山ちゃんの食べもの考

 

 

その125
 
「山ちゃんの食べもの考」 その125
[医食同源]を考える<15>



 ワイル博士は<脂肪――最高の食品化最低の食品か?>の中で、続けて次のように述べています。
 20世紀の初期には、心筋梗塞による死亡の例は極めて少なく、それが急速に増えたのは1940年代からであり、60年代にかけては無数の中年男性と閉経後の女性が心筋梗塞で死亡しています。同じ傾向は他の先進国でも見られましたが、第三世界ではほとんど見られなかったのです。
 アメリカ以外の国の人たちがアメリカ型の食生活をしはじめると冠動脈疾患が増大するという事例があります。たとえば現代の日本や中国がその典型です。となると、アメリカ型の食生活には動脈損傷を促進する何かがあるはずです。
 誰もが思いつくのは飽和脂肪、特に肉、ミルク、アイスクリーム、バター、チーズなどが問題なのではないだろうかということなるのでしょう。それらは中国や日本をはじめとするアジアの伝統的な食事にはなかったものばかりです。そして、それらの国々はかつて、欧米の医学者が首をかしげるほどに心筋梗塞が少なかったのです。
 かつての日本の朝食は米飯に味噌汁、焼き魚、漬物、野菜の煮物、海苔、それに緑茶でした。今ではスクランブルエッグ、ベーコン、白パンのトーストにバター、クリームと砂糖入りのコーヒーなどをとる人が多く、すっかり様変わりしています。
 オランダ、デンマーク、ノルウェーなどでは、第二次世界大戦中、ドイツに占領されていた時期に心筋梗塞による死亡者数が激減しました。動物性食品が手に入らなかったからです。戦後、それが手に入るようになると、死亡者数は戦前の水準に戻ったのです。


 アメリカ人は19世紀いっぱい、20世紀の初期までは、飽和脂肪を大量に摂取していたにもかかわらず心筋梗塞の発症を見なかったのです。
 当時のアメリカ人は精製粉食品や砂糖も大量にとっていました。何が変わったのか? あれほど多くの動物性脂肪を摂取していた伝統的なイヌイットの人たちは、なぜ冠動脈疾患にならなかったのか? ワイル博士は、飽和脂肪だけで説明するには無理があると言い、次のように述べます。
 一部の専門家および反脂肪陣営は、健康と長寿の決定的要因は摂取する脂肪の総量だと主張してやまない。摂取カロリー中に占める脂肪カロリーの比率が高ければ高いほど寿命が短く、心臓病に限らず、ほとんどの病気のリスクが高くなるというのです。
 だが、実験的な研究によっても疫学的な研究によっても、その説は支持されていません。科学が裏付けているのは、飽和脂肪量と摂取量と血中LDLコレステロールの量には直接的な相関関係があるということです。つまり、飽和脂肪酸をたくさん摂る人のほとんどはLDLコレステロールが多く、他の要因(遺伝子、運動、アスピリンなど)によって保護されない限り、心臓病のリスクが高くなることは立証されています。しかし、科学は、摂取脂肪量と病気のリスクとの相関関係などは立証していないのです。
 イタリア、スペイン、ギリシア、クレタ島の人たちはスコットランド人と同じくらいの総脂肪量を摂っていますが、心筋梗塞(および他の変性疾患ガン)の死亡者数ははるかに少ないのです。また、クレタ島の人たちは摂取カロリーの40%を脂肪から摂っています。これはアメリカ人やスコットランド人の比率と同じですが、クレタ島の人たちのほうがはるかに健康です。
 その相違点は脂肪の種類にあるのです。
 

 実は、摂取脂肪の総量よりも、摂取する脂肪の種類が重要なのだ。とワイル博士は、飽和脂肪は確かに健康に悪いと言えますが、悪いのは飽和脂肪だけではありません。そして、ある種の脂肪はむしろ、健康促進に役立っているのです。脂肪の種類の良否をはっきりとさせるため、20世紀において人々の摂取してきた食生活における脂肪の比率の変化について知らなければならないと、以下のように述べています。
 飽和脂肪がコレステロール値を上昇させ、心筋梗塞のリスクを高めることがわかった1950年代、医師や栄養士の人々に、バター、ビーフ、クリーム、チーズを避けて多不飽和の植物製油を使うように指導されはじめました。
 当時、多不飽和脂肪植物製油は心臓にいいと考えられていたのです。コーン油から作ったマーガリンの人気が急上昇し、綿実油やピーナッツ油を含むさまざまな植物油の売り上げが急増した時代です。
 飽和脂肪は常温でも固体または半固体だが多不飽和植物製油は液体であることが、医師たちの指導に説得力を与えていました。固形の脂肪は血管中に沈殿物を残すが、液体の油はスムーズに流れるという、常識的なイメージに合致するからでした。
 しかし不幸なことにこの常識は、あらゆる食品に使われるようになった植物性油の危険性を察知することはできなかったのです。その危険性を指摘するためには、油脂類の性質についてもう少し詳しく知っていただかなければなりません。


