食品添加物のトップセールスマンが明かす
食品製造の舞台裏
知れば怖くて食べられない!
安部司著
『食品の裏側』
より その3
 
 
1章 食品添加物が大量に使われている加工食品
 
 
◆「明太子」「漬物」「練り物、ハム・ソーセージ」
 
添加物商社に勤めていた時代、「明太子」「漬物」「練り物、ハム・ソーセージ」といった製造会社が私のお得意様でした。
当然ながら、これらの食品にはどれにも大量の添加物が使われています。
もちろん、この3つ以外にも添加物を大量に使う加工食品はいろいろあります。
 
これらが特別な「三悪商品」といっているわけではありませんし、この3つ以上に添加物を使う加工食品はほかにもあります。
ただこれらの食品に、多くの添加物が使われていることは間違いのない事実です。
また、これらは添加物の効果が如実に現れる食品でもあります。
そこで、まずは一つの代表例として、これらの食品にどれだけの添加物が使われているか、その「舞台裏」を皆さんにお話したいと思います。
 
皆さんが食べている食品が、どのように作られているか。
それをぜひ知っていただきたいと思います。
 
 
◆低級タラコが、あっという間にぴかぴかの高級品に
 
明太子はタラコを原料としてつくられます。
タラコは硬くて色のいいものが高級品とされていますが、これは添加物でどうにでもなります。
 
柔らかくて色の悪い低級品の原料タラコ。
そんな原料タラコでも、添加物の液に一晩漬けるだけで、たちまち透き通って赤ちゃんのようなつやつやな肌に生まれ変わります。
身も締まって、しっかりした硬いタラコになるのです。
序章でも述べましたが、それはまるでマジックのような見事さです。
 
添加物屋はたくさん添加物を売るべく、「リン酸塩」や「亜硝酸」「有機酸塩」などを数種類ブレンドして、着色料、身引き締め用、品質改良用など用途別に販売します。
製造者も「目的」だけを求めて、内容をよく知らないままにそれらの添加物を使用していたりするのです。
 
この時点ですでにどの程度の添加物が使用されているか――図表を見ればわかると思いますが、唖然とするほどの量です。
もちろんすべての業者が図表に挙げたすべての添加物を同時に遣うわけではありませんが、その使用量の多さは、否定しようのない事実なのです。
明太子の原材料と添加物
無添加明太子 一般の明太子
●タラコをつくる
・スケソウダラの卵巣
・自然海塩 ・純米みりん
・純米酒



●明太子に仕上げる
・純米酒 ・丸大豆しょうゆ
・昆布だし ・かつおだし
・水あめ ・唐辛子
 
●タラコをつくる
・スケソウダラの卵巣 ・食塩 ・ポリリン酸ナトリウム
・アスコルビン酸ナトリウム ・ニコチン酸アミド
・亜硝酸ナトリウム ・ソルビット
・リンゴ酸ナトリウム ・ミョウバン
・乳酸カルシウム ・酢酸カルシウム ・GDL
・グリチルリチン ・ステビオサイド
●明太子に仕上げる
・グルタミン酸ナトリウム
・5−リボヌクレオチドナトリウム
・たんぱく加水分解物 ・アミノ酸液
・ソルビトール ・発酵調味料 ・唐辛子
 
 
◆10種類以上の「白い粉」で明太子はつくられている
 
これが、タラコをさらに加工して明太子となると、味付けと保存のために、さらに多くの添加物が投入されるのです。
種類の数でいえば、結果的に合計で10種類以上は使われているでしょう。
とくに「化学調味料」の量ときたら、明太明子以上のものはないといわれるほどです。
 
うまみを出すために、次々と袋を開けて「白い粉」をザーッと混ぜ込み、タラコを漬けるための調味液を作ります。
一昔前には、メーカーによっては、タラコが見えなくなるくらいに、タラコの上に直接、化学調味料を振りかけているところもあったくらいです。
 
明太子に使われる化学調味料の量は、総重量の2〜3%ほどです。
かまぼこも化学調味料を大量に使っている食品といわれますが、それでもせいぜい1%程度。
いかに明太子が化学調味料の多い食品か、この数字を見るだけでもおわかりいただけるのではないでしょうか。
 
みんなが「おいしい」といって喜ぶタラコや明太子、かまぼこの味――それは化学調味料の味なのです。
いわば添加物の味を食品の味だと思って食べていて、化学調味料を「おいしい」といって喜んでいるのです。
 
