山ちゃんの食べもの考

 

 

その128
 



 たんぱく質は英語で「プロテイン」といいますが、これはギリシア語で「第一」という意味の言葉から生まれたもので、私たちの体を構成する重要なものです。
 糖質、脂質とともに三大栄養素のひとつであるタンパク質は、多数のアミノ酸の集合体であり、人間の生態のタンパク質は約20種類のアミノ酸からこうせいされているといいます。そのアミノ酸の配列や含量の違いによって、機能が異なったタンパク質をつくっています。
 タンパク質は、体内でエネルギー源となります。全身の筋肉をつくるだけでなく、内臓や皮膚、骨格などをつくる重要な成分であります。また、各種ホルモンを合成する。生命の維持やカラダの健全な活動にとって必要な化学反応を調節している酵素やホルモンをつくる。神経伝達物質を合成する。脳の働きを活性化する。神経の働きをよくし、精神的に安定させる。筋肉を強くする。病気や怪我に対する抵抗力や治癒力を高める。免疫機能を高める。などの、重要な働きをしています。


 食事によって体内に摂取されたタンパク質は、消化管でアミノ酸にまで分解されます。このアミノ酸は小腸で吸収され、肝臓に運ばれます。そこで一部のアミノ酸は肝臓や血漿タンパク質の合成に使われますが、残ったアミノ酸は血液の中に放出されて筋肉などの全身の組織へ運ばれます。
 筋肉の中のタンパク質はたえず分解されているので、食事によって毎日補給しないと、筋肉内のタンパク質は減少して筋肉が痩せ細ってしまいます。
 筋肉の合成に必要なタンパク質は、タンパク質の豊富な食品を摂取することによって補給されています。
 一般に、良質のタンパク質源は動物性(肉類、魚類、乳製品顆)ですが、植物性(穀類、豆類、種類など)にも良質のタンパク質が含まれています。タンパク質の良さを「アミノ酸スコア」という指標で評価していますが、その数字が「100」に近いはど良質のタンパク質であることを表わしています。しかし、タンパク質摂取で注意しなければならないことは、肉類には良質のタンパク質が豊富に含まれていますが、脂肪も多く含まれています。そのために、肉類中心の食事では脂肪を過剰に摂取することになります。それを防ぐには、動物性と植物性の食品を組み合わせ、脂肪の摂取をおさえながら必要なタンパク質を摂取することが大切だといわれます。


 アミノ酸には20の種類があり、そのアミノ酸の組み合わせによって何千種類ものタンパク質ができます。 そして、タンパク質20種類のアミノ酸を数十から数千個配列することによって構成されています。
 タンパク質には植物性と動物性がありますが、植物は自分の必要とするアミノ酸をすべて光合成によって、窒素、二酸化炭素などの部品から作ることができますが、人間をはじめ動物など多くの生物は、一部分しか合成することができません。それ以外のアミノ酸(9種類の必須アミノ酸)は、食物から摂取しなければなりません。
 先にも述べたように、良質なタンパク質は、「必須アミノ酸」を全部含んでいるタンパク質のことで、 鶏肉、たまご、肉、乳製品が良質なタンパク質源だといわれています。 そして、不完全なタンパク質というのはこの9種類のアミノ酸のいずれかが足りないタンパク質です。その意味では、野菜のタンパク質は不完全なタンパク質源だということになります。 お年寄りや病気の時は食べ物をたくさん食べることができません。 ですからお年寄りや病人は良質なタンパク質を食べる必要があるのです。


 和食は、手間はかかりますが一食で必須アミノ酸をバランスよく補いやすい食事です。 たとえば、和食と洋食の朝食を比較して考えてみると。 その一例として、ごはん、味噌汁、焼き魚、おひたしの和食。 一方、洋食は、食パン、牛乳、ハムエッグ、野菜ソティとすると、和食は必須アミノ酸を全部とることができますが、 洋食の場合だと、必要量をとれないアミノ酸がでてきます。
 日常生活において、タンパク質は、分解させては合成されるという新陳代謝をくり返しており、いつも同じ状態でいるわけではありません。体の中でアミノ酸に変わり、体を作るのに必要な分だけ利用されます。その量はほぼ決まっていて、使われなかったアミノ酸はさらにエネルギーとして利用されたり、体脂肪となって蓄積されたりしますが、過剰なタンパク質摂取は、老廃物となり毒素となります。腎臓はその働きによって、この老廃物(毒素)を尿と共に体外に排泄します。したがって、かえって身体に負担をかけ、体内の老廃物(毒素)を増やし、これを処理する腎臓を痛めることになります。
 逆にタンパク質摂取を極端に制限すれば、総摂取エネルギーも減ることになり、体の一部を燃やしてエネルギーをつくりだすことになります。このとき生じる燃えカスも老廃物(毒素)となって、過剰なタンパク質を摂取するのと同じ害を招いてしまいます。そして、栄養不足となり体に悪い影響を与えます。


