あんな話 こんな話  84
 
食品添加物のトップセールスマンが明かす
食品製造の舞台裏
知れば怖くて食べられない!
安部司著
『食品の裏側』
より その9
 
 
5章 食品添加物で子供たちの舌が壊れていく!
 
◆魔法の色水
 
話は変わるようですが、最近は幼稚園・保育園で講演を頼まれることが多くなりました。
ある幼稚園で行った講演が以外にも好評で、ほかの幼稚園・保育園からもお呼びがかかるようになったのです。
いまませの講演は、添加物に関心を持っている大人が対象でしたから、話すべき内容も定まっていましたが、子ども、しかも園児相手では勝手が違います。
何を話そうか、しばらく迷った末、こんなことを実演することになりました。
 
「ハイ、これから先生が無果汁のレモンジュースを作りますよ」
そして、水の入ったビーカーを持ちます。
「まずこの着色料を水に溶かします。きれいなレモン色でしょう」
そういって、黄4号を水に溶かして色水を作ります。
 
「次にすっぱい味をつけますよ。このままじゃ、ただの黄色い水だからね」
そうして酸味料を投入。
「レモン10個分のビタミンCを入れますよ。体にいいよね」
加えて、アスコルビンサン(ビタミンC)を0.2gほど。
さらにクエン酸も。
 
「みんな甘いほうがいいよね」
そういって、ブドウ糖果糖液糖をビーカーに1割ほど注ぎます。
「あとレモンの香りをつけなくちゃね」
レモン香料を入れるのも忘れません。
最後に粉末セルロースを入れます。
セルロースは、「オガクズ」からつくられる添加物。
色を少し濁らせることで、ほんものの果物ジュースらしい雰囲気を出すのです。
「この粉はオガクズからつくるんだよ」
そう説明すると子ども達は「えーっ」と驚いています。
 
「つぎはメロンジュースだよ」
メロンは緑色なので、2つの色を混ぜ合わせてつくります。
お絵かきの色と同じです。
水に先に青色(1合)の着色料を入れて、真っ青に染める。
次に黄色(4号)を入れると、真緑に変わる。
「うおー」とというどよめきが起こります。
「この色はね、全部石油からつくっているんだよ」
「えーっ」
 
「じゃあね、オレンジジュースも作ってみようか。このいろはね、虫をすりつぶしてつくるんだよ」
「虫!? イヤだー」の声。
水はたちまちきれいなオレンジに染まります。
 
次々と粉を投入し、完成したジュースを紙コップに注ぎ、「飲んでみる?」と聞くと、子ども達はシーン。
顔を見合わせるばかりです。
「誰も飲みたくないか。でもね、いま先生がつくったジュースは、いつもみんなが飲んでいる、このジュースと同じなんだよ」
そういって、某大手メーカーのジュースやアミノ酸飲料などを取り出して見せると、またまた「うおー」とどよめきの声。
 
「ここに並べたジュースを飲んだことのある人?」
と聞くと、ほぼ全員が「ハーイ」と手を上げる。
後でお母さん達は恥ずかしそうに目をそらしています。
 
 
◆子供が大好きなブドウ糖果糖液糖
 
「つぎはお母さん達、よく見てください」
今度はお母さんたちに呼びかけます。
 
「この色水に甘みをつけていきます。こういったジュースには少し前までは、砂糖で甘みをつけていたんですが、砂糖の甘みは重いから、子ども達は嫌うんです。だからいまは「ブドウ糖果糖液糖」というのを使うようになってきています。これはさわやかな甘みだから子供たちの好みなんです。でもこれを見てください。これだけの量を入れるんですよ」
 
そういって先に作った緑色のコップの1割以上に、「ブドウ糖果糖液糖」を注ぐと、「えっ、そんなに?」という声が上がります。
 
これを一人のお母さんに飲んでもらうと、「甘くてとても飲めない」という。
しかしこのシロップ液に、「酸味料」を3種類ほどと「レモン香料」を投入、再び同じお母さんに飲んでもらうと「あっ、これなら飲めます、おいしい」と驚きの声。
 
ただのシロップ水のときには飲めないくらいに糖分が入っているのに、「酸味料」と「香料」でごまかされると、おいしく飲めてしまうのです。
 
「ブドウ糖果糖液糖」というのは、安いでんぷんからつくられるもので、30年ぐらい前から急激に需要が増えました。
 
いま紹介したように、子どもが好きなさわやかな甘みなので、ジュースやコーヒー飲料、さまざまなタレなどに甘みをつけるのに都合がいいのです。
逆にチョコレートなど、重い甘さを出したいときには砂糖のほうがいい。
 
もう一つ、「ブドウ糖果糖液糖」は液体という利点があります。
砂糖ならば製造過程で一度溶かさなくてはいけませんが、最初から液体ならばその手間が省ける。
作業性がいいのです。
また、成分がブドウ糖と果糖ですから、ジュースなどと相性がいい。
飲料メーカーはこぞってこれを使うようになったのです。
 
