山ちゃんの食べもの考

 

 

その127
 

極端な低脂肪食の危険 必須脂肪酸の欠乏
 脂肪を取らなければコレステロールや動脈硬化の心配はなくなると考えがちですが、摂取カロリーの10〜20%に抑える極端な低脂肪食のあきらかな危険は必須脂肪酸の欠乏にあります。ベジタリアンの低脂肪食は、さらに危険が高まると考えられると言います。
 ハーバード大学のサックス博士は極端な低脂肪食は善玉のHDLコレステロールも減らしてしまい、心臓病のリスクは避けられないといいます。オメガ3脂肪酸(リノレン酸)の脂肪酸摂取に十分配慮しない限り、その欠乏による病気の発症率を高めることになります。食事では青魚を摂る様に心がけましょう。青魚の脂肪に含まれるEPAは、血中の総コレステロール、中性脂肪などといった動脈硬化の危険因子が減り、特に老齢ではHDLの増加が認められています。
 さらにLDLの酸化を防ぎ、動脈にこびりつくのを防ぐ働きがあるビタミンEは、そして、未精製穀類、豆類、果物などを食べるよう心がけ、しっかりと食物繊維、大豆食品、そしてビタミンCを摂りましょう。食物繊維はコレステロール値を下げ、大豆食品はLDLを体外に出すことがわかっています。
 
極端な低脂肪食は心血管疾患のリスクを高める
 極端な低脂肪食の第二の危険性は、炭水化物の過剰摂取によって、血清脂質像が変り、心血管疾患のリスクを高めることにあります。
 一般的に、脂肪と炭水化物はシーソーのような関係にあります。一方が低くなると他方が高くなります。カロリーの10%を脂肪からとっている人の一部には、70%、ときには80%ものカロリーを炭水化物からとっている人がいます。これはあきらかに多過ぎ、血清トリグリセリドを高騰させる食生活です。
 つまり、脂肪の摂取量が少なくなると、当然糖質(炭水化物)の摂取量が多くなります。すると体内ではトリグリセリド(脂肪)の合成が盛んとなり、結局血清中のトリグリセリド濃度が高くなるわけです。そんな食生活をつづけるとLDLとともにHDLも減少し、こうした高トリグリセリド血症もまた動脈硬化の危険因子であり、動脈硬化のリスクが高くなります。

正しい脂肪の種類を選べば冠動脈疾患は回復する
 極端な低脂肪食のリスクはLDLの大幅な減少によって見過ごされるおそれがあります。極端な低脂肪、過度な運動、グループによる徹底的な支援といったライフスタイル改善によって冠動脈疾患を回復させるオーニシュ博士のプログラムは、LDLの大幅な減少を特徴としています。
 ワイル博士はすでに心臓病を発症している患者、特に、冠動脈バイパス手術や血管形成手術といった現代医学の治療を受けたくない患者をオーニシュ・プログラムなど類似のプログラムに紹介することはやぶさかでないという。それは、そうした患者は厳しい食事制限に耐えるだけの動機づけがあるので、そのプログラムによって心臓病患者における心筋梗塞などの発症率が低下することは明らかだからです。しかし、極端な低脂肪食をしなくても、いや、もっと美味な食生活を続けていても、正しい脂肪の種類を選び、同じように運動をし、グループの支援があれば、冠動脈疾患は回復すると考えています。おそらく、低脂肪食プログラムよりはうまく改善をはかることができるでしょう。と述べています。

極端な低脂肪食では食べもののうまみが失われる
 総摂取カロリーに占める脂肪の割合が20パーセント以下になると、食べもののうまみが急速に失われます。
 保養所で生活する、専門的なシェフを雇う、食の快楽を放棄するなどの条件がない限り、脂肪を総摂取カロリーの10%以下におさえた食生活を続けることは、実際問題として非常に難しいでしょう。

