あんな話 こんな話  97
 
小泉武夫著  サンケイ出版
『知恵の食事学』
より その10
 
第4章 調理をめぐる知恵のさまざま の3
 
 
● 持ち味生かした料理の妙味
 
日本人は一つの材料を使って、じつに多くの食べ方を持っている。
魚の代表に鯛、根菜の代表に大根を登場させ、その食べ方の驚くべき多彩さと、食材を生かした巧みな知恵について、みることにしよう。
 
世界有数の魚食民族日本人は、魚の食べ方においても、その多彩さは世界一である。日本を代表する魚の代表、鯛を取り上げても、その食べ方を見れば十分に証明がつく。
 
まず生食。
3枚におろした新鮮身を、鹿の子作りにして、醤油で食べるのが一般的な刺身だが、他にも数多くの刺身法を持つ。
膾(なます)にしてもよく、さらに薄切りの刺身を熱い飯の上に並べ、好みの薬味に山葵(わさび)醤油を少々たらし、これに焼きのりをパラリとまいて、煎茶の熱いのをたっぷりかけ、ちょっと蓋をして、肉のはぜるのを見はからって箸をとる茶付けは、格別である。
すしダネでも大いに好まれる。
 
次に焼いて食べるとなると、まず姿焼き。
化粧塩をし、波型に串打ちをして、強火の遠火に焦がさぬようほんのり焼く。
和紙に包んで塩水にぬらし、蒸し焼きにしたのが反古焼(はんこやき)や奉書焼。
 
鯛はまた、蒸す料理がたいへん多い。
瀬戸の名物・鯛の浜焼は、藁に包んだ塩蒸し鯛。卯(う)の花蒸し鯛は、臓器をとった腹に、牛蒡、キクラゲ、ギンナン、卯の花などを醤油、酒、味醂で調味し、煮あげたものを詰め込む。
また、鯛肉のすり身ととろろをよくすり混ぜて蒸すのがとろろ蒸し。
ほかに、酒蒸し、骨(こつ)蒸し、兜(かぶと)蒸し。
 
さらに、揚げてはうろこ揚げ、和え物ではぬたやカラスミ和え、飯に炊き込んで鯛めし、煮てはあら煮、ちり鍋、漬けては粕漬けや味噌漬け、白子や肝はもみじおろしやとも酢で、魚卵は塩辛にしてよく、そして鯛味噌や鯛煎餅・・・・・・。
いくらあげてもきりがないほど、まだまだ鯛の食べ方はある。
 
鯛に限らずとも、一種の魚でこれほどまでの食べ方をもつ知恵と伝統は、おそらく日本人だけだろう。
 
大根1本でも、驚くべき食べ方を持っている。
大根が多量のタカジアスターゼを含んでいて消化剤になることや、ビタミンCの含有量が多いことなどを体験的に知っていたからだろう。
おろし大根としての生食が、まず第一。
焼き魚や天ぷらなどに添えると、脂っこさを抑えて淡白となり、もたれることはない。
ナマコ、シラス干し、なめこなどにも添えて喜ばれ、線切りは刺身のツマに、膾は祝儀の際の常顔になっている。
 
煮大根にも料理法は多い。
ふろふき大根はその代表で、鍋に敷いたダシ昆布上で、落し蓋をして湯煮し、胡麻味噌を塗って食べる。
また、簡単にして美味なものには、生揚げ豆腐と一緒に煮た大根鍋があり、さらにおでんの煮大根も結構である。
 
日本人がいかに大根好きかは、主食の米に大根を炊き込んだ大根飯や、大根の種子を発芽させた貝割を珍好するのをみてもよくわかる。
 
極めつきは、何といってもさまざまな大根の漬け物。
沢庵漬け、味噌漬け、べったら付け、守口漬けなど、日本人にとって、いずれも食卓に欠かせないほどの重要な副食品である。
 
このように、魚の一種である鯛、根菜の一種の大根を無作為に取り上げてみても、これを数々の方法で、まったく別々の味として食べてしまう日本人の知恵とお手並みには、つくづく感動してしまうのである。
 
 
 
