山ちゃんの食べもの考

 

 

その126
 
[医食同源]を考える<16>


ワイル博士の<脂肪――最高の食品か最低の食品か?>の続きです。
 1950年代の初期に、飽和脂肪そのものの害作用やLDLコレステロールへの飽和脂肪の悪影響に対する解毒剤として、医師や栄養学者が多不飽和植物性油をさかんにすすめていました。医師たちの忠告にしたがって、バターをやめてコーン油やマーガリンやべに花油を使い始めたほとんどの人たちには、悪玉コレステロールLDLは減少していったでしょうか? 
 今では多不飽和植物性油の過剰摂取が善玉コレステロールHDLまでも減少させることがわかっています。組織や血液からコレステロールを取り除いて、それを処理・排出する肝臓に運んでくれる有益な脂質までをも減少させてしまうのです。
 つまり、多不飽和植物製油には、悪玉だけではなく善玉コレステロールも減少させ、オメガ6対オメガ3の比率を高めて健康を損なう主要原因になっているという、二つの問題があることがわかってきたのです。
 しかし、問題はそれだけにとどまりません。多不飽和脂肪酸の特徴である二重結合には、酸素の攻撃に弱いという弱点があります。不飽和脂肪酸には、酸素が反応するという危険な化学物質が生じます。脂肪が酸化すると悪臭を放ち、ひどい味になります。それが油脂そのもの、油脂を含有する食品(ナッツなど)、油脂を使った食品(ポテトチップス、クッキーなど)が腐敗したときの特徴です。脂肪酸に二重結合が多ければ多いほど、その脂肪に占める多不飽和脂肪酸の比率が高くなり、光や熱や空気に触れると酸化しやすく、腐敗しやすくなります。


 リノール酸とリノレン酸のすぐれた供給源である亜麻仁油は不飽和度がひじょうに高く、たとえ室温に置いても空気に触れるとたちまち酸化して、どろどろしてきます。
 亜麻仁油が油性ペンキの基剤や家具の仕上げ塗料に使われているのは、缶の中では液体だが、塗るとすぐに「乾いて」固くなるからです。ベニ花油にも、かつては食用ではなく乾燥用の油に分類されていました。不飽和度がきわめて高く、急速に酸化するからです。
 脂肪の腐臭を知らない人は油性ペンキの匂いを嗅いで見ればわかります。そして、ナッツ類、粉類、ポテトチップス、焼き菓子などを食べるときに似たような匂いがしたら、すぐに捨てたほうがいいでしょう。酸化した油は動脈損傷、ガン、炎症、変性疾患を促進し、細胞や組織の老化を早めます。
 油脂性の食品は、空気中の酸素や湿気、熱、光、金属イオン、微生物あるいは酵素などの作用によって油脂成分が変化し、不快な臭いを発して味が劣化するだけでなく、酸化が進むと毒性を示すようになります。
 油脂類を空気中に放置しておくと、油脂中の不飽和脂肪酸が酸素を吸収して酸敗します。油脂の酸化に対して最も影響が大きいのは空気中の酸素です。
 また、油脂の酸化速度は、温度が高いほど大きくなります。一般には、10℃上昇するごとに反応速度は2倍になるといわれています。したがって、製造工程における加熱条件や、販売経路における温度管理も大きく影響します。加熱による油の変化は大きく、品質チェックなどには特に注意する必要があります。
 太陽光線や蛍光灯などの光線も酸化を促進する大きな要因となります。直接空気に触れないようになっていても、光の照射によって酸化防止効果がほとんどなくなってしまうほど影響は大きいといいますから、油脂および油脂性の食品がどのように保管され扱われているかは要注意点です。