オメガ6対オメガ3の比率を低く維持すること
 ほとんどの人は、脂肪が30%の食事で最適な健康を享受することができます。クレタ島をはじめとする地中海沿岸の人たちの例を見れば、単不飽和・必須脂肪酸を中心にして、オメガ6対オメガ3の比率を低く維持している限り、30%以上でも心配いらないかもしれないのです。

飽和脂肪の摂取を減らすこと
 バター、クリーム、全乳、ヨーグルト、とくに全乳から作ったチーズなどを避けて、飽和脂肪の摂取を減らすこと。乳製品が好きな人はローファットミルクやスキムミルクなど低脂肪のものに変え、スキムミルクから作ったチーズにするといい。
 ビーフやポーク、皮付きの鳥肉(チキン、ダックなど)の摂取も控えめにし、ヤシ油やココナツ油は最小限にとどめること。
 旧来の栄養学者は3種類の脂肪を等比率で摂ることをすすめています。すなわち、総摂取カロリーに占める30%の脂肪由来カロリーは、飽和脂肪・単不飽和脂肪・多不飽和脂肪をそれぞれ10%ずつの比率で摂るという説です。ワイル博士は、その比率が1対4対1であるべきだ。飽和脂肪5%、単不飽和脂肪20%、多不飽和脂肪5%です。1日に2000カロリーを摂る人なら、その30%、つまり600カロリーを脂肪から摂り、そのうち、飽和脂肪は100カロリーを超えないようにするということです。飽和脂肪の摂取が多ければ、その分だけ必須脂肪酸とオメガ6対オメガ3の比率に注意を払うことが重要になる、と述べています。

多不飽和植物性油を避けること
 ひと昔前まで、バターのような飽和脂肪のかわりにマーガリン、コーン油・サフラワー油などの多不飽和植物油が良い(理由は多不飽和油はコレステロール値が少なく、心臓や動脈の健康に良いと信じられていたから)とされてきましたが、近年、多不飽和油は多様な手段で体に害を及ぼすことがわかりました。
 化学的に不安定で、活発な二重および三重結合の脂肪酸が酸素と反応(酸化)しやすく、その結果、毒性成分となってDNAや細胞膜を破壊し、がんや炎症の促進、組織への消耗性の変化などをもたらすからです。
 不飽和脂肪酸はまた、熱処理・化学溶剤処理・漂白処理を受けると、自然のままの曲がった形(シス配列)から、不自然な継ぎ目のある形(トランス配列)に変わります。トランス脂肪酸(TFA)はきわめて毒性が強いようです。
 市販の大量生産によ多不飽和植物性油(べに花油、ヒマワリ油、ゴマ油、コーン油、綿実油)とその製品の摂取にちゅういすることです。
マーガリン、植物性ショートニング
 マーガリン、植物油系のショートニング、およびそれらが使われた加工食品、ラベルに(一部硬化)(水素添加)と書かれた油を使つたすべての食品、などをできるだけ避けること。マーガリン、ショートニングやそれらを含む食品を食べると動脈硬化になります。マーガリンは、脂肪分子に水素原子を加えることにより、シス型脂肪酸の結合がトランス型脂肪酸に変形されたもので、その結果融点が上がり、室温において固体を維持するようにしたものです。トランス型脂肪は、細胞膜保護の構造と機能を弱めるため、人体は免疫機能が弱り抵抗力が低下し、病気の危険性が増加することになる、といったことも起こるようです。
 水素添加という作用は、金属触媒を用い、約260度の温度で処理され、シス結合のおよそ半分がトランス形状に変換されます。水素添加により作られた油は、自然により作られた油とは違い、すぐに腐ったり、嫌な臭いを出したりしなため、広く普及することになり今でも加工食品に大量に使用されています。
 水素添加脂肪の代表であるマーガリンは、常温に放置しても長時間カビも生えないし、虫などにも食べられることがないものです。
 トランス型脂肪は自然には存在しないものです。欧米では一部のトランス脂肪酸を含む製品が発売禁止になり、トランス脂肪酸を含まない製品も出回っているそうです。
 トランス型脂肪の問題はここ15〜20年前の間に知られることになったようですが、この問題が無視されて一般にはあまり知らされていません。ヨーロッパにおいては食品規格で規定され、0.1%以上含有することを許可していない国もあるようです。
「健康によい」と売られてきたソフトマーガリン・植物性マーガリンなどなぜかびも生えない・ゴキブリも食べないのか? この理由が、1990年にオランダの研究者たちによって発表されてから、さあ大変となってきたのです。ヨーロッパやアメリカ・カナダでノートランス油、ノートランスマーガリンと流れが大変化しだしました。トランス脂肪のことを「異変脂肪」とも「プラスチック脂肪」と言う学者がいますが、精製された油やマーガリン・ショートニングは本来自然界にない「狂った脂肪」を長持ちさせるため水素化合処理という強引な化学処理で生まれ、この地球で一挙に市場を支配したのです。
 
