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食品添加物のトップセールスマンが明かす
食品製造の舞台裏
知れば怖くて食べられない!
安部司著
『食品の裏側』
より その6
3章 私たちに見えない、知りようのない
食品添加物がこんなにある
◆コーヒーフレッシュの正体は!?
先日こんな光景を目にしました。
テイクアウトのできるカフェ。若い女性が、買ったばかりのカップがいくつか載ったトレイを片手に、携帯電話で話しています。
「コーヒー買ったけど、みんなミルクはいくついるのかな?」
おそらく同僚か友人に頼まれて、人数分のコーヒーを買いにきたのでしょう。
「○○さんと△△さんはいない?そっかー、じゃいいや。適当に持っていくよ。どうせタダだから」
彼女の前には、無料で使い放題のコーヒー用ミルクの小容器(ポーション)が山積みになっています。
そのなかから5〜6個、無造作につかんで紙袋に入れ、彼女は颯爽と店を出て行きました。
ここで読者の方に質問です。
なぜ「コーヒーフレッシュ」が使い放題なのか、あなたは考えたことがありますか?
私はよく講演などで「コーヒーフレッシュは、何からできていると思いますか?」という質問をします。
皆さん、「えっ、そんなこと考えたこともない」というという少し困った顔をされた後、大半の人が、「牛乳」「生ミルク」などとと答えます。
しかし、結論から言いますと、「コーヒーフレッシュ」は、牛乳(ミルク)や生クリームから作られてはいません。
植物油に水を混ぜ、添加物で白く濁らせ、ミルク風に仕立てたもの――それがあの小容器の「コーヒーフレッシュ」の正体なのです。
植物油を使うことで、牛乳や生クリームを使用するよりもはるかに安くできる。
だから使い放題にできるのです。
そしてそれは、ちゃんと「裏」を見ればわかります。
「植物性油脂、乳化剤、増念多糖類、pH調整剤、着色料、荒涼」
そこにはそんな表示があり、「牛乳(生乳)とは一言も記載されていないはずです。
よく見れば、容器にも「ミルク」とは謳っていない。
「コーヒー用クリーム」「コーヒーフレッシュ」などと表示されています。
「裏」の原材料表示を見ればわかると書きましたが、これは小容器をつめた大袋のみに書かれていて、容器そのものには書かれていません。
後でも述べますが、このように容器や包装が小さい場合(30cu以下)は表示しなくてもいいと、食品衛生法で決められているのです。
だから喫茶店やファミリーレストランで出された場合は、「裏」の原材料表示を確かめようがないのです。
◆水と油と「白い粉」でコーヒーフレッシュができる
サラダ油に水を混ぜて白濁させ、「ミルク風」にすると書いてきましたが、ご存知のように、普通の状態では水と油は混ざりません。
そこで添加物の登場です。
まずは「乳化剤」を使用します。乳化剤というのは、界面活性剤のこと。
これを入れるとあっという間に油と水が混ざって、ミルクらしく白く乳化します。
しかしこれではミルクらしいとろみがない。
だから「増念多糖類」でとろりとさせます。
乳化剤も増粘多糖類も「一括表示」(後述)ですから、何種類使われているかわかりません。
仕上げは「カラメル色素」。
ごく薄き茶色に着酸くすることで、いかにもクリームらしい色合いになります。
日持ちさせるために「pH調整剤」も入れます。
クリームの香りの「香料」も入れます。
あなたがいつもコーヒーに入れているあの「ミルク」――それは、水と油と複数の添加物でできた「ミルク風サラダ油」だったのです。
私は講演の席でよく、その場で水と油を白濁させて「コーヒーフレッシュ」を作りますが、そのたびに会場から「おっー」と驚きの声が上がります。
たしかに、植物油でクリームを作ってはいけないという法律はありません。
しかしこれは、明らかに「もどき商品」「フェイク商品」ではないでしょうか。
加工食品にはこうした「もどき」「ごまかし」が実に多いのです。
しかし私たち消費者の側もまた、反省すべき点はあるのではないでしょうか。
コーヒーフレッシュが、なぜそれほど高くない喫茶店やファミリーレストランで山と積まれて「使い放題」になっているのか――そんな素朴な疑問を持って、その理由を考えたことのある人がどれほどいるのでしょうか(もちろん使い放題のものがすべて怪しいといっているのではありません)。
コーヒーフレッシュに限らず、何の疑いも疑問もなく使っているのでは、いつまでたってもメーカーの思うツボです。
「まがい物食品」「ニセモノ食品」が横行している現代こそ、私たちは「本物」を見抜く目を持たなければならないのです。
◆「一括表示」の「裏側」で何が行われているか
昼下がりのコンビに、サラリーマンのYさん(35歳)は、遅めの昼食用のおにぎりを選んでいます。
