|
||||||||
食品添加物のトップセールスマンが明かす
食品製造の舞台裏
知れば怖くて食べられない!
安部司著
『食品の裏側』
より その7
4章 今日あなたが口にした食品添加物
◆知らないうちに大量の添加物を食べている現実
さて、これまでの章では、食品の「裏側」つまりどんな食品にどんな添加物が使われ、そしてどのようにつくられているのかというお話をしてきました。
そこで今度は、それを摂取する側の立場、すなわち消費者である私たちの立場で考えて見ましょう。
さて、ここでも皆さんに質問です。
そもそも私たちは、1日にどのくらいの添加物を口にしていると思いますか?
きっとその量は、皆さんが自分で思っている以上だと思います。
一般的に日本人が摂取する添加物の量は、1日平均10gといわれています。
年間4kgです。
日本人の食塩の摂取量が1日11〜12gとされますから、それとほとんど同じ量の添加物を摂取していることになります。
しかし、この数字は人によって、また食生活によって、大きく異なってきます。
自分でも知らないうちに添加物を口にしてしまっていることが往々にしてあるからです。
たとえばコンビニのおにぎり。
どちらかというと添加物はあまり使われていないイメージがあるでしょう。
しかし、ひっくり返して「裏」の表示を見れば、かなりの量が使われていることに気がつきます。
たとえば、昆布の佃煮のおにぎりなら「調味料【アミノ酸等)」「グリシン」「カラメル」「増粘多糖類」「ソルビット」「甘草」「ステビア」「ポリリジン」といった具合です。
また、おにぎりのご飯自体にも添加物が使われています。
甘みを出しておいしくするために「アミノ酸」などの化学調味料や「酵素」が、保存性を高めるために「グリシン」などが入っています。
それ以外にも、パサパサ感をなくし、照り・ツヤを出すために、また、機械で大量生産する際ひとつひとつが機械から外れやすくなり、加えて食べるときにフィルムがするっと抜けるように、「乳化剤」や「植物油」が使われていたりするのです。
「今日はご飯を炊くのが面倒だから、コンビニのおにぎりで済ませましょう」などといっておにぎりを買ってきたら、それだけで10種類近くの添加物を摂取してしまうことになるのです。
◆コンビに大好き 独身サラリーマンN君の1日
では、実際、私たちが1日に口にする添加物はどのくらいになるのか。
以下は、独身サラリーマンN君(25歳)に実際に1日に食べたものを申告してもらったものです。
N君は独身サラリーマンの常とて、自分で食事を作ることはまずないそうです。
とくに平日は仕事が忙しく時間もないことから、ほとんどの食事をコンビニやスーパーで調達しているといいます。
果たして彼は、1日にどれぐらいの添加物を摂取しているのでしょうか。
● 朝食――ハムサンドイッチ
朝食は、コンビニで買ったハンド一致で軽く済ませたとのこと。
ハムサンドイッチの添加物は、「裏」のラベルには、合計13種類が記されています。
しかしここで注意しなければならないのは「乳化剤」「イーストフード」「調味料」「pH調整剤」「リン酸塩」「香料」などは、先ほど説明した一括表示だということ。
それぞれ2〜3種類が「裏側」で使われていると考えれば、合計20種類以上の添加物を、N君はたった一つのサンドイッチで摂取してしまっていることになります。
にもかかわらず、このサンドイッチ。
ラベルには「保存料、合成着色料は使用しておりません」と表示されています。
たしかに「ソルビン酸」などの保存料や、「赤色3号」などの着色料も使っていないので、「そういう危険な物質を使っていないのだから、このサンドイッチは安心ですよ」ということをいいたいのでしょう。
しかし「合成着色料」の変わりに、天然の着色料として「カロチノイド」「コチニール」がちゃんと使われています。
この「カロチノイド」は野菜の色素だからいいとして、問題なのはコチニール」(カルミン酸と表示することもあります)。
これはサボテンに寄生する虫(カイガラ虫科エンジムシ)を乾燥させて、すりつぶして抽出する色素です。
透明感のあるきれいなピンク色が特徴で、ペーハーを少し変えるとオレンジ色にもなります。
アル大手メーカーの繊維飲料もこの色素できれいなオレンジに着色しています。
「いかにも健康によさそう」とOLさんなどが好んで飲んでいますが、虫をすりつぶしてつくった着色料で染めてあると知ったら、彼女たちはいったいどう思うでしょうか。
虫を食べるのがいけないということではありませんが、この虫は古くから南米で衣料の染料などに使われていたものだということなど、想像もできないのです。
いずれにせよ、N君は朝食だけで20種類以上の添加物を摂取してしまったのです。
● 昼食――スーパーのお弁当(豚キムチ弁当)
インスタントコーヒー(クリームパウダー付)
