知る人ぞ知る 天下逸品
ジュースにして美味しい
サラダにして美味しい
もちろん キンピラ、天ぷら
煮物、汁物、炒め物に最高!
糖度高く、柔らかく、
甘くて 香り抜群
北海道・帯広 和田農園の
香りごぼう
 
図 16_16
 
● えっ! ごぼうのフレッシュジュース
 
「ごぼうをジュースでお試しを!」というと、たいていの人は目を剥いて驚く。
無理もない、一般のごぼうではとても無理。
サラダにだってほとんどさらさないで食べられる「和田ごぼう」だからできる話。
 
アクが少なく、柔らかく、香りよく、糖度が20度以上もある天下逸品の「和田ごぼう」の素晴しさをぜひ知っていただきたいのです。
 
自然療法で有名な医学博士・イシハラクリニック院長の石原結實先生ご著書の中にも、ごぼうのジュースが記載されています。
にんじん2本、りんご1個、ごぼう1本を、ジューサーにかけて飲むと、体の老廃物を排出し、体を温める効果があるということです。
 
図 13_13
 
● たゆまざる進化
 
和田さんとお目にかかってから20年以上になりますが、ごぼうをほとんど晒さないでの生サラダやジュースには全くの驚きでした。
以来変わらない温かいお付き合い、ご支援をいただいていますが、今回ご紹介するごぼうをはじめ、各種馬鈴薯、カボチャ、長いも等の産物が、ますます美味しくなり、健康で生命力の旺盛なものにと進化し続けているように思われてなりません。
 
このバイタリティな進化は、
「人間の健康な心身は、健康な食べ物によって育まれる。」
「健康で美味しい野菜は、健康な土作りに始まる」
を信条とする和田社長は、ここまできても「これで良し」とせず、いつもに謙虚にお客様の声に耳を傾けられ、止まることない、とこまでも徹底した勉強と研究にあると思います。
 
和田農園の土も作物も、単に高度な知識や技術のみにあるものではないでしょう。
この20年来のお付き合いの中で感じるのは、まさに、和田さんのお人柄、豊かな人間性、崇高な思いの現れが、和田農園の土壌であり、和田農園の生命の農産物であろうと思われてなりません。
 
今年も糖度が20度以上もあるごぼうが到着しました。
毎年土壌診断を繰り返し、「海の幸(海藻・魚粉など)」「山の幸(米ぬか・菜種粕)」を入れ、土中のミネラルバランスを整え、長い年月をかけてつくり上げた土からうまれた「和田ごぼう」の美味しさは、その甘さ・香りのよさが、一味も二味も違う感動的なものです。
 
まずは、生のままスライスしてサラダで食べてみてください。
柔らかさ、甘さ、香りのよさで、きっと驚かれることでしょう。
キンピラも抜群でした。
 
(有)和田農園は、100ヘクタール近くの広大な畑での大規模経営です。
しかし、代表の和田政司さんの安全安心本物作りへのこだわりは、きめの細かい栽培管理を確立し、その取り組みが、残留硝酸態窒素が低く、糖度・食味の高い美味しさとして、作物のひとつひとつに行き届いています。
 
和田農園の安全安心のこだわりや環境保全にも配慮された野菜作りが高い評価を得て、平成17年にはコープさっぽろ農業大賞で最高の「道知事賞」にも選ばれました。
 
図 14_14
 
● 北海道・十勝地方は
 
十勝地方は、日高山脈と大雪山を背に太平洋に面し、大陸型気候で、春と秋は短く、夏は比較的高温ながら爽やか、冬は寒さが厳しい反面、降水量が少ないことから晴天日数が極めて多くなっています。
十勝地方のの8月の平均気温は北海道の他の地域より平均2℃低く、そのため作物が熟するまでの日数(登熟日数)が長くなるので、非常に良質な作物ができるといわれています。
十勝平野のほぼ中央に位置する帯広市は、十勝の農林業の集散流通都市として発展してきました。
市街地は北に集中しており、南には大規模畑作地帯が続き、広大な田園地帯を形成しています。
 
 
● 和田農園のこだわり
 
和田農園は、消費者の皆さんが安心して口にできる、美味しい野菜作りを目指して、日々努力をしています。
『人間の健康は良い作物から』をモットーに、品質を重視し、安全・安全で美味しく、体に優しい食物作りに力を入れています。
健康な野菜を作るために必要なのは、良い土作りです。
そのため、毎年土壌分析を行い、土に有機肥料として「海のもの(昆布・魚粕など)」「山のもの(米ぬか、菜種粕)」を入れ、土中のミネラルバランスを整えています。
農薬も、極力使用を抑えています。
そのように、手をかけて作られた土で育った野菜は甘く、特にゴボウの糖度は果物をしのぐほどです。
アクもなく、生をスライスしてサラダにしても絶品です。
美味しさと安全安心にこだわり、環境保全にも配慮した野菜作り。
その努力と功績が評価され、平成17年「第2回コープさっぽろ農業大賞」では、最高賞の「道知事賞」に選ばれました。
これからも、和田農園では未来の食卓、そして消費者の方のために、安全で美味しくやさしい食物作りに尽力していきます。
 
 
● 和田農園のごぼう
 
ごぼうの味には土の良しあしがはっきり現れます。
そのため、土に有機肥料として「海のもの(昆布・魚粕など)」「山のもの(米ぬか、菜種粕)」を入れ、土中のミネラルバランスを整えています。
農薬も、極力使用を抑えた“特別栽培”に取り組んでいます。
和田さんのゴボウは風味がはっきりとして、かつ通常のごぼうより糖度が高く20度程度あります。
 
 
● 人の手による草取り作業
 
ゴボウが成長するということは雑草たちも負けずにどんどん育ってきます。
和田農園では除草剤は一切使用せず、他の農薬もおよそ2剤までと北海道の慣行基準のおよそ4分の1の使用回数に抑えています。
除草剤を使わないということは、人力、人の手による除草かカルチという機械を使っての除草(機械とはいえ手間はかかります!)
この2つの方法で草取りをします。
収穫までに人手による除草は2回、カルチは4〜5回行います。
このように手間と時間をかけ、ゴボウに目を配っているからこそ評判高い!あのおいしいゴボウができるのですね!
 
