「嫁に食わすな秋なすび」
なんて言われますが
やっぱり美味しい
秋茄子
 
 
 
 
■ 秋茄子が一番美味しい季節です
 
ナスの旬は晩夏〜初秋です。現在では一年中出回っていますが、露地栽培の収穫期は7月〜10月頃。
「秋茄子は嫁には食わすな」ということわざにも登場する秋茄子とは、旧暦の秋を指し、現在でいう8〜9月に収穫される茄子のことです。
皮が薄く、実が締まっていて実においしい。
晩夏から初秋はまさに茄子の旬です。
 
体の熱を下げるというインド原産のナスは高温多湿を好む代表的な夏野菜です
が、昼夜の温度差が大きくなる夏の終わり頃から実が締まって美味しさが凝縮すると言われます。
 
7、8世紀頃に伝来し、日本人の好みに合った茄子は、奈良時代には既に栽培されていたとされ、現在では100種類を越える品種があります。
ナスの特徴の濃い紫色を、日本では「茄子紺」と呼び親しまれていますが、世界的には白色、緑色、くすんだ紫色など様々な茄子があります。
 
 
■ 「嫁に食わすな秋なすび」
 
「秋茄子は嫁に食わすな」という諺があるほど秋なすはおいしいとされています。
秋茄子がとくにおいしいといわれるのは、秋になって昼夜の温度差が大きくなり、果肉が締まってより一層おいしくなるからです。
 
では、「嫁に食わすな秋なすび」――なぜ秋茄子を嫁に食わさなというのでしょう。
これにはさまざまな説があります。
 
@ 秋茄子は、身が引き締まっていて大変に美味である。
「憎い嫁なんかに食わせてやるものか」姑の嫁いびりの有様。
 
A 秋茄子は美味だが、体を冷やす作用が大きい。
「子供を生んでほしい大事な嫁が体をこわしてはいけない」
という戒めあった。
 
B 秋ナスには種がない。
これは「子種がない」につながる。
「嫁に食わせて、子宝(跡取り)ができなくなっては困る」
ので食べさせないようした。
 
C ナスの花には必ず実がなる。
「親の意見となすびの花んいは、千に一つも無駄がない」
という諺もありますが、ただでさえ子沢山で貧乏しているのに、
これ以上「実がなって」子供が増えては困るから食わせないようにした。
 
D 鎌倉時代の和歌集に
「秋なすび わささの粕につきまぜて よめにはくれじ、棚におくとも」
とあり、これが「秋茄子は嫁に食わすな」の語源といわれています。
*わささ→若酒・新酒のこと
 
○ いろんな説がありますが、私としては、
秋茄子は大変においしいものであるが、体を冷やす作用があるので、可愛い大事な嫁が体をこわして、子供ができなくなるのを案じて、たくさん食べさせないようにした姑の思いやり言葉、という説をとりたいものだ。
おいしいからといって、冷え症の人や、特に体を冷やしてはいけない妊婦さんは「なす」の食べ過ぎに注意しましょう。
 
 
■ 「一富士、二鷹、三なすび」
 
昔から、初夢に見ると縁起がいいものとして、『一富士、二鷹、三なすび』といわれてきました。
 
諸説がありますが、茄子が非常に高価なものだったため、富士と鷹と茄子という「高いもの」を揃えたともいわれています。
 
富士は日本一の山だし、鷹は「つかみ取る」というイメージでそれぞれ縁起はよさそうです。
「なす」には、「成す」「成る」という意味につながり、「成功」するという意味があり、「茄子」=「成す」で縁起がよいとも。
 
また、徳川家のお膝元駿河の特産を集めたとも、言われています。
いずれにせよ、古くから茄子は人々に好まれる野菜であったのです。
 
 
● なすの選び方
・ 実がふっくらとしており、首までしっかりと太っているものを選びます。
・ ヘタが鮮度を見分けるポイントです。
色は黒く、筋が見え、トゲが痛いくらいのものが新鮮です。
・ 皮の色は濃く、ツヤがあって光っているものを選びます。
・ なすは水分がたっぷりと含まれている野菜です。
触るとハリと弾力があり、ずっしりと重量感のあるものを選びます。
 