 
◆急激に血糖値が上がる怖さ
 
しかし、「ブドウ糖果糖液糖」にも怖い部分があります。
それは血糖値を急激に上げてしまうことです。
砂糖も血糖値を上げるといわれていますが、砂糖は体内でブドウ糖と果糖の2つに分かれて吸収されていきます。
 
しかし「ブドウ糖果糖液糖」は、最初からブドウ糖と果糖に分かれているため、あっという間に吸収されて血糖値が跳ね上がってしまうのです。
要は点滴と同じなのです。
 
点滴には栄養分としてブドウ糖が入っています。
ブドウ糖というのは人間の一番単純なエネルギー源ですから、体が弱ったときには最適なのです。
しかし、点滴のブドウ糖の濃度というのは全体量からすれば5%未満です。
 
先ほど紹介した「粉で作ったジュース」などは、大量の糖分を体内に一気に入れてしまうことになるのです。
たとえば500mlの飲料には、「ブドウ糖果糖液糖」が60ml以上は含まれています。
つまり、皆さんが普段飲んでいる500mlのペットボトルのうち、なんと1割以上がシロップ(糖分)なのです。
 
粉末に計算すれば、ブドウ糖として25g以上、果糖として20g以上入っています。
皿に乗せれば山盛りの量です。
実際お母さん達にその皿を見せると、みなさんびっくりされます。
「たった1本のジュースに、こんなに山盛りの糖分が入っているの!?」
これも白い粉の恐怖です。
 
空腹時にこんな糖度の高いものを飲んだら、血糖値がどれだけ上がってしまうでしょうか。
血糖値の急激な上昇は、糖尿病に引き金となってしまいます。
最近では小学生、中学生でも糖尿病になる子どもが増えています。
ブドウ糖のとりすぎでインシュリンがおかしくなっているのです。
 
古来より、私たち日本人は、米からブドウ糖を摂取してきました。
米のでんぷんは体内でゆっくりと分解されてブドウ糖に代わり、エネルギー源になります。
それならば血糖値が急上昇することもありません。
 
しかし、最初からブドウ糖に分解されたものを一気に飲むなどということは、長い歴史の中でこれまで経験したことがないことです。
少なくともここ30年くらいの話です。
 
それに「ブドウ糖果糖液糖」には、カロリーの過剰摂取という問題もあります。
ペットボドル1本%(500ml)のジュースには、砂糖50g相当のカロリー、すなわち200キロカロリー(ポテトチップス半袋分)が入っています。
そんな「ブドウ糖果糖液糖」が大量に入った飲み物やお菓子ばかり食べることで、1日に必要なカロリーの大半を摂取してしまう――それが現在問題になっています。
 
甘味料として使われる「サッカリン」は発がん性を疑われていますし、「アスパルテーム」もフェニルケトン尿症などの問題があるといわれています。
 
毒性という意味ではこういった添加物の方が高いかも知れませんが、「ブドウ糖果糖液糖」には、ゆるやかに、しかも確実に、子どもの体を蝕んでいくという怖さがある。
何気なく子供に買い与えているお菓子。
ジュースやアミノ酸飲料や缶コーヒーなどの飲料のほか、ラムネ、アイスクリーム、キャンディ、グミ・・・・・・。
 
子どもの好むお菓子には、ほとんどといっていいほど「ブドウ糖果糖液糖」が大量に使われています。
「甘いものの食べすぎは虫歯になるからいけない」
もはやそんなレベルの話ではないのです。
 
 
◆お母さんも子供も身を乗り出して
 
講演の最後、私はお母さんたちに呼びかけます。
「ですから、お菓子やインスタント食品を買うときには「裏」の表示をよく見て買ってください。それから今日は「たんぱく加水分解物」と「ブドウ糖果糖液糖」と、この2つだけは覚えて帰ってくださいね」
 
本章では添加物の話としては一般にそれほど騒がれていない「たんぱく加水分解物」と「ブドウ糖果糖液糖」をあえて取り上げました。
 
その理由は、この2つは加工食品に添加されるものとして(国の添加物の分類とは関係なく)、子ども達には与えたくないものだからです。
味覚が壊れていくこと、糖分を取りすぎるということも危惧すべきことですが、この様なものが使われ、安易に食べ物が作られ、与えられる。
しかも、安くて手軽に手に入る――そう子どもたちが思ってしまうことが怖いのです。
 
体をつくる食べものは、こんなに簡単で安くはないはずです。
一度の食事が、食べるのは一瞬でも、どれだけの手間がかかるのかを、子どもたちに教えなければいけないのです。
手間のかかる食事は、子どもの「体」だけではなく「心」をつくることを知ってほしいのです。
 
「それからね、みんな、先生とお約束できるかな? 毎日、ご飯と味噌汁をしっかり食べようね。そして、お料理をするお母さんに手伝いをすること。約束できる人、手を上げて」
講演の最後には、お母さんも子どもも身を乗り出すようにして聞いてくれていました。
 
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001