 
● 北海道知事賞を受賞
 
◆ 子供たちに安心して食べさせられる野菜を!
大規模経営を展開しながら、安全と安心に心を尽くしている和田さん。
こだわりの農法により生産された農作物は、古くから保育所や小学校の給食の食材として用いられています。
和田さんの農業に臨む姿勢は、食の安全を主眼とする農業者表彰制度で北海道知事賞(最高賞)を与えられるなど、大変高く評価されています。
子供たちに安心して食べさせられる野菜。
和田さんの野菜を語る上で、これ以上のアピールポイントはありません。
 
◆ 《自立した経営》
和田農園では、ゴボウ、長イモを主力生産物とし、それ以外にカボチャ、バレイショなどを栽培している。
畑作王国である十勝地方では、一般に小麦、てん菜、大豆、バレイショなど、いわゆる「政府勧奨作物」の栽培が盛んである。
しかし、同社はあえてそれらをほとんど作付けしていない。
 
代表の和田氏は「自分が考える、味で勝負する」という言葉にふさわしい作物の選択を行っているからである。
それは言い換えれば補助金や助成金とは無縁の世界を選択したことでもあり、筆者はそこに和田氏の経営に対する意気込み、信念を感じるのである。
「自分の力量において経営を行いたかった」と言うが、それは自信の裏打ちのあってのことであろう。
 
和田氏は、栽培する作物を見極め、自社内に選果場や倉庫を建て、自らで営業を行い、販路開拓をしてきた。
決して容易なことではないことは想像に難くない。
しかし、その結果政策に振り回されることなく、補助金などに依存しない安定した経営を実現したのである。
まさに自立した経営の実践である。
 
◆ 《驚異的な出荷率》
和田農園の特筆すべき点は、その出荷率の高さである。
驚くことに出荷率は98%。ほぼ、全量と言ってもいいだろう。
 
それを支えるのが企業的経営に欠かせない、経営資源の一つである「モノ」を的確に充実させたことである。
選果場や倉庫などの施設設備を整備し、生産から販売までを自社で賄えるようにすることで、いわゆる規格外品も規格品と遜色ない価格で販売が可能となったという。
このあたりは企業秘密であろうが、選果と販売をリンクさせることで、マーケットにあった選果を行っていることである。
 
加えて「ヒト」という経営資源も忘れてはならない点であろう。
和田農園では施設設備を有効に活用することで、年間労働の平準化を可能とした。
つまり、従業員の通年雇用を実現したのである。
これにより選果・梱包などそれぞれに適正人員配置を行い、「モノ」を効率的に運用しているのである。
その結果が、ゴボウや長イモの製品出荷率の高さにつながっているのである。
 
◆ 《特徴的な生産物》
消費者に求められる味を追求しつづける和田氏は、作物の原点ともいえる土壌を重視している。
土壌の持つ活性力を取り戻すため、毎年土壌分析を行い、魚粕や昆布などの「海のもの」、米ぬかや菜種粕など「山のもの」などを使い土中のミネラルバランスを調整するなど工夫を重ねている。
 
栽培するゴボウを例に取ると、通常13度程度とされる糖度が、和田農園では20度前後と非常に高い糖度のものを作りだしている。
そのため、帯広市内の有名菓子店で菓子原料としてゴボウが扱われるほどである。
 
このように徹底した土壌管理のほか、農薬や化学肥料の使用を慣行の半分程度まで減らして農産物を栽培し、消費者への訴求力を高めているのである。
 
◆ 《沿革から見える経営手腕》
和田農園は現在三代目の和田政司氏が代表である。
当初は、十勝地方では一般的であった畑作と乳牛の複合経営。
昭和五十年代後半までそのスタイルで行っていたという。
しかし、酪農経営がスケールメリットを追う時代に突入していくと、複合経営の限界を感じ、品目を絞り込んだ畑作専業を選んだという。
そして、安定経営をめざし、平成9年にそれまでの個人経営から法人経営に転換。
翌10年には農地拡張・人材雇用といった規模の拡大に伴い選果場、倉庫設備、機械導入などに着手。
大規模な農地で生産し、自社で選別から出荷を一貫して行える環境も整えていったのである。
 
現在の耕地面積は102ヘクタール。
経営を引継いだ時点が18ヘクタールであったというから、35年で実に5倍以上の農地を所有するに至ったのである。
政府勧奨作物に頼らず、この成長を見ると、如何に和田氏の経営手腕が優れたものであるかが分かる。
 
◆ 《経営の指向》
驚異的な製品出荷率の秘訣は、和田氏が自ら東京のスーパーを筆頭に、コンビニチェーン、道内のスーパーや菓子屋などに至るまで、年間70回にも及ぶ営業を重ね販路を開拓した努力の結果である。
自社販売率がほぼ100%というから、まさに生産から販売までを自社完結で行っているのである。
 
和田農園のこのような経営手法は、補助金に頼らず政策に左右されない自立した経営を念頭に置いた結果であり、さらに如何に自社でできることを事業に取り入れてきたかということであろう。
 
畑作においては自社で一貫の選果・販売は困難であるといわれる。
しかし、困難と不可能は別であるというのを示したのが和田農園である。
同社のますますの発展を期待するとともに、同社に追随する企業が現れることが望まれる。
 
図 15_15
 
諸外国からは「木の根」といわれ、牛蒡を食する国はわが国だけといいます。
中国とヨーロッパはもっぱら薬用として扱われています。
中国では種子を解熱や利尿に。
ヨーロッパでは、根を利尿剤として使用しているそうです。
日本では大地に根を張った生活を願い、独特のごぼうの食味を楽しんできました。
おせち料理には牛蒡が使われます。
これは土中深くにしっかり根をおろす牛蒡を、家の基礎(もとい)・土台をしっかり固めるという意味での縁起物としても利用されてきています。
こうした日本の食の土台を支える牛蒡を「健康に育て食卓を美味しくさせる」ことを目指して和田さんは経営の柱としたのです。
 