 
● なすの栄養
なすはわずかなビタミンとミネラルを含んでいるとはいえ、ほとんどは水分でできており、カロリーが低く、とってもヘルシーな野菜です。
 
そして、紫色の皮には、今注目が高まっている色素成分が含まれているのです。
その色素成分はポリフェノールの一種であるナスニンとアントシアニンです。
これらは強い抗酸化作用があり、コレステロール値を下げて、動脈硬化を予防の効果と、血液をサラサラにしてくれる効果が期待されています。
 
ちなみになすは食べる場面に合わせた調理がおすすめです。
焼きなすや蒸しなすのように、なすそのままを味わうのであれば、あっさりとした味わいで低カロリーなので、ダイエットにはうってつけ。
 
麻婆なすや揚げなすなど、油を使った料理だと、果肉がスポンジのように油を吸収するので、ボリュームたっぷりで、スタミナをつけたいときにはぴったりです。
また、ヌカ漬けにするとビタミンB1やカリウムが倍増します。
 
 
● なすの効能
 
なすは実だけではなく、へたも健康に役立ちます。
歯痛、口内炎には、なすのへたの黒焼きをつけると効果的です。
軽い火傷には、冷蔵庫で冷やしたなすで湿布をすると炎症がおさまります。
また舌、唇の腫れには、なすのへたを10日ほど干し、カラカラになったものを患部に塗ると痛みもとれます。
 
夏野菜は体を冷やす作用をもっていますが、とくになすはその効果が抜群。
のぼせ症や暑さに弱い人はにはぜひおすすめです。
また、なすは油や他の食材の煮汁などをたっぷりと吸収するので、べとつかず油っぽさを感じさせません。
油と相性がよい野菜といえるでしょう。
 
夏ばて気味で食欲不振の時には、さっぱりした冷たいなす料理などを食べると暑さも忘れます。
ただし、食べ過ぎるのは要注意。
冷え症・妊産婦の方は避けた方がいいでしょう。
 
なすには「コリン」という成分が含まれています。
この「コリン」は血圧を下げたり胃液の分泌を促したり肝臓の働きをよくするなどの働きがあります。
また血管を強くするので毛細血管からの出血防止の効果もあります。
 
 
● なすの保存方法
・ 低温に弱いので、できれば常温保存を。
水分が蒸発しやすく、すぐにしなびてしまうので、ラップに包んで冷暗所で保存すると1週間程度もちます。
 
・ 冷蔵庫で保存する場合は、ビニール袋に入れて保存します。
ただし、5℃以下の低温では品質を悪くしますので、冷やしすぎは禁物です。
冷蔵庫に入れると果肉も皮も固くなって、風味が落ちてしまうので、早めに食べることをおすすめします。
 
 
 
■ 相馬暁博士 「ナスの話」
 
●秋ナスを嫁に食わせない本当のわけは・・・
 
露地のナスは冷夏の影響を受け、実りが悪い。
もともと、インドが故郷のナスは、高温で水気を好み、雨が少なく涼しい夏は、どうも苦手のようだ。
でも、ハウスのナスは鮮やかな茄子紺色をしている。
 
今ではナスも一年中、店頭に並んでいるが、美味しいナスの旬は、ブラリ野菜の季節、初夏から初秋(6〜9月)であろう。
この時期のものは味がよいうえに、値段も安いのがうれしい。
焼いて、煮て、炒めて、漬けて・・・・・・大いに食べたいものだ。
 
特に、嫁に食わすなといわれていた“秋茄子”は肉質が緻密で、美味しい。
ではなぜ、秋茄子を嫁に食わせないのか。
秋茄子があまりにも美味しいので憎たらしい嫁には食べさせたくはないという姑性悪説と、茄子は体を冷やす作用があり、妊娠の可能性のある嫁(妊婦)に食べさせなかったという臭と性善説とがある。
しかし、今の時代、姑が下手に「食べるな」などといおうものならば、嫁から家を追い出されかねない。
 
