春の香りがいっぱい!
旬のフキを楽しみましょう
フキ(蕗)
 
数少ない日本原産の野菜の一つ。
平安時代から野菜として栽培されていますが、 今でも全国の野山に自生しているので、4〜6月に若い葉柄(ようへい)を採って山菜として楽しむ事もできます。
フキは野菜でもあり山菜でもあるわけです。
透き通った淡緑色の葉柄は独特の香りと苦味を持ち、さわやかな春を表現する食材です。
春一番に出てくるフキのツボミがフキノトウです。
 
● 野生種
日本全国の野山に自生しています。
やや日陰で水分の多い場所を好み、そうした場所のフキの方が柔らかでおいしい。
春から秋までありますが、美味しく食べられるのは4月から6月です。
7月を過ぎると固くなり苦味も強くなって、食用に適さなくなります。
フキには葉柄の赤い赤ブキと緑色の青ブキがあり、青ブキの方が苦味が少ないと言われています。
 
● 栽培種
柄が太くて長いわりには繊維が少なく苦味の少ない種類が”野菜”として栽培されています。
 
◆ 愛知早生フキ(あいちわせ)
尾張フキとも言います。
栽培種の特産は愛知県。路地物の旬は野生種と同様に4月から6月でが、最近はハウスものが通年出回っています。
現在市場に出回っているのは、 ほとんどがこの愛知早生です。
愛知では江戸時代からフキの栽培がさかんで、今から150年〜200年程前に早生の品種が発見され選別栽培されたという事です。
雌株しかないので種子で繁殖できず、現在に至るまで株分けで栽培されています。
 
◆ 水フキ(京フキ)
京都と奈良で栽培されています。柔らかで苦味が少ない。
 
◆ 秋田フキ
秋田の名物になっている巨大なフキ。
柄の長さが2m、葉の直径は1mに達します。
北海道のラワンブキから分化したとも言います。
固いので野菜として出荷される事は少なく、 加工して砂糖漬けの和菓子として出回ります。仁井田地区が有名。
 
 
● フキの栄養・効能
水分が多く、栄養分としてはあまりないですが、苦味・芳香成分があります。
フキ独特の香りの成分は、せき止め、たん切り、消化などに効果があるということが古くから知られ、漢方では、せき止め、健胃、浄血、毒消しなどの薬効成分として活用されてきました。
さらに、胃腸の働きを整え食欲を促します。
フキ独特のにがみはクロロゲン酸というポリフェノールの一種の成分で、クロロゲン酸は抗酸化作用のある成分で、老化やガンを予防するといった働きがあります。
植物繊維は便秘を解消して高血圧・動脈硬化の予防にもなります。
多い栄養素といえば、カリウムやマンガンなどで、カリウムは、余分なナトリウムを体外へ排泄促進しますので、高血圧症状の改善に役立つと言われています。
マンガンは、主に肝臓や骨の酵素の働きを活性化させる役割を持ち、骨の生成を促すと言われています。
尚、フキノトウにはカロテンが豊富に含まれています。
 
 
● フキノトウの食べ方
■ フキノトウの酢の物
材料】
・ふきのとう、 ・酢、 ・三杯酢
【作り方】
1、ふきのとうを、酢を少し加えた、たっぷりのお湯でゆでる。
2、ゆで上がりをざるで湯切りをしてから、冷水に晒してアクをとる。
3、小皿に盛り三杯酢をかけ回してできあがり。
 
■ フキノトウ 味噌汁の吸い口
材料】
・味噌汁、 ・ふきのとう
【作り方】
1、ふきのとうを細かく刻み、水に放してアクをとる。
2、味噌汁に少量浮かべて、香りを楽しんでください。
 
■ フキノトウの天ぷら
材料】
・小麦粉(薄力粉)、 ・天ぷら油、 ・二番だし、 ・塩、 ・醤油
【作り方】
1、小麦粉を、通常の天ぷらの衣よりいくぶん薄いくらいに作る。
2、フキノトウをよく水洗いして、水気をよく切る。
3、それに小麦粉をまんべんなくつくように振る。
4、熱めの天ぷら油に、衣に潜らすようにして衣を付けたフキノトウを入れる。
5、軽く色が付いたらできあがり。
6、出汁と醤油で天つゆを作るもよし、塩で食べるもよし、お好みでどうぞ。
 