牛蒡にはセルロース、ヘミセルロース、リグニンなどの食物繊維が豊富に含まれており、腸内環境を整えてくれます。
歯ごたえの良いごぼうの栄養価は、この食物繊維がメインといえるでしょう。
牛蒡は様々な生活習慣病の予防に役立つ野菜と考えられています。
また、ごぼうの炭水化物は多くがイヌリンで、これは体内でブドウ糖に変わらないことから、血糖値を抑制する野菜のひとつとされています。
イヌリン、の他にはオリゴ糖、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、フラクトオリゴ糖、ブドウ糖(グルコース)、ポリフェノール、などの健康成分が含まれています。
ここからはゴボウについての雑学を少し。。。。 フリー百科事典
 
『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用。
コボウが関連する言葉で北海道でも使われている言葉に「ごんぼほり」(牛蒡堀り)というのがあります。
ぐずぐず不平を言って譲らない、酔ってくだを巻くといったような態度をとる者。
強情である。ぐらいの意味で使われます。
なだめたり、お引き取り願うことはゴボウを「掘る」ことと同じくらい困難であることからきているといいます。
 
もう一つ「牛蒡抜き」というのがあります。
競走でほかの選手を一気に抜き去る様な時に使われます。
辞典では「(牛蒡を土中から引き抜くように)一気に抜きあげること。」などとありますが、これはどうやら間違いのようです。
というのも、ゴボウはそれ自体が深く長く土中にあるために、土との接触面積が大きく摩擦も大きいため、とてもするっと抜くことができないのです。
農家では、ゴボウは「抜く」ものでなく、「掘る」ものとされています。
この言葉はむしろ、抜きにくい牛蒡を一気に抜くことができるほどの力を持っている、という意味で用いるほうが正確なんでしょうね。
ただ、「牛蒡抜き」という言葉には、座り込みなどを行う人物を力ずくで排除するという、原義に近い用法もあるそうです。
 
 
 
● 和田さんの牛蒡 調理の鉄則
千切りにした牛蒡と人参(きざみごぼう)を強火で炒め、甘辛く味をつける「きんぴらごぼう」。
たったこれだけの簡単料理なのに、こんなにおいしいしくたべられる。
日本人で良かったな〜とつくづく思います。
というのも、ごぼうを食用としているのはなんと世界では日本だけだそうです。
欧米人は、「日本人は木の根を食べている」と食文化の違いに驚いてしまうとか。
ごぼうのあの歯ざわりと香りがおいしいのに!
 
ゴボウはキク科の野菜です。
だから本来は菊のように香り高き野菜なわけなんです。
和田さんのごぼうは甘さと柔らかさだけでなく香りの高さもあるんです。
せっかくの牛蒡です。
素材の良さを引き出す調理をしなければいけませんね。
定番のきんぴらはごぼう料理のベストセラー
 
【アクの正体は善玉のポリフェノール】
天使大学の荒川義人(よしひと)教授は
「ごぼうは皮をむくと黒く変色しますが、あのアクの正体をご存じですか。
あれはタンニン、クロロゲン酸、コーヒ酸といったポリフェノールなんです。」
ご存知のようにポリフェノールは注目の抗酸化物質ですから、調理上はやっかいなアクが、実は有益な栄養成分だったんです!!
和田さんが牛蒡ジュースを薦めるわけの一つでもあるんですね。
 
【ごぼうの旨み成分】
いろいろな汁物、かやくご飯などで感じますが、ごぼうが入るだけで出来上がりは違います。
逆に牛蒡の入っていないかやくごはんなど考えられません。
荒川先生は
「牛蒡のアミノ酸の作用です。牛蒡にはアルギン酸、アスパラギン酸などのアミノ酸が豊富ですからね。またカルボン酸やピラジンといった香り成分も多い。これらの成分があいまって、、、、一味違う!となるわけです」といっておられます。
カツオと昆布のように複数の旨み成分が合わさっていい味になる。
牛蒡と鶏肉の組み合わせが多いのはそのような理由からなのだろう。
鍋やスープにドンドン使ってほしいですね!
 
【皮の近くにうまみと香り】
土つき牛蒡を調理するときは、皮は包丁の背で薄くこそげるだけにしましょう。
皮近くにうまみと香りがあるからです。
たわしの場合は牛蒡の土をこすり洗いし、ごぼうの旨み成分がある皮の部分をこすり過ぎないようにしましょう。
アルミホイルを丸めて“たわし”のように使えば、ゴボウの皮を薄くむくことができます。
 
くれぐれも真っ白になるまでこすらないようにしましょう。
切ったら水にさらしますが、できるだけ短時間で済ませましょう。
酢を数滴たらすと、あくを抑え渇変が防げます。
さてさて、和田農園のごぼうを一度食べると日本人が潜在的に持っている味覚のDNAが目覚めてしまうでしょうね。
 
 
 
■相馬先生のゴボウ(牛蒡)の話
●ゴボウの古里とその名の由来
1)ゴボウ事始め キクと兄弟のゴボウは中国渡来
ゴボウは、日本を代表する国花・キクと同じ、被子植物門・双子葉植物綱・キキョウ目・キク科の植物です。キク科の仲間にはキク(食用菊)を筆頭に、シュンギク、レタス、フキ、スイゼンジナ、ヤマゴボウ、アーチチョーク、カルドン、キクイモ、モミジガサ、サルシファイ、エンダイブ、チコリ、ツワブキなどがあります。
キク科ゴボウ属の植物は、ヨーロッパからアジアにかけて、6種類存在します。しかし、葉柄や根部を食用に出来るのは一種類だけです。
ゴボウの野生種は欧州北部、シベリア、中国東北部に広く分布しますが、食用として利用しているのは、日本だけです。ただし、日本では自生していません。
 
ゴボウを初めて利用したのは中国人ですが、食用と言うよりも薬用が主でした。
中国・明の本草学の大家・李時珍が編集した医学書の古典・「本草綱目(李時珍:1590年)」によりますと、ゴボウの種子、根、葉を薬用として利用するため、薬草として栽培されていました。中国人は殆ど食べなかったようですし、今も食べません。
本草綱目に登場するゴボウは、枝別れした根(岐根)の多い原始的な物でした。
なお、本草(ホンゾウ)とは、本来は薬の素となる草の意味ですが、中国では広く植物、動物、鉱物からの医薬品を指し、医学の事を意味します。
 