オフィスでデスクワークに追われているN君。
昼食は、近くのスーパーで調達。
手早く済ませるためにお弁当を買ってきて、デスクで食べたそうです。
N君が買ってきたのは豚キムチ弁当。
一見、手作りのイメージがあるかもしれません。
確かに豚肉とキムチを炒めただけですから、添加物が少ないと思われる方もいるでしょう。
しかし「裏」を見ると、ちゃんと添加物が入っているのに気づくはずです。
しかも、「pH調整剤」「香料」が一括表示であることを考えると、20種類くらいの添加物を取っていることになります。
食後はインスタントコーヒーで一休み。
N君が買ったものは粉末コーヒーとクリームパウダー、砂糖のパックが紙コップに詰められているタイプのものです。
このうち粉末コーヒーと砂糖は無添加。
添加物が使用されているのは、クリームパウダーです。
このクリームが「ミルク」から作られたものでないことはすでにお話したとおりですが、これも「乳化剤」「香料」が一括表示であることを考えると、これだけで6〜8種類の添加物が入っていることになります。
つまりN君は、朝のサンドイッチ、そして昼のお弁当とコーヒーだけで、ざっと計算しただけでも、重複しているものも含めて40種類以上もの添加物を口にしたことになるのです。
● 夕食――カップめん、おにぎり(昆布)
パックサラダ(ツナ・コーン入り)
夕食は、会社からの帰りが遅く、近所のお店はもうしまっているので、再びコンビニでカップめん、おにぎりを購入。
健康のことを考えて、パックのサラダも買ったとのことです。
カップめんには20種類以上、昆布の佃煮入りのおにぎりにも10種類以上の添加物が使われています。
そして曲者が、健康のためを思って買ったパックのサラダ。
そう、あの「殺菌剤」のプールで何度も消毒された、あのサラダです。
ヘルシーイメージのツナに、いろどりのよいコーンが入ったサラダ。
よく売れているようで、N君も思わずそれを買ったそうです。
しかし、コーンはまだいいとしても、ツナに多くの添加物が使われているのです。
ツナだけでも「調味料(アミノ酸等)」「pH調整剤」など、5〜6種類は使われています。
もちろん、だからといって「ツナやサラダを食べるな」というわけではありません」
ただ健康のためと思って食べているこのサラダにも、見えないところで10種類ほどの添加物が使われているのは、否定できない事実なのです。
しかしながらN君は、
「いつもカップめんかおにぎりだけで済ませるけど、今日はサラダも食べたし、ちょっと体に気を遣ったな」
と、1日の食事を終えたのでした。
◆N君は1日にどれぐらいの添加物を摂取したか
ではN君は、1日にどのくらいの添加物を口にしたでしょうか。
重なっているものも含めると、軽く60種類は超えていると思われます。
たしかにコンビニやスーパーは便利です。
いつでもどこでも、手軽に空腹を満たすことができるし、値段だってそれほど高くはありません。
繰り返しになりますが、私たちはその「恩恵」「光」の部分を忘れてはいけません。
しかし、その「安さ」「便利さ」を提供するために、そこで売られている加工食品には、否応なく、大量の添加物使われているというのも、事実なのです。
コンビニやスーパーで売っている「食品」を闇雲に否定するつもりはけっしてありません。
私も時間がないときは食べますし、そんなときは「便利でありがたいな」と思います。
しかし、その便利さと引き換えに、私たちは何を失っているのか。
そう考えると、安易に「便利さ」を求めていいものでしょうか。
コンビに生活の代償を支払うのは自分自身なのです。
◆「普通」の主婦 F子さんの1日
一日の食事の大半をコンビニとスーパーでまかなうN君の例を見てきましたが、では、自分で食事を作っている主婦の場合はどうでしょうか。
今度は3歳の子供を持つ主婦Fさんに、1日の食事内容を教えてもらいました。
F子さん宅では子供が小さいこともあり、自分ひとりの昼食以外はなるべく手作りを心がけ、栄養バランスにも気を配っているそうです。
しかし、添加物については完全に盲点になっていることが、次を読んでいただければわかると思います。
● 朝食――ご飯、味噌汁、漬物(たくあん)、焼き魚、明太子、かまぼこ
味噌汁に、焼き魚、たくあん、明太子、かまぼこ、そしてご飯。
日本の朝食らしい内容で、魚や野菜も並び、いかにも「健康的な」朝食のようです。
ところが、この一見「健康的」な朝食にも、驚くほどの添加物が使われているのです。
まず味噌汁。
F子さんが愛用しているのは、出し入り味噌です。
だしをとらなくてもいいので、慌ただしい朝には重宝していますが、このだし入り味噌にも、数種類の添加物がちゃんと入っています。
そして、明太子にかまぼこ。