 脂肪酸化の有害性にはフリーラジカル(遊離基)が関与しています。フリーラジカルはきわめて反応性の高い分子で、連鎖的・爆発的に化学反応を促進させて、細胞膜や酵素、そしてDNAを傷つけます。それは体にとって実に危険な「酸化ストレス」の一つです。からだはその危険を防衛するために、フリーラジカルを消滅させて破壊的な酸化反応を中和させる抗酸化物質を用います。
 抗酸化物質は新鮮な野菜や果物に含まれていますが、現代人にはそれが不足がちです。
 キッチンで各種の脂肪の酸化度を観察する簡単な実験法があります。少量のバターの上澄み、オリーブ油、紅花油を、それぞれ別の容器に入れ、蓋をせずにそのまま放置して置きます。そして毎日、容器の内容物の匂いを嗅ぎ、腐臭がするかどうかに注意を払います、ベニ花油(大半が多不飽和脂肪酸)はすぐに、しばらくたってからオリーブ油(大半が単不飽和脂肪和脂肪酸、多不飽和脂肪酸は多くない)が、そしてずっとあとにバターの上澄み(大半が飽和脂肪、わずかに多不飽和脂肪酸)が腐臭を放ってくることがわかります。


 揚げ物をするとき、油の温度はひじょうに高くなります。一度高温になった油の再使用はやめたほうがいいでしょう。油は安くないから、経済的には無駄なやり方ですが、健康のためにはやむを得ません。
 ポテトチップスのメーカー、カフェテリアの店長、レストランのオーナーなら、揚げ物をした油をそのつど捨てるなど、とてもできることではないでしょう。悪臭を放ち、料理の味が落ちるまで、つまり酸化脂肪が腐敗して茶色になるまで、その油を使い続けるかもしれません。
 しかし、それがどんな結果を招くのかは、『アメリカ心臓病学協会ジャーナル』誌に発表された研究結果が明らかにしています。
 オーストラリアの研究チームの指示によって、被験者グループは異なる脂肪の食物を3回に分けて摂取しました。
 最初の食物には、ファーストフード店で揚げ物に使われた古い油が64.6g含まれていました。2度目の食物には同量同種の新しい油が、3度目の食事は低脂肪料理(脂肪量18.4g)でした。
 それぞれの食事の4時間後に、上腕動脈における血流の検査が行われました。その結果、最初の食事のあとは血流が著しく低下しましたが、2度目と3度目の食事では特に変化がなかったということが判明しました。
 研究チームは、古い油に含まれる毒性化合物が血流中に流入して酸化ストレスが生じ、動脈内壁に直接的な機能低下が起こったと解釈しています。
 ファーストフード店やレストランで揚げ物を注文するときは、この研究結果を思い出してください。


 多不飽和植物製油は酸化しやすく、心臓血管系を傷つける化合物をつくるので、ガンになる確率を高めます。そういってもまだその摂取をやめようとしない頑固な人には、もっと怖い話をしなければなりません。
 脂肪酸分子の二重結合部には負荷がかかりやすく、ひずみが生じると、まっすぐな鎖ではなく、曲がった形態の鎖を形成します。代表的な単不飽和脂肪酸で、オリーブ油の主な脂肪酸であるオレイン酸の場合を見てみましょう。
 オレイン酸は可能性として2種類の形態をとります。シス形とトランス形の2種類ですが、トランス形のオレイン酸を作るよりもシス形のオレイン酸を作るほうがややエネルギーを要するので、シス形のオレイン酸はより安定したトランス形に変る傾向があります。化学精製や高温処理によってトランス形脂肪になります。しかし、トランス形がシス形に変ることはありません。
 自然界に存在する二重構造の脂肪酸(単不飽和と多不飽和脂肪酸)はほとんどすべてシス形脂肪酸であります。体は膜とホルモンをつくる際にシス形の脂肪酸を利用します。もしトランス形の脂肪酸を使えば、膜やホルモンに欠陥が生じてしまいます。
 ところが、現在広く行われている大量生産の製油法では、その過程で生じるトランス形脂肪酸(狂った脂肪酸=異常で不健全な結合)で、脂肪の分子中の炭素と水素の結びつきに変化が生じたもので、体に害をもたらす悪玉の脂肪と指摘されます。自然な形であるシス型の脂肪酸分子は蹄鉄型をしているのに対し、トランス型は直線的な型をしています。脂肪酸は細胞膜の構成要素になっているものですが、細胞膜の中にトランス型が紛れこむと細胞膜は弱くなり、その結果としてさまざまなトラブルを生ずるといわれています。
 分子構造の変化した自然にはないトランス脂肪酸は、熱によって生じるので、溶剤抽出法による高温下の食用油製造過程でも当然生じます。また、使い古しの天ぷら油にも生じます。さらにトランス脂肪酸の生じたそういう植物油を原料にして水素添加して造るマーガリンやショートニングではいっそう増えます。
 不飽和脂肪酸は水素の不飽和な箇所があるために反応しやすく、それだけ生理的な活性が高い脂肪酸ですが、その代わり不安定な脂肪酸でもあり、老化、酸化しやすく日持ちが悪い。そこで現代の多くの食用油では日持ちを良くするため、水素が不飽和で足りない箇所に化学的な技術を使い強引に水素をくっつけており(水素添加)、マーガリン、ショートニングなどもこの方法で造られています。
 そしてこういう水素添加、部分的水素添加の過程で、体には好ましくないトランス脂肪やその他の有害物が生じてきます。
トランス脂肪は身体の細胞の細胞膜の中に入り込み、細胞膜及び細胞の働きを狂わせ、また体内でビタミンなどの栄養物質を食い荒らしたりします。また、このトランス脂肪がガンや心臓病の大きな原因になることは、数多くの研究で明らかにされており、オランダの研究では、精製油に含まれているトランス脂肪が、飽和脂肪酸と同様に悪玉コレステロールといわれる低比重リポ蛋白質を増やし、善玉コレステロールの高比重リポ蛋白質を減らす、と指摘しています。