 脂肪は、炭素、水素、酸素からできています。炭素には、4つの手があって、それぞれに水素、炭素がつながっています。すべての炭素に二つの水素と二つの炭素がつながっている状態を「炭素の単結合」と言い、すべて「炭素の単結合」からできている脂肪を飽和脂肪酸と言います。
 飽和脂肪の特徴は炭素がすべて単結合。2本の手で炭素を、他の空いた2本の手で二つの水素を持つことができ、水素が常に飽和状態であるため、「飽和脂肪酸」と言われています。
 飽和脂肪酸は凝固温度が高いのが特徴です。牛や豚など哺乳動物は人間よりも体温が高いので、動物の体内では脂肪は液状を保ちますが、人間の体温は動物よりも低いので、人間の体内に入ると飽和脂肪酸は凝固しやすくなります。 
 脂肪の多い肉を食べた場合、食後数時間経つと固まって血液が流れにくくなることで、血液の粘度を高くします。血液によって細胞に送られる酸素や栄養素の供給がとどこおり、血液が流れにくくなる事で疲労感が生じたり、体の動きがスムーズに行かないなど感じられます。ですから、「さあ、肉を食べ、スタミナをつけて頑張るぞ!」などと、激しいスポーツや力仕事の前に肉を食べて飽和脂肪酸をとるのは得策ではありません。
 飽和脂肪酸から作り出されるLDL(悪玉コレステロール)は不活性のため血中に貯まりやすく、飽和脂肪酸を日常的に多く摂取していると、血液中にコレステロールや中性脂肪が増える事になり、動脈硬化、さらにはより危険な脳や心臓の疾患を招くことになります。
 飽和脂肪酸はコレステロールを増やす、中性脂肪を増やす、血液を流れにくくし、細胞に酸素や栄養素を送られにくくするなどが言われますが、これらはあくまでも過剰摂取によるものです。反対に飽和脂肪酸が不足すると血管がもろくなり脳出血の危険が高くなる、貧血を起こしやすい、めまいや痺れなどの神経障害が起こりやすいなどが言われます。


 植物や動物がグルコースから脂肪酸を合成するときは、最初に飽和脂肪酸をつくり、炭素を2個単位で飽和脂肪酸の鎖の端につないでいき、最後に酵素を使って、多不飽和脂肪酸や単不飽和脂肪酸をつくっていきます。
 ところが、植物はオメガ3やオメガ6と呼ばれる脂肪酸を作ることができますが、動物にはそれができません。その仕事をする酵素がないのです。しかし、動物が生きていくためにはオメガ3やオメガ6脂肪酸はどうしても必要であり、それがないと病気になり、死んでしまいます。これらは私たちの体の細胞膜やホルモンをつくる原料であり、そのため体のほとんど全ての機能に関係していて、体にとっては不可欠なものだからです。だからこそ、リノール酸やリノレン酸は必須脂肪酸であり、健康に生きるためには規則的にそれらを食物から摂取しなければならないのです。
 必須脂肪酸の不足で起こる症状は、皮膚症状、頭痛、疲れやすさ、体力不足、頭の働きの変調、すぐに炎症や出血が起き関節がむくむ、不妊、流産、腎臓のトラブルなどがあげられています。
 植物が作るリノール酸は一般に種子に、リノレン酸は葉と根に蓄積する傾向にあります。したがって、リノール酸の多いコーンや大豆のような種子を餌として食べる家畜類は、リノール酸系列の脂肪酸を多く含むことになります。
 一方、植物プランクトンがリノレン酸を多く作りますので、これを餌とする魚介類やそれらを餌とするアザラシなどの海獣類はリノレン酸の脂肪酸を多く含むことになります。

オメガ3、オメガ6が含まれる主な食品
<オメガ3>
・魚油 ・亜麻仁油 ・亜麻の種子 ・クルミ油 ・クルミ ・大豆油
・大豆 ・サケ ・イワシ ・サバ ・ニシン ・麻の実 ・スペリヒュ

