山ちゃんの食べもの考

 

その13
 

“恐い”化学調味料の虜になってしまったのか

 うま味成分として、最も多く使われてい添加物は、L―グルタミン酸ナトリウムで、「味の素」の主成分をなすものです。この昆布のうま味成分であるL―グルタミン酸ナトリウムは、1908年に東京帝国大学の池田菊苗博士によって発見され、大正時代に「味の素」として販売されるようになったとのことです。問題になった「石油合成法」など化学合成されるようになり、1948年(昭和23年)添加物に指定されました。石油合成法には発がん性物質を含むなどの疑いが指摘され1974年に中止となり、現在は、ある種の微生物を澱粉糖、糖蜜、アンモニウム塩等の培養地で増殖し、グルタミン酸を精製する発酵法がほとんどだそうです。

 貝のうま味成分である有機酸系のコハク酸ナトリウムは、1912年に高橋貞造博士によって発見され、続いて1913年には、かつおのうま味成分である核酸系の5‘-イノシン酸ナトリウムが発見されています。

 この「白い魔法の粉」はその他の合成添加物とも併用され、戦後の急激な加工食品やインスタント食品の氾濫をもたらす一役を担いました。効率的に工業化された食品業界は廉価で簡単便利な、しかもパンチのきいた旨味のある食品を続々と生み出したのです。そればかりではなく食堂のメニューや各種の弁当やお惣菜、漬物、菓子や飲み物、町や村の小さな食品化工場、学校給食、一般家庭にも当たり前の如く使われるようになってしまったのです。

 「うちでは味の素使ってないわよ」という人達がいるが結構なことだ。しかし、ほとんどの方が、普段の食選びにはまず価格、そして自分も含めて、子供や夫が美味しいと喜んでくれるからという家族の味に対する評価が基準である。消費者モニターなどで目隠しテストすると、8割から9割が化学調味料添加の廉価な大量生産されたものを美味しいという。作られた味に完全に慣らされてしまったのである。

 家庭で漬物が作られなくなってしまった。作らなくなったわけをいろいろ言うが本音は言わない。多くの場合、化学調味料で慣らされてしまった家族の味覚には、家庭で作った素朴な漬物では物足りなく異質なのです。喜んでくれない、食べてくれないのです。添加物でコントロールされ、人工的に作られた味にかなわないわけで、家庭作るラーメンでは、安全なものを志向するほど、インスタントラーメン特有の強烈で魅惑的な旨味は作り出せるわけがなく、歓迎されないのと同じです。

 天から与えられた自然の風味を損ない化学調味料やその他の添加物で人工的に作られた強い味を美味しいと感じる。画一化され、鈍くなった味覚、もう、自然な味わいを味わうことが出来なくなっているのかもしれない。美食・飽食などといわれるが極めて貧しい食生活になり下がっているとしかいいようがない。

 大人たちばかりではない。若い人たちや子供たちに、良い食べ物を見分け、味わう能力を退化させているのだ。それが恐いのだ。

 自然な良い素材そのものの味を味わうことができる、鋭敏な味覚を取り戻さなければならないのです。

 

化学調味料は“毒”か――毒性は認められているが毒物ではない。

 ここで誤解を招かないように、「それでは化学調味料は毒物か?」とよく聞かれるので、その疑問に答えねばならない。

 いままで私の調べた文献では、毒性やその弊害についての指摘は多々あり、中国や東南アジアでも「味の素」をめぐるいろいろなトラブルが発生していると報告されている。しかし、塩でも砂糖でも何によらず安全性の高い物質でも、使い方を誤まったり使い過ぎれば毒性を現わします。

 『自然流「だし」読本』(農文協)を著した船瀬俊介氏の『味の素はもういらない』(三一新書)によると、味の素を添加した昆布を食べて苦しくなった素昆布事件、ある世界大会での被害事件、各地で中華料理を食べて気分が悪くなった事例、アメリカでの“中華料理症候群”、その他、子供に対する危険度、ビタミン欠乏症、骨格異常、催奇形性、染色体異常、ホルモン異常、生殖異常、発ガン性、変異原性、高血圧、腎臓傷害、網膜損傷、脳障害、異常行動などの関連性についてのべている。

 しかしまた、これらの化学調味料は、本来天然の中に存在する物質であり、天然には存在しなかった人工甘味料や合成着色料とは違って、その毒性もきわめて低いものとされています。渡辺雄二著「食品添加物危険度事典」(KKベストセラーズ)によると、食品添加物危険度を5段階に分類し、L―グルタミン酸ソーダは、「極力避けるべきもの」「できるだけ避けるべきもの」に次いで、「できれば避けた方がよいもの」にランクされ、その他の化学調味料の危険度は、それ以下に位置付けられています。したがって化学調味料そのものを「毒物」呼ばわりはできない。