 人間の体は膜とホルモンをつくる際にシス形の脂肪酸を利用しており、もしトランス形の脂肪酸を使えば、膜やホルモンに欠陥が生じてしまいます。ところが人間には、その欠陥によって多くの病気が起こっているのだと、医学の専門家は指摘しています。
 というのは、食品メーカーは植物油をトランス形に変えて、私たちの食卓や体に送り届けているからです。スーパーマーケットで買う植物油のほとんどは、熱と圧力と化学溶剤を使って種子から抽出したものです。その抽出のプロセスで、シス形脂肪酸の大半がトランス系脂肪酸に変わってしまっているのです。
 トランス脂肪酸は専門家たちから「ファニーファット」(おかしな脂肪)と呼ばれている不自然な脂肪酸です。しかし、市販されている油にそれが大量に含まれているとなれば、笑いごとではすまされなくなります。
 抽出のプロセスだけではなく、抽出された油が熱や光にさらされるときにも、トランス脂肪酸はつくられます。そして、その油が一部水素化という不自然な処理を受けるときにも、トランス脂肪酸は大量に作られます。
 スーパーマーケットに並んでいるクッキーやクラッカーなど、スナック類のラベルを読むと、「一部水素化油」が使われていることがわかります。「一部水素化大豆油」「一部水素化コーン油」などと表示されています。一部水素化油は冠状動脈疾患の危険を増し、アレルギーを増悪させるものと言われているのに、日本では表示されていません。
 これらは20世紀以前の人間が口にしたこともないものであり、現代人の健康を損ねている主犯級の容疑者だと考えている、とワイル博士は述べています。
 油を水素化(水素添加)する目的は液状の油を硬化させて、使い勝手、舌ざわり、焼き具合をよくし、脂肪の飽和度が高くなれば、それだけ酸化が遅くなり、長期間店頭に陳列しておけるからです。
 脂肪を水素化するために、金属の触媒(ニッケルやプラチナ)を使って、高圧下で水素ガスに触れさせながら、6〜8時間、高温で熱します。そうすると脂肪中の二重結合がすべて破壊されて、シス形でもトランス形でもない、まっすぐな鎖の飽和脂肪酸が出来上がります。しかしメーカーはそのプロセスを完了させずに途中で停止します。すると、トランス脂肪酸を含む複雑な混合化合物が出来るのです。
 各国ではトランス脂肪酸の有害さへの認識が高まり、欧米諸国ではある一定以上の「トランス脂肪酸」を含む製品を販売禁止にし、アメリカではFDAが油脂製品の「トランス脂肪酸」含有量の表示を義務づける方針を発表しています。
 日本でも【第6次改訂 日本人の栄養所要量】 で次のような警告の文章が出また。「トランス脂肪酸は、脂肪の水素添加時に生成し、また反芻胃の微生物により合成され吸収されることから、反芻動物の肉や乳脂肪中にも存在する。トランス酸の摂取量が増えると、血漿コレステロール濃度の上昇、HDL−コレステロール濃度の低下など、動脈硬化症の危険性が増加すると報告されている。」