■ フキノトウ味噌
材料】
・ふきのとう、 ・味噌、 ・二番だし(だしの素でも可)、 ・味醂
【作り方】
1、フキノトウを細かく刻みます。
2、刻むとすぐ変色するので、水に入れてアク抜きをします
3、味噌はすり鉢で良くすり、そこに二番だし、味醂を加えます。
4、小鍋に移し、照り、とろみが出るまで、焦げないように良く練ります。
5、火を止め良く絞り、水気を切ったフキノトウを加え、混ぜ合わせて出来上がり。
6、炊きたてのご飯に、酒のつまみのなめ味噌に、ふろふき大根に良く合います。
お好みにより砂糖を少々加えても良いでしょう。
 
 
●フキの食べ方
■ フキの煮物
材料】
・フキ、 ・ニシン、 ・筍
【作り方】
1、塩を入れたお湯でフキをゆでる。
2、湯切りをしたフキを水に晒してアク抜きをする。
3、フキの皮の薄皮をむく。
4、ニシン、筍と甘辛く煮付ける。
 
■ フキのきんぴら
材料】
・フキ、 ・サラダオイル、 ・醤油、 ・一味唐辛子
【作り方】
1、塩を入れたお湯でフキをゆでる。
2、湯切りをしたフキを水に晒してアク抜きをする。
3、フキの皮の薄皮をむく。
4、3センチほどに切ったフキを、油で炒める。
5、水気がなくなったら、醤油を鍋肌から回し入れ、
仕上げに一味唐辛子をお好みにより入れて出来上がり。
 
■ きゃらぶき
材料】
・フキ、 ・味醂、 ・水飴、 ・塩
【作り方】
1、フキの茎の皮を剥き、5センチくらいに切っておきます。
2、お湯に塩を入れ沸騰させ、切ったフキの茎を入れ、一煮立ちしたら、
30分くらい水に晒します。
3、フキの茎の水を切り、鍋に、味醂、醤油と一緒に入れ、中火で良くかきまぜながら煮始めます。
4、煮汁が少なくなってきたら、水飴を加え、弱火にして休まずにかきまぜます。
5、焦げ付きに注意して、水気が完全になくなるまで煮ます。
6、水気がなくなったら出来上がり、瓶に入れて冷蔵庫で保存しておきましょう。
* 水飴を使うことで、美味しそうな照りが出ます。
* 焦がさないように水気をとばすこと、水気が残っていると傷みが早くなります。
 
■ フキの葉の佃煮
材料】
・ふきの葉、 ・赤唐辛子 ・醤油 ・砂糖 ・酒
【作り方】
1、フキの葉をよく水洗いする。
2、洗ったフキの葉を茹でやすいように4分の1の大きさに切る。
3、大鍋で湯を沸騰させて、塩をひとつまみ入れてからフキの葉を入れ、
約10分間茹でる。
4、途中何回か水を変えながら、たっぷりの水に半日ほど晒らしてアクを抜く。
5、アク抜きした葉を固く絞って水気を切り、ザクザクと粗みじん切りに刻む。
6、刻んだフキの葉を鍋に入れて、ひたひたの水加減で沸騰させ、
調味料(醤油・酒・砂糖・赤唐辛子)を加えて弱火で煮詰める。
醤油と砂糖は一度に全部入れずに、数回に分けて味を整えながら加える。
7、煮汁が鍋底にほんの少しになるくらいまで、弱火でじっくりと煮詰めて完成。
蓋付きのタッパー等に入れて冷蔵庫で保存する。
 