一つ一つ手にとって「裏」をひっくり返しては、なにやら熱心に表示を読んでいる様子です。
「最近は牛肉の偽装事件とかいろいろあったでしょ。だから表示をよく見て買わないといけないと妻に言われましてね。
でもホントのところ、ラベルを見てもわからないんですよね」
そういいながらYさんが選んだのは、鮭のおにぎり。
表示を見ると、「pH調整剤」「グリシン」「調味料(アミノ酸等)」とあります。
他のおにぎりよりも表示されている添加物は少なめです。
「3種類か、まあ、これなら少ないほうだろう」
Yさんはおにぎりを手にレジに向かいました。
しかし、Yさんが手にしたおにぎりの添加物は、実は「3種類」どころではありません。
少なく見積もっても6種類、多ければ10種類以上の場合もあります。
一括表示とは、いくつかの添加物を一括して表示すること。
「香料」や「乳化剤」など、同じ目的のために使われるのであれば、一括して表示していいよと食品衛生法で定められているのです。
そのほうがわかりやすいという理由で行われているのですが、添加物や・加工食品業者にとってはこれほど便利でありがたい法律はありません。
たとえば食品の変質・変色を防ぐ「pH調整剤」。
これは、一つの物質名ではありません。
「クエン酸ナトリウム」酢酸ナトリウム」「フマル酸ナトリウム」「ポリリン酸ナトリウム」といった添加物の集合体なのです。
4〜5種類は使われているのが普通です。
それぐらい入れないと、pHの調整効果が出ないのです。
化学記号のカタカナが4〜5種類もずらずら並んでいたのでは「添加物を大量に使っている」という悪印象をもたれてしまいますが、一括表示なら「pH調整剤」とだけ書けばいい。
少なく見せられます。
また「フマル酸ナトリウム」「ポリリン酸ナトリウム」などとカタカナの物質名がずらずら並んでいたら「なんかいやだな」「気持ちが悪いな」と思われてしまいますが、「pH調整剤」とあれば、あまり悪いイメージはもたれない。
それもメーカーにとっては利点です。
これら一括表示の添加物には、使用基準がありません。
要するに「pH調整剤」の一括表示の「裏側」で、何種類の添加物がどのぐらい使われているか、普通の人にはまったくわからないということなのです。
話が似てしまうので省略しますが、「香料」「イーストフード」という表示を見たら、まず同様の一括表示だと思ってまず間違いありません。
「香料」などは、約600種類の添加物の中から、目的の香りを出すために数種類を混合しているのですが、その種類と比率の複雑さは、使用するメーカーさえわからないほどです。
◆「調味料(アミノ酸等)」の裏側』に化学調味料あり
「調味料(アミノ酸等)」も「等」を隠れ蓑として、実際にはどれだけの種類がはいっているかはわかりません。
「グルタミン酸ナトリウム」「DL-アラニン」「グリシン」などのアミノ酸系はもちろん、アミノ酸系以外の「核酸」なども「等」に入るのでOK。
何種類入れてもいいので、加工する側としては非常に便利です。
そもそも「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」と書いてしまうと、「何だ、化学調味料入りか」と嫌がられる。
メーカーとしては、それは何とか避けたいのです。
しかし「調味料(アミノ酸等)」とすれば、その表示から「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」を連想する人は少ない。
それどころか、最近は「アミノ酸ブーム」でアミノ酸は健康によいという「アミノ酸信仰」さえあるようです。
たしかに「グルタミン酸」は天然に存在するアミノ酸です。
しかし、アルカリで中和して「グルタミン酸ナトリウム」にすると、あの独特の強い甘みが出ます。
だから、表示も厳密に言えば「調味料【網に酸化合物等」とすべきです。
「アミノ酸信仰」についても一言だけ。
ふりかけに「アミノ酸等」の表示を見つけ、「ラッキー、アミノ酸が入っているわ」と喜ぶ若い女性を見かけたことがありますが、めまいがする思いでした。
通常の食事をすれば、アミノ酸飲料程度のアミノ酸は十分にとれます。
アミノ酸飲料など飲まなくても、おにぎり1個、味噌汁1敗で、よほど良質のアミノ酸が取れるのです。
それは「カルシウム」についても同じ。
弾力性を増すために使われる添加物に「炭酸カルシウム」というものがあります。
本来、弾力性工場の目的で使われることが多いのですが、カルシウムはカルシウムだということで、それが添加されているものは「カルシウム入り」とあたかも栄養強化の食品だと誇らしげに宣伝されていたりします。
まさに物は言いようの世界です。