一部水素化油には手を出さない
 どんな種類の油でも、一部水素化された油には決して手を出さないこと。植物性油を部分水素化という化学反応をさせて「非植物性油」に変えた時に、望まないのにどうしても出来てしまう、いわば「奇形油脂」であり、冠状動脈疾患の危険を増し、アレルギーを増悪させると言われます。
 微生物から植物、動物に至るまで、すべての生物はシス型しか合成しません。植物油などの成分である不飽和脂肪酸は、人体内で単なるエネルギー源だけでなく、ホルモンや細胞壁など重要な物質の原料となるので、ねじ曲がげられた脂肪酸は色んな所で不都合を生じる可能性がある。水素化すると、酸化されにくくなるので、市販のスナック菓子、ケーキ、チョコレート、クリーミングパウダー、ドーナツ、クッキー……など日持ちさせたい商品には、たいてい使われていると思われます。

エキストラバージンのオリーブ油
 ワイル博士は、エキストラバージンのオリーブ油を中心にすること。料理によって、オリーブ油の香りが合わないときは、香りの薄いもの、「ライト」なオリーブ油にすればいい、と言います。
 エキストラバージン・オリーブオイルは、1970年米ミネソタ大学のキース教授の発表した論文から脚光を浴び始めました。彼は10年間にわたり世界7ヵ国の心臓病に関する研究を行い、その結果エキストラバージン・オリーブオイル中心に野菜・果物・穀物・そして肉類ではなく魚介類を多く摂取している食生活を送る地中海沿岸の地域に住む人々に心臓疾患系病が極めて少ないことをつきとめました。
 エキストラバージン・オリーブオイルに含まれるオレイン酸が動脈硬化を促進させる悪玉コレステロールの血中レベルを低下させ、反面、血液をさらさらにしてくれる善玉コレステロールの血中レベルを上げる働きがあるということがわかったのです。またこのオレイン酸は抗酸化力が大きく、脂肪酸の安定が良いため、他の油に比べ酸化速度がゆるやかで、エキストラバージン・オリーブオイルにはこのオレイン酸が70%以上含まれています。
 それもエキストラバージン・オリーブオイルには化学的な手法によらずオリーブの果実を単純につぶして絞っただけのシンプルなオリーブ生ジュースなので、オリーブ自体に含まれるオレイン酸をはじめ、多数のミネラル等がそのまま生きています。