<オメガ6>
・コーン油 ・べに花油 ・ヒマワリ油 ・綿実油 ・大豆油
・ピーナッツ油 ・ゴマ油 ・グレープシード油 ・獣肉(牛豚など)
・鳥肉(鶏など)


 イワシやサケはオメガ3脂肪酸の重要な摂取源であり、卵黄には必須脂肪酸が含まれています。魚や鶏はもちろん動物であり、人間と同じくオメガ3脂肪はつくれません。しかし、彼らはそれを食べ、貯蔵することができるのです。
 イワシやサケなどは、藻類などのオメガ3脂肪酸を作る原始的な海洋性植物からそれらを摂取して、体内に貯蔵しているのです。放し飼いの鶏もオメガ3をつくる雑草をついばんで、それを卵黄に貯蔵しています。
 ところが、養殖のサケや大量生産の鶏が産んだ卵には、その飼料がもはや自然から摂取していた昔のものとは異なっており、オメガ3が含まれているとは限りません。オメガ3を含む餌を与えない限り、養殖のサケは天然ものと比べて質が劣っているといえます。大量生産の鶏が産んだ卵も同じことで、放し飼いの鶏の卵に質には遠く及ばないといえます。最近、アメリカでは新種の卵が登場して、その中にはオメガ3が豊富に含まれているものもありますが、それは養鶏業者が藻類からつくった強化飼料を与えているからなのです。
 同様に、直接間接を問わず、必須脂肪酸を含んだ植物を飼料にして飼育した動物には、その体脂肪に高濃度で必須脂肪酸が含まれています。同じ理屈で、肉食が多い人よりはベジタリアンのほうが貯蔵する必須脂肪酸の量ははるかに多いのです。


 リノール酸の補給を絶たれた動物は皮膚の炎症、脱毛、肝臓と腎臓の変性、治療反応の低下などを停止、肝臓、心臓血管障害、行動異常、関節炎、成長停滞のリスクが高まってついには死に至ります。だが、飼料にリノール酸を加えると、それらの症状はすべて消失し、一方リノレン酸の補給を絶たれた実験動物では、成長停滞、衰弱、四肢のもつれ、行動異常、学習能力低下などを呈するといいます。
 リノール酸が必須脂肪酸であることと、コレステロールを下げるということが言われ始めてから、「リノール酸=健康によい」という神話が生まれ、リノール酸を過剰摂取する人が多くなりました。ところが、リノール酸を摂り過ぎると血小板が凝集しやすくなることや非常に痛みに弱くなることなどがわかりました。さらに、リノール酸には酸化されやすいという難点があり、体内で過酸化脂質となって、この過酸化脂質がガンを促進させることがわかってきました。
 最近ではオメガ6脂肪酸とオメガ3の脂肪酸をバランスよく摂取することが大切だといわれるようになりました。飽和脂肪酸のかわりにリノール酸のような不飽和脂肪酸をたくさんとるほど健康になるということではありません。
 リノール酸は植物の種子、主に食用油、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、サラダ油、コーン油などの植物油に多く含まれています。揚げ物、炒め物、スナック菓子等、油が多く使われている食品に、またご飯やパンにも含まれています。ご飯を2杯も食べれば十分に補えるもので、先進国では普通の食生活で必要量の10倍以上も摂取しているとされます。同じ植物油でも、オリーブ油、菜種油、ごま油、シソ油などには、リノール酸ではなくてリノレン酸が多く含まれています。
 リノール酸系植物油の過剰摂取は、ガンや高コレステロール血症、動脈硬化、アレルギー発症などにむしろ良くないということで、“リノール酸信仰”に讐鐘を鳴らしている学者は少なくありません。
 

