本来の旬は“冬”
冬キャベツが最も美味しい旬です!
主要産地は愛知県渥美半島です!
 
胃潰瘍や十二指腸潰瘍を防ぐ
風邪や感染症の予防
抗がん作用便秘の予防改善
 
冬キャベツ
 
 
● キャベツの旬
本来の旬は原産地の気候(地中海性気候)から冬季と考えられます。
しかし、日本では栽培地の標高や緯度で出荷時期が異なり、さらに今日に至る品種改良の結果、年間を通して出荷可能となっているので、特定の旬が存在しません。
 
日本では収穫・出荷時期によってに3シーズンあります。
◆ 11月〜3月、冬に収穫される、冬キャベツ(寒玉キャベツ)。
作付・出荷ともに最多で、球が締まった平たい形が特徴。
◆ 4月〜6月、春に収穫される春キャベツ(新キャベツとも呼ばれる)。
生産量は少なめですが人気が高く、近郊栽培中心。
◆ 7月〜10月、冷涼地・高冷地で栽培される夏秋キャベツ。
夏秋キャベツ(、高原キャベツとも)、
 
キャベツは、収穫時期により特定の産地へ生産が集中してきています。
おおよそですが、冬キャベツは愛知県(渥美半島など)が中心で、夏秋キャベツは群馬県(嬬恋村など)、北海道、長野県など。
春キャベツは千葉県(銚子市など)、神奈川県(三浦市など)、茨城県(行方市など)が主体となっています。
冬キャベツの場合、8月頃に種をまき、12月 - 4月にかけて収穫されます。
 
● 冬キャベツの特徴
主に夏に種を蒔き、冬に収穫する品種で、寒玉キャベツとも呼ばれ最も市場に出回っています。
形が扁平で色が薄く、固く結球します。
加熱しても煮崩れしにくいので、ロールキャベツなどに煮物でも使えます。
もちろんコールスローでも甘味がありおいしいですが、歯ざわりが硬めで色が白いものになります。
 
● 春キャベツの特徴
秋に種をまき春に収穫する品種で、新キャベツとも呼ばれ巻きがゆるやかで葉が柔らかく、中のほうまで薄い色が付いています。
葉が柔らかく、色も濃いのでサラダなど生食に適しています。
また、油で炒めたり、浅漬けなどにもいいでしょう。
 
● 夏キャベツ(高原キャベツ)の特徴
主に長野県や群馬県などの高原で栽培され、夏に収穫される品種。
主に寒玉の改良品種で、寒玉と春玉の中間的な特徴を持っています。
 
 
●おすすめは、
愛知県渥美町 寺田牧雄さんの
甘〜いキャベツ
なんと 糖度が12度!
みかん並みの甘さ
砂糖でも塗ったんじゃないか!
と思わず冗談をいっちゃったほど
甘い旨いキャベツです
 
寺田さんの畑は、海岸近くに位置し、排水性もよく保水性も良い物理性に富んだ、うまい野菜づくりには最適の土壌です。
しかも海からの風が豊富なミネラルを運んでくれるので、生命力の旺盛な、病害虫にもつよい、栄養豊かで美味しい野菜が栽培されています。
 
スーパーなどでの試食販売では、多くのお客様が、あまりの甘さにびっくりされて購入していかれます。
みなさん、寺田さんの“甘〜いきゃべつ”は、今が旬です。
どうぞたっぷりお味わいください。
 
寺田さんは、消費者の方々に、「外観ではなく、まず、私たちの作った野菜を食べてみて欲しい」という。
 
「私たちは、真にお客様に喜んでいただけるもの、お役に立つものをと念じ、安心と美味しさ、中身の充実に力を入れています。
そのために、商品の外観からは判断のできない、目に見えない工夫努力をいたしております。
土づくり、作物づくりに、自分たちが細心の心を配り、手を入れただけ、作物は応えれくれるのです」。
 
「しかし、どんなに努力してみたところで自然や天候には逆らえません。
異常天候に見舞われたり、収穫間近になって大雨が降ったり、強風にさらされたりなど、毎年同じことはありません。
まさに作物は天の恵みであり、農業は精一杯を尽くして、あとは祈るばかりです」
という。
 
こうして、人々の健康と幸せを願って、今日も黙々と額に汗し、農作業に精を出してくださる方々が居られることは本当にありがたいことです。
 
 
● キャベツの歴史・由来
原産地はヨーロッパで、地中海沿岸や大西洋沿岸に自生していた野生種から改良されたものとされています。
栽培の歴史は非常に古く、結球しない原生種は有史以前から栽培されていたようで、この種類は、現在もギリシャ、イタリアなどの海岸沿いの絶壁に分布しています。
 