 
◆10種類以上の添加物を一度に食べるとどうなるか
 
さらにこれだけ添加物が大量に入ることで、別の不安も生まれてきます。
それは、「添加物の複合摂取」という問題です。
添加物というものは、厚生労働省が一つ一つ毒性のテストをして、一定の基準を満たしたもののみが認可されています。
だから普通に食生活を送っているかぎり、添加物を摂取しても問題はない、というのが国の考えです。
 
しかし、それは単品使用の場合においてのテストであって、複数の添加物をいっぺんに摂取したらどうなるかという実験は十分になされていないのです。
つまり、Aという添加物があるとすると、Aのみで摂取した場合の毒性や人体への影響などは検査していますが、AとBとCの添加物を同時に取った場合はどうなのか――その「複合摂取」についてはまだきちんと研究されていないのです。
 
そもそも、添加物の毒性や発がん性のテストは、ネズミなどの動物を使って繰り返し行われます。
添加物として使っていいかどうかや使用量の基準が、そのネズミでの実験結果に基づき決められているのです。
「ネズミに、Aという添加物を100g使ったら死んでしまった。じゃあ、人間に使う場合は100分の1として1gとしておこう」
大雑把に言えば、そのように決めているのです。
 
もちろん、ネズミと人間の分解能力・吸収能力が同じとはいえないはずです。
人間特有のストレスなどもそこでは考慮されていません。
しかしそれでも、人体実験ができない以上、それを「目安」にするしかないのです。
 
この事実からも、国の基準だからといって完全に信用できるものではないというのは、お分かりいただけるのではないでしょうか。
いずれにせよ、複数の添加物を同時に摂取した場合の危険性は、その有無も含めて、それを食べる私たちが引き受けるしかないのです。
 
 
◆『無着色明太子』は安全志向か
 
もう一つ、「無着色明太子」についても触れておきたいと思います。
スーパーに売られている明太子をよく見ると、「無着色」と表示されて売られているものがあります。
 
この無着色明太子――いかにも添加物が少なくて、健康のことを考えて作られたイメージがあります。
しかし「裏」をひっくり返して表示を見れば何のことはない。
「合成着色料」こそ使われていませんが、そのほかの添加物はちゃんと使われているのです。
「亜硝酸ナトリウム」も「ポリリン酸ナトリウム」も「酸化防止剤」も「化学調味料」も無着色明太子には使われています。
果たして「合成着色料」だけが悪者なのでしょうか。
 
20種類のうち、「合成着色料」を2〜3種類だけ外して、ほかの添加物はそのまま。
それで「合成着色料は使っていません」と高らかに謳っている。
こんな消費者を誤解させるような話があっていいのでしょうか。
スーパーに並ぶ「無着色明太子」の中には、わざわざ「無着色」と金色のシールを貼っているものまであります。
値段もほかの明太子より高い。
 
「こっちのほうが無着色だから体にいいのね」そう喜んで買う人はメーカーの思う壺。
「誇張表示」に惑わされてはいけません。
しかし、メーカーだけが問題かと言ったらそうではありません。
「着色料が使っていない明太子がほしい」という要望がスーパーや生協から寄せられたからこそ、こういう商品が開発されたわけですから。
 
 
◆「プリンハム」の怪――
100キロの豚肉から130キロのハムができる!?
 
「ママ、おいしそうなハムがいっぱい並んでいるよ。私、食べたい」
一緒に買い物に来た10歳の長女にせがまれて、特売ハムを手にしたA子さん。
500g498円という値段に「ハムにしてはずいぶん安いわね」と一瞬怪訝に思ったものの、「まあいいか」と買い物カゴにほうり込みました。
「わーい、今日の夕ご飯に出してね」 子供もうれしそうです。
 
 
業界に「プリンハム」なる用語があります。
響きは一見かわいらしいのですが、要は水を肉の中で固めたハムということです。
業界では、搾れば水が出るくらい水を含んでいるということで、「雑巾ハム」とも呼ばれています。
「水増しハム」と呼ぶ人もいます。
いずれにせよ、実態は変わりません。
 
ハムの原料はもちろん豚肉ですが、たとえば100キロの豚肉から120〜130キロのハムを作るのです。
では、増えた20キロは何か?
もちろん「つなぎ」で増量させているのです。
増量させるために一番安くて便利なのは「水」です。
しかし水をそのまま入れ込んだのでは、肉がグチャグチャになってどうしようもない。
そこで加熱すると固まる「ゼリー」を使用するのです。
 