■ フキごはん
材料】
・ふき ・米 ・だし昆布 ・油あげ
(調味料)・砂糖 ・酒 ・薄口しょうゆ ・だし汁
【作り方】
1、米は炊く30分前にとぎ、昆布と水を加えておきます。
2、ふきを3分ほどゆでて皮をむき、1cmほどの長さに切ります。
3、油あげを湯どおしし、細かく切ります。
4、調味料を合わせて煮立て、ふきと油あげを加えて煮ます。
5、米が炊けたら昆布を取り出し、4.をのせて蒸らし終わったら軽く混ぜます。
 
 
■ 故 相馬暁先生の フキの話
1.フキの古里と名前の由来
1)フキは数少ない日本原産植物・民族派山菜
フキは日本を中心に、サハリンから朝鮮半島、中国大陸にかけて分布する植物で、数少ない日本原産の野菜と言えます。
フキの変種として有名なものに、葉柄の長さが2mに達するアキタブキ(秋田産)やラワンブキ(北海道産)があります。
北海道には、コロポックルと言う、いたずら好きな小人(コビト)の神様が蕗の下に住んで居るとの、アイヌの人々の伝承があります。
最もラワンブキなら、小人でなくてもその下で雨を防げる大きさです。
このは大型の変種に対しまして、キョウブキは小型で、その名の通り京女を思わせます。コチラの方が食べて美味しそうですね。
 
フキは日本では古くから、ポピュラーな山菜として食べられていました。
恐らく縄文・弥生時代の人々も食べていたでことしょう。
平安時代の和名抄には蕨(ワラビ)、芹(セリ)、茄(ナス)等と共に、蕗(フキ)の名が見られます。
戦国末期に書かれた農書・清良記にも、正月の野菜として「蕗の薹」が記録されています。
江戸時代に入りますと、宮崎安貞の農業全書によりますと、「フキは日照りに弱い作物であるから、木陰のよく肥えた土地や物陰に植え、下肥や酒粕などをこまめに与えるならば、太く長く育ち、町に売れば他の野菜より利益が出る」と、勧めています。
江戸時代から既にフキの栽培がなされていたのですね。
なお、「フキには二種類あり、一つは茎の元が少し赤く(赤蕗)、繊維が多く、皮も厚く、やや角張って葉も粗く、料理に不向きである。
もう一つは赤見がなく(青蕗)、皮も葉も薄くて丸く、茎も角が無くて、繊維が少なく、柔らかで味も良い」と、述べています。
 
2)フキの呼び名名の由来
ヤマブキ、フウキ、フキンボ、タンバ等の別名を持つフキは、英名をJapanese Butterburと言います。
このフキの名前の由来は、フキの古名「布々岐:フフキ」に始まるとされます。
フフキが縮まって、現在の「フキ」になりました。
その「フフキ」は「冬葱:フユキ」がなまった(転訛した)ものと言われています。
では、冬葱(フユキ)とは何を意味しているのでしょうか。
それは、早春まだ肌寒い頃、地上に頭を出す、浅葱色(アサギイロ)した鱗状の包葉(フキノトウ)を、冬の葱、フユキと呼んだのです。
「葱」の漢字は「ソウ」とも読まれます。
元々、葱の字は、ユリ科の多年生草本で、野菜の一種でありますネギを示しますが、「蒼(ソウ)」の文字と同じく、浅い青色を意味したりもします。
それで、ネギの白と書いた葱白(ソウハク)が葱の白根でなく、最も淡い藍色(浅葱色)を指します様に、冬葱とは、冬(早春)の浅葱色の物との意味なのです。
すなわち、フキノトウの形状を示した言葉に他ならないのです。
 
フキは「拭き」に由来するとの説もあります。
フキの葉が紙や布の代用品として、食器や食卓などを拭くのに、使われていた事に由来すると言うのです。
日本でも、フキの葉がトイレットペーパー替わりに利用されていた時代があります。
まさに、尻を「拭く」意味でのフキだったのです。
現在でも、東南アジアやアフリカの自然の中で暮らしている人達は、紙でなく、草の葉などを使っています。
恐らく、大昔の日本では、フキは幅広く、拭く物として、利用されていたはずです。
 