古代よりイベリア人が利用していた原種がケルト人に伝わり、ヨーロッパ中に広まったとされますが、当時は野菜より薬草として用いられ、古代ギリシア・古代ローマでは胃腸の調子を整える健康食として食されていました。
 
その後、9世紀頃に野菜としての栽培が広まりました。
現在日本で普及しているものは、12世紀から123世紀のイタリアで品種改良されたものが起源とみられています。
18世紀にアメリカ合衆国へ渡ると、より肉厚で柔らかく改良が進みました。
 
キャベツはケールが祖先でアブラナ科キャベツ属。
キャベツやブロッコリーは同じアブラナ属になりますが、その祖先はその薬用効果の大きさでしばしば話題になる「ケール」です。
そして、このキャベツもその一部を引き継いでいます。
 
 
●日本への伝来・普及
 
日本へは、江戸時代の1704〜1711年にオランダ人によって長崎に伝えられましたが、当初は食べるためではなく、観賞用として栽培されました。
その改良種は、葉牡丹(はぼたん)となり現在につながります。
 
食用としては幕末の1850年代に伝わり、明治にかけて外国人居留地用として栽培されたが、一般の日本人が口にすることはなかった。
野菜として普及したのは、明治になってからです。
最初は外国人居留者や、寄港する外国船の積載用食料として栽培されましたが、徐々に日本人のあいだにも広まり、明治時代末期には一般的になりました。
 
1874年(明治7年)、内務省勧業寮がのちの三田育種場で欧米から取り寄せた種子で栽培試験を行ったのが、本格的な生産の始まりとされます。
試験地は北海道に移され、北海道開拓使が発行した「西洋蔬菜栽培法」に、キャベイジの名で記載されました。
 
大正時代に品種改良が進められ、寒冷地に適することから、栽培は北海道のほか、東北地方や長野県で拡大したが、洋食需要が限られた戦前にはそれほど普及しなかったようです。
 
キャベツの消費量が急速に増大するのは、第二次世界大戦後で、昭和30年代になると、食生活の洋風化に伴い爆発的に増えました。
1980年代にはダイコンと並ぶ生産量となりました。
 
 
 
● キャベツの種類・仲間
 
世界中で多様な品種が利用されています。
例えばフランスの料理学専門辞典には、60種を超える品種の記載があるといいます。
日本でも用途、栽培時期、栽培地、病害抵抗性などの異なる数多くの品種が栽培されています。
 
◆ ムラサキキャベツ
赤キャベツともいいますが、小ぶりで赤紫色をしています。
巻きは硬く、葉も厚みがあり、色合いを活かして千切りなどにしてサラダにしたり、大きめの塊に分けてピクルスにしたします。
また、ムラサキキャベツの色素アントシアニンは、酸性やアルカリ性の水溶液に反応し変色するのでpH指示薬とすることができるほか、キャンディーやゼリーなどに赤紫色を発色させる着色料としてよく使用されています。
 
◆ サボイキャベツ
グラッド、ちりめんキャベツとも呼ばれるように葉が縮れている品種です。
巻きはゆるく、中まで緑色をしています。
サクサクとした歯ざわりと甘みがあり、サラダなどの生がおいしいのですが、煮物にしても使えます。
 
◆ ハボタン
花キャベツとも呼ばれ、食用ではなく葉を観賞します。
株の中心部の葉が白や赤に染まり牡丹の花の様に見えることから名付けられました。
分類上はキャベツではなく、ケールの品種です。
 
◆ 札幌大球(サッポロタイキュウ)
最大の大きさの品種、一般的に市販されるキャベツの10倍(10kg)以上の物も存在します。
北海道札幌市が発祥。
漬物用に愛用され、甘味が強く、ニシン漬けに用いられます。
 
◆ グリーンボール
丸玉とも呼ばれ球形です。
その名のとおりきれいな緑色をしています。
1kg程度の小ぶりのボール型で、葉につやがあり、葉の内部まで緑色を帯びており、葉は肉厚のわりに柔らかく、組織はしっかりしています。
葉はしっかりと巻いていますが、甘味があり、柔らかいです。
また、栄養的にも、普通のキャベツより多く含まれています
 
◆ 芽キャベツ
子持ちかんらんとも呼ばれ、普通のキャベツとは違い、地上から7〜80cm程に伸びた1本の茎に50個程鈴なりに実ります。
栄養価は普通のキャベツよりも数倍高いそうです。
通常、アクがあるので、下茹でしてから使います。
茹でる際には、火が通りにいので底の切り口のところに、十字に切り込みを入れると均一に茹で上がります。
 
