山ちゃんの食べもの考

 

 

その18
 

 

  びっくり仰天。まさか!聞き捨てならない、見逃すわけにはいかない言葉が目に飛び込んできた。農産物を何より大切に思う私はショックに打たれて動けなくなり、書店の書棚の前で早速ページをめくった。

  農産物を中心とした生産から流通、保存、加工等の指導者である河野武平著『野菜が糖尿病をひきおこす!?』(宝島社新書)である。

  いい意味で、たいへんな本だ。よく書いてくれたと感動する。生産者にも、指導者にも、流通業者にも、消費者にも、多くの人にぜひ読んで欲しい本である。このことが理解されると農産物の作り方も、商い方も、食べ方も大きく変わるはずだ。食べ物はもとより、土も、水も良くなる。環境も良くなる。農業と食べ物の根幹に迫る大事なことで、著者の指摘が理解され実践されるならば、「身土不二」「地産地消」「旬産旬消」「自給自足」は夢ではなくなる。

 

  ショッキングな言葉が飛び出してくる。著者は「農薬よりも怖いものがある」として、現代の誤った農畜産業によって、未消化のまま野菜に含有する高濃度硝酸塩の恐ろしさを指摘している。そして、野菜をダメにしたのは生産者、流通業者、消費者の共犯であり、高齢化社会を迎えて一刻も早く、真の有機農業を推進させ、病み老いた大地を甦らせなければならないと警告している。

  チンゲンサイには1kg当り、最高値で16,000mg、最高値の平均で6,175mg、全体の平均値が3,713mgと数値が示されている。著者は東京都が長期間にわたって野菜を分析した資料を入手し、野菜に含まれる硝酸塩の高濃度に驚愕したというのである。WHO(世界保健機構)は、硝酸塩の単独致死量を4gと定めており、16,000mgのチンゲンサイを3株食べただけで人間が死ぬ計算になる。

  EU(欧州連合)では1999年、野菜に含まれる硝酸塩濃度の統一基準を決め、ほうれん草などは2,500mg/kg以下、加工貯蔵される野菜の硝酸塩濃度は2,000mg/kg以下とし、この基準を超えると「汚染野菜」とされるということである。そこで著者は、野菜を多く食べる日本の食生活から判断して、日本独自の基準は1kg当り1,000mgを超えてはならないだろう、と厳しい見解を述べている。

 

  著書の“はじめに”において述べていることを要約すると、

 

  「高度経済成長下ではあらゆることに効率化が求められ、農業も例外ではなく、生産性の高いハウス栽培など施設園芸が昭和40年代に本格化した。施設園芸は、栽培期間の短縮、面積当たりの収量増大、季節的影響の回避、収穫期を早め、周年栽培など回転効率もよく、自然環境や災害による影響も少なく、農業の生産効率を飛躍的に高めた。しかし施設栽培の野菜は、まずくて劣化が早く、その主因は、硝酸塩の含有量が多いからである。何より重要なのは、高濃度の硝酸塩を含んだ野菜は、私たちの健康を脅かす。

  硝酸塩濃度の高い野菜生産の地域と人工透析患者の比率の高い地域が一致しており、また硝酸塩が糖尿病の誘発原因という海外の論文もある。

  生命の源である農業全体を見つめ直していく以外に根本的な解決はない」

 

  野菜に含まれる硝酸塩の毒性について、一般の人にはほとんど知らされていないでしょう。スーパーの担当者、八百屋さん、流通業者それに市場関係の人たちにもほとんど知る人がなく、「それって何や」という具合で説明しても興味を持つ人は少数です。生産者にいたっても、言葉として知っていても、健康に良い作物づくりとしての関心を持って理解している人は稀です。

  後ほど述べますが、金沢市で有機農産物などの流通に携わっている親しい友人は、数年前より、野菜の分析を行い、この硝酸含有量と、栄養、美味しさの関係を研究し、ある店では、これを基準に商品選定をし、おすすめ野菜として販売しています。健全に育った本当に美味しい野菜は硝酸塩が少ないという大まかな結論も得ています。(彼はユーザーや生産者の依頼により分析し、研究データを出すものである、その結果については一般公開していません)

  現実、一般には高濃度の硝酸塩を含む野菜は極めて多いのです。硝酸塩のことがあまりやかましく言われると、商売に支障をきたす企業や団体、都合の悪い人が多いことでしょう。

  しかし、現代の農産物が危険なものになりつつあること、農畜産業による硝酸態窒素の垂れ流しが大地を汚染し、地下水や井戸水、河川や湖沼を汚染しているため、水も安心して飲めない状況であることについて、管理監督する立場にある人たちは十分に認識しているはずなのです。