もっとも、もっともっと昔、日本に漢字が入って来る前は、日本人はフキをヤマフフキまたはオオバ(大葉の意味)と呼んでいた様です。
漢字が伝来してからは、例えば、本草和名(918年)では、中国の植物・款冬(カントウ)を当て、和名抄(932年)では、フフキの和名に蕗の漢字を当てました。
ところで、中国では日本のフキに相当する植物は、実は蜂斗菜と書きます。
款冬も蕗も誤りだったのです。
 
2.フキの生理・生態とその特性
春の味覚の代表とも言えるフキが、キクやアザミ、タンポポと同じ仲間で、アルプスの名花・エーデルワイスと姉妹である事をご存じですか。
野菜としてのフキは、レタス、シュンギク、ゴボウの仲間で、双子葉植物綱・合弁花亜綱・キキョウ目・キク科(フキ属)に属する多年草です。
「ほとばしる 水のほとりの 蕗の薹:野村泊月」と詠まれたように、平地から山地まで、湿り気の多い川筋や谷沿いなどに群落を作っています。
皆さんもアチラコチラでご覧になっていることでしょう。
 
フキは根茎に養分を蓄え越年し、この根茎から地中を走る枝(地下茎)を出して、盛んに増えます。
この地下茎の先に花茎を出します。これがフキノトウです。
雌雄異株で、雌株は開花後に花茎が伸び、30cm以上になり、実がなります。
雌株(雌頭花)は白色ですが、雄株(雄頭花)は黄味を帯びた白色です。
葉は開花後、地下茎から出ます。
葉は長い多肉質で中空の葉柄を持ち、葉身は腎円形で、灰白色の綿毛をかぶっています。
実は、フキの茎は短くて、地上部には現れません。
直接、胴体である葉柄を出すのです。
時々、フキの葉柄を茎と思っている人もいますが、葉柄とは本来葉の一部で茎と葉をつなぐ通路の部位です。
所で、アスパラガスなどと違って、フキの葉柄の雌雄は、闇夜の烏の様に、識別出来ません。
男を食っているのか、女を食っているのか、分からないのです。
 
3.生産と流通
日本全国の山野、道端、川岸などの日当りのよい所に自生するほか、各地で栽培も行われています。
大型のフキで有名なアキタブキは、奥州地方から北海道に野生し、この地で栽培もされています。
北海道の十勝地方、足寄(アショロ)には超大型のラワンブキが自生しています。
人々はこれを採取し、食用に利用しています。野生趣溢れる味がします。
また、愛知県知多半島でもアキタブキをビニールハウスで栽培し、東京・大阪などの市場に出荷しています。
一方、京都、奈良などで栽培されている地ブキ(水ブキ)は、色合い、香り、味など質は最高で、京ブキとも呼ばれ、珍重がられていますが、収量が少ないことが欠点です。
 
4.旬と選ぶポイント
食用としてのフキノトウ(花蕾)の旬・収穫期は3月〜5月、フキ(葉柄)は3月〜10月が採取時期です。
南北に長い日本ではかなりの幅がありますが、一般的には、前述の通りですが、北海道における旬は、フキノトウが4月、フキが5月から六月と考えてよいでしょう。
もっとも、スーパーの店頭には一年中、水煮のフキがパックされて、売られています。
しかし、野生のフキ、せめて生のフキを旬、早春3、4月に亭主に食べさせてあげて下さい。春が間違いなく、体を駆け抜けます。
 
5.フキノトウの機能・効能
1)フキノトウは花粉健康法
フキノトウはビタミン類、特に、A、B1などに比較的富み、カリウムやカルシウムなどミネラルが含まれています。
また、その特有の香りとホロ苦さが食欲を増進し、消化にも役立ちます。
まさに、春の健康食なのです。
 
フキノトウは花を食べる花菜です。
花は花成ホルモンの塊である花粉を多く含みます。
そう言う意味でフキノトウは花粉健康法に最適の野菜と言えます。
ところで、花成ホルモンは人の精力を増強します。
また、苦味成分であるアルカロイドは人の新陳代謝を促進します。
春にフキノトウを食べると、冬の間に低下していた新陳代謝が高まり、精子数も増えます。まさに春情を催す効果があるのです。
フキノトウを入れた蕗味噌は、古くからスタミナ健康食として有効でした。
宮崎安貞の農学全書にも、蕗味噌の記載があります。
そして、フキはノンカロリーで、食物繊維に富んでいます。
美容の敵の便秘を防ぐと共に、今風のダイエット食にもピッタリです。
 
