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■ 味覚障害について ● 若い人に増加する味覚障害 (by All About) 人は年とともに味覚が衰えるものですが、味が感じられない、薄く感じる。 そんな味覚障害が、20代〜30代の若い世代に増えています。 ■ 味がわからない味覚障害 最近は、「何を食べても味がしない」「味が薄く感じる」などの症状を感じる味覚障害が増えています。 朝日新聞(2005年07月17日付け)によると、日本口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)科学会の調査で、国内の味覚障害患者は、推定約24万人で、13年前の1.8倍に増加していることが明らかになっています。 味を感じるセンサーとなるのは、「味蕾」。 舌の表面や上アゴの奥に約7000個分布されています。 味蕾の中の「味孔」から味の成分が「味細胞」に入り、「味覚神経」を経由して脳に伝わりますが、味覚障害は、この経路に異常が生じた症状です。 一口に味覚障害と言っても、味の感じ方が鈍る味覚減退・感じなくなる味覚消失、違う味に感じる異味症、何を食べても嫌な味に感じる悪味症、口にいれていないのに苦味や渋味などを感じる、甘みだけがわからないなど・・・、さまざまな種類があります。 ■ 若者の味覚障害の原因は食生活の乱れからくる亜鉛不足? 味蕾に異常が生じる要因は、神経系の疾患、心因性、クスリの副作用、そして最も多いのが亜鉛不足によるものです。 亜鉛は、新陳代謝に不可欠なミネラルで、亜鉛が不足すると、味細胞の新陳代謝が滞ってしまい、味覚センサーが鈍ってしまうのです。 亜鉛は、筋肉や骨、肝臓などに分布していますが、体内で合成できず、食物から摂取しなければなりません。 味覚障害は、新陳代謝がおちてくる50代以上の中高年に多く見られていましたが、最近は特に20代を中心とする若い人にも増えています。 若い世代やさらに子どもにも広がる原因は、食生活の乱れが指摘されています。 彼らが頻繁にとっているファーストフードやコンビニ食品、清涼飲料水などに含まれているフィチン酸やポリリン酸などの食品添加物には、亜鉛の吸収を妨げる作用があるのです。 また若い女性に見られる過激なダイエットなども、栄養が偏りがちで亜鉛不足の原因になりやすいと見られています。 私のお知り合いにも、仕事が忙しいことの精神的なストレス、さらに食事もままならないような不規則な生活の中で、味覚障害になった人もいます。 人間にとっては、食事は、ただ生きるための栄養補給だけでなく、楽しみでもありますから、味わう楽しみが奪われることは、想像以上に辛いことだろうと思います。 味覚障害になっても、早めに病院で診察を受けてクスリを飲めば、早くて1.2カ月で治るそうですが、やはり食事やストレスなど、生活そのものを見直すことも大切ですね。 ■ 亜鉛の働き では味覚障害にかかわる亜鉛について詳しく見てみましょう。 まずは亜鉛の作用についてです。 亜鉛を必須成分とする酵素は、なんと200種類以上もあるそうです。 それだけ重要度が高いということですね。 <亜鉛の主な働き> 新しい細胞を作るためのタンパク質や遺伝子情報物質の合成に必用です。 ですから、亜鉛が不足すると、細胞分裂が滞り、発育が遅れたり、成人では傷の治りが遅れたり、肌があれたりします。 ・不足すると子どもが「キレる」原因 亜鉛は、神経細胞間において刺激伝達物質の合成にも必用で、亜鉛不足が続くとイライラしたり、集中力・記憶力の低下、うつを招く原因になる言われています。 現在子どもたちが突然「キレる」原因のひとつにも亜鉛不足が指摘されています。 ・免疫力を高める 亜鉛は免疫反応を活性化させ、不足すると感染症などにかかりやすくなります。 また活性酸素を除去する酵素を助けます。 ・鉛、水銀等の毒性を弱める 環境汚染などによる有害貴金属の、特に鉛や水銀などの毒性を弱めてくれます。 ・ホルモンの分泌を促す 亜鉛が不足すると女性ホルモンの働きが低下し、月経周期が乱れたり、卵子の発育など妊娠機能にも影響します。 また男性の場合も、亜鉛は前立腺に多く存在し、精子づくりを活発にする作用があります。 他にも、コレステロールの沈着を低下する、アルコールの分解酵素に関わり悪酔いを防止する、糖質の代謝、インスリンの合成などにも大きく関わっています。 ■ 亜鉛を多く含む食べ物 亜鉛を多く含む主な食品を、下記にまとめてみました。 亜鉛は、過剰にとると急性中毒を起こしますが、通常の食事では過剰症の心配はありません。 上限摂取量は30mg、1日の所要量は、成人男性10〜12mg、成人女性9〜10mgです。 平成10年の厚生労働省の調査では、1日の摂取量は平均8.5mgで、やや足りていない状況です。 一般的な食品ばかりですから、日常の食卓にものせやすいですね。 例えば、アマランサスをご飯に混ぜてたく、ヨーグルトにきな粉やココアを混ぜて食べるというように、無理なく続けられるように取り入れてみましょう。 