 健康な食事のためのタンパク質摂取について、ワイル博士は、つぎのように述べています。
 自分がベジタリアンであることを告げる人は、相手から、「脂肪や糖分は何からとっているのかとたずねられることはまずない。タンパク質は何から摂っているのか?」と尋ねられる。大切なのはタンパク質だと考えている人が多いからだ、といいます。
 1960年代から70年代にかけて、膨大な数の若いアメリカ人がベジタリアンに転じはじめました。それに対して栄養学者は、タンパク質欠乏の危険性を指摘して、「動物性食品なしに健康を維持することはできない」とまで警告を発しました。
 (戦後の日本でも「タンパク質が足りないよ!」というコマーシャルソングが巷間で歌われて、動物性食品の積極的な摂取が喧伝されました。)
 栄養失調、とくにタンパク質欠乏というと、報道写真などで見るアフリカの飢えた子供たちのように、やせ細って腹だけが異常に膨らんだイメージがつきまといます。
 ある総理大臣が「貧乏人は麦を食え」と言って、大変な顰蹙を買いましたが、歴史の大部分を通じて、富む者は肉を食べ、貧しい者は米、ポテト、麦などの炭水化物を食してきました。そして、食卓に常に動物性たんぱく質の料理が供されていることは、個人においても国家においても、豊かさの象徴だったのです。タンパク質に対するイメージは、歴史的・文化的・経済的に形成され増幅されてきました。
 タンパク質はほかの栄養素にはない窒素を含む特殊な栄養素です。動物性のタンパク質は腐敗しやすくて、しかも高価につきます。しかし栄養的な観点から見れば、脂肪や炭水化物よりも特に重要だというわけではありません。体は多量栄養素の3つをバランスよく必要としており、どれがひとつ不足しても最適な健康は維持できないのです。


 一般に、肉・卵・牛乳・乳製品・魚などは、非常に栄養価の高い食品と信じられてきました。これらの食品には、栄養学的に理想的なタンパク質が多く、体内でアミノ酸に分解され、血肉となり、力をもりもりつけ、スタミナの源泉になると信じきっているのです。
 欧米人に比べて、一般に日本人は、明治以降、また戦中戦後の食糧不足の体験から、体躯が小さく脆弱であるとコンプレックスを抱いてきました。そして、肉食を中心とする欧米食に憧れ、動物性食品の摂取を急速に増加させてきました。そして体格もグングン向上したかに見えます。
 しかし、動物性タンパク質の過剰摂取は、胃腸でアミノ酸に完全に分解されるまで非常に苦労します。それは、消化吸収に時間がかかるため、腸内で腐敗醗酵を起こして、たくさんの毒素が生産され硫化水素、インドール、メタンガス、アンモニア、ヒスタミン、ニトロソアミンなどといった毒素に加えてフリーラジカル(活性酸素)も大量に発生するからです。これらは身体組織を損傷する強烈な毒物となり、老化を早め、ガンをはじめとした多くの慢性病の原因になると考えられているからです。
 また、これは特に小さい子供によく起こる現象ですが、人間の体に合うように完全に分解されないタンパク質は、直接腸から異物(異種タンパク)として血液の中に入り込み、この血液の中に入った異種タンパクは、人体のタンパク質とは違って血中に入ってアレルギー反応の原因となります。このタンパクアレルギーは牛乳や卵に多くみられ アトピー性皮膚炎、ぜんそく、膠原病などが増え続けているのは、この動物性タンパク質のとりすぎとそのアレルギー反応が主な原因と考えられているのです。