2) 縄文人も食べていたゴボウ
日本には、中国から朝鮮半島経由で薬草として渡来したものと思われます。
平安時代の「本草和名(918年)」や「倭名類聚抄(927〜930年)」にキタキス(岐多岐須)と言う名前でゴボウが初登場します。当時も主として薬用に使われていました。
平安初期の法令集であり、習慣や規則、諸国の産物などを記録した「延喜式(905〜927年)」には、宮廷で食されている食用作物として、ゴボウの名前は出ていません。しかし平安中期の「類聚雑要抄」の中には、宮廷の献立としてゴボウを用いた記述が登場しています。
すなわち、元永元年(1118年)の9月2日、鳥羽天皇が宇治の平等院に行幸された際の御膳に、干物五杯の中の一つとしてゴボウの名があります。この頃から野菜として利用され始めたようです。
 
なお、ゴボウは漢字では牛蒡と表記します。
この文字の読み、「ごぼう」は呉音から来ています。
この事からゴボウが中国の「呉」の時代に、栽培種が渡来したとの推測もありますが、しかし、最近の考古学調査では、縄文初期の貝塚からゴボウの存在が確認されており、渡来はかなり古いものと推定されます。
 
一方、成田山新勝寺に伝わる伝説によりますと、平安時代の天慶3年(940年)に、藤原秀郷が関東で反乱(平將門の乱と言う)を起こした平將門を討った時、その戦勝宴にゴボウが出されたとのことです。
用いたゴボウは、直根の周り53cm、長さ75.8cm、重さ3.75kgもある巨大な物でした。
 
江戸時代になるとゴボウは庶民にとって重要な野菜の一つに成り、東北から九州まで広く地域で栽培され、多くの調理法の記録も残っています。
「本朝食鑑」(1695年:人見必大)によりますと、「ゴボウは全国どこにでもある。根の大きいものは太さが大根ほどもあり、長いものは、鞭か竹筒のようで、長さが二、三尺にもなる。京洛の鞍馬、八幡の村里に産するものが最も良いとされるが、武州の忍の郷、岩槻の産も江東(東関東)では一番よいもので、京洛産のものにひけをとらない」とあり、盛んに食べられていたことがわかります。
また、栽培法については、宮崎安貞の「農業全書(1696年)」に詳しく記載されています。
 
日本では庶民の食べ物となったゴボウですが、外国では嫌われています。
貝原益軒の「大和本草(1709年)」でも「日本では上等な野菜であるゴボウも中国ではあまり食べない」とあります。
また、文政4年(1821年)、日本に来ていたドイツ人医師シーボルトが日本のゴボウを故国オランダに持ち帰り、ライデン地方に伝えました。
しかし如何に調理をしても美味しくなく、ついに匙を投げたと言う話もあります。
 
3)ゴボウの読み方 あなたは幾つ読めますか
岐多岐須、馬蕗、旨蕗、悪実、鼠粘、牛菜、牛房と並ぶと、何んの事か、分かりますか。これは全てゴボウの別名です。
各々の読み方は、キタキス、ウマフブキ(馬蕗、旨蕗)、アクジキ(悪実と書いてゴボウとも読ませます)、ソネン(鼠粘)、牛菜などとも言われます。悪実と書いてゴボウなんて、判じものですね。
また、古くは、ゴボウの形が牛の尾に似ている処から、牛房(牛の尾の意味)とも書きました。
延喜18年(918年)に深江輔仁が書いた「本草和名」に「悪実(アクジツ)、一名を牛蒡、一名を鼠粘草、和名を岐多伊須(キタイス)、一名を宇末布々岐(ウマフブキ)」と出ています。悪実は果実に対する漢名です。宇末布々岐というのは、馬蕗(ウマブキ)を意味します。葉がフキに似ていて、馬が好んで食べた事に由来します。
 
●ゴボウの生態とその特性
1) タフでドライな現代娘 ゴボウ
ゴボウはキク科の2年生草本で、春に種を蒔くと、翌年の夏に花茎を1〜1.5mほど伸びて、その上にアザミに似た丸い紫色の花を咲かせます。中には僅かですが白い花を着ける品種もあります。花は、管状花で直径が4cmほどの大きさです。
葉は長い葉柄を持っていて、根元から生えます。心臓形の大きな葉の裏には、柔らかい綿毛が密生しています。
根が真っ直ぐに伸び、長さは40〜150cm程度で品種によって大きく異なります。
 
ゴボウには、細長い長根種や、太く短い短根種、葉を食用にする葉ゴボウなどがあります。
ゴボウの生育適温は20〜25度で、3度以下になりますと葉は枯れますが、枯死することはありません。耐寒・耐暑・耐干性があり、タフな植物です。
強い光線を好む植物で、乾燥には強いが、浸水・過湿には弱いので、排水のよい火山性土や砂質土で栽培されます。
なお、ゴボウは根の形状や収穫の便利さからも、火山性土や砂質土で栽培されますが、実は粘質土の方が味や香りの良い物が出来ます。
 
2) 代表品種の特性 長根型の滝の川、短根型の大浦
ゴボウの品種は、根の長大な滝の川群と短い大浦群に大別されます。
これを歴史的に見ますと、昔のゴボウは根の直径が10〜15cm、長さ80〜100cmの物や長さが60cm程度しかなく、直径が20cmもあるなど、どちらかと言うと太くて短いものでした。
それが、その後、細長くなっていき、現在の代表的品種・滝野川(常磐大長、東京大長、新倉、堀川)の様な品種になりました。
しかし、これからは、人手不足に対応した機械収穫や核家族化(消費単位の小量化・ミニパック化)、食の外部化(カット野菜、加工野菜の流通)に促され、短根が望まれる様になるでしょう。
 