亜鉛不足を予防するためには、ここに紹介した食品を幅広く食べ、ファーストフードやコンビニ食品に頼りすぎないというのがポイントだと思います。 亜鉛は、玄米等に含まれるフィチン酸や、カルシウム、食物繊維の過剰摂取によって吸収が阻害されますので、気をつけてください。 アルコールのとり過ぎも亜鉛の排泄量が増加するので注意しましょう。 また多くの治療薬に亜鉛の吸収を妨げるものがあります。 慢性的な疾患でクスリを常用している場合や、味覚障害が気になる方は、クスリをもらっている病院の医師などに相談してみてください。 ■ 味覚マップはウソ!?・・・。 昔習った「味覚マップ」では、舌の先が甘味、その横が塩味、側面が酸味、奥が苦みを感じるという分布になっていました。 「笑う食卓」(ブティック社 Vol.3)によると、この間違って知られていた味覚マップは、ドイツの学者が約100年前に簡単に実験をもとに作ったもので、世界中で知られるようになりました。 実際には、舌のどの位置であれ、甘味も酸味も、感じることはできるのです。 ■ 味蕾は母体にいる時から育つ 味細胞は頻繁に新陳代謝を繰り返し、常にリセットして、どの味蕾も甘・塩・酸・苦・旨味を感じるようになっています。 ただし、「味覚マップ」とは異なりますが、舌の部位によって味の感受性が異なるのです。 まだまだ研究中ですが、例えば舌の先よりも舌の奥の方が敏感であるということなどは分かって来ています。 現在国をあげて「食育」を盛りあげようとしていますが、味覚を育てることも重要なことです。 味蕾の数は、胎児が一番多く、40代半ばからだんだん減少していきます。 赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる時から、バランスのとれたよい食事を心がけておきたいものですね。 ● 子供の食 「味覚」作りは親次第 小泉武夫先生 食文化の専門家である小泉武夫先生、「食育はまず大人から」と力説する。
食文化研究のため、世界各地を旅して回っている。 現地の学校を訪ね、子供たちの食事風景も努めて見ることにしているが、いつも日本との違いを痛感する。
「食事の前に必ず感謝の言葉を唱えるのは日本と一緒ですが、日本の子供たちの『いただきます』は形式的で、心がこもっていませんね」
生産現場と消費者が分断されている日本では気づきづらいが、食べ物は、すべて動物や植物。 つまり「生き物」を殺して食べる。 「いただきます」には本来、「あなたの命をいただきます」という意味が込められているのだが、日本ではどうか。 国内の小中学校に授業や講演に招かれ、この話をすると、子供たちは途端に黙り込むという。
「アフリカでは飢餓に苦しむ人が何百万人もいるのに、食料自給率が40%しかない日本では、日々300万食の残飯が捨てられている。 そんな状況で、食べ物を大事にする意識が子供たちに育つと思いますか」
その海外では、きまって和食がほめられる。 和食は世界中から注目されているのだ。 「まず栄養バランスがいい。カロリーのとり方も理想的。しかも、食材そのものがヘルシーだ」と。
「こんな食事は地球上どこを探しても和食だけ。それなのに、当の日本人がどうして食べようとしないのか」と憤り、その原因は子供ではなく親にあるのでは、と見る。
子供は和食の味や魅力を知る前に、油っこくて味の濃い洋食に慣れてしまう。 その味覚を作り上げたのは家庭の食事だ。 「だから、子供を責めるのは筋違い。悪いのは親。親の問題なのです。まず親が反省しないと」と手厳しい。 洋食は、和食よりも調理が簡単な場合が多い。 フライパンで焼きさえすれば食べられる肉に対して、魚を食べるにはウロコを取って、はらわたを取り除き……と手間がかかる。 だから親が和食を避けたがる理由は、理解できないわけではない。 「それでも」と続ける。 「文明は世界中どこでも通用しますが、文化は特定の地域や民族にしか通用しない」。日本人が日本にしかない和食文化を捨ててしまったら、日本という国はのっぺらぼうになる。 「もっと国の形、国の顔を大切にしなければ」と訴えるのは、このためだ。
日本人の食事が西洋風に変わったのは、せいぜいここ40年間ほどのこと。 日本人には日本人の体に合った食事というものがあるのに、変化のスピードが速すぎるのも気がかりだ。
いま、ぜひ子供に食べさせてほしいものが、4品目あるという。 まず、ワカメやヒジキなどの「海藻」。 加えて、ニンジンやゴボウといった「根茎」、「魚」、大豆をはじめとする「豆」だ。
いずれも、日本人の健康を支えてきた和食の代表選手だが、最近は食わず嫌いのせいか旗色が悪い。 あなたの家の食卓には、これらの品目がどのくらい並んでいるだろうか。 小泉武夫 福島県の造り酒屋の生まれ。 東京農業大学で醸造学を学び、1982年から同大教授。発酵学や食文化論も専門。「食の堕落と日本人」「日本の味と世界の味」など著書多数。農学博士。61歳。 (2005年7月16日 読売新聞)
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