◆ ケール(葉キャベツ)
キャベツの祖先で、結球していません。
キャベツよりも栄養価が高く、青汁の材料にもなっています。
 
◆ ブロッコリー
ケールの花の部分を大きくしたものをブロッコリーといいます。
ブロッコリーの芽にガンを予防する栄養が含まれていることがわかって、ブロッコリースプラウト(新芽)が今注目されています。
 
◆ カリフラワー
ブロッコリーを白くしたのがカリフラワー。
ブロッコリーやカリフラワーは、花を食べるキャベツです。
ブロッコリーよりもやわらかいという特徴があります。
 
◆ コールラビ(かぶキャベツ)
白や紫をしていて、かぶのようにふくらむので、かぶキャベツともいいます。
コールラビは茎を食べるキャベツです。
ほんのりと甘味があるので、煮込み料理や酢漬けに使われています。
 
 
 
●キャベツの栄養効用
◆ビタミン、ミネラルが豊富
ビタミンA、B1、B2、C、E、K、ナイアシンなど、ほとんどのビタミン類のほか、ミネラル分も多く、カルシウム、リン、鉄、カリウム、マグネシウムなどが含まれています。
 
◆ビタミンCが豊富です
ビタミンCがずばぬけて豊富で、大きめの葉を2〜3枚ほど食べるだけで、1日の必要ビタミンCをカバーできます。
特に中心部にビタミンCが多く含まれます。
ビタミンCはかぜの予防や疲労回復、肌荒れの解消などに効果があります。
また、喫煙者は非喫煙者に比べてビタミンCの消費量が3倍も多いことがわかっているので、たばこがやめられない人は、こうしたビタミンCを多く含む食品を努めて食することを心がけましょう。
 
◆胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防に
特筆すべき栄養素はビタミンUとKです。
ビタミンUには、胃壁の粘膜を丈夫にし、胃や十二指腸の潰瘍(かいよう)発生を抑制するはたらきがあります。
ビタミンUはそもそもキャベツから発見され、キャベジンと呼ばれました。
同名の胃腸薬は、まさにこの成分の薬効効果を薬に取り入れたものです。
ビタミンKには、出血したときに血を固める血液凝固作用があります。
このため潰瘍(かいよう)で出血した傷口が早くふさがることになり、この点でもキャベツは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍に有効な食品なのです。
ビタミンUは熱に弱いので、潰瘍(かいよう)の治療には生ジュースにするのが効果的です。
りんごなどと合わせると飲みやすくなります。
 
●骨粗鬆症予防に
ビタミンKには、骨にカルシウムが沈着するのを助けるはたらきがあり、骨粗鬆症の予防に効果があります。
ビタミンKが不足すると、骨に十分なカルシウムが取りこめなくなって骨がもろくなり、鼻血や大腸炎などをおこしやすくなります。
また、赤ちゃんの脳内出血を防ぐ作用が認められており、妊婦や授乳期の母親に十分とって欲しい栄養素です。
 
◆便秘の改善に
キャベツは食物繊維が多く含まれている点からも意義深い野菜です。
食物繊維は、便秘を改善するだけでなく、腸内環境を良好に保ち、大腸がん、高血圧、動脈効果、糖尿病、肥満などの病気に効果のあることが判明しています。
 
◆がんや感染症の予防に
キャベツの外側の葉の緑色部分には、カロチンが比較的多く含まれています。
カロチンは体内で必要な量だけビタミンAに変わり、残りは抗酸化物質としてはたらきます。
ビタミンAは、皮膚や粘膜を丈夫にし、がんの予防や、活性酸素の害からからだを守るはたらきがあります。
 
◆肝機能改善に
赤キャベツには、血栓を防止するポリフェノールが含まれています。
動脈硬化防止、免疫力増強、肝障害抑制などの分野でも使われており、今後ますます期待される食品といえます。
 
◆精神の安定に
キャベツからはカルシウムもたくさん摂取できます。
カルシウムは丈夫な骨を維持してイライラを解消し、精神を安定させる作用もあります。
 
◆ガンの予防に
キャベツはアメリカ国立がん研究所によって提案された「デザイナーズフーズ・リスト」の中でトップグループに位置付けられた食品です。
がん抑制成分であるイソチオシアナートやインドール化合物、発がん物質の活性化を抑制するペルオキシダーゼなどが含まれており、ビタミンCとともにガン予防に大きな効果があります。
ビタミンUの潰瘍(かいよう)を治すはたらきも、免疫力や自然治癒力を向上するという面でがんの予防に効果があります。
 