2)咳止め、タン切りにフキノトウ
春の乾燥した空気は、人の身体、特に気管支の粘膜に炎症を起こします。
喉にタンが貯ります。フキノトウはタン切りに有効な事は、昔から知られていました。
フキもまた咳止め、タン切りの民間療法として利用されています。
フキノトウには、クエルセチン、ケンフェロール、アルカロイド(苦味質)、精油、ブドウ糖、アンゲリカ酸等が含まれ、葉にはサポニン、コリン、タンニン、酒石酸、苦味配糖体等を含んでいます。これらが機能成分として作用しています。
なお、薬用としてフキノトウを利用する場合は、フキノトウがまだ蕾の頃に採取し、日陰干しします。
例えば、咳止めには、乾燥したフキノトウ10〜20グラムを水400ccで、半量になるまで煎じ、3回に分けて服用します。
フキノトウの鎮咳剤としても有効性は、江戸時代の農学者・宮崎安貞も、「花は薬となす」と認めています。
 
3)アルカロイドは毒に薬にもなります
最近、フキノトウをそのままラットに食べさせると、肝臓にガンが生じると言うデータが出されました。
実際にフキノトウから抽出・分離されたピロリジンアルカロイドの一種フキノトキシンに強い細胞毒性がある事が認められました。
しかし通常は、それほど多量を食べるわけでもなく、ゆでるなどの処理をすることによって、直接的な発ガン被害は避けられる。また、極微量に食すると細胞活成に役立つとの考えもあります。
 
ところで、フキノトウを摘むつもりで、ハシリドコロの芽生えを採集して、誤って食べて中毒にかかった事件が知られている。
このハシリドコロはナス科の植物で、ベラドンナ、ヒヨス、チョウセンアサガオなどと同様にヒヨスチアミン、アトロピンなどトロパンアルカロイドを含み、散瞳、口渇、けいれん、錯乱、呼吸麻ひなどの激しい中毒症状をもたらします。
錯乱状態が激しい時、狂乱状態に陥り、走り出すと止まらないので、ハシリドコロと呼ばれています。
毒も薬の例え通り、ハシリドコロのアルカロイドはロートエキス、ロートチキンの製造原料となり、鎮痛薬や目の治療薬に使われています。
 
チョウセンアサガオの黒い種子が黒胡麻と間違えられたり、その根がゴボウと間違えられる例もあります。
いずれの場合もトロパンアルカロイドの作用による中毒症状を呈します。
江戸時代・紀州(和歌山県)の医師・花岡青州は、このチョウセンアサガオを主成分とした「通仙散」と言う麻酔剤を作り、乳ガンの外科手術を世界に先駆けて行ったのは有名な話です。
 
6.食用としてのフキ
食用には若い花茎と葉柄、葉が利用されます。
まず、花茎は「フキノトウ」とも呼ばれ、独特の香気と苦味があり、和製ブロッコリーとして、ゆでてマヨネーズで食べるのもよいでしょう。
フキノトウの苦みを消さないためにも、生の物を細かく刻んで、汁の実として使うと、春の香りを楽しめます。
また、味噌和えにしても美味しいですし、ゆでて酢の物、お浸しもよいでしょう。
てんぷらや煮物に使う時は、余り小さく切らないことです。
また、摺潰したフキノトウに味噌を加えて、よく混ぜた物を蕗味噌と言います。
「蕗味噌に地酒を酌(く)めり渓(たに)深く:徳永鬼洞」とある様に、酒の肴としてもいけます。
そのままで、或は少し火にあぶって、蕗味噌を嘗めつつ酒を嗜む、そんな古里、田舎を偲ばせる居酒屋が、ビルの深い谷間にあってもよいでしょう。
 