 日本でも戦後、リノール酸が健康にいいということで、リノール酸摂取量が急激に増え、必須量の十倍も摂取し、その弊害が指摘されるようになりました。
その上、リノレン酸を多く含む魚や野菜の摂取が低下してきました。その結果リノレン酸とリノール酸のバランスが悪くなってきたのです。ことに現代の子供たちは動物性食品をはじめファーストフードや揚げ物が好きで偏りがちです。
 リノレン酸は、野菜やシン油(エゴマ油)、なたね油といったものに多く含まれ、リノール酸と同じく必須脂肪酸です。リノレン酸は、体内でEPA、DHAへ代謝されるのが特徴です。血液の流れを良くしたり、ガン細胞の増殖を抑えたり、抑うつ症などを改善したりする働きがあると考えられています。またリノール酸の典型的な過剰症にアトピー性皮膚炎がありますが、アトピーなどのアレルギー症状を解消するには、リノレン酸の摂取が効果的だといいます。
 リノレン酸は、植物がつくり、葉や根に比較的多く、動物の体内でエイコサペンタエン酸(EPA)、ついでドコサヘキサエン酸(DHA)に変換されます。リノレン酸が脳機能を高く保つうえで必須であることが、最近になってわかりました。 リノレン酸は魚類を1日あたり30g程度摂取することで、動脈硬化の予防が可能だとされています。また、このような魚類中のリノレン酸群は、焼く、煮るなどの調理にも比較的安定しているといいます。
 リノレン酸もリノール酸も両方とも必須脂肪酸であり、摂取食物からのエネルギー産生、エネルギーの全身組織への配給、酸素輸送への調節、膜と機能と統合性の調節機能などに決定的に重要な役割を果たしているいます。
 動物由来の脂肪、植物由来の脂肪、魚類由来の脂肪をどのようなバランスで摂取するか、一種類の脂肪の過剰摂取と偏りにはやはり注意すべきです。
 

 現代社会に必須脂肪酸が欠乏していると指摘する医学の専門家が増えています。必須脂肪酸の相対的な欠乏によって起こる、またはそれが悪化させている病気はいくらでも見られ動脈硬化や冠動脈疾患はその代表であります。
 食生活と病気の関係を調べるために1976年から長期におこなわれてきたハーバード大学の研究で、マヨネーズと油ベースのサラダドレッシングをよく使う女性は、それらをめったに使わない女性に比べて冠動脈疾患のリスクが著しく少ないことが判明したのです、マヨネーズとサラダドレッシングに心臓を保護する必須脂肪酸のリノレン酸が含まれているせいだと、研究者は考えています。
 しかし、ワイル博士は、医師や栄養学者は「必須脂肪酸欠乏」ではなく「オメガ3欠乏」をこそ論じるべきだ、オメガ6脂肪酸のリノール酸はすでに、現代人も十分に摂取している。リノール酸は多くの種子類やナッツ類に含まれるだけでなく、それらから搾った油や、市販されているすべての多不飽和植物油に含まれ、一部の動物の脂肪、特に豚の脂肪にも含まれています。ところが、オメガ3脂肪酸の母体ともいえるリノレン酸は、ごく一部の種子類やナッツ類(亜麻、麻、カボチャ、クルミ)や一部の油(キャノーラ油、菜種油、大豆油)などにしか含まれていからだと言います。
 多くの種類の植物の種子にはオメガ6必須脂肪酸が含まれますが、オメガ3必須脂肪酸が含まれているものはきわめて少ないのです。そのかわり、藻類のような原始的な微生物の中にはオメガ3必須脂肪酸がたくさん含まれているのです。
 緑色の濃い葉にもオメガ3必須脂肪酸が含まれていて、濃度は低いのですが、緑の温野菜が健康にいい理由の一つには、オメガ3必須アミノ酸が上げられます。(もちろん、緑の葉には、他の微量要素とともに、ビタミンB群の葉酸が含まれています)。雑草にもオメガ3必須脂肪酸が含まれていることも多いのですが、人間が雑草を食べないのでそれを大量に食べる動物の肉から摂取することはできます。しかし、現在では、雑草を食べる動物の肉を食べることから遠ざかり、その結果、現代人はオメガ3必須脂肪酸の摂取からも遠ざかってしまっているのだ、と指摘しています。


 石器時代の人たちは魚類、鳥類、大型哺乳動物の肉を食べていました。そうした動物の肉には雑草に由来する必須脂肪酸、特にオメガ3脂肪酸が大量に含まれていたのです。
 石器時代の食生活を調べている研究者によれば、祖先たちは2種類の必須脂肪酸、オメガ6とオメガ3をほぼ同量に摂取していたらしいのです。
 それは、現代人が食べている肉とは大違いでありました。現代の食用肉の大部分は、鶏、豚、牛、羊のいずれにしても、野生の雑草を食む動物のものではありません。ほとんどはコーンなどリノール酸(オメガ6)を含む飼料で育てられ、リノレン酸(オメガ3)は摂取していないのです。
 その上、人々は脂肪の多くを植物油や、それから作ったマーガリンから摂取するようになり、それらもオメガ6脂肪酸であってもオメガ3ではありません。
 現代人の食生活におけるオメガ6とオメガ3の比率は20対1から40対1の間であり、石器時代の1対1という比率とはまったく異なっているのです。このことが現代人の健康と大きく影響していると考えられます。