 マーガリンもそのようにしてつくられますが、ワイル博士は、私がマーガリンをお勧めしないのは、そのトランス脂肪酸の比率(30〜40%)が高すぎるからだ、と言い、マーガリンについて以下のように述べています。
 マーガリンには数奇な歴史がある。1860年代後半のことだが、乳牛に疫病が蔓延してバターの価格が高騰したとき、フランス学士院がバターの代用品の開発を呼びかけた。最初は傷んだミルクなどから作られていたマーガリンは、20世紀になって、液状の植物油を一部水素化して固める技術が開発されてから、口当たりもよくなり、実用性も増してきました。メーカーは競って世界中からもっとも安価な種子を探し出し、それでマーガリンを作りはじめました。
 1920年代から30年代にかけてマーガリンのメーカーは製品の味と外観の改良につとめ、それに成功すると、マーガリンの人気も上昇していきました。マーガリンの唯一の魅力は価格にあり、味はまずくとも売り上げは伸び続けました。
 1950年代、マーガリンの売り上げはついにバターを抜き、消費者意識も変って、マーガリンをバターの代用品としてではなく、バターよりも健康にいいものだとして買うようになったのです。
 その原動力となったのは、飽和脂肪酸は悪玉で植物油は善玉であるとする医師や栄養士たちの主張でありました。それで現在でも、家庭の冷蔵庫には、バターよりもマーガリンが多く入っているところが多いのです。
 しかし、マーガリンはどう見ても健康にいいものではありません。それは有害な脂肪の塊であって、高度に加工された食品なのです。それがいかに有害であるか。京都のあるスーパーの社長は「マーガリンは食べものではない。あれはプラスチック製品だ」といって、一切取り扱っていません。


 驚異の食品マーガリン、「この驚異の食品は、窓際に何年も置いて光や空気、自然にある細菌その他にさらしても少しも変化しない。カビも生えないし昆虫が卵を産みつけることもなければネズミが食べることも、ゴキブリが寄ってくることもない。」と言われます。
 植物油や魚油は、融点(融ける温度)が低い不飽和脂肪酸が多いため、常温では液体です。これに対しラード、ヘッドといった融点の高い脂肪は常温では固体です。多くのマーガリンの原料は植物油ですが、植物油そのままではあのように固体の硬い脂肪にはなりません。そこで水素添加をして飽和脂肪酸に変化(硬化)させています。全面的に水素添加せず、反応を製品の目的に会わせて途中で止めるのが部分的水素添加(部分的硬化)で、現在、この方法がマーガリンに限らず食用油を含めた多くの脂肪食品に対して使われていると言います。
 しかし、多くのマーガリンは部分的水素添加により製造されていますが、これに対し完全水素添加(不飽和脂肪酸の不飽和な個所の全てに水素を添加して完全な飽和脂肪酸にしてしまう)した製品も出ています。これだと脂肪酸の分子構造の中の全ての炭素にいっぱいに水素が付いて、分子構造上もトランス脂肪酸はできなくなります。
 

 さて、ワイル博士の説くマーガリンがいかに有害なものであるかを見てみましょう。
 「トランス脂肪酸が心臓や血管に有害であることははっきりしています。飽和脂肪酸と同じく、コレステロールの産生を高めて動脈硬化を促進します。脂肪のもつ利点が何も生かされていません。
 トランス脂肪酸は膜やホルモンの生成に異常を生じて、健康に有害な作用をもたらしています。ガンや変性疾患を促進し、炎症を増悪させ、老化を早め、免疫系と治療系を傷害しています。したがって、私は細心の注意を払ってトランス脂肪酸を含んだものを食べないようにしています。」
 「マーガリンと植物性のショートニング、および、それらを使った食品一切、または一部水素化した油を使ったもの一切をも避けるのがいい。
 食品中の飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを増加させます。だから、確実にメトセラ遺伝子を持っていることが立証された人を除外して、ほとんどの人は、飽和脂肪の主要摂取源である動物性油脂、特に乳脂肪(チーズなどの全乳品)を大量に摂ってはならないのです。ヤシ油とココナッツ油というに種類の熱帯植物油も使ってはなりません。これらも飽和脂肪酸のカタマリです。」
 「ところが、市販の食品に一部水素化油を使うことで事態は悪化しました。多不飽和植物製油は悪玉と一緒に善玉コレステロールも低下させてしまうばかりか、すでに高くなっているオメガ6対オメガ3必須脂肪酸の比率を一層高めて酸化を促進し、さらに、処理の段階で有害なトランス脂肪酸を含んでいる可能性が高いのです。マーガリンをはじめ、一部水素化された油はすべて避けなければなりません。」