ゴボウの可食部は直根、すなわち肥大根と呼ばれる主根です。直根は熟度が過ぎますと、空洞(ス入り)になります。空洞になると、一般的には嫌われますが、空洞の大きな大浦などは、これを利用して、肉詰め用として使います。
巨大な堀川と言う品種は、秋に種を蒔いて、移植2年栽培でわざわざ太くし、空洞を作ります。そして、その中空に肉などを詰める特殊料理に使われます。
 
この様な堀川ゴボウや大浦ゴボウは、先に述べた様に、畑に一年寝かせて太くして、収穫します。希に11〜12月頃、八百屋の店頭に並ぶ事があります。一度、ピーマンの肉詰め同様、ゴボウの肉詰めに挑戦してみては如何ですか。
 
(1) ゴボウの代表選手は滝の川一族
ゴボウは、千年を越える栽培の歴史があり、江戸時代には重要野菜の一つになっていましたが、品種はあまり分化していません。
現在、栽培の主体となっているのは滝の川群の品種です。滝の川は東京都滝野川の鈴木源吾と言う人が作りだした晩生種のゴボウです。
長根種の基本品種で、長さは1メートル以上になります。
春に種を蒔き、秋冬に収穫します。秋蒔きや早掘り用には向きません。
現在栽培されています長根系のゴボウは、全てこれを元にしたと言っても過言ではありません。渡辺早生(東京)、山田早生(埼玉)、新田(大分)、常盤(長野)、阿見(千葉)、柳川理想(茨城)等はみな滝の川の一族です。
 
(2) 最古の品種 大浦ゴボウは文化財
大浦ゴボウは最も古い品種で、大浦村(千葉県八日市大浦地区)で栽培されてきました。早生で太く短いタイプの品種で、根の中ほどが膨らみ、芯に大きな空洞が生じます。京都の堀川ゴボウは同系統の品種で、根を充分肥大させ、芯部の空洞部に詰め物をして利用します。
 
天慶3年(940年)、藤原秀郷が平将門との戦いの前に、成田山新勝寺で戦勝を祈願し、大浦ゴボウで酒宴を張りました。その結果、戦いに勝利を収めたため、大浦ゴボウを寄進する習わしが始まったと言われています。
現在は、大浦地区では新勝寺に納める分のみを、契約栽培で作っています。
そのため市場に出荷されることはありません。昭和41年、天然記念物として、市の文化財に指定されました。
 
スーパーでは絶対に買えない大浦ゴボウを食べる方法が一つだけあります。
新勝寺には毎年12月に1,500本ほど納入され、これを3日間かけて仕込みます。新勝寺に参詣して大護摩を焚くと、精進料理の接待を受けることが出来ます。この精進料理の中に大浦ゴボウが入っているのです。
 
(3) 関西ゴボウの代表選手・堀川ゴボウはゴミ箱育ち
京都の正月料理に欠かせない野菜として珍重されているのが堀川ゴボウです。
普通、ゴボウと言えば細長いものと思いがちですが、この堀川ゴボウは直径が10cmにもなります。中は空洞になっていますが、表皮は厚くて柔らかく、味も香りも良いです。
 
堀川ゴボウの成立は、今から400年ほど前、豊臣秀吉の時代に遡ります。
秀吉は天正15年(1587年)に、京都に聚楽第を建て、一時は甥の秀次を住まわせました。しかし、秀次を追放、自殺させた後に壊されてしまいました。
跡に残ったのは周囲に巡らされた掘だけです。何時しか、この掘りに付近の住民がゴミを捨てるようになり、掘りはゴミで一杯になりました。偶然その中にゴボウの屑があり、それが春に芽を出し、冬を越して巨大なゴボウに生長しました。これを見た農民が越年のゴボウを作ったのが始まりと言います。
土中で2〜3年かけてジックリ育てるため、肉質も締まり、香気が高いのが特徴です。現在では、一部の農家が契約栽培を行っているだけで、すっかり高級品になりました。
 
(4) 葉ゴボウも亦、ゴボウ 青いのに白いと言う白茎ゴボウ
ゴボウの葉は心臓型で、長さ23〜27cm、 幅18〜22 cm、葉身は緑色ですが、品種によって濃淡があのます。裏には白綿毛があって、やや白く見えます。
葉柄は角張った丸型で、太くて硬く、中空になっています。一般には食用にしませんが、葉ゴボウ用の品種は柔らかく、食べれます。
例えば、江戸時代から存在する葉ゴボウ品種・越前白茎の味を、宮崎安貞(農業全書:1696)は、茎葉の若いものはニラの様な味がする、と書いています。
また、早生白茎も、茎葉を食用にします。ところで、ゴボウの葉には、ビタミンC、精油などを含んでいます。
 
葉ゴボウ用の品種は、白茎と呼ばれます。一般に、ゴボウの葉柄の下の部分が、赤褐色に着色した物を赤茎と呼びます。硬くて、食用には不向きです。
それに対して、着色がないものは普通青色ですが、これを白茎と呼んでいます。葉ゴボウはこの白茎品種を利用しています。
若い根と葉柄を食べるために栽培された福井県大野地方の越前白茎ゴボウが有名です。ある意味では、葉ゴボウは品種というより利用法です、越前白茎、萩、大和白茎のように専用の品種もありますが、早生系の品種も葉ゴボウ用に使われます。
 
●ゴボウの生産の推移と産地
1) 生産の推移と産地
農林省累年統計表によりますと、1905年(明治38年)、日露戦争の当時、ゴボウの作付面積は10,800haで、生産量は124,000tほどでした。その後、年による変動があり、戦中、戦後の食糧難の時代は漸減しましたが、全体としては増加の傾向にあり、1963年(昭和38年)に、作付面積19,700百ha、生産量337,000tと、ピークに達しました。
その後、高度成長期の食生活の変化に伴い、多くの日本型野菜と同様に漸減しています。最近は作付面積14,500ha、生産量260,000t前後で推移しています。1988年はそれぞれ14,700百ha、253,000tでした。
 
一時は消費量が減って栽培も減少しましたが、最近は繊維質が見直されて、人気が戻りつつあります。どちらかと言うと、西日本で多く食べられている野菜です。
 
それでいて生産地は、全国的に見ますと、東に偏っており、生産量の第1位は茨城、次いで埼玉、群馬と続きます。これに北海道、東北を加えますと、関東以北の地で全体の75%を生産しています。その他では宮崎、大分、熊本が目立つ程度です。
 