それ専用に作られた肉用ゼリー液を、豚肉の塊に注射器で打ち込むわけです。
100本くらいの注射器で、肉の塊にいっせいにゼリーをチューッと注入する。
一度見たら忘れられない、それはそれはすごい光景です。
 
次に、注入したゼリー液が肉の組織に均等にいきわたるように揉みこみます。
肉の全量に対して20〜30%もの肉用ゼリーを打ち込むわけですから、この段階では肉がブヨブヨ。
それを何とか整形して過熱すると、ゼリー液が熱によって固まり、最終的にはちゃんとハムらしい形になるのです。
 
これがプリンハムの作り方です。
この肉用ゼリーの原料は主に大豆や卵白ですが、乳たんぱくや海藻抽出物も使われます。
要するに「固まればなんでもOK」という世界なのです。
 
増量した分だけ、色や弾力を持たせるために、添加物も余計に入れなければなりません。
何でもぶち込んで作られた肉。
安売り競争に生き残るためだけの増量作戦。
そこには加工食品業者としての誇りなどみじんもありません。
 
 
◆あなたがカゴに入れたのは
「プリンハム」ではありませんか?
 
この「プリンハム」は、もちろん値段も格安。市場価格でも100g100円ほどです。
年末になるとスーパーの店頭に特売品として並ぶハムは、多くがこうしたハムです。
年末でなくても、「目玉商品」などとして特売されているスライスのハムなどもそう。
先ほどのA子さんが買ったハムももちろんこれです。
 
「あら、ハムが特売だは、安いわ」
そう喜んでカゴに放り込む前に、ちょっと考えてみてください。
惣菜コーナーに並んでいるきんぴらごぼーだって100g120円はするのに、なぜごぼうより肉のほうが安いのでしょう。
 
その理由は「裏」に書いてあります。
「原材料表示」を見てください。
豚肉で作られるはずのハムに、なぜ「大豆たんぱく」「卵白」「乳たんぱく」が使用されているのか。
添加物の知識が特にない人だって、おかしいとは思わないでしょうか。
また「裏」の表示を見れば、ハムには添加物が大量に使われていることもわかるはず。
 
最近流行の「無塩せきハム」(発色剤や化学調味料を用いないというのが謳い文句)も、「亜硝酸ナトリウム」や「化学調味料」だけを外して、ほかの添加物はそのままという場合が多い。
からくりは「無着色明太子」と同じなのです。
毒性の問題以前に、これだけ添加物が並んでいれば、誰しもが不安になるのではないでしょうか。
ハムの原材料と添加物
無添加ハム 一般のハム
・豚肉
・粗塩
・三温糖
・香辛料






 
・豚肉  ・大豆たんぱく  ・卵白
・カゼインナトリウム(乳たんぱく)
・食塩  ・亜硝酸ナトリウム
・L‐アスコルビン酸ナトリウム
・ポリリン酸ナトリウム
・ピロリン酸ナトリウム
・グルタミン酸ナトリウム
・5−リボヌクレオチドナトリウム
・たんぱく加水分解物  ・ポークエキス
・加工でんぷん  ・増粘多糖類
・コチニール色素
 
 
◆「素朴な疑問」を持つことがすべての始まり
 
添加物の見方・買い方はあとの章で触れますが、私は添加物の「物質名」や「危険度」を無理に勉強して覚える必要はないと思っています。
「素朴な疑問」を持って、商品の「裏」にある「原材料表示」をよく見て、常識の範囲内で判断すれば十分だという考え方です。
 
このハムだって、常識に照らし合わせて考えれば、すぐに結論は出るはずです。
A子さんも「何でこんなに安いのだろう?」と怪訝に思ったときに、「裏」をひっくり返して表示を見ていればよかったのです。
ラベルいっぱいに細かい字で書かれている、わけのわからない物質名。
あなたが今まで見たことも聞いたこともないものばかりが並んでいる。
そして、ハムなのになぜ「大豆たんぱく」「「卵白」「乳たんぱく」が使われるのか。
 
そういう素朴な疑問を持ってほしいのです。
「素朴な疑問」を持つことが添加物と向き合う最初の第一歩です。
そして「常識的」に考えれば、「なんだか変だわ、気持ちが悪い」と思うのではないでしょうか。
表示を見て、そういうことを考えて買ってほしいのです。
「素朴な疑問」を持つことから、すべてが始まるのです。
 
 
 
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001