 ワイル博士は言います。植物性タンパク質が不完全なものであるという見解はいまや否定され、動物性タンパク質のほうが価値が高いとする見解はもう過去のものとなりました。体は、摂取した食物中に不足しているアミノ酸の種類を特定する知恵を持っています。そして腸内細菌や、また、毎日剥がれ落ちる消化管の内壁細胞から、不足している必須アミノ酸を得ることができます。
 人間は菜食だけで生きられるかどころか、ベジタリアンは肉食者よりも健康度が高く、長生きする可能性が高いのです。
 じっさい、タンパク質の必要量は、ほとんどの人が創造しているよりもはるかに少ないのです。ほとんどの人にとっては、タンパク質の欠乏の心配を無視してもいいくらいに低いのです。もし、たんぱく質が欠乏していればその初期症状はすぐにわかります。爪や頭髪が伸びなくなり、傷が治りにくくなります。
 アレルギー、自己免疫疾患、肝臓疾患、腎臓疾患の患者が低タンパク食を摂っていて、タンパク質欠乏症状を呈した人はひとりもいないし、スポーツ選手、肉体労働者、妊婦でも、まずタンパク質欠乏の心配はありません。
 一般に、ごく普通の食事をしているだけで、必要以上のタンパク質は摂れています。授乳期の母親、成長期の子供、重病や重症の回復期にある人のタンパク質必要量は増えますが、それでもタンパク質は普通の食事で十分摂れています。
 文明社会でタンパク質欠乏を呈するのは、極端な食事制限をしている人、アルコール依存者、澱粉食だけの極貧の人だけです。と、このようにワイル博士は言います。


 タンパク質については、炭水化物や脂肪よりも知られていないことが多く、とくに、その必要量や、必要とするアミノ酸の種類に個人差が大きいことが知られていません。
 動物性タンパク質を食べないと気鬱がして、弱ってくるという人がいますが、そんな人がまた肉を食べ始めると、すぐ元気になります。
 一方、タンパク質源は大豆食品や穀物バーガーだけで十分だと言う人もいます。毎食、タンパク質のメインディッシュを心がけて食べている人もいます。一食でもタンパク質をとりすぎると嗜眠状態になるという人もいます。
 タンパク質の必要量の決定は、一筋縄ではいかないようです。
 ワイル博士は、一般に総摂取カロリーの50〜60%を炭水化物(できるだけ未精製・低GI)から、30%を脂肪(大半を単不飽和、それにオメガ3脂肪酸が豊富な食品)から摂ることをすすめています。残りの10〜20%をタンパク質から摂るのが適正であると考えています。と述べています。


 体に必要以上のタンパク質が入ってくると、それはエネルギーを得るための燃料となりますが、炭水化物や脂肪に比べて効率が悪く、しかもクリーンな燃料とはいえません。タンパク質分子には窒素が含まれているので、燃焼してエネルギーになるとき、脂肪や炭水化物のように水と二酸化炭素だけが廃棄物になるのではなく、廃棄物として窒素が残留してしまいます。
 タンパク質の代謝産物はアンモニアという化合物で、体はこの毒性の強い物質の害を避けるために、それを肝臓で尿素に変えます。尿素はアンモニアより毒性は低くなりますが、それでも廃棄物ですから体外に排出しなければなりません。この尿素を血流から濾過して尿として排泄するのは腎臓の仕事です。
 したがって、タンパク質の多くが燃料としてエネルギー生産に使われる高タンパク質には大きな3つのリスクがあります。
 @肝臓に負担をかける。
 A腎臓に過重負担をかける。
 B敏感な機関を毒性代謝産物にさらす恐れがある。
 それぞれのリスクについて次にみてみます。


 ガン、感染(慢性肝炎)、炎症(アルコール性肝硬変)などによって組織が破壊され、肝機能が低下しているときには、血中アンモニアと摂取タンパク質との関係がはっきりわかります。血中アンモニアが増加しすぎると脳機能が低下し、ついには意識が失われ(肝性昏睡)、死に至ります。そうした患者の肝性昏睡に至る直前、および最中の呼気は独特にアンモニア臭がするのですぐわかります。
 血中アンモニアの増減は摂取タンパク質の量の増減によって敏感に左右されます。肝障害初期に患者には、タンパク質の摂取を控えて肝臓への負担を少なくしなければなりません。
 同様に、腎疾患の末期にあって、透析か腎移植手術を受けなければならない患者も、タンパク質の摂取を控える必要があります。そうした患者も、何年も前から低タンパク食を続けていれば、透析や手術の必要がなかったかもしれないのです。
 尿素の増大は腎臓に負担をかけるばかりではなく、尿分泌の増大、利尿作用を高めることになります。高タンパク食を摂り続けることは利尿作用が高まって、尿素とともにミネラル、とくにカルシウムが排泄されることになります。
 高タンパク食でカルシウムが失われ、骨粗しょう症のリスクが高まることはよく知られた事実ですが、高齢者によく見られる骨粗しょう症は骨が軟化して、身長が低くなる、背中が曲がる、骨折しやすくなるなどの症状を招きます。