  著者は、「野菜や水から硝酸を摂取することの危険性を多くの人に知らせることが本書の目的である」と述べている。

  私の拙い経験や知識から言ってもまったく同感であり、良い農業、よい食べ物を広めていくためには、極めて重要なことなのです。聞きなれない硝酸についてご理解いただき、良い店よい食べ物選びの一助になればと考え、著者がこの著書で指摘するところの多くを引用しながら話をすすめていきたいと思います。

 

 またまたショッキングな見出しです。

  「WHOによると、硝酸塩を体内に取り入れたために、第2次大戦後から1986年までに約2千件の中毒事故があり、160人の乳幼児が死亡している。1950年代から1965年ごろにかけて、欧米ではホウレンソウが原因で乳幼児の中毒事件が相次いだが、中でも1956年にアメリカで起きたブルーベビー事件は全世界に衝撃を与えた。裏ごししたホウレンソウを離乳食として与えたところ、赤ん坊は真っ青になり30分もしないうちに死亡に至ったのである。278人の赤ん坊がこの中毒にかかり、そのうち39名が死亡した。大量に使用された化学肥料が地下浸透し、高濃度の硝酸塩を含んだ生活用の井戸水でつくったミルクを飲むことで、この中毒が起こった例もある。その後全米で1,060の症例が報告され、83の論文に死亡例が出ている」

  「野菜を育てるためには窒素成分が必要で、そのため窒素肥料を投入する。野菜は吸収して生長するが、それまでの過程で、窒素成分はさまざまな形に変化するが、最終的には亜硝酸に変化する。これは、ガンを誘発する人体に極めて有害な物質で、日本の野菜に含まれる硝酸塩濃度は、手遅れになりかねないほどの危険なレベルである」「東京都は、1986年から、硝酸塩、亜硝酸塩がガンに影響すると検査の目的を銘記している」

  硝酸塩は、ごく普通の健康体であれば、一定量は小水として排泄されてしまいますが、多量に摂取すると排泄が間に合わず体内に残留するといいます。

  過剰肥料(窒素過多)で育てられた野菜には、高濃度の硝酸塩含量が見られます。「硝酸塩が体内に入ると亜硝酸に還元される。すると、胃の中で肉や魚に含まれるアミンと結合してニトロソミアンという発ガン物質をつくってしまう。硝酸塩は血液に入るとヘモグロビンの鉄分を酸化させ、血液が酸素を運べなくなる」

 

 

  硝酸塩は食品添加物として認められている物質だから、それほど危険ではないという説もあります。そこで発色剤として使われている添加物の硝酸塩類について「西岡一監修『すぐわかる食品添加物ガイド』(家の光協会)によって調べてみましょう。

 

● 食品中の成分と反応して色素を安定化

  発色剤が着色料と異なる点は、それ自体には色がないことです。発色剤の原理は、無色でありながら、食品中の成分と反応して、安定した色素を生じさせたり、色を固定したりするところにあります。食肉に働くものと野菜に働くものとがあり、現在発色剤として指定されている添加物は3品目、「亜硝酸ナトリウム」「硝酸カリウム」「硝酸ナトリウム」は、すべて食肉用です。食肉類の色素は、肉や血に含まれるミオグロビン、ヘモグロビンなどの赤色色素ですが、これらは長く空気に触れたり加熱させたりすると、酸化してメトミオグロビン、メトヘモグロビンといった、褐色の色素に変型してしまいます。ところが、発色剤の亜硝酸Naを添加すると、元のミオグロビンやヘモグロビンが、酸化しにくいニトロソミオグロビン、ニトロソヘモグロビンに変化します。これで、いつまでも鮮やかな肉色が保たれるという仕掛けです。硝酸Kや硝酸Naも、腸内細菌の影響や肉中の酵素などによる還元作用で、亜硝酸塩に変化して同様の働きをします。

 

● 亜硝酸Naは発ガン物質をつくる

  もしすべての添加物の中から“ワースト10”を選ぶとしたら、発色剤の亜硝酸Naは、その上位にくるでしょう。それ自体の生理毒性もさることながら、最大の理由は、他のいろいろな物質と反応して「発ガン物質ニトロソ化合物」をつくることです。ニトロソ化合物は、発ガン物質の中でも横綱中の横綱といえます。食品中の成分と反応したり、他の添加物と反応したりして有害物質を生む亜硝酸Naは、まさに現代版“食べ合わせ”の典型であり、添加物に心配されている「相乗毒性」のまたとない見本でもあります。硝酸Kや硝酸Naも、亜硝酸になって作用するのですから、亜硝酸Naと同様の危険性を考える必要があります。

 