● 味を隠してうまさ隠さず
 
一昔前、ある若い日本の料理人が中国に修行に出かけた。
中華料理の味付けのコツを見抜いてこようという腹積もりだった。
 
とある料理屋に住み込んだが、そこの主人の料理は大変に美味で、その秘訣は料理の出来上がる直前に、目にも止まらぬ早業で特別の味付けを施すことにあった。
しかし、しかし、その最後の肝心なところまでくると、主人はどうしても秘訣を教えてくれない。
 
それから何日か過ぎたが、まだ味付けの秘訣を見いだすことはできなかった。
ところがある日、主人がいつも最後の味付けのときに決まって手を伸ばす台所わきの戸棚を偶然にものぞいて、彼はわが目を疑った。
なんとそこには、いつも日本で見なれていた日本製の化学調味料の四角い缶が置いてあったのである。
笑うに笑えぬ本当の話。
これこそ本当のかくし味か。
 
笑い話はさておいて、「かくし味」は日本料理に古くから伝わる調理用語の一つで、高級な賓客料理から、家庭の惣菜に至るまで、料理における重大な味付けのポイントに秘伝または秘訣として行われる秘密じみた手法である。
 
どこそこの天丼が美味しいとか、あそこの蒲焼がうまいとか、ここの蕎麦(ソバ)は抜群だとかいって、昼食時ともなれば、行列までできる繁盛店も、その味の重要な秘訣のひとつには、その店固有のかくし味を持っていることが圧倒的に多いのである。
 
たとえば、ある小さなカレー専門店のカレーが、若い女性たちに絶大なる人気を博している。
そこでその店を訪ねてその秘訣をやっとの思いで聞き出したところ、「うちのカレーがうまいのは、かくし味のひとつに少量の福神漬けの汁を加えているためかな」と、サッといってのけたのである。
 
このように日本人は昔から、料理の妙味のひとつとして「かくし味」、「骨(コツ)」、「秘けつ」といった粋な方法をもっている。
自分だけの、この家だけの、そして、この店だけの秘密の味付けや調理法を重要なノウハウとして大切にしているのである。
 
もし、これがなかったら、どこの店のカツ丼を食べても、そう味に大きな違いはないだろうし、どこの家のイモの煮っころがしを食べようと、同じような個性を持った味になってしまうだろう。
 
そして、かくし味に使われるのは日本古来の調味料が多く、その使い方も、副調味料のまたその副といった、ほんの少量を加えて風味をぐっと個性的に整える術なのである。
日本酒、醤油、味噌、塩、米酢、たまり、鰹節、昆布、七味唐辛子、椎茸、葱、生姜、山椒、梅酢や梅肉、柚子、橙など、その種類は誠に多彩である。
 
鯛の頭のスッポン煮の例を紹介する。
鍋に6倍量の水と2倍量の日本酒を加え、これに昆布の一切れを入れ、そこにアラ(頭)を入れ、火にかけて煮あがる直前に昆布を引き上げ、少々の醤油で塩加減し、生姜の絞り汁を加えて、すぐに火を止めてできあがる。
 
この料理法の中には、6対2という水と日本酒の割合、塩でなく醤油で塩加減する方法、また、昆布は煮上がる直前に引き上げるる秘訣、そして最後に、必ず下ろし生姜をしぼり込む(生臭みを消す)知恵などいくつもののウハウやコツが織り込まれているのである。
 
では次に、醤油を隠し味的に使う、いくつかの妙例を教えよう。
 
○ おにぎりをつくる時、水で手をぬらさずに醤油で握り、油をひいたフライパンで焼く。実に香ばしくなる。
 
○ おしるこやおはぎをつくるさい、塩加減をする時に塩の代わりに醤油を使うと美味となる。
 
○ うずら豆や金時豆を煮るとき、砂糖で甘味をつけ、火を消す前に醤油を少々入れると、風味とコクを増す。
 
○ 白菜漬けをバターと醤油で炒めると酒の肴にピッタリ。
 
○ ボルシチ(ロシア風シチュー)の仕上げに醤油を少々加えると、トマトとよく合って味が締まる。
 
 
 