東京市場への入荷量を見ますと、9月以降の入荷が多く、特に12月の入荷量が突出しています。お正月料理に欠かせないと言うことですね。
 
2) ゴボウの一生
ゴボウの種(果実)皮には発芽抑制物質が含まれています。言うなれば、ブレーキ内蔵です。自然界で夏に花を咲かせ、結実し、秋を迎えてから、発芽し、幼植物(子供)で厳しい冬を過ごす事を、避ける仕組みが出来ているのです。植物は良く出来ているものですね。
 
種子を1昼夜水に浸して、発芽抑制物質を溶出させと共に、種に水をタップリ含ませてから蒔きます。
発芽適温は20度前後ですが、温度が変化し、光がが当たるほどよく発芽します。そのため、土をかぶせ過ぎると発芽しません。
 
種を播いてから5日ほどで双葉が開き、双葉が4cmほど伸びる頃、その間から本葉が出ます。長い柄、表面は緑色でしわで、裏面に白い毛が密生し、葉縁に鋭い刻みがあるなど、いかにもゴボウらしい葉です。
 
1週間もすると、次の本葉が大きくなってきます。これらの葉は、肥大根の上のつまった茎から次々と出ます。本葉が3枚以上になると急に葉が大きくなります。葉柄は角ばっていて白い毛があり、中空です。下部の赤い赤茎が大部分です。ゴボウが調理できる太さになってから、過熟になってスが入ったり、春になってとうが立ったりしない内に収穫します。
 
そのまま置いておきますと、ゴボウは根茎の太さが1cmぐらいになって、5℃以下の低温に合い、12時間半以上の長日(日の出ている時間)になりますと、花芽ができます。その時期は、翌春の4月中頃です。その後、温暖な生育適温になると抽台し、茎は1.5mぐらいになります。
茎は上の方が枝分かれして、その先に花をつけ、7月頃に咲きます。昼頃を中心に、朝5時前から夕方5時頃まで開いています。花はアザミに似た頭花で、直径3cm前後。70〜80個の小花が集まり、その周りを先が鉤状になった多数の総苞片が包んでいます。上の白いのは雌しべの先(柱頭)で、その周りに葯筒、赤い花びらが見えます。1頭花は3日ほど咲いています。そして開花後、約1ヶ月で種子が熟します。その頃になりますと、葉は枯れます。
 
●ゴボウの旬と選ぶポイント
一年中出回っていますが、ゴボウの旬は晩秋から冬です。
この時期のゴボウは旨味が一段と濃いです。それに対して春のゴボウは香りが高くて、肉質が柔らかいのが特徴です。また、夏のゴボウはあっさりした香味がします。
 
最近、泥付きの野菜が都市の生活から消えて行きます。マンションと言う名前のウサギ小屋には、泥付き野菜を持ち込む余裕などありません。共通の洗い場が戸外に設置されているマンションや団地などありません。わが家の配水管を泥で詰まらせたら大事です。見かけと違って都市の生活は貧しいですね。
 
ゴボウも例外でありません。しかしゴボウ本来の味は皮の部分にあり、関西にはゴボウの芯を抜いて外皮だけを使う「管ゴボウ」という調理法すらあります。
きれいに洗った上、水に晒して売っているゴボウなど、ましてや、漂白したささがきゴボウのパックものなどは、ゴボウ本来の味が失われています。
ゴボウの旨味を味わいたいなら、泥付きを買って、下ごしらえに手間をかける以外にはありません。
その時、着いている土が赤土のやや粘土質であれば、あなたはラッキーです。そのゴボウは肉質が緻密で柔らかく、香りと風味が強くて美味しいはずです。
 
一般品はあまり太いものは避けた方が無難です。
空洞があったり、肉質が粗い恐れがあります。
選ぶポイントは、直径が1.5〜2.0cm程度で、根がスラリと伸び、曲がりがない物、ひげ根の少ない物を選ぶことです。
また、葉の付け根が極端に飛び出した太い物や、黒ずんだ物、肌理が粗く、割れ目のある物は、ス入り、空洞、木質化の恐れありますので避けた方が良いでしょう。
 
保存する時は、泥付きの場合、首を2センチくらい除いて土の中に埋めておくと、取れたての新鮮さそのままに長期保存がききます。
洗ってあるゴボウの場合は、濡れた新聞紙で巻き、ラップで包んで冷蔵します。
風に当てないのがボイントです。また、みそ漬けにしても長く貯蔵できます。
 
●ゴボウの機能
1) 豊富な繊維が成人病を予防
ゴボウの肥大根には、食品成分表によりますと、炭水化物が17.6%(糖質として16.2%、粗繊維として1.4%)含まれます。
その糖質の45%程度がイヌリンで、また、少量のパルミチン酸が含まれています。
このイヌリンは、人の消化酵素で分解されませんので、消化吸収されることなく、食物繊維で、カロリー源になりません。
ゴボウはまさに、ダイエツト食品なのです。
 
ところで、粗繊維と食物繊維の違いをご存じですか。食品成分表に示されます粗繊維とは、脱脂した食品を、希酸及び希アルカリで処理し、それから灰分を差し引いた残渣のことです。この方法で測定される成分は、全ヘミセルロースの20%程度、全リグニンの10〜50%、全セルロースの50〜80%程度と考えられています。
 
これらは、主として植物の細胞壁を構成している物質、すなわちセロルース、ヘミセルロース、プロトペクチン、キシラン、リグニン、ペクチン、グアーガムなど、と言えます。
それに対して、食物繊維とは、人の消化酵素で分解出来ない食品成分の総称です。さきに述べた粗繊維に、貯蔵多糖類であります、コンニャクマンナンや、アルギン酸、カラギーナン、ラミナリンなどが加算されます。
 