 ワイル博士によると、人間は必須脂肪酸であるオメガ6(リノール酸)とオメガ3(リノレン酸)の両方の必須脂肪酸を常時摂取している必要があり、オメガ6対オメガ3の比率が大きくなると、材料としてのオメガ3が不足して、必要な脂肪酸が作れなくなります。なぜなら、オメガ6とオメガ3は、一定量しかない同じ酵素を競合的に使っているからです。したがって、食物中のオメガ6対オメガ3の比率は体内の必須脂肪酸の動向に決定的な影響を与えることになります。
 現代のアメリカ型食生活にオメガ3必須脂肪酸の欠乏が著しいことは明らかで、しかもアメリカ型食生活はオメガ6必須脂肪酸があまりにも過剰で。多不飽和植物性油およびそれから作った食品が多いということは、オメガ6対オメガ3の比率を異常に高め、過去の人の食生活とはまったく別のものになっているということです。
 多不飽和植物性油の普及は20世紀における食生活の大きな変化です。雑草ではなくオメガ3必須脂肪酸を含まない飼料で育てられた動物の肉を食べる習慣も同様です。したがって20世紀に蔓延した疫病である冠動脈疾患や心筋梗塞は、何らかの摂取食物の過剰というよりは、過去において飽和脂肪酸や高グリセミック指数炭水化物の大量摂取による害を中和していた保護因子の欠乏に関連していることは想像にかたくありません。と言う。


 からだはリノレン酸からDHA(善玉コレステロール)を作ることはできますが、摂取植物中のオメガ6脂肪酸が多すぎると酸素の奪い合いになって、DHAの合成がブロックされてしまいます(亜麻仁油やキャノーラ油のようなリノレン酸に依存するよりも、すでにDHAを含んでいる魚を食べているほうがいい理由もそこにあります)。
 ドコサヘキサエン酸よばれるDHAは、母乳や各細胞にも含まれていますが、特に成人の脳細胞の脂肪のなかに10%程度と多く含まれていて、脳のなかでは脳細胞を形成する重要な任務を果たしています。脳細胞膜の基本的な構造体で、子供の攻撃性を抑制、老人性痴呆症の抑制、動脈硬化に基づく循環器系疾患の予防、ガンの増殖を抑え、ガンを予防などの働きがあるといいます。
 体内にDHAが不足すると、とりわけ胎児期の後期および乳幼児期に不足すると、中枢神経系の構造が軟弱化して、学習能力や知力の低下など、さまざまな精神機能の異常を引き起こします。また、脳のDHAの不足は毒物に対する感受性が高め、脳のなかで情報伝達がスムーズに行われなくなり、記憶の低下や中年以降にパーキンソン病、アルツハイマー病といった変性疾患を発症する恐れがあることも指摘されています。
 このように、脳のなかでこれほど重要な働きを担っているDHAですが、残念ながら人体内でつくり出すことはできません。ですから、DHAを直接摂取するには、そのままの形で含まれている魚介類を食べることが一番です。
 EPAとは「エイコサペンタエン酸」とよばれる、DHAと同じく魚介類に多く含まれる高度不飽和脂肪酸のことです。EPAは主に血中脂質の改善のために働き、血液の流れを妨げる悪いコレステロールや脂肪を減らします。血液中の総コレステロール、中性脂肪などの危険因子を抑制し、同時に善玉コレステロールのHDLを増加させることで、動脈硬化の促進を防ぐことができます。また、EPAには血液の粘りを解消して常に「サラサラの状態」に維持する作用があるので、高血圧の改善にも役立っているのです。特に背中の青いお魚により多く含まれています。
 

[飽和油脂]
・動物性油脂 ・乳脂肪 ・ココナッツ油 ・ヤシの実油 ・ヤシ油
[単不飽和油]
・アボガド油 ・キャノーラ油 ・オリーブ油 ・ピーナッツ油
[多不飽和油]
・コーン油 ・べに花油 ・ヒマワリ油 ・綿実油 ・大豆油 ・魚油
・亜麻仁油 ・クルミ油 ・ゴマ油 ・グレープシード油


 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

◎ ご意見、ご教示はこちらまで    掲示板も御座います。是非ご利用下さい。→ 掲示板

最新号へ戻る