 使ったほうがいいのは、単不飽和脂肪油脂およびオメガ3必須脂肪酸に富む油です。
 単不飽和脂肪酸は多くのナッツ類、種子類に見られ、またオリーブ油やアボガドの主な脂肪酸でもあります。単不飽和植物油であるオリーブ油、カノーラ油、ピーナッツ油、アボカド油なら、飽和脂肪のような心臓血管疾患のリスクや、多不飽和脂肪のようなガンのリスクを避けられるといいます。
 また、オメガ3必須脂肪酸は、青魚や亜麻仁油、シソ油、緑黄色野菜、豆類に含まれている油です。特に青魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのオメガ3系脂肪酸が含まれています。それらが最適な食事にふさわしい油です。とワイル博士は言います。
 単不飽和脂肪酸はHDLは変化させることなくLDLコレステロールを低下させ、多不飽和油よりはるかに酸化に強く、飽和脂肪にさほど劣らない効率でエネルギー源にもなります。
 単不飽和油はいろいろなものから摂れます。カシュー、ピスタチオ、マカダミアなど、多くのナッツ類には単不飽和油が含まれています。特にクルミは、リノレン酸という形でオメガ3脂肪酸を含んでいるので、優れています。
 厳格な低脂肪食の提唱者には忌避されていますが、ナッツ類は健康にいいものであり、最近の研究によっても毎日ひとつまみのナッツを食べていると、LDLコレステロール値と血清トリグリセド値が低下することが証明されています。ナッツ類は繊維質、ミネラル、ビタミンEの摂取源でもありますから、天然・無塩のナッツを生のままで買い、冷蔵庫に保存しておいて、必要なときに生のままか、煎って食べたらよい。煎ったり刻んだりすると、ナッツ類はたちまち酸化してしまうから、すばやく食べてしまうことです。一度加熱したものは長期貯蔵してはいけません。


 カボチャの種はオメガ3を含み、いいスナックになります。出来るだけ生のものを買ってきて冷蔵庫に入れ、食べるだけ煎ればいい。
 アボガドも単不飽和脂肪酸に富んでいます。熟したアボカドをつぶしたものはバターの代わりになります。
 オリーブ油は香りもよく、食用油の中では単不飽和脂肪の含有率が最高(77%)であり、スーパーマーケットでも良質なものを買うことができます。堅い種子でなく、熟した柔らかい実からとるので、ほとんどの植物性油とは違って、オリーブ油は脂肪の抽出時に無理な処理を受けていません。「エキストラバージン」の表示がある最良のオリーブ油は、オリーブの実をやさしく圧搾した、一番絞りの油です。
 オリーブ油の主な欠点は必須脂肪酸がほとんど含まれていないことです。リノレン酸に欠け、リノール酸もほとんどありません。しかし、他から適量のオメガ3さえ摂っていれば、オリーブ油を主体にした生活でも心配することはありません。


 菜種油の現代版であるキャノーラ油を使う方法もあります。インドや中国南部では伝統的に菜種油が使われてきました。菜種は油科の植物で、その種子にはリノレン酸の形で、一定のオメガ3が含まれています。主成分は単不飽和脂肪酸で、総脂肪の62%に達します。しかしオメガ3成分は製品の保存期間を短くするので、市販のキャノーラ油ではオメガ3成分が除去されている可能性があります。
 キャノーラ油は香味も中庸で、入手しやすく、大いに健康にいいと喧伝されている単不飽和脂肪酸ですが、オリーブ油には遠く及びません。また、市販のキャノーラ油には油を損傷するような方法(加熱、溶剤、漂白)で抽出され、菜種の栽培に大量の農薬が使われていることもあるので、確かなものを選んで買わなければなりません。
 ピーナッツ油も単不飽和脂肪酸が多い(49%)植物製油です。これも香味は中庸ですが、キャノーラ油よりも飽和度が高く、オリーブ油よりも多不飽和度が高い油です。一定のオメガ6脂肪酸は含まれていますが、オメガ3脂肪酸は含まれていません。