粗繊維はかって、消化吸収を阻害する物として、邪魔物扱いされていましたが、最近は、食物繊維と共に、成人病予防の強い味方です。
腸内で乳酸菌の繁殖を促し、整腸作用を示し、便秘の人にはもってこいの食べ物です。また余分に摂取した動物性脂肪の吸収を妨げるます。
そのため、動脈硬化の予防にもなります。そのほか発ガン性物質を繊維質がとらえて体外に出すといわれ、大腸ガンの予防にもなります。
加えて、肥満防止、糖尿病予防、血中コレステロールの低下作用、などに効果があることが、明らかになりました。まさに善いことづくめですね。飲む食物繊維が、流行る訳です。コマーシャルに乗せられて・・・、
 
この様にゴボウは優れた食物繊維源です。それに伴って、一時、食卓から消えつつあったゴボウが、健康食品として戻ってきたのです。キンピラバーガーやキンピラサラダとして、外食においても、もて囃されています。もっとも、ゴボウのシブで手を黒く染めている奥さんは少なくなり、晒したゴボウや刻みゴボウが主流になつています。さあ、ゴボウを食べて、ゴボウのようにスマートな健康美人になりましょう。
 
2) 薬としてのゴボウ
ゴボウは、古くから漢方で、麻疹や利尿剤として利用していました。また、観光地でヤマゴボウとして売られていますアザミも、ゴボウ同様、強壮、利尿、止血などの効果あり、薬用に使われていました。
観光地でヤマゴボウを買うお父さん達は、そんな効能、特に、「強壮」を期待しているのかも知れませんね。確かに、ゴボウには滋養強壮の効果もあります。夏負け防止や強壮を期待する人は、生のまま摺り卸し、味噌汁に入れて飲むと効きますよ。
 
中国では現在でも薬用としてゴボウを使っています。根と葉にタンニンを含んでいますので、消炎、止血などに効果的です。種子(牛蒡子)は配糖体や脂肪油を含み、漢方では解毒、利尿剤に使います。ヨーロッパでも民間薬として、根を利尿剤に使います。
 
具体的には、脱肛や痔の出血の場合に、根や葉を煎じて洗面器に入れ、座浴を試みると効果的です。汗もやかぶれ、ただれ、湿疹などには、葉や根を粗く刻み、布袋に詰め、浴槽に浮かべて入浴すると効きます。生葉の汁は、虫刺されやチョツトした切り傷などに着けます。また、薬用アルコール100mmリットルに、100グラムの生葉の汁を入れ、1週間程度おいてから使うとより効果的です。扁桃腺炎や口内炎、歯ぐきの腫れには、根か葉を5〜10グラムコップ1杯の水で煎じて半量とし、冷ましてからうがいをします。この煎液は、あせも、軽い切り傷、虫刺され、火傷に塗ったり、少し薄めてヒビや霜焼けに付けても効きます。
 
ゴボウの種子には脂肪酸が25〜30%含まれています。その中にはパルミチン、ステアリン、オレイン酸を含んでいます。その他、グリコジドなどを含み、緩下剤、利尿剤てして、漢方で使われています。また、化膿を散らす効果もあると言われています。なお、種子は婦人病に効き、産婦の乳の出をよくすると言われています。
 
● ゴボウの調理・料理
1) ゴボウはまず酢水に晒してアクを抜く
ゴボウはアクの強い野菜です。アク抜きが調理のポイントになります。
まずゴボウを切って、そのままにしておくと、色が黒く変わります。切った端から酢水に入れて行きます。酢水は水カップ5杯に対して酢大さじ1杯が適当でしょう。
酢水に漬けますと、ゴボウに含まれる酸化酵素の働きが抑えられ、含まれるアク成分の一つでるありますポリフェノール系色素の酸化を防げます。
そのため褐変すぜ、黒く成らないのです。しかもゴボウの中にあるフラボノイド系色素は、酸性の状態で無色になる性質がありますので、色を白く保つことが出来ます。
同時に、アク成分は水に晒すと溶け出てくる性質を持っていますので、アク抜きにもなります。ただし酢水に15分以上漬けますと堅くなり、香り、風味を損ないますので、注意が必要です。
 
ところで、ゴボウのアクは、若いゴボウほど少なく、サラダ用に良いと言えます。一方、同じ肥大根でも、アクは肉部(中心部)よりも皮部(側部)に多く、香りも旨味も外側に多いようです。
人によっては、「ゴボウは皮が美味しいので剥かない方がよい」と言います。そんな方は、包丁の背でこそぎ取るかタワシで擦り洗いするだけの方が望ましいでしょう。
 
なお、ゴボウを下茹でする時、酢を加えると白く仕上がります。一方、米のとぎ汁や米ぬかを加えますと、まろやかな味になります。
 
2) ゴボウは和服(和風料理)が似合う大和撫子です
ゴボウは日本でのみ野菜として食べられています。
そのため、利用は和風料理が主ですが、油との相性が良く、牛肉、ドジョウ、魚のアラなどの様に、生臭みのある材料と炊き合わせると、ピッタリの風味がでます。
その独特の香りが魚や肉の生臭さを消すと共に、旨味を引き出すのに役立つのです。
鶏肉とゴボウの煮つけ、イワシとゴボウの甘辛煮などのほか、柳川(ドジョウ鍋)に欠かせない材料です。ゴボウの香気がドジョウのもつ臭みを消し、歯切れの良いゴボウの口当たりが、ドジョウの野生味を引き立てます。このため新ゴボウは土用の日に間に合うように出荷されています。また、精進揚げやキンピラと言った料理法もよく合います。
 
3) ゴボウの切り方色々
ゴボウは繊維分が多く、イヌリンを多く含むため、特有の歯ごたえがあります。このゴボウを繊維に沿って千切りにした場合と、斜めせん切り(ささがき)にした場合とでは、堅さは約2倍も違います。歯ごたえを楽しみたい時は繊維にそった千切りにし、柔らかめにしたい時は、ささがきにするとよいでしょう。
 
具体的に言いますと、歯ぎれ、歯ざわりを楽しむキンピラは、斜め薄切りか短冊切りにしてから、繊維に沿って縦に千切りにします。柳川鍋を作る時は、ささがきゴボウがよいでしょう。ゴボウを左手に持って回しながら、鉛筆を削るようにして、包丁で先端を薄く削って行きます。縦に走るゴボウ堅い繊維を横に短く切断しますので、柔らかく煮えます。煮物には乱切りを使うことが多いです。ゴボウを横に寝かせ、手前に向こうにと交互に回しながら、ゴボウを斜めに切ります。
たたきゴボウは摺りこぎで叩いてヒビを入れ、適当な大きさに切る方法で、叩かれた表面に調味料がよく染みますので、和え物に向きます。
 