有機栽培の圧搾キャノーラ油
 あるいは代用品として、適量ならば、有機栽培の圧搾キャノーラ油でもいい。
キャノーラとは、Canadaとoilを掛け合わせて作られた造語で、カナダで栽培される品種改良されたなたねの一種です。現在ではカナダで栽培される菜種の大部分がこのキャノーラです。キャノーラ油は大豆油と並んで、とてもポピュラーな油で、揚げ物からドレッシングなどに幅広く使われています。
 酸化に対する安定性、熱に対する安定性とも比較的に高く、生でサラダに、炒めものや揚げ物などの加熱調理にもなどと、万能の油で、風味はあっさりと淡白なのが特徴です。オレイン酸の含有率が高く、リノレン酸の含有量も高めです。
油は小瓶で買い、冷蔵庫に保存
 油は大瓶ではなく小瓶で買い、開封したらなるべく早く使い切ること。どんな油でも、光と熱の届かないところに保存すること。
 オリーブ油をよく使う人は、少量だけ冷暗所に置き、あとは冷蔵庫に保存したほうがいい。飽和脂肪が14%含まれているので、冷蔵庫の中ではしだいに凝固してくる。凝固したオリーブ油は、ビンのままぬるま湯につけておけば、すぐに液体にもどる。

ナッツ油
 香りのいいナッツ油(クルミ、ヘイゼルナッツ、ピスタチオ)は冷菜用に少量を使えば問題はない。

ごま油
 色の濃いゴマ油も、中国料理や日本料理の香味づけに少量を使うなら問題はない。香味は非常に強く、たいがいは小さじ一杯か二杯で用が足りる。

カボチャの種子の油、亜麻仁油
 カボチャの種子の油、亜麻仁油、麻油は必須脂肪酸に富み、貴重なオメガ3を含んでいるので、利用価値が高い。
 ただし、使う前に味と臭気を確認して、酸化していないかどうかを調べること。保存には熱と光にとくに注意し、開封したら出来るだけ早く、ドレッシングなど冷菜用にだけ使うこと。できれば油よりも、種子をそのまま生で食べたほうがいい。亜麻仁は新鮮なものを挽いて、カボチャの種と麻の実は生か、軽く煎って食べると美味しい。

油は高温に加熱しない
 どんな油でも、煙が出るまで高温に加熱してはならない。また、その煙を吸い込んではならない。きわめて毒性が強い。

レストランやファーストフードでは
 レストランでの揚げ物、とくにファーストフード店では用心して。

使った油は捨てること
 自宅で揚げ物をするとき(あまり頻繁にしないほうがいいが)は、使った油は思い切って捨てること。

クルミはオメガ3が豊富
 時にはアボガド、ナッツ類(ピーナッツ以外)、ナッツ・バター(ピーナッツ・バター以外)で脂肪の一種を摂取するのもいい。
 とくにクルミはオメガ3が豊富で、栄養価が高い。天然ものの、生のナッツが一番いい。煎るときは自分で、すばやく煎ること。ナッツ類とナッツ・バターは冷蔵庫に保管すること。

たまごは放し飼いの鶏の
 たまごを食べるときは、放し飼いの鶏のたまごか、オメガ3脂肪酸を含んだ、新種の強化たまごにすること。

マヨネーズとサラダドレッシングは
 マヨネーズとサラダドレッシングは自然食品店など信頼できる店で、オリーブ油、大豆油、キャノーラ油を使った良質のものを選ぶこと。

大豆および大豆食品を食べること
 オメガ3脂肪酸を摂取するために、大豆および大豆食品(豆乳、豆腐、大豆タンパク)を食べること。

魚を常時食べること
 オメガ3を含んだ魚を常時、少なくとも週に2、3回は食べること。
 魚を食べられない人は、出来るだけ植物性のオメガ3摂取源(クルミ、亜麻仁、麻の実)を食べ、オリーブ油以外の植物製油およびその製品の摂取を控えて、オメガ6脂肪酸の低下をこころがける必要がある。

妊娠後期および授乳期にある女性は
 妊娠後期および授乳期にある女性は特に、適量のオメガ3摂取に心がけなければならない。できれば魚からとるといい。


 食べる脂肪の種類が健康と長寿に大きな影響を与えているにもかかわらず、脂肪に関する誤解が多いのです。炭水化物の場合と同じく、脂肪に対しても、その有益な作用を減殺して有害なものにしているのは、主として大量生産のための加工法です。出来るだけ天然の、未加工食品を食卓に供していただきたいものです。



 

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生命の農と食を考える
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池田 優

 

 

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