山ちゃんの食べもの考

 

その14
 

あなたの「思い」が遺伝子を変える

 日本の遺伝子研究の権威である筑波大学名誉教授、村上和雄博士の、『生命の暗号――あなたの遺伝子が目覚めるとき――』、『人生の暗号』に続いて、『生命の暗号A――あなたの「思い」が遺伝子を変える――』(サンマーク出版)がこの7月10日発行された。「生命の暗号」を読んで大変感動していたので、早速「生命の暗号A」を購読させていただいた。

 ――まえがきより――

 サンマーク出版での最初の著書「生命の暗号――あなたの遺伝子が目覚めるとき――」では@多くの遺伝子は眠っており、Aその遺伝子のスイッチが環境によりON・OFFになるということを主に述べました。この著書で一般の人々に、遺伝子のON/OFFということをはじめて知っていただいたわけです。このような考えを著した本は、世界的に見ても他に出版されておらず、大きなインパクトがあったと自負しております。

 その後『人生の暗号』という本を出しました。この本は、テーマをやや変えて、私の哲学や生き方を中心に述べました。

 本書『生命の暗号A――あなたの「思い」が遺伝子を変える――』では、『生命の暗号』出版の後、日進月歩どころか分刻みで進展していく遺伝子解明に関する最新情報や、私の最近の研究内容を説明しつつ、「いのち」や遺伝子のON/OFFについて、さらに詳しく述べております。

 生命科学の目覚しい発展の時代に、研究現場に40年近くいたことは、私にとっては大変幸せでした。その中で、興奮や感動をともなう、様々なドラマを味わいました。そのドラマと、生命科学の現場で実感した「いのち」の素晴らしさを、一般の人々に伝えるメッセンジャーの役をこれからも演じていきたいと念願し、この本を書きました。

 また「サムシング・グレート(偉大なる何者か)」としか形容できない不思議なはたらきが、すべての人、生物の中にあるということを、知っていただきたいという思いも込められています。

 人の遺伝子暗号の配列の差は、せいぜい0.1%しかなく、すべての人に素晴らしい可能性が書き込まれているのです。この事実を知り、自分の花を見事に咲かせていただきたいと思っています。

 健全健康な「いのち」、かけがえのない人生をいかに心豊かに生きるかを考える上で、多くの示唆に富んだ著書だと思います。

 目次から少し選んでご紹介しましょう。

* 「生命の暗号」が解読される
* 環境の変化や心の持ち方で遺伝子がONになる
* 遺伝子はそれぞれの人の「生き方の設計図」でもある
* 遺伝子には驚異的なはたらきがある
* 感情や心のはたらきが遺伝子状態を左右する
* あらゆる能力や可能性のみなもとは遺伝子にある
* 眠っている遺伝子を目覚めさせる
* 遺伝子は環境によってONにもOFFにもなる
* ストレスは遺伝子ON/OFFに大きく影響する
* アルコールの害も遺伝、母親から胎児へと浸透する
* 科学的、人工的な環境ホルモンは遺伝子を傷つける
* 腹八分目を実践、適度な飢餓感が遺伝子をONにする
* 感動という心の環境が人間を変え、生き方まで変わる
* 人間の多様な可能性は遺伝子の複数のはたらきから
* できるかできないかではなく「やる」ことが大切
* 自分の好きなことをやってみる。そこに目的がある
* きびしくもやりがいある環境でこそ人は育つもの
* 人のために生きるのは遺伝子に刻まれた人間の本質
* 自然の摂理に従って生きていく
* 人はそれぞれ大いなる生命の一部として生かされている

 

「人」も「土」も、美食・飽食・偏食で病んでいる

 世界には毎日何億という人々が飢餓や栄養不足で苦しんでいるのに、日本では、理想的な伝統食を放棄して、美食・飽食、偏った食べ過ぎによる現代病の不安に誰しもがおびえているという状況です。豊かさのなかでの過食や偏食による食源病で、1億総半病人とか一億総帝王病と言われるくらい肥満や糖尿病など、ぜいたく病とも呼ばれる現代病が蔓延しています。

 少子高齢化社会を迎えて将来の健康管理や医療・保健・介護の問題等がやかましく論じられている一方で、目先の利得や欲求を満たさんがための食べ物の作られ方、商われ方、食べられ方は、一向に「悔い改め」「食い改め」の気色は見られません。

 私たちは、命の本源である食べ物の作られ方、商われ方、食べられ方を改めないかぎり、つまり乱れた飽食を「悔い改め」、自然の摂理に従った“生命をいただき生命を生かす感謝の食”へ「食い改め」ないかぎり、現代病を克服し、健全健康なる長寿社会を迎えることができないと思うのです。

 食べ過ぎによって私たちの体の中は汚れによごれ、毒素がいっぱいに詰まっており、本来の免疫力も治癒力も能力をオーバーして機能しなくなっているといわれます。

 農産物の場合も同じです。戦後の化学肥料一辺倒によるチッソ・リン酸・カリなど主要素の多肥施用で、多収穫増産を進めてきましたが、肥料のやり過ぎによる土壌の肥満化と有機物不足によるミネラル不足などの成分アンバランス。農薬の多用による益虫や小動物、有効微生物群の減少などによる病虫害の多発。そこで更なる化学肥料や農薬の多投という悪循環で土壌は疲弊し死んでゆく。そんな土壌で作られた農産物は外観ばかりが大きくりっぱでも、化学肥料と農薬で作られた中身のない役立たず「ウドの大木」です。