 特殊な油に亜麻仁油と麻油があります。両方ともオメガ3の優れた供給源であります。
 亜麻の種子(亜麻仁)は植物の中でも最もリノレン酸に富んでいますが、そこから圧搾された油は多不飽和脂肪酸が多く(72%)、ときわめて酸化しやすいのです。絞ったばかりの亜麻仁油は甘くて木の実の香りがしますが、消費者の食卓に届くころには、油性ペンキの匂いに変っています。亜麻仁油は不透明で小さな瓶入りのものを、冷蔵ケースかフリーザーの中に貯蔵してあるような、行き届いた品質管理のできている店で買うのがよいでしょう。また買ったら冷蔵庫に保管し、決して過熱しないように。ふたを開けたら、すぐに使い切る必要があります。
 大豆油は多不飽和油が主体で、必須脂肪酸を含んでいます。ただ、市販の大豆油の多くは、熱、溶剤、漂白剤などにとって、製造過程で多不飽和脂肪酸の多くが破壊されている恐れがあるので十分注意していただきたい。
 

 現代人にとって、おそらく最も貴重なオメガ3の摂取源は魚油です。魚油に含まれるのは分子が長大な鎖をなすオメガ3の前駆物質、EPAやDHAです。
 これらは心臓と血管、神経、そして、精神衛生の健康にとって決定的な重要な役割をはたすものです。体はリノレン酸からこれらの貴重な栄養素を合成することができますが、その合成はしばしば失敗に終わります。というのもオメガ6脂肪酸を摂りすぎている人が多いので、合成に必要な酵素がオメガ6に奪われてしまうからです。だからこそ、サケ、イワシ、サバ、ニシンなど、冷たい海にいる油の多い魚を食べることが重要になります。アザラシやクジラなど、北の海にいる海洋哺乳類の脂肪もオメガ3を豊富に含んでいます。
 伝統的なイヌイットの人たちが大量の総脂肪および飽和脂肪を摂取しても動脈硬化や冠動脈疾患にならなかったことの理由はそこにありました。
 現代のイヌイットたちは、明らかに不健康です。海洋哺乳類の脂肪に農薬や産業廃棄物などの毒物が高濃度で含まれるようになったことも、その理由のひとつです。
 グリーンランドのような、比較的汚染の少ない地域に暮らしているにもかかわらず。彼らの体脂肪や母乳から大量の化学物質が検出されているのです。環境汚染物質が食物連鎖の頂点にいる大型動物の体脂肪に濃縮されていることが、この悲惨な状況を招いているのです。彼らの悲惨は、すべての国の環境政策の不備に対する無言の告発であります。その上、多くのイヌイットはすでに、加工植物性脂肪をはじめとする、先進国の最悪の食品を生活に取り入れています。たとえば、夏のご馳走だったアザラシの脂肪と果実で有名な「エキスモー・アイスクリーム」は今、植物性ショートニングに変わっています。


 われわれにとって、海洋哺乳類は食べる機会がほとんどありませんが、魚ならいくらでもあります。魚の利点と欠点についてはタンパク質について項で後に詳しく述べますが、ここでは、心がけて油成分が多い魚を食べることをおすすめしておきます。週に2、3回は、できればもっと多く、魚を食べていただきたいものです。
 原則として、魚のサプリメントはおすすめできません。第一に総脂肪摂取を適量に抑えようとしても、カプセルで脂肪そのものを摂ってしまえば意味がなくなります。第二に、不飽和度が高い魚油は、すぐに酸化してしまいます。そして魚肉の油よりサプリメントのほうが酸化の足が早いのです。第三に、環境による魚の汚染は深刻なレベルに達しており、市販の魚油サプリメントはその点で疑問が残ります。化学物質による汚染がないことが証明された商品でない限り、安心して服用することはできません。



 

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生命の農と食を考える
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池田 優

 

 

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