 

恐るべきは、化学調味料の毒性ではなく、それがもたらす食文化の堕落と崩壊にある

 今、ありとあらゆる食べ物に使われている化学調味料。化学調味料を使うことで自然の風味が引き出されるのだとさえ思い込んでいる人がいますがとんでもないまちがいで、自然な素材が持つ本来の味を壊してしまいます。粗悪な原材料でも化学調味料の旨味でごまかされてしまい、つくられたつよい味に慣らされてしまいますから、本ものの味はわからなくなってしまうのです。

 お 私たちの味覚がいかに狂ってしまったか、簡単に識別することができる方法があります。あまたにある安物の原材料を用い、ふんだんに化学物質を使って極短期間に大量生産された安価な味噌や醤油や酢と、厳選された良質な原材料を使い、化学合成物質など一切使用せず 伝統的な手作り手法でじっくり時間をかけ、醗酵熟成させて丹念に作り上げた高価な味噌や醤油、酢などを食べ比べてみるといい。日頃いいかげんなものしか食べていない人には本物が、「臭い!変な匂いがする!美味しくない!」ということのなる。

 スーパーなどの目玉商品に頻繁に使われる格安の味噌や醤油や酢などの調味料には根強いファンがいる。それでないとダメだと言うのだ。それらに群がるのは価格の安さだけではない。化学調味料をはじめとする添加物で作られた味に習慣化され、麻痺された味覚にぴったりマッチして、それしか美味しいと感じなくなっているからで、それが恐い。

 風味調味料といわれる「即席だし」や「液体だし」にしてもそうだ。家庭で鰹節や昆布、しいたけなどから「だし」をとるところはほとんどなくなってきのではないだろうか。「本枯れ鰹節」を扱っているスーパーが少なくなってきた。いわんや「鰹節削り器」などもう売っているところを探すのが大変である。「だし」作りに削り節など使うのは上等な方で、たいがいは「即席だし」や「液体だし」を使う。絵や文字で本物らしく表現されているが、「かつお風味」「昆布風味」「しいたけ風味」などの表示は、決して天然素材であるという意味ではない。天然素材使用、たとえば昆布粉末使用とか、かつお粉末使用などの表示があっても、どの程度の質のものが、どの程度の割合で含まれているのか分らない。私たちが美味しいといって食べているもの、その美味しさの正体を知らなければならないのだが、いい加減な物ほど知ることが難しい。

  しかしこれらの商品群にも無添加のものや良心的なものがないわけではない。 商品ラベルをしっかり見て、納得いくものを選んで欲しいのです。

 

家庭では少なくとも本物の調味料を使って欲しい

 私は、家族の健康作りにはまず調味料を吟味してくださいと言っています。

調味料がいいかげんでは他の素材にどんなにいい物を使ってもその持ち味が生きてきません。誤魔化されて死んでしまいます。そして何より大事なことは、用事から子供たち、家族全員のベロメーター(味覚感度)が退化し狂ってしまうことが問題なのです。さらにそのことが、子供たちや家庭の食生活をどんどん堕落させていくこと、ひいては世界に誇る伝統的な日本の食文化の崩壊につながっていくと思うからです

 化学調味料や合成添加物で人工的に作り出された味でないと旨いと感じなくなり、さらに強烈な味を求め自然なものから離れていく。家庭で作られる素朴な味では満足できなくなり、コンビニやスーパーでの買い食い、外食、簡便な加工食品や出来上がりの惣菜にますます傾斜していくことになる。

 まず調味料を見直しましょう。塩、砂糖、味噌、醤油、酢、みりん、食用油、ソース、カレー、マヨネーズ、ドレッシング、バター、マーガリン、チーズ、ポン酢、だしなど。

 石塚左玄の言葉に「食よく人を生じ、食よく人を健弱にし、食よく人を勇怯にし、食よく人を智才にし、食よく人を寿夭にし、食よく人の性格を左右す」とあります。普段の食生活において、質の良い調味料を用い、使い自然な材料を使って家庭の美味しさを作り味わうこと、自然なもの安心なもの、生命の豊かものが本当に美味しいと味わえる喜びを勝ちとることが、家族の心身のともに健康なる長寿、健全なる知恵・才覚・人格を育んでいく要となるものでありましょう。

 次回も化学調味料について考えてみましょう。


ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 


生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

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