 肥料(食べもの)不足で土や作物が病んだわけでも死んだわけではないのです。人間と同じく、美食・飽食・偏食・食べ過ぎによる現代病によるものです。良識ある少数の人々によって、健康な生きた土づくりから始まる有機的な農業が叫ばれるゆえんです。

 

腹八分目を実践、適度な飢餓感が遺伝子をONにする

村上和雄先生の『生命の暗号A』の中の「腹八分目を実践、適度な飢餓感が遺伝子をONにする」の中から、一部をご紹介しましょう。

 「食べ物や栄養成分も遺伝子を左右する重要な環境要因の一つとして、最近クローズアップされています。

 たとえば糖尿病の指標の一つに血糖値がありますが、血糖値は血液中のグルコース(炭水化物)の濃度で測ります。このグルコースは体内の栄養源としてはもっとも大切なもので、特に脳の栄養分として必須成分です。したがってグルコース濃度は体内で非常に厳密にコントロールされていて、私たちの体は絶えずそれを一定値に保つようにはたらいています。

 その一定値保持に大きな役割を果たしているのが遺伝子で、食事をして血糖値が上ると(とくに炭水化物をたくさんとると上昇する)、体内のグルコース合成に関係する遺伝子のスイッチがOFFになって、その生産をストップする。逆に食物をとらないで血糖値が下がってくると、同じ遺伝子のスイッチがONになって、グルコースを生産し始めるのです。

 つまり血糖値を一定値に保つために、体内にグルコースが余れば分解し、不足すれば合成するという合理的な働きをするのですが、それを自動的にコントロールしているのが関連遺伝子のON/OFF機能なのです。こうしたことは、これまでの栄養化学ではホルモンのレベルでしか説明されていなかったのですが、最近の研究で遺伝子のON/OFFが直接かかわっていることがわかってきました。

 食べ物をとらないでいるとグルコースをつくる遺伝子がON状態を続ける――このことから、絶食とか断食の効能が説明できるのではないかと私は思っています。クローン羊ドリーは飢餓状態をきっかけに全能性を取り戻したということも「断食効果」の一つで、細胞が栄養分を一時的に断たれたことが眠っていた遺伝子をONすることにつながったと考えられます。

 若いときに結核にかかり、結核治療には栄養補給が一ばんといわれて、ともかく栄養を「とる」ことに一生懸命になった。だが一向に効果が現れないでいたときに東洋医学に出会い、断食療法をすすめられて実践してみたところ、つまり栄養を「断つ」ほうに治療法を変えてみたところ、結核が快方に向った。そんな例もあるといいます。関連する遺伝子の働きが断食によってONになった可能性が大きいのです。

 このように遺伝子学的に見ても、断食の医学的効能は小さくないと思われます。断食は気をつけて行わないとかえって危険をともないますが、断食とまでいかなくても、食べ物の節制とか腹八分目の実践などは明らかに健康や体調を整えるはたらきをします。「適当な飢餓感」が遺伝子をONにするからだと思います。

 食物や栄養、その摂取法が遺伝子の働きに影響を与えることは、ほとんど確かなことです。グルコースだけでなく、脂肪なども同じで、高脂肪食をとると、脂肪酸の合成酵素の働きがOFFになることがわかっています。遺伝子がそれ以上、脂肪酸を作らないように指令を出して、体内の脂肪酸を一定に保とうとするのです。細胞膜を形成する重要成分であるコレステロールなども同様です」

(後略)

 

私たちの遺伝子は美食・飽食を拒否する

 『寿命41歳説』を著した食生態学研究家の西丸震哉先生は、その著書の中で、日本にはもう長寿村はなくなったと述べ「飢えなくなった我々の悲劇」として、現代食と食べ過ぎへの警告を発しています。

 先祖代々、何千年何万年単位の歴史的実験を経て形成され受け継がれてきた食べ物や食べ方が、日本人の健康長寿を支えてきたのです。親から子、子から孫へといく代にもわたって連綿と継承、維持されてきたその土地に適合した風土食、歴史的食生活の知恵が、戦後の急激な欧米化、経済的向上、労働の軽減等と欧米近代栄養学の導入で、またたく間に寸断され、食べ物への考え方も作られ方も食べ方も一変してしまいました。

 美食・飽食・偏食は、日本人の生理機能に合った健康な長寿を約束する食形態を完璧なるまで崩壊してしまったようであります。

 西村震哉氏は歴史的事実の解明から「われわれの体は平均的にはウッスラ飢えている程度のときにうまく作動するように作られているのだ」と述べています。人類の歴史において、人々はいつの時代においても常に飢餓との戦いでありました。その長い長い歴史の中でそれぞれの気候風土に適合した食形態と生理機能を確立し、生命を継承してきたのであります。

 古今東西、美食・飽食は帝王病等という疾病と不健康、短命をもたらしています。私たちはそんな認識のないまま、誰しもが「昔の王様がやったような食生活を続け、帝王病といわれる糖尿、通風、脳血管傷害、心臓血管傷害に突き進み、平均50歳前後に突然の死を招く。それでもまだ死なない個体にはガンという最後の関門が待ち受けて、それで人生の終末を迎える」という美食・飽食のみならず、おまけに化学物質漬けという狂乱的な食生活をおくっているのです。

世界中から食べ物を買いあさり美食、飽食でぜいたく病に病み、ダイエットだの健康補助食品だので健康不安から逃れようなどという愚を一日も早く改めねばならない時にあることを認識しなければなりません。

我々の遺伝子にはある程度の飢餓への用意はあっても、人類史上には経験のない食べ過ぎへの対応力はないのかもしれないのです。


ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 


生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 ◎ ご意見、ご教示はこちらまで    掲示板も御座います。是非ご利用下さい。→ 掲示板

最新号へ戻る