● 早く追放したい発色剤

  食肉業界は、硝酸Naには抗菌作用があるから食中毒を防ぐために必要だ、と口実をもうけます。でも、学校給食ですでに無添加ハム・ソーセージを実施している県で、なんら障害が起こっていないのです。亜硝酸Naには、遺伝子損傷性、変異原性(遺伝子の情報を狂わせ、突然変異を生じさせる)、染色体異常の作用のあることがすべて確認され、「遺伝毒性」が明らかになっています。亜硝酸Naは一日も早く追放したい添加物です。そのためには、消費者が発色剤使用の食品を拒否するのが、一番手っ取り早い効果を上げます。製造業者は商品が売れないとなれば、それを使わない製造手段を考えるものですから。

 

●亜硝酸Na(化学合成品)

[使用目的]――食肉・水産製品の赤い肉色を保つために使われ、同時に食中毒の原因になるボツリヌス菌を防ぐ保存料も兼ねるとされているが、その効果を疑問とする意見もある。

 

[主な使用食品]――食肉ハム・ソーセージ、ベーコン、コンビーフ、魚肉ハム、イクラ、スジコ。

 

[毒性]――人間の多量摂取で、吐き気、嘔吐、下痢、チアノーゼ(血管が拡張し、血液が酸欠状態になるため、皮膚や粘膜が青くなる)、血圧降下、血球の崩壊、中枢神経麻痺など致命的な中毒を起こす。致死量は0.18〜2.5g。乳児は特に敏感に反応する。他に遺伝毒性、催奇形成、発がん性、アレルギー性も確認されている。市販食品中からも、亜硝酸Na天然の二級アミンと反応してつくる強い発ガン物質(ニトロソミアン)が検出されている。米国では、ベビー食品への使用を全面禁止。それとともに、近い将来亜硝酸Naの全面禁止に踏み切ることを、業界に警告している。

 

[問題点]――亜硝酸Naは発色効果の他に、保存料効果も目的にされているが、ポツリヌス菌中毒防止に有効な量については科学的なデータが乏しく根拠はあいまいなもの。

 亜硝酸Naが発ガン物質を作る機会は一例にとどまらず、実に多い。以下にそれを示す。

@ 魚に含まれる天然成分(ジメチルアミンといって、スジコやタラコは特に含有量が多い)と食品中で一緒になり、最悪の発ガン物質・ニトロソミアンに変わる。この発ガン物質は、ごく微量でネズミに肝臓ガンを発生させている。この反応は、胃の内部と同じpH2〜3で一層よく進行する。ということは、単に亜硝酸Naを使った魚肉ハムや魚卵製品が危険なだけでなく、亜硝酸Na添加の食肉製品と魚を食べ合わせた時も、同様の危険があることを意味している。ニトロソミアンは胃などから吸収されるので胃ガンの最大原因ではないかとの指摘もあるが、それだけでなく、血液を通じて各所へ運ばれ、しばしば胃から遠く離れた器官にガンをつくる。またこの発ガン物質は胎盤通過性が高く、容易に母胎から胎児に達する。新生児ガンの物質としても注目されている。

 

A 肉のスジ部分に多く含まれている、プロリンと呼ばれるアミノ酸と反応して、発ガン疑惑物質をつくる。この反応は、180〜200度で起こる。この温度は、ちょうどベーコンやソーセージを焼く温度。しかも、プロリンは塩漬け豚肉のタンパク質に約5%も含まれている。発ガン疑惑物質ができるのは、プロリンの多いベーコンのような製品だけでなく、デンプンやCMC類(増粘剤・瑚料)の入ったソーセージやハムでも同様に確認されている。

 

B 保存料ソルビン酸(食肉製品はじめ、あらゆる食品に使われている)と一緒に、酸性状態で加熱すると、いくつかの発ガン疑惑物質ができる。これらは、バクテリアに突然変異を引き起こすことがわかっている。

 

C 保存料パラオキシ安息香酸(しょうゆ、ソース、酢、清涼飲料などに使われている)と、紫外線下で反応して、突然変異を引き起こす発ガン疑惑物質をつくる。

 

D 酸化防止剤BHT(魚介の冷凍品・乾燥品・塩蔵品、油脂、バター、乾燥うらごし芋などに使われている)と、紫外線下で反応して、生理毒性の強い物質をつくる。これらの物質にさまざまな条件が加わると、遺伝毒性の疑いがある物質ができてくる。

 

E この他にも、調味料として使われるグリシン(かまぼこなどに使われている)と反応して、毒物シアンを発生したりする。また亜硝酸Naは、豚肉に多く含まれる栄養素・ビタミンB1を壊すという欠点もある。亜硝酸Naの構造に含まれているNaは、体内で塩と同じ作用をする。

●硝酸K、硝酸Na

 亜硝酸Naと同じである。

 

 

 硝酸塩の怖さについての一部をご理解いただけたことと思います。硝酸塩は農産物や環境にとってさらに重大な問題であり、次回も引き続きこの問題について考えていきたいと思います

 

 

 

 


 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

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