山ちゃんの食べもの考

 

 

その49
 
野菜感覚で食べるミネラルニンニクについて <1>


 平成元年のことだった。北海道農業自立推進協議会の野口希彦先生にお目にかかった時、有機ミネラル農法を指導する熊本県の農業科学研究所・中嶋常允先生のお話をお聞きし、いてもたってもいられずどうしてもお目にかかりたくなってお電話を差し上げた。「1月に東京の野口英世会館で、日本綜合医学会がある。出席しなさい。そこで会いましょう」とお誘いを受けた。農業と医学とどんな関係があるのだろう。そんな難しいところへ行って分かるものかなあ、と不安な気持ちを抱きながら出席した。医学博士・沼田勇先生が会頭、中嶋常允先生と甲田医院の甲田光雄先生が副会頭であった。
 驚くなかれ、講演会場へつながる別室には、健康志向で作られた農産物や食品が大量に展示されているのである。「医食同源」「病は食から」「1億総半病人時代の健康は元から正せ」というわけである。
 このときのご縁で忘れることのできない大きな出会いをたくさんいただいた。「医は食にあり、食は農にあり、農は土にあり」。そこに垣根をつくらず、科学者も医者も食品業者も農業者も一体となって、本質的かつ根本的に考えねばならないというのである。
 中嶋常允先生との出会いのおかげで、多くの心ある立派な方々とのご縁を結べることとなった。
 そのひとつが、今回ご紹介する青森県上北郡六戸町・「ろくのへミネラルファームズ」前村長政さんの“有機ミネラルニンニク”である。


 「君はニンニクとはどんなものか知っているか」。ニンニクとは臭いもので、焼肉屋でお世話になっており、帰りには臭い消しにガムをくれたものである。中嶋常允先生の質問への返事に窮した。「いいえ」。先生から示されたのがニンニクの成分分析表である。同じニンニクでありながらどうしてこんなに成分内容が違うのか。
 「君はニンニクが好きか」「いえ、ええ、どちらかというとあまり……」。「君たちが口にしているのは、もうニンニクではない。君たちは、なぜ古来からニンニクが人の健康のための食として重宝されてきたかを知らない。ニンニクならいいのではない、どんなニンニクかが大事なのだ。本物のニンニクは食べて美味しいのだ。ほんものを売れ!ほんものを」
 「人のいのちと作物のいのち、土のいのちは一体なのだ」「人が健康であるためには食べものが健康でなければならない、食べものが健康であるためには、土が健康でなければならい」と言うのである。そして「本当に健康な人というのは薬品を必要としない元気な人であり、健康な作物とは農薬を必要としないで元気に育った作物、健康な土壌とは化学性・物理性・生物性のバランスが取れた生きた土壌」のことだと。


 前村さんは中嶋常允先生との出会いにより微量要素と土のかかわりが大切なことを知り、土づくりを重視し野菜感覚で丸ごと食べられる有機ミネラルニンニクを開発された。
 案内されて前村さんの圃場を訪れたのは6月も半ば。ゆったりした丘陵の畑からは八甲田山の峰々が展望できる。一見ネギ畑のように見えるニンニクの畑が広がっているが、ニンニクの葉は西洋ネギのリーキのように扁平で大きい。
 前村さんのニンニク畑の葉色は薄緑色で、背丈はやや短く丈夫である。有機栽培の特徴だ。若干間隔が空いて見えるが、これだと風の通りも良くなり根元まで陽があたって、病気も発生しないだろう。
 一般的には、作物の葉の色は濃い緑色で大きな葉が青々と生い茂っていると見事に感じるものだが、これまで有機農法の畑を見てきた経験では、どんな作物の場合でも、作物体はやや小ぶりで頑健であり、葉は小さめで肉厚であり、やや黄味がかった緑色をしているものである。前村さんの説明を聞き、畑を見て大いに納得がいった。
 “ミネラル有機農法”を指導する中嶋先生の講演会で土づくりの重要性を知り、“食べて美味しいニンニク”を作るための土づくりに取り組んだ。ニンニクの収穫後には土壌分析(土の健康診断)をし、その分析にしたがって不足する栄養成分やミネラルを補給し、ニンニクに最も適した土づくりをする。
 「やがて土が甦ってきました。このニンニクには長い時間をかけての土づくりが土台になっています。たっぷりの有機物を施しバランスの取れた土で元気に育つ、だから農薬もぐんと抑えることができます。農薬を控えることで土の中の微生物も大活躍、自然の力で健康に育っていますから、臭いが少なく味がマイルドで、なんぼでも食べられるニンニクに育つのです」
 やはり、基本は生きた健康な土を作ることにある。微生物も活躍する栄養バランスが取れた土であってこそ、作物は元気になり病気にも害虫にも強くなる。そこで農薬も殆んどいらなくなり安全で栄養の豊かなものになるということ。そして、そんな作物が人間の体に良い食べものとなり、食べて美味しいものになるというわけだ。


 「さあ、お昼にしましょう」と案内されてびっくり仰天。6月とはいえ汗をかきながら畑回りをしてきたこの暑い最中に「今日は鍋を食べましょう」という。テーブルの真ん中に据えられた大きな鍋の蓋が開けられた。鍋の中は真っ白にニンニクの粒で埋まっているではないか。
 一粒のニンニクでも何か胃のもたれが感じられて、どうも苦手意識があるのに、「さあ、どうぞどうぞ」とニンニクがどっさり盛られた器が手渡され、一瞬たじろぐ。恐る恐る口にした一粒のニンニク、「あれ!、美味しい。これがニンニク?」。クリとユリ根の中間的な食感、ホクホク感がありほのかな甘味がある。「いやあ、美味しいです。びっくりしましたよ。なるほどよくわかりました。すごいですね」
このニンニクの素晴らしさと新しい発見に感動し興奮した。そして余りの美味しさにお代わりまでして5、60粒は食べたか。
 前村さんたちは、月1回ニンニク料理の研究をしている。「健康に育ったニンニクはとても美味しく、野菜感覚でなんぼでも食べられることを知ってほしい。それに高血圧の方にも低血圧の方に対しても、血圧をコントロールするなど多くの薬効がある。疲労を回復し人に元気をつけるすごいパワーのあるニンニクです。私たちは大人から子どもまで、野菜感覚で食べていただくために、ニンニクを美味しく食べる料理の研究をして発信しているのです」


 現在ニンニクは、中国などから大量に輸入され安価に販売されているが、一般に市販されているニンニクには、特有のニンニク臭が強烈なものもあります。強く残る口臭や焼きつくような胃のもたれを気にしてニンニクを嫌う人がかなり多いものです。
 これはニンニク中に含まれる硝酸濃度が高いためです。嫌われるニンニクになる原因はその栽培方法、土づくりにあるといえます。収穫量やニンニクの肥大化を狙った化学肥料主体の栽培ではどうしても窒素過多になっているのです。
 このことは、たとえばメロンやイチゴを食べて舌が割れるような感じになったり、ネギの繊維質が堅くて口に残る。またタマネギの辛味が強すぎるなども同じことで、土づくりに原因があります。これではとても美味しいとは実感のできないものとなり、作物本来の味とは言えません。
中嶋常允先生は「人は食べものによって若返り元気になる。はじめに土があり、良い食べものは生きた元気な土による。土の命と作物の命と人間の命はつながっているのです」と、ミネラルと生命と土の関係、食べものの大切さを説く。





 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 


  

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninis.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

 ◎ ご意見、ご教示はこちらまで    掲示板も御座います。是非ご利用下さい。→ 掲示板

最新号へ戻る