「炭酸カルシウム」もカルシウムには違いないのだから、骨を強化する作用もゼロではないでしょう。
しかしそれは、ひじきや小魚に含まれるカルシウムには及びもつかないものなのです。
◆なんでもかんでも一括表示。
こんな便利な法律はない
少し話がそれましたが、添加物の物質名をずらずら並べずにすみ、数も少なく見せかけることのできる一括表示――添加物を大量に使っているメーカーにとっては、大変都合のいい法律です。
メーカー側にこれを利用しようという「作為」が働いてもおかしくありません。
まずずらりと並んだ添加物を前に、何とか一括表示に持っていけないかと検討するわけです。
「これとこれは「乳化剤」の一括表示でいこう」「これは「pH調整剤」の範疇に入るだろう」などというふうに「組み合わせを考えるのです」
あるいは、「これはあと2種類混合して「酸味料」と表示しよう」として、一括表示するために、わざわざ余計な添加物を増やしたりするのです。
そういうことが消費者の知らない「裏側」で平気で行われているのです。
一つの物質が一つの役割をするとは限らないのが添加物です。
「酸化防止剤」や「乳化剤」など、複数の働きをすることも多い。
こっちは赤、こっちは黄色などと明快な色分けはなかなかできないのが添加物の世界なのです。
たとえば「クエン酸ナトリウム」という添加物がありますが「これは食品を保存するpH調整剤の効果もあれば、味の改善にもなるので、多くの目的に使われています。
ですから、たとえば本来保存の役目で使っているのに、「グルタミン酸ナトリウム(化学調味料)」と一緒に調味料として使ったのだと言い張れば、「調味料(アミノ酸等)」の中にもぐりこませることができます。
チーズに使えば「乳化剤」にもなるのです。
こうなると、もう一種のトリックです。
◆「表示免除」の「裏側」に
どれだけ添加物が運びっているか
こうした消費者に見えない添加物は「一括表示」だけではありません。
そもそも加工食品においては、添加物を含む原材料をすべて表示しなければいけないと、食品衛生法で決められているのですが、「表示免除」という例外ケースが認めれれておリ、以下の5つの場合に限っては、添加物を表示しなくていいということになったいるのです。
@キャリーオーバー
A加工助剤
Bバラ売りおよび店内で製造・販売するもの
Cパッケージが小さいもの
D栄養補助剤
この「表示免除制度」こそが、添加物がはこびる温床にもなっているのです。
この5つのうち、最後「D栄養補助剤」以外の4つについて、それぞれ問題点を指摘してみたいと思います。
@キャリーオーバー――入っているのに無表示!?
「キャリーオーバー」とは、原材料からそのまま持ち越される添加物のこと。
たとえば焼肉のタレをつくる際には、原材料にしょうゆを使いますが、このしょうゆに含まれる添加物は表示しなくていいというわけです。
先ほど述べたように、「しょうゆ風調味料」には多くの添加物が含まれています。
しかし最終的に出来上がる「焼肉のタレ」には、しょうゆの添加物の効き目は及ばないから表示しなくていい、ということになっているのです。
だから表示には、ただ一言「しょうゆ」とあるだけです。
それ以外にも、お酒の「酸味料」や「化学調味料」、マーガリンに含まれる「乳化剤」や「酸化防止剤」など、キャリーオーバーは想像以上に数多くあります。
表示に書かれていない部分で、大量の添加物が使われているのです。
消費者が見抜けない添加物がどれほどあるかということです。
もし、法律が変わって、キャリーオーバーも全部表示しろということになったら、大変なことになるでしょう。
A加工助剤――残っていなければ何を使ってもいい!?
加工食品をつくる際に使われた添加物のうち、食品の完成前に除去されたり、中和されたりするものは「加工助剤」とみなされ、表示しなくてもいいということになっています。
つまり、「最終的に残っていなければいい」ということになっているのです。
たとえばみかんの缶詰は、内皮がむかれた状態で詰められています。
この皮は塩酸とカセイソーダで溶かして除去していますが、塩酸はカセイソーダで中和されるため、ミカンには残っていない、だから表示の必要はない、ということになっているのです。
これもまた消費者には見えない添加物でしょう。
「ウチはサラダを作るときは、必ずカット野菜を買ってくるの」
そんなことを言う奥さんがたまにいます。
理由は、刻む手間が省けるだけでなく、切り口がいつまでもしなびなくて長持ちするからだそうです。
そうではなくても、「健康のため」とランチにパックのサラダを買うビジネスマン・OLさんは多いのではないでしょうか。
しかし、ここでも「素朴な疑問」を持ってください。
なぜ、「カット野菜」「パックサラダ」は長持ちするのでしょう?