● おろして、すられて、たたかれて
 
おろ(卸)す道具は何も日本だけのものではない。
中国には竹製の大根おろしがあるし、西欧にはチーズをおろすものがあり、南米にはキャッサバのような根茎をおろす道具がある。
 
だが日本のように、おろす道具(おろし金、鬼おりしなど)が、用途(山葵おろし、大根おろし、ツクネおろしなど)によって歯の形、並び方、材質などに違いのあるのは珍しい。
そして、その道具を使って、さまざまな調理法を持ち、多くの料理をあみだす日本人の知恵は、世界の民族の中でも抜きんでたものがある。
 
おろし大根は薬味のほか、和えもの、汁、煮物などに用い、おろした山葵は薬味として、刺し身に添えたり、醤油や酢と合わせて、和えものにしたりする。
 
とろろはおろしてこれを小丼に入れ、その上に卵黄をのせ、青のりをあしらって「月見とろろ」、マグロのブツ切りにかけて、山葵醤油を添えれば「山かけ」、麦ご飯にかけて「麦とろ」、そして汁物と、おろすことによっていくつかの料理をつくることができる。
 
アワビは、水貝、塩蒸し、ふくら煮、バター焼きなどで楽しまれるが、おろし金を当てると、まったく別種の野趣味が味わえる。
雄貝を塩でもみ、硬く締めたものをおろし金ですりおろす。
このおろしアワビに、ヤマイモか長イモのおろしとろろを同量に混ぜ、やはりおろした山葵醤油で食べると、アワビのうま味と、とろろのなめらかさが相乗して舌が踊りだす。
 
「おろ(卸)す」のと同じ手作業に「す〈擂〉る」がある。擂鉢(すりばち)と擂粉木(すりこぎ)で材料をきめ細かくすりつぶせば、さまざまな料理に用いられるのも、おろしものと同様、日本料理では大変古くから行われてきた大切な手法のひとつである。
 
胡麻、味噌、豆類、山椒、くるみ、ジャガイモ、サツマイモ、栗、そして魚介類は、することにより、まったく趣の異なる食材に変身する。
 
魚のごときはその好例で、魚肉をある程度たたいてから、すり鉢ですりつぶすと擂身(すりみ)ができるが、これはする前の魚と比べ、形も性状も物性もまったく異なるから、多彩な食し方が可能になる。
 
蒲鉾(かまぼこ)、竹輪(ちくわ)、半片(はんぺん)、がんもどきなどは、代表的なすりものの例であり、またすり身に鶏卵やデンプン、または小麦などを加えて、いま一度すり混ぜて捏(つくね)や摘入(つみいれ)にすると、揚げたり、焼いたり、煮たり、蒸したりと自在の味が楽しめる。
 
手に包丁を持って、まな板で材料をたたくのは、他国の料理にもみられる共通した手法である。
しかし、野鳥肉、魚介などをたたいてしまえば、日本独自の料理としての素材が出来上がり、数々の食べ方を持つことになる。
 
細かくたたいたものに刻んだネギ、つぶした豆腐や卵を混ぜ、適当に丸めたものの表面に小麦粉かデンプンをまぶして胡麻油で揚げたものをたたき揚げといい、ダシ汁で生姜を薬味にして食べる。
また、スズキ、鯛などの新鮮魚肉を骨ごとたたきつぶして、酢味噌で合わせたたたき膾(なます)には、こたえられない味がある。
 
さて、汁造りの達人と鰯(いわし)のつみれ造りの名人に、そのつくり方を聞いたら次のようであった。
 
★ おろし汁
吸い物とほぼ同じ程度の汁を鍋に取り、これに鶏肉とキスのような白身で淡白な魚肉、カキやハマグリのような貝類などの好みの材料を加え、さっと煮上げて器に盛る。
なべに汁を残しておき、これにおろし大根の生しぼりを入れて手早くかきまわし、煮立つ直前に先ほどの器に加え、おろし生姜の汁を数的しぼり込む。
ここに、季節の木の芽を一葉浮かす。
 