◆ジアスターゼ
また、大根に含まれているジアスターゼもキャベツの方が多いそうです。
ジアスターゼはでんぷん分解酵素で、消化を助け、胃酸過多、胃もたれや、胸やけなどに効果があるそうです。
 
 
 
● キャベツの利用
葉は柔らかく、癖のない味なので、様々な料理に使われる野菜です。
 
◆ 生食
繊切りにして豚カツなどの付け合わせにしたり、コールスローなどのサラダ類に調理して食べます。
業務用で繊切りを使用する場合には、水に浸しておくと水分を吸収して膨張するため量が増え、かつ、みずみずしさを保つ利点があるが、ビタミンCなど水溶性の栄養素は減少します。
生キャベツの繊維は消化が悪いため、食べ過ぎると腹痛を起こす恐れがあります。
 
◆ 煮物
スープの具材としたり、ひき肉などを巻いてロールキャベツにします。
先に油で炒めると甘味が引き出されます。
もつ鍋や井上鍋には具材として用いられます。
また水炊きでは白菜ではなくキャベツを用いる場合があります。
 
◆ 蒸す
蒸し煮による調理法も多いです。
登山では、キャベツの水分で豚肉を煮るキャベッジダウンという調理法があります。
 
◆ 炒め物
野菜炒めやお好み焼きに欠かせない他、焼きそばや焼き肉では脂っこさを抑える働きがあります。
 
◆ 漬物
浅漬けやぬか漬けといった普通の漬け物以外に、北海道ではサケの重ね漬けの材料として、白菜と並んで用いられています。
また、ドイツ料理のサワークラウトは、キャベツの漬け物です。
 
◆ 健康食品、医薬品
キャベツに含まれる酵素成分を抽出した栄養ドリンクやダイエット食品、ビタミン(キャベジン)を利用したキャベジンなどの胃腸薬も作られています。
 
◆ ワイン
横浜国立大学がオリジナルキャベツワインとして開発し、販売しています。
 
 
 
● 結球
キャベツに限らず、結球する野菜は葉の成長ホルモン(オーキシン)が裏側に偏ることでその形態をとります。
 
一般に流通しているグリーンキャベツの場合、外葉が18―21枚になってから結球が開始し、葉序に従い螺旋状に茎頂を包みます。
結球時、茎はほとんど伸長せず、短縮茎となります。
 
断面を見ると、中心に近い葉ほど内側を向いていますが、これは外側が先に育ち、内側はその後から出葉するため次第に混んでくるためで、消費者が店頭でキャベツを選ぶ際に、大きさではなく重さで選ぶのはこのためです。
 
 
 
■ 「キャベツの話」
野口種苗HPより
 
キャベツがヨーロッパで誕生したのは12〜3世紀といいますから、日本では鎌倉時代のことです。
地中海沿岸原産の結球しないケールの中から、1150年頃にドイツで結球するキャベツが生まれ、その後イギリスで赤キャベツや縮緬キャベツが生まれて、ヨーロッパ全土に広がったそうです。
日本には、幕末から明治初期に渡来しました。
 
ヨーロッパの冷涼な気候で育ったキャベツは、春まきして秋に収穫するのが普通の栽培方法でした。
そのため、まず北海道の春まき野菜として定着し、東北や長野など夏涼しい地帯に広まりました。
 
しかし、関東・関西の平野部や西南暖地では、夏の高温多湿時に腐りやすく、夏越しが困難でした。
そこで、冷涼地以外では、秋まきして小さい苗で冬を越し、春になってから大きく育って初夏に結球する作型が定着しました。
輸送力に乏しい戦前までの暖地のキャベツは、水田の裏作として秋に種まきし、五、六月に八百屋さんに並び、田植え後は姿を消す、季節限定の野菜だったのです。
 
現在のように全国で一年中キャベツが食べられるようになったのは、トラック輸送の進歩と、品種改良技術の賜物です。
 
輸入種時代の秋まきキャベツには、中生(なかて)の「サクセッション」や早生の「アーリースプリング」などさまざまな品種がありましたが、これらをかけあわせ、日本の気候に合ったものが固定されて、現在の三季まき「中生成功」や、「富士早生」などの春キャベツに進化しました。
 
また、戦時中台湾の葉深氏から秋谷良三が譲り受けた「葉深(ようしん)」は、耐暑性が強く冷涼地でなくても春まきが可能なため、戦後のF1時代の育種素材として貴重な存在となっています。
 