それらが長持ちするのは、じつは「殺菌剤」(次亜塩素酸ソーダ」で消毒しているからです。
「殺菌剤」を使っていても、加工工程で使われただけで、製品になったときには残っていない――そんな理由から「殺菌剤」(次亜塩素酸ソーダ)という表示は免除。
カット野菜・パックサラダの野菜の消毒現場は、それはそれはすさまじいものです。
「殺菌剤」の入ったプールに、カットされた野菜を次々に投げ込んで消毒します。
しかも一度ではなく、濃度を変えて数回プールに入れます。
メーカーによっては、食べたときのシャキシャキ感を出すために、さらに「pH調整剤」のプールにつけていたりします。
そんな光景を見たら、普通の人は絶対に食べたくないと思うのではないでしょうか。
そんなパックサラダを、みんな「健康のため」と思って食べているのです。
カット野菜を好む奥さんは、自分が切ったレタスはすぐに切り口が茶色くなるのに、なぜ、売っているものはいつまでもきれいなのか――そんな「素朴な疑問」を持つことがあるのでしょうか。
プロが切るから切り口が新鮮なのだと、本気で思っているのでしょうか。
少し考えれば、「何かおかしい」と思うのではないでしょうか。
Bバラ売りおよび店内で製造・販売するもの――
―-残何が使われているかわからない
バラ売り(包装していないもの)の加工食品も、添加物の表示は不要です。
パックに詰めないで枚数売りされている魚や、「詰め放題」などとして売られているお菓子などがそうです。
ベーカリーショップのパンなども、トレイに載せてばら売りされている場合は表示不要です。
また、店内で製造・販売するものも、表示は不要になります。
持ち帰り弁当屋で作られたお弁当などがこれに当たります。
レストランのメニューもそうです。
「自分でつくって自分で売るから表示の必要はない」
そういうことになっているのです。
スーパーの店内で作られる惣菜などもこれに該当しますが、こちらは自主的に原材料を表示するところが多くなっています。
このバラ売りにも大きな問題点があります。
答えはご想像のように、「どんな添加物が使われているかわからない」ということです。
たとえばクリームパンをつくるさいに、「乳化剤」や「保存料」「pH調整剤」などの添加物を使ったとします。
これらは包装すれば表示しなくてはいけませんが、バラ売りにすれば書かなくてもいいのです。
そのため、「裏側」が何を使われているか、知りようがないのです。
Cパッケージが小さいもの――
―-すべて書くとラベルで中身が見えなくなる!?
飴や一口サイズのお菓子など、パッケージが小さい場合(30cu以下)は、原材料を記載しなくてもよいことになっています。
先ほど取り上げたコーヒーフレッシュなどもこれに該当します。
しかしこのコーヒーフレッシュには7〜8種類もの添加物が使われていることはすでにご説明したとおりです。
これも消費者の目には見えない添加物といえそうです。
添加物をいちいち全部書いていたら、小さなラベルではとても足りません。
お弁当やサンドイッチ、お菓子など、入っている添加物をすべて書いたら、ラベルが本体を覆ってしまって、中身が見えなくなるものだってあるはずです。
だから、主要なものだけ書いてごまかしていたりするのです。
◆食品業界も情報公開を
怖い話ばかりして読者の皆さんを脅かすのは私の本意ではありませんが、単純にラベルを眺めただけではわからない、陰に隠れた添加物が「裏側」にどれだけあるかということを知っていただきたいのです。
複雑・不透明な添加物の現実を、私たち消費者は現状では知るすべがありません。
どの食品にどんな添加物がどれくらい何のために入っているのか――その「裏側」を知りようがないのです。
医療や政治、金融の世界では情報公開が叫ばれています。
しかし情報公開が必要なのは、食品業界も同じはず。
衣料も政治も、苦しみつつも古い体質を改めるべく変革の道を進んでいるというのに、食品業界だけが旧態依然とした体質を変えようとしていないのです。
そういう現実がある以上、私たちは自分で自分の身を守っていくほかにないのです。
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石川県認定 |