★ 鰯のつみれ
新鮮な鰯を手開きにして包丁で細かくたたきつぶす。
これを擂鉢に入れて十分にすりつぶし、小麦粉、片栗粉、塩、味噌、生姜汁、かくし味を少量入れて調味し、再び十分にすり混ぜる。
次にこれを直径3cmほどに丸めて団子とする。
鍋にダシ汁を煮つめておいてこれに団子を入れ、味をふくませるように煮上げ、浮き上がるのをちょうどよいとする。
煮上げた団子は冷たいダシ汁の中で冷却し、汁の実ヤ煮物に使う。
 
 
 
● 粉焼き二題
 
お好み焼きはいつ、どこで、誰が始めたのかは明らかではないが、一種の遊戯料理の草分け的存在で面白い。
一説によると、江戸後期の雑菓子「麩(ふ)の焼き」(春秋の彼岸に仏事用に焼いたもの)に源をもつという。
これは、いまのお好み焼きのようにさまざまな具を入れて焼くというものではなく、小麦粉を水に溶いて焼き鍋の上に薄く流し、焼けたら片面に味噌を塗ってから巻いた素朴な焼き菓子であった。
 
これが明治に入って、鉄板と小麦粉液を備えて思いのままに焼かせたのが「文字焼き(もんじやき)」となり、大正時代に入って魚、肉、野菜を具とする今の型が定着したようである。
 
当時は、この遊戯的料理がなんとなく不如意に感じ取られ、芸妓や一部の芸能人に持てはやされて広まった。
だから、この流行の底には、例えば好き合った男女がお好み焼きを焼くという心情が隠微な感覚に通じて、互いに向き合って食べることに、次への行為への暗黙の了解を感じさせたりする点は、なんとなくな本人的風情がある。
 
ところで粉もの料理においては、日本と諸外国とは、その区画線が多くの点で区別されている。
お好み焼きを代表例として、天ぷらのかき揚げ、たこ焼きなど、日本のものは、大半が溶いた粉の中に具を混ぜてから焼くのに対し、外国のそれは、ピザパイ、ギョウザ、パスタ、チャバティなどのように、粉をねってのばしたものに具を包んで食べるものが多い。
 
日本人は、主食の米を見てもわかるとおりの粒食民族である。
だから、日本では、炊くことが主であるため、鍋の発達のほうがフライパンのような鉄板の発達よりもすすんでいた。
 
これと反対に、西欧のような小麦粉のような粉食民族は、フライパンでやくのが主で、鍋は従であったから、水分の少ないことを特徴とする包んで食べる料理がそこに発達したのである。
人間は、主食によって、その料理法や料理の道具を理にかなったものにつくり上げる知恵を持っている。
 
お好み焼きは、遊戯性のある鉄板の粉料理で、適当な水分でボテボテした中に、日本ならではの味わいを包み込んでいる。
 
これに対し、同じく粉を材料にして鉄板や鉄製器の中で焼き、水分を追い出してパリパリした中に、日本の風味を持たせたのが焼き菓子の煎餅8せんべい)である。
 
煎餅が一般に普及したのは、江戸時代・天明年間(1781〜89)の、徳川十代将軍家治の時とされる。
当時関東には、瓦(かわら)煎餅、亀甲(かめのこ)煎餅、味噌煎餅、小豆煎餅、卵煎餅などが。
また関西には切煎餅、豆せんべい、半月煎餅、五色煎餅、胡麻煎餅、短冊(たんざく)煎餅、木の葉煎餅など、実にさまざまな煎餅が登場していた。
このことを見ても、いかに煎餅は日本人好みの食べものであったかがうかがえる。
 
お好み焼きが、好みの材料を入れて焼くのと同じく、煎餅もまた日本の情緒を感じさせる味に仕上げている工夫には感心させられる。
醤油や味噌味、胡麻入りの南部(なんぶ)、のりを散らばしたり巻いた磯辺、山椒や生姜、菊の花や紫蘇の葉などでの香り煎餅などうれしいものが多い。
 
なお、今日一般に言う煎餅は粳米(うるちまい)を原料としたもので、糯米(もちごめ)を原料としたものは「霰(あられ)」である。
あられは原料を精米してから粉とし、これを蒸して成型、乾燥する。
それを280℃ぐらいで焼き上げ、醤油で風味漬けをしてから乾燥し、製品とする。
 