北海道に伝わった春まきキャベツで現在も固定種として残っているものに「札幌大球(だいきゅう)」があります。
元来は「レイト・フラット・ダッチ(Late Flat Dutch)」という輸入種で、重さ10kgにもなる巨大キャベツとして農業雑誌に取り上げられた時は、うちにも注文が殺到しました。
北海道以外では、やはり秋まきして初夏に収穫する作型が良いようです。
 
世界最初のF1キャベツは、昭和13(1938)年に篠原捨喜(しのはらすてき)が作り、サカタが発売した「ステキ甘藍」でした。
「サクセッション」を栄養繁殖で自家不和合性にした母親株に、不和合性でない「中野早生」の花粉を交配した一代雑種です。
 
世界の農業史に輝く成果でしたが、第二次世界大戦中の種苗統制法施行により、広まることなく消えてしまいました。
 
「自家不和合性」というのは、キャベツなどのアブラナ科野菜に顕著な特性で、自分の雄しべの花粉では、雌しべが受精しないことをいいます。
自分の花粉では種をつけないため、隣りに異品種を植えておけば、一代雑種の種子が採れるわけです。
「ステキ甘藍」の場合は、脇芽を栄養繁殖で増殖して母親株のクローンを多数作ることで、販売可能な数量のF1種子を採種できたわけです。
 
戦後の昭和26(1951)年、タキイ種苗の伊藤庄次郎らが中野早生系の「大峰(おおみね)甘藍」と「サクセッション」とのF1キャベツ「長岡交配一号」を作りました。
戦勝国のアメリカでも注目を浴び、オール・アメリカ・セレクションズ(AAS=全米種苗審査会)で第一席金賞を受賞します。
この「長岡交配一号」で使われた自家不和合性個体の増殖方法が「蕾受粉」です。
 
幼い蕾をピンセットで開き、同じ株の成熟した花を採って花粉を付けると自家不和合性が働かず、一個体のクローンをたくさん生産することができる技術で、こうして採種された種は、すべて同じ遺伝子ですから、何千何万と畑にまかれても、クローン同士では種を結びません。
 
固定種「大峰甘藍」の中のたった一個体から殖やされたクローンと、「サクセッション」の一個体を殖やしたクローンを並べてまくと、「大峰甘藍」を母親に、「サクセッション」を父親にした一代雑種と、「サクセッション」を母親に、「大峰甘藍」を父親にした種子との二種類の一代雑種の種が実ります。
 
混ざってしまうと異なった二種類のF1が出てしまい、均一な野菜の種として販売できませんから、母親役として必要なほうだけ残し、役目を終えた父親役の「花粉親」のほうは、種が実る前につぶしてしまいます。
 
手先の器用な日本女性による蕾受粉という技術は、まさに日本のお家芸でした。
数十年後、二酸化炭素利用に代わるまで、蕾受粉は、ハクサイ、カブ、ブロッコリーなどすべてのアブラナ科野菜をF1に変えていきます。
 
実は今、F1キャベツの種の生産方法が、今までの「自家不和合性利用」から「雄性不稔利用」へと、大きく変わりつつあります。
 
例えば、サカタのタネのカタログを見ると、キャベツのページに「金系201」という品種と、「金系201EX」という品種が並んでいます。
この末尾にEX(エクストラ)と付けられたのが、新しく開発された雄性不稔利用技術による新品種なんだそうです。
タキイ種苗のカタログだと、品種名の最後にSP(スペシャル)と付いているのが雄性不稔のF!です。(SPとは花粉嚢=sporangia=の略という説もあるようです)
 
どちらのカタログにも「EX(SP)は、今までの品種より揃いが良い」と書いてあります。
つまり、生育時のバラツキがより少なくなり、市場出荷に際して、選果場で振い落とされる(つまり金にならない)キャベツがより少なくなったとうたい、価格もそれまでの品種より高くなっています。
 
でも「雄性不稔利用」とは一言も書かれていません。(まあ今までの自家不和合性利用にもまったく触れていなかったのですが)こうして生産者も、流通業者も、もちろん消費者も、誰もなんにも知らないうちに、野菜の中身(つまり遺伝子)が変わってしまっているのです。
 
雄性不稔利用のF1は、母親株を花粉が出ない雄性不稔株に変えています。(この雄性不稔因子は、ダイコンから取り込んでいます)雄性不稔とは細胞の中のミトコンドリア遺伝子の異常ですから、雄性不稔の母親から生まれた子ども(つまりできたキャベツ)は、みんな花粉が出ない雄性不稔です。
 
タマネギ、ニンジン、トウモロコシ、ネギ、ダイコンなどに続いて、キャベツも子どもを作れない野菜に変わりつつあるのです。


石川県認定
有機農産物小分け業者石川県認定番号 No.1001