これは第1章で「とくに添加物が多い食品」として紹介したように、それぞれ添加物が大量に入っているいるのは、もうご存知のはず。
明太子はご主人、かまぼこは子供の好物だそうです。
手軽なのもあってF子さん宅では朝食によく登場するとのことですが、この2つだけでも、摂取する添加物は大変な量に。
また漬物のたくあんは、スーパーで購入したものだそうですが、これもまた添加物大量使用食品です。
「明太子」「漬物」「練り物」はとくに添加物が多く遣われているのを忘れてはいけません。
結局、F子さんが朝食で摂取した添加物の種類は少なく見積もっても30種類以上。
ちゃんと自分でつくっているはずなのに、加工食品に頼っているかぎり、コンビニで調達したN君とはほとんど変わりない結果となってしまうのです。
● 昼食――太巻き寿司
F子さんの昼食は、買い物のついでにデパートの地下食品売り場で購入した太巻き寿司。
卵焼きやそぼろ、きゅうり、たくあん、えび、かんぴょう、かまぼこなど、具沢山で、見た目も華やか。
次いで値段も高いお寿司です。
しかし、この太巻き寿司にもまた、驚くほどの添加物が使われています。
話が似てしまうので細かく書きませんが、「調味料」「酸味料」「乳化剤」「pH調整剤」など一括表示のものもありますから、それぞれ2〜3種類入っていると考えると、合計30種類以上使われているはずです。
そしてここで注意してほしいのは、おかずの種類に比例して添加物の量も増えているということです。
「具沢山」ということは「添加物たくさん」でもあるのです。
たとえば、ここでは加工度の高い卵焼きが入っていますが、これだけで3〜5種類の添加物が入っています。
「健康のために、おかずが多いものを選びました」
幕の内弁当などを買う人がよく言うせりふです。
もちろん、それぞれのおかずには栄養もあるでしょう。
しかし、加工食品には、添加物もその分入ってしまっているのです。
栄養と一緒に添加物もとってしまうのです。
いずれにせよ、たった一つの太巻き寿司で、
30種類もの添加物を取ってしまう現実。
「裏」を見ずに買うということは、本当に怖いことではないでしょうか。
● 夕食――カレーライス、サラダ(ドレッシング付)
夕食はご主人も子供も大好きというカレーライスとサラダ。
カレーのほうは、豚肉、にんじん、ジャガイモ、たまねぎを使って、市販の固形状のルーで味付けをした、ごく一般的なもの。
サラダは、レタス、トマト、ブロッコリー、かいわれ大根に市販のドレッシングをかけたものです。
まずカレー。
F子さんの使ったルーには、10種類程度の添加物が使われています。
ここで一つ注意してほしいのは、カレーのルーにしてもなんにしても、加工段階が進むほど、それに応じて添加物の量が増えるということです。
つまり、カレーのルーを固形状にするため、さらにまた添加物が必要になるのです。
だから、もしF子さんが固形状ではなく、缶に入っているようなルーを使えば、(これも一概には言えませんが、一般的には)固形状にするために使われた「乳化剤」「酸化防止剤」といった添加物をとらずにすんだということになります。
そしてドレッシング。
こちらも数種類使われており、合計で10種類程度になります。
市販のものを使えば、これだけの添加物を摂取してしまいますが、ドレッシングも手作りすれば添加物はゼロです。
簡単にドレッシングを作れる方法は、料理の本を見れば、いくらでも乗っています。
「ドレッシングに、こんなに添加物を使うなんて許せない」
そういう気持ちもわかりますが、ドレッシングぐらい手作りしてはいかがでしょうか。
◆F子さんの摂取添加物はコンビに生活よりひどい!?
以上、F子さんは1日どれくらいの食品添加物を摂取したことになるでしょうか。
朝食、昼食、夕食の3食合計で、少なく見積もっても60〜70種類摂取しているのではないでしょうか。
コンビに生活のN君とほぼ同じか、あるいはそれ以上です。
「コンビに弁当やカップラーメンなんて、体に悪そうだから食べない」
「食事は、健康を考えて、なるべく和食にするようにしています」
そんなことを言う人がよくいます。
しかし、いまのN君、F子さんの例からもわかるように、加工食品に頼っているかぎり、添加物に関していえば、結局(言葉は悪いですが)「同じあなのむじな」なのです。
コンビに弁当やカップラーメンだけを避ければ大丈夫、というほど話は単純ではないのです。
N君、F子さんの食生活を紹介しましたが、同じような食生活を送っている人は多いのではないでしょうか。
決してN君、F子さんだけが特別に添加物を多くとっているわけではなく、日本人の多くが知らず知らずのうちにも、添加物を日常的に「食べて」いるのです。
何も考えずに買い、何も考えずに口にする。
それは、こんなにも恐ろしいことなのです。
|
||||||||
![]() 石川県認定 |