め過ぎますと固まって、丸めにくいですから、鍋の下に熱湯を置き、湯せんしながら手早く丸めてください。
 
 
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001