 
 
● 汁に感謝
 
ダシ汁や、それを使った調味汁に物をつけたり、くぐらせたり、浸したりして食べる食法はわが国に多くの例が見られる。
 
まず蕎麦(そば)、箸ではさみ上げたら、その3分の1か、半分程度を汁につけ、一気に口ですすり込む。
すると、蕎麦特有のかすかな甘味と素朴な匂いの中に、つけ汁のダシや醤油のうま味、鰹節や薬味の香りなどが口中に充満して、自然に箸は再び蕎麦に行く。
そば本来の風味は「モリ」にあるのは当然としても、いくらその蕎麦が絶品であろうとも、つけ汁がダメなら意味がない。
だから、名代の蕎麦屋は、いつも蕎麦粉とともに、つけ汁の加減には最も神経を使う。
 
蕎麦つゆの定式は、味醂と醤油に砂糖を加え、煮立てたものを「本返し」(カラ汁ともいう)と名づけ、蕎麦屋は常にこれを常備し、随時、鰹節の煮出し汁と調合する。
上等のつゆは、一番ダシだけで行い、二番ダシは種物(天ぷらや油揚げなど)を煮るのに使う。
 
薬味はおろし大根、刻みねぎ、山葵(わさび)、七味唐辛子などと決まっている。
 
汁につけて食べる麺といえば、蕎麦と並ぶのが素麺(そうめん)と冷麦(ひやむぎ)。
素麺の漬け汁は、蕎麦と同じではいけなく、それより淡白なほうがよい。
 
鰹節のダシ汁には酒少々と塩で調味し、砂糖は使わず、醤油は色付け程度の吸い加減にしたのが用いられる。
薬味には茗荷(みょうが)やネギのみじん切り、おろし生姜、ねり山葵などを添える。
冷麦には、今度は蕎麦つゆよりやや鍼(から)めとし、ネギや溶かした辛子を添える。
 
このように、同じ日本の麺でも、種類によって、つけ汁の濃淡や薬味の種類がガラリと変わるこまやかさに感心させられる。
より美味しく麺を食べようとする長い間の知恵と工夫がすばらしいつけ汁を生んだのであろう。
 
麺類だけではない。
天ぷらも「天つゆ」をくぐらせてから食べる。
普通、天つゆと呼ばれる割り醤油は、その大体の標準が決まっている。
酒と味醂を同量合わせ、合わせたのと同量の醤油を加え、さらにその合わせたのと同量の煮ダシ汁を合わせる。
すなわち酒1、味醂1、醤油2、ダシ汁4の割合で、あるいはここに適宜に砂糖を加え、さっと煮冷まして用いる。
これをタップリのおろし大根と、おろし生姜を添えるのを定式とする。
 
湯豆腐には、醤油7・酒3の割合で合わせて壺に入れ、つけ汁とする。
薬味には花鰹、刻みネギ、あるいは好みで七味唐辛子を一緒の器に混ぜて入れておくと、風味が融合して大変よい。
冷奴のつけ汁は生醤油に少量の酒を割り、これに花鰹を添え、薬味におろし生姜、ネギ、青紫蘇などをつける。
 
日本には、他にもさまざまな料理に、このようなつけ汁を用いて楽しむ食法がある。
しかし、これらの食し方の裏には、それぞれに、理にかなった知恵があることを知るべきである。
 
蕎麦の持つ味とかすかな匂い、そして歯に当たる感触をそのまま生かすには、煮込むことよりも、つけ汁につけて、持ち味を存分に味わう方が良いのはいうまでもない。
また素麺や冷麦とて、あの特有の口当たりとのど越しの快感さを味わうには、つけ汁方が最もよいのである。
 
天ぷらにいたっては、そのまま食べたのでは口中、油だらけになり、しつこすぎる。
それを美味に、あっさりした感覚で食べるには、天つゆが大きな役割を果たしてくれる。
このように、漬け汁や梅雨ものを見ただけでも、日本人の食法の上手さを垣間見ることができるのである。
 

石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001