 最近の日本人の摂取しているタンパク質の量は、アメリカ人より小さな日本人が、なんとアメリカ人に匹敵するくらいの79・7グラム(1日当たり)をとっているといわれております(厚生省調査)。これは明らかに過剰摂取です。
 この過剰に摂取されたタンパク質はどうなるのか。たとえどんなに良質と思われるタンパク質でも排泄されるだけなのです。摂り過ぎたタンパク質は全部無駄になってしまいます。そればかりではありません。それらを分解して、尿として排泄しなくてはならないのです。その役割を受け持つ肝臓・腎臓に多大な負担をかけることになります。
 また、多量のアミノ酸が分解されることにより血液が酸性に傾くので、それを中和するために多量のカルシュウムが必要となってきます。このカルシュウムは体の骨や歯から引き出されてくるのです。こうして取り出されたカルシュウムは、水分とアミノ酸といっしょに尿として排泄されてしまいます。このようにタンパク質の摂り過ぎは、ただでさえ不足しているといわれている日本人の体内から、一層のカルシュウムの損失も招き、その結果、不健康な体になり、病気にかかりやすくさせることのなります。
 また、肉や肉加工食品をたくさん摂っている場合、肉や肉加工品では、カルシュウムに対してリンの比率が圧倒的に高いため、カルシュウムの損失はもっとひどくなります。血液中では、カルシュウムとリンは、量的に1対1または1対2のバランスで保たれていなければならないのですが、だから肉食にかたよっていると、リンが多くなりすぎるために、骨や歯からカルシュウムを抜き出してバランスを取ろうとするのです。
 加えてリンがたくさん含まれている加工食品などの摂取が多すぎると、腸内でリンとカルシュウムが結びついて、リン酸カルシュウムがたくさんでき、排泄物となって体内から出されてしまうわけです。このようにタンパク質の過剰摂取は、ダブル、トリプルで体内からカルシュウムを失わせ、当然カルシュウムの欠乏が起こってきます。
 動物食の多い、一見豊かな生活を送っている先進国の人たちに、カルシュウム不足からの骨粗鬆症が多いのは、これが主な原因です。


 摂取した食物が体内で消化されるには多量のエネルギーを要するものです。タンパク質を摂り過ぎることは、体内で完全に分解や吸収がされにくく、体に負担をかけるとともに、消化吸収されない過剰分が腸内で腐敗を起こし、毒素をつくることになります。体はそれらを解毒するためにも、また多量のエネルギーが使うことになります。
 また、本来筋肉を使ったり集中力を高めたりするのに必要なエネルギーが、この消化や分解、解毒ために使われることになりますから、タンパク質の過剰摂取が、逆にエネルギーを消耗させることになるわけです。
 スタミナやエネルギーをつけるために、特大のステーキを食べると、かえってけだるさを覚えたりしますが、動物性タンパク質の過剰摂取は、まったく逆効果であることを示しています。


 肉類のタンパク質の摂り過ぎは必然的に動物性脂肪のとりすぎにつながりますが、これが体にどのような影響を与えのでしょうか。
 人間と動物とでは体温に差があります。人間の体温は36℃から37℃ですが、鳥類・牛や豚などの体温は39℃から40℃近くありますから、人間は、私たちが食用とする動物よりも体温が、2〜3℃くらい低いわけです。したがって、動物の体内ではサラサラしている血液ですが、そのなかの脂肪は、それより低い体温の人間に入ってくると、固まりやすくなるのです。そのため肉類の過剰摂取は、血液が粘りやすくなり流れにくくなるわけです。この固まった血球が人間の体内で再びサラサラになるまでには24時間くらいかかるといわれます。毎日のように肉類を多食することは、血液を糊状にして毛細血管内を通りにくいものにしてしまいます。
 赤血球の直径は7ミクロン。それに対して、毛細血管では1−2ミクロン。それでふつう血球は長く細く形を変形させながら血管の中に入り流れていきます。その赤血球が固まって流れにくくなるということは、血液によって送られる酸素も運ばれにくくなり、体内の細胞に酸欠状態が起きることにもなります。
 肉類や油っぽい料理をたらふく食べると、スタミナがつくどころか、ぐったりとして力が出ないのはこのためだといいます。


 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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