一方、葉柄は柔らかく多汁質で、僅かな香気があり、山菜としてフキノトウ以上に広く親しまれています。
生醤油できゃら色(濃い茶色)に煮つめたキャラブキ(佃煮)や砂糖漬けは各地のみやげ物にもなっています。
もっとも、最近は栽培化され野菜となりました。
ハウス加温条件下で作られ、早出しもされています。
野菜としてのフキが、野生のフキに比べ香りや風味に欠けるのは、仕方が無いことですね。なお、若い葉は佃煮に利用します。
 
7.フキ アラカルト
1)アク抜きを知らない若奥さん、青フキを食べて下さい
スーパーでしかフキに出会った事がない東京育ちの奥さんが、北海道に御主人の転勤で引越しして来ました。
郊外に出ると幾らでもフキの群落があります。
「さすがは北海道、何処にでも自然があるわ」と感激し、早速、自然に親しみ、自然を味わおうと、取って帰って、煮つけました。
食べてみてビックリ、堅くて、渋くて、食べれる様な代物ではないのです。
それもそのはず、赤蕗をアク抜きもせず、皮も剥かずに、煮つけたのです。
スーパーのフキが、青蕗で皮を剥いて、一度ゆでてアク抜きがしてある事を知らなかったのです。
 
一般に葉柄の赤いフキ(赤蕗)は、よほど若い内でないと美味しくありません。
食用には葉柄の青いフキ(青蕗)を利用します。
それも切った時に、水がほとばしる様な、水フキが美味しいのです。
 
2)北国のユックリリズムの持つ意味は
この奥さんと同様な失敗を私もしました。
結婚して間もない頃、早春、郊外にドライブに出た折、沢地でフキノトウの群落を見けました。
女房に「これは和製ブロッコリーと呼ばれる様に、ゆでてサラダにすると、旨いぞ。まさに、春の味覚の代表選手さ」と言って、幾つも取って帰り、早速、湯がいて、マヨネーズをかけて食べることにしました。
女房は一口食べて、ジット私を見つめます。
私は大きなブロックを口に放り込み、絶句。苦くて苦くて、食べれません。
吐き出した私に倣って、女房もソット口中から小さなかけらを出しました。
これが亭主の権威を失う最初の事件でした。
 
実は、北国・北海道のフキ(植物)は、雪の下でユックリユックリ、育ちます。
そのため、植物体内の各種成分、特に、フキの苦み成分であるアルカロイドの様な機能成分が、高濃度に蓄積します。
そのため、苦みが強く、府県のフキノトウの様に、味わえないのです。
同様な事はアスパラガスなど多くの北海道野菜にも言えます。
北海道育ちのアスパラガスは、特に、旬のアスパラガスは味か濃く、栄養成分、機能成分も濃いのです。
 
3)ツワブキはフキの兄弟ではありません
暖地の海岸に自生するツワブキは、艶のある多肉質の常緑の葉を持つ多年草で、葉は蕗に似ていますが、同じキク科ですが、フキ属でなく、近縁のメタカラコウ属に属します。
農学全書では、フキの一種とし、諸毒を消す効果があると述べています。
特に、魚毒を消す効果が高いと言います。
例えば、フグ毒に当たった人はツワブキをよく揉んで、その汁を飲むと大変効き目があるとの事です。
命がけで試してみる奇特な方はおりませんよね。
なお、葉柄を茹でて食べますと、フキ同様な味がします。
 
4)ノブキもフキの兄弟ではありません
ノブキはフキとよく間違えられます。
山に生えるフキがヤマブキで、野原に生えるフキをノブキと呼ぶと、本気で思っていた方がおりました。
葉の形がフキに似ているところから、こんな名前が着き、混同されるようです。
同じキク科でも、フキはフキ属、ノブキはノブキ属で、フキに比べて、谷間、日陰の路傍、林間などのやや湿地に自生する多年草です。
腫れ物、漆かぶれ、切傷等に、生の葉のしぼり汁を塗ると効果があると言われています。
食用には春に若い葉と葉柄を採り、茹でてアク抜きし、お浸しなどにして食べます。