でも本当は違うようだ。
実はなすにはコリンという機能性成分が含まれていて、人の副腎皮質、肝臓などに存在する無色の強アルカリ性物質で、血圧降下、胃液分泌促進などの機能を持っている。
 
また、コリンは肝臓の働きをよくし、強壮、興奮作用を示す。
卵黄やレバーに多く含まれているが、ナスにもそう多くはないが含まれている。
特に、種がはいりだす秋茄子には、そのタネのまわりに含まれるといわれている。
 
夏に衰えた食欲、肝臓機能を高めるのに、適量のコリンの摂取は有効であり、だから昔の人は夏から秋にかけてナスをよく食べ、夏ばてを防止した。
しかし、秋に茄子は果肉の締りがよく、肉厚になって、じつに美味しくなる。
 
そのため、ついつい食べ過ぎて興奮する。
若い嫁が食べ過ぎると、夜に興奮して息子と秋の夜長を・・・・・・である。
住宅事情に悪かった昔は、親達が寝られなくなり、翌日の野良仕事にさしさわる。
しかも秋は農家にとって一番のかきいれどき、そこで「秋茄子を嫁に食わすな」と、姑がいったとか・・・・・・。
今なら住宅事情もよくなり、遠慮なく秋茄子が食べられる。
よい時代になった。
 
 
 
●ナスに強い発ガン抑制力が見つかる
 
「ウリのつるにナスビがなる」という言葉があっても、「ナスの枝に黒豆がなる」という話は聞いたことがない。
このなんの縁もゆかりもないと思われる両者の共通点は古釘。
 
黒まめを煮るときも、ナスを漬けるときも、古釘をガーゼに包んで入れておくと、色よく仕上がることは、お袋さんの知恵。
なぜなら、ナスも黒まめも、アントシアニン系色素を多く含み、この色素が鉄イオンの存在で安定するからである。
 
ところで、「古釘なんて、非衛生的」と、お叱りになる近代的な奥さんたちは、ご自分でナス漬けを作ることもなく、衛生的な”茄子漬の素”なる硫酸第一鉄(鉄ミョウバン)剤を使って機械的につくられた、正直人間にはとても「漬け物です」といえない、モア・インスタント(限りなくインスタントに近い)の調味液漬け半生ナスを、「美味しい」と食べている。
 
いつの間にか保存食であった漬け物が要冷蔵の生鮮食品になっている。
そう、煮豆(黒まめ)もナスの漬け物も、もう自分達でつくるものではなくなった。
ヌカミソ臭い古女房が、時代のかなたに消え去っていくとともに、おそらく家庭で黒豆を煮たり、ナスを漬けることもなくなるだろう。
 
そんなナスにも、新しい波が打ち寄せている。
そう、隠された機能性である。
従来、ナスというと、煮ても焼いても揚げても美味しく、油にも味噌にもマヨネーズにもよくあう、八方美人の代表だったが、栄養価は乏しく、ダイエット野菜と思われていた。
 
しかし、緑黄色野菜のトマトより強い発ガン抑制力が認められ、その効果はトマトと異なり、加熱しても低下しないこともわかってきた。
それはナスの色ナスニンが秘めていた機能のようだ。
 
じつは、近年、野菜の機能として、美味しさ(嗜好性)、栄養性に次いで、人々の健康の維持向上に役立つ種々の機能性が重視しはじめている。
 
ナス同様に、西洋にんじんに比べて、その色素がリコピンに由来するわニンジン(金時ニンジン)は、カロテン含量が少なく、栄養価が劣るとされていたが、リコピンにカロテンの240倍もの発ガン抑制力が認められ、その機能性が見直されている。
 
野菜の評価も、現代栄養学のカロリーとビタミン、ミネラルだけでは評価し切れない時代にはいっている。
古くて手垢のついたなじみの野菜にも、新しい機能が隠されている。
そう、現代科学は真実のほんの一部を明らかにしているに過ぎず、科学を過信することはやめよう。
どんな深遠な真実、発見だって、最初は眉唾物、異端とされたものが多いことを知るべきだ。
 
 
 