●コボウ アラカルト
(1) ヤマゴボウはゴボウにあらず
日本の山野に自生している、俗にヤマゴボウと言う植物は、正式にはヤマボクチ(クマトリボクチ)と言います。野菜のゴボウがキク科ゴボウ属に属するのに対して、ヤマゴボウはキク科ヤマゴボウ属に属する植物です。
なお、観光地でヤマゴボウとして味噌漬けなどで売られているのは、実は、ヤマゴボウでなく、近縁のアザミ属の植物の根です。モリアザミ、フジアザミ、ハマアザミなどが観光地でヤマゴボウとして、売られています。
 
モリアザミは、ゴボウアザミとかキクゴボウとも呼ばれています。本州中部から四国、九州にかけての山地に自生している日本固有の植物です。根はゴボウのような風味があり、ヤマゴボウと間違って言われる事もあります。実際に、キクゴボウ(岐阜県)とか三瓶ゴボウ(島根県)とか呼ばれ、味噌漬け、酒粕漬けなどとして、観光土産に成っています。また、フジアザミはその名の通り、富士山周辺に多い、大形のアザミで、根を茹で、和え物、漬物として食べます。富士山や箱根、或は日光の特産品として、有名です。
 
ところで、本当のヤマゴボウは有毒です。根に多量の硝酸カリを含み、食べますと腹痛、嘔吐、下痢など消化器系の障害を引き起こし、ひどい時は虚脱、昏睡に到ります。しかし、幼葉はよく茹でた後、和え物やおひたしにして食べることができます。また、根も灰汁に二三日浸し、十分にアク抜きをしますと、食べれます。アク抜きが不十分ですと危険です。なお、ヤマゴボウは別名イヌゴボウとも呼ばれます。
 
(2) ゴボウを食べさせて、死刑になった話
一般的に欧米人はゴボウを食べません。そのため、信じられない様な悲劇が起こりました。
先の第二次世界大戦中、連合国軍捕虜にゴボウを食べさせたところ、変な木の根を食べさせたとして捕虜虐待に問われたのです。
場所は東京捕虜収容所直江津分所(新潟県)です。収容所側では、野菜不足を少しでも解消するために苦労してゴボウを調達し、これを捕虜に食べさせたのですが、ゴボウを食べたことのないアメリカ人捕虜はこれを野菜とは思わず、木の根だと思ったのです。
そのため、終戦後の昭和21年、横浜の戦犯裁判で、捕虜虐待、残虐行為の罪名の元に、捕虜収容所の関係者が、二人が死刑、三人が終身刑、二人が十後年以上の有期刑の判決を受けました。
 
食文化の違いがもたらした悲劇と言えます。互いの食文化を知ることと、互いに相手の文化を尊重することの必要性を、この事件は私達に教えています。
何処かの国のグリーンピースの様に、かって北太平洋のクジラを取り尽くし、北極海のクジラを殺し尽くしたのが、白人達である事に対する反省無しに、自分達の考え・文化を押し付けるのは、思い上がりでないでしようか。
 
もっとも、カタツムリやカエルを食べるフランス人はさすがです。ゴボウこそ食べませんが、ゴボウと同じキク科のサルシフアィ(バラモンジン)やキクゴボウを食用にしています。なお、ここで言うキクゴボウは、先に述べたモリアザミの事ではありません。西洋牛蒡とか、キバナバランジンなどと呼ばれる、ヨーロッパ中南部原産の多年草で、草丈60〜90cmで、白もしくは黄色の花を6月頃咲かせます。根は30cm程度の直根で、表面は暗褐色、内部は白色で、多肉質、切ると乳状の液がでます。また、バラモンジンはサルシフィーともムギナデシコとも呼ばれます。ヨーロッパ中部から北アフリカ原産の2年草で、草丈は100cm以上になります。6〜7月に、紫赤または青紫色の花を咲かせます。根は直根性で白色、長さは30cm程度になります切ると乳汁がでます。牡蛎の風味がすると言われています。
 
(3) きんぴらゴボウはささがきか縦の千切り(繊切り)か
金平(キンピラ)は坂田の金時の子・金平と言う強い者がいました。
源の頼義の四天王の一人でした。ゴボウの硬いことを現した表現です。
意地悪く荒々しい婆を金平婆と言います。
元気な娘、気の強い娘を江戸時代にキンピラと言いました。
 
キンピラゴボウの正統派は、縦に千切りにして、油で炒め、醤油と砂糖で味付けし、トウガラシで辛味を添えたものと私は考えていますが、皆様如何でしょう。
歯ごたえ、歯ざわりを味わうキンピラを平気でささがきで作る奥さん達を見て、日本の食文化よ、何処に逝ったと、嘆いています。
 
(4) コボウは切ると何故、色が変わるか、
ゴボウを切ってそのままにしておくと、黒褐色に変色します。
これは含まれるフェノール成分(タンニン、クロロゲン酸、コーヒー酸)が空気に触れますと、フェノールオキシターゼやパーオキシターゼなどの酵素によって、酸化され黒褐色の物質に変わるためです。
この酵素は水や食塩によく溶け、酸によって活動が抑えられ、熱によって作用が失われます。そのため、酢水に切ったゴボウを入れると褐変しないのです。
 
また、植物に含まれる色素にフラボノイド(黄色色素)があり、ゴボウにも含まれています。この色素は、酸性では無色ですか、アルカリでは黄色・褐色に変わる性質があります。そのため、酸であります酢を加えますと、色が消え白くなるのです。
 
褐変防止法としては、空気中の酸素と結合しないように水につける。加熱して酵素を死活させる。酢を加えて酸性にする。食塩水に浸して酵素作用を抑える。などがあります。
(故相馬暁博士が北海道立中央農業試験場長在任中に作成したものです。)