 
■ 加賀野菜 ヘタ紫なす
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その名のとおり、ヘタの下まで紫色になる短卵形の小なすです。
色やつやよく、皮が薄くて、果肉が柔らかい。
なんといってもほのかな優しい甘みがあるのが特徴です。
 
一夜漬けややど漬け、煮物、天ぷらに最適で、崎浦丸なすとして金沢市民にたいへん親しまれているなすです。
 
一夜漬けにしたときの味は天下一品です
皮が薄く、肉質が柔らかいために、皮はパリッと、なかの身はジューシーで甘さを感じます。
このナスの漬け物を食べると気持ちの良いキュッキュッと音がするので、キュッキュッナスといったりもします。
 
「ヘタ紫なす」のピークは7月から9月です。
いまが一番美味しい時期です。旬の味をどうぞお楽しみ下さい。
 
■ ヘタ紫なすの一夜漬け
【材料】 (4人分)
ヘタ紫なす・・・8個、粗塩・・・10g
【作り方】
1、なすはヘタをつけたままきれいに洗う。
2、容器になすを並べ、塩をふり入れ重石(なすの重さの2倍)をして一晩ねかす。
2、漬かったなすを水で洗って、ヘタを取り適当な大きさに切って器に盛る。
 
■ なすソーメン
【材料】 (4人分)
ヘタ紫なす・・・8個、ソーメン・・・2把
【作り方】
1、なすは皮をむいて一口大に切り塩水にとってあく抜きをする。
ソーメンは固めにゆでて冷水でよくもみあらいし、ざるにあげておく。
2、なすがかぶるくらいのだし汁、酒、醤油、砂糖を入れて煮立てる。
3、煮立ったところにソーメンを入れてもう一度煮立てる。
 
■ なすの煮物
【材料】 (4人分)
ヘタ紫なす・・・8個、
【作り方】
1、なすのへたを取り下の方を縦半分ぐらいに切り目を入れる。
2、なすがかぶるくらいの水を入れ塩を軽く一握り入れ、沸騰させて7〜8分煮立てる。
  柔らかくなったらこのゆで汁を捨てる。
3、だし、酒、醤油、砂糖を入れて2〜3分で煮汁がなくなったところで火を止める。
 
■ なすのミートチーズ焼き
【材料】 (4人分)
ヘタ紫なす・・・4個、合い挽肉・・・150g、
【作り方】
1、なすは縦4つに薄切りして、油をなじませたフライパンでこんがり両面を焼く。
2、フライパンに油を足してにんにくのみじん切りと合挽肉を炒め、トマトケチャップ、
  ドミグラスソース、水、固形スープの素を入れて煮る。塩、こしょうで味を調える。
3、オーブンの天板になすを並べ、玉葱の薄切りをのせAをかけ、
  チーズをのせ180℃のオーブンで5〜8分焼く。
4、器に盛り、パセリのみじん切りをふる。
 
 
 
秋茄子が食べたくなる俳句
季語別俳句歳時記より
 
◆ 「秋茄子を 色よくゆがき 人を待つ」  大平保子
◆ 「秋茄子の 色たのもしき 朝餉かな」  能村登四郎
◆ 「生り残る 小さき秋茄子 漬けやうか」  中川朋子
◆ 「秋茄子の 田楽に母 憶ひけり」  古田考鵬
◆ 「秋茄子の 紺をふかめて 故郷の味」  矢嶋みつ江
◆ 「秋茄子の 程よく漬かり 良き朝餉」  井関祥子
◆ 「糠床に 紫紺かがやく 秋茄子」  青木政江
◆ 「悪妻の 漬物上手 秋茄子」  飯田希々
◆ 「秋茄子の 売場人混む 道の駅」  渡辺清子
◆ 「秋茄子の 美味を身重の 嫁にかな」  斉藤陽子
◆ 「糠漬の 秋茄子贅を 極めけり」  安永圭子
◆ 「秋茄子の 水はじきたる 皮の艶」  桂敦子
◆ 「前掛に もらはれてゆく 秋茄子」  冨山俊雄
 
 
 


石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001