小さな恋人
さくらんぼ
桜桃・Cherry
![]() サクランボという名称は、もともと桜の実を指す「桜ん坊」からきたといわれています。
正式には「セイヨウミザクラ(西洋実桜)」といいますが、今ではサクランボのほうが一般的になりました。
なお、サクランボは桜桃(おうとう)とも呼ばれています。
日本で流通しているサクランボには国産のものとアメリカ産がありますが、甘みはアメリカ産のほうが強く、国産のほうがさわやかな甘酸っぱさを持っています。
どちらも美味ですが、やっぱり日本では上品で繊細な味の日本産サクランボのほうが人気が高いようです。
![]() ■ サクランボの歴史
サクランボは有史以前からヨーロッパ各地で自生していて、食べられていました。
桜桃の一種である甘果桜桃(セイヨウミザクラ)はイラン北部からヨーロッパ西部にかけて野生していました。
また別の品種である酸果桜桃(スミノミザクラ)の原産地はアジア西部のトルコ辺り。
サクランボの原産地は系統によって異なり、甘果桜桃はアジア西部から南西にかけて、酸果桜桃は東南アジア、中国桜桃は中国であるとされています。
栽培の歴史は以外に古く、ヨーロッパでは紀元前から栽培されていました。
また中国では、五経の一つである「礼記」に記述があることから、3000年前には既に栽培されていたことがうかがえます。
日本には江戸時代初期に中国から入ってきましたが、気候に合わず普及しませんでした。
日本でサクランボが栽培されるようになったのは明治の初め頃のこと。
セイヨウミザクラが日本に伝えられたのは明治初期で、ドイツ人のガルトネルによって北海道に植えられたのが始まりだとされる。
それらの苗木が適地である北海道や東北に配布され、日本でも独自の品種改良が進められるようになっていったのです。
その後、北海道や東北地方に広がり、各地で改良が重ねられました。
現在では山形県をはじめ青森県や山梨県などで栽培されています。
◆ 山形のサクランボ
さくらんぼの栽培面積・生産量ともに全国1位の山形には、明治8年(1875)に東京から、洋なし・りんご・ぶどうなどの苗木にまじって、3本のさくらんぼの苗木が入ってきました。
明治9年(1876)には、初代の山形県令三島通庸(みしまみちつね)が、北海道からりんご・ぶどう・さくらんぼの苗木をとり寄せ、明治11年(1878)には、試験場をつくり育ててみました。
寒河江では、明治9年(1876)に内楯の井上勘兵衛が、北海道からさくらんぼの苗木をとり寄せました。
明治21年(1888)には、本多成允(ほんだ せいいん)と渡辺七兵衛が中心となり、農産物試験場をつくり、キャベツ・じゃがいも・りんご・さくらんぼなどの西洋野菜が、この寒河江にあっているかどうか試験をしたのです。
やがて成允は、石持や山岸の農家の人たちに苗木を分け、さくらんぼの栽培を広めました。
気候風土がさくらんぼの栽培に適していた山形では、明治28年(1895)頃には、品種も増えて、生産量もだんだん増えてきました。
しかし、地元だけでは、買う人が限られますし、生のままで県外など遠くに売りに行ったのでは、新鮮さがなくなってしまいます。そこで、井上勘兵衛は、缶詰にすることに成功し、遠く横浜まで売り出しました。
◆ 佐藤錦の誕生話
山形県東根市にある佐藤家は、明治後半に醤油醸造の家業を廃業。
その後、果樹園経営を始めた佐藤栄助翁によって大正元年(1912年)にさくらんぼの品種改良に着手。
改良は、味は良いが日持ちが悪い「黄玉」と日持ちは良いが固く酸味の強い「ナポレオン」をかけあわせることから始められました。
実を結んだその種から五十本ほどの苗を作り、中から優れた苗約二十本を育てたのです。
「従来のさくらんぼでは、酸味が強くて日持ちが悪く出荷の途中に腐ってしまうため市場性が薄いのでなんとか改良しなくては」という翁の情熱と強い意志のもと、大正十一年(1922年)、その苗木に初めて実を結ばせることに成功。
これらの苗木からさらに優れた一本を選び、新しいさくらんぼの「原木」と したのです。
佐藤栄助翁の友人で苗木商(株式会社天香園)初代岡田東作翁も佐藤栄助翁とともにさくらんぼの改良に情熱をかたむけた人物。
岡田翁は、大変難しいこの改良されたさくらんぼの苗木作りに何度となく挑戦。
そしてその苗木を多くの果樹農家に広め世に出しました。
いわば佐藤栄助翁は生みの親である一方、岡田東作翁は育ての親といえます。
今日のさくらんぼ「佐藤錦」が全国にその名を知られるようになったのはまさしく岡田東作翁の努力によるものです。
■ サクランボの旬
サクランボは保存がきかない果物です。
その分、季節の訪れを告げる果物でもあります。
ハウス栽培などで前後することもありますが、国産品の路地物(路地栽培)は、6月〜7月上旬頃に出回ります。
【収穫時期】
・ 5月下旬〜6月上旬頃…早生種(日の出、セネカ、シャボレー、紅さやか)
・ 6月中旬〜6月下旬頃…中生種(高砂、佐藤錦、山形美人)
・ 7月上旬〜7月中旬頃…晩生種(ナポレオン、南陽、紅秀峰)
※ 輸入もの…5月〜8月(アメリカンチェリー)
出回り始めの5月の初夏の頃には、一粒数千円という値がついてニュースでとりあげられたりもします。
底値とされるのは、6月中旬〜6月下旬にかけてと言われているので、時期を逃さないように要チェック!
品種によっても収穫時期がことなりますが、サクランボの王様とも言われる佐藤錦は、6月中旬から下旬にかけた頃が旬。
大きくなってきたサクランボが、太陽の光をいっぱいに受けて真っ赤に色づくように、地面に銀色のシートをしいて、木の下からも光が当たるようにします。
けれども、6月頃は雨が降りやすい季節。
大きくなって色づき始める頃にサクランボが雨に当たると、雨に濡れたサクランボは実が割れてしまいます(裂果)。
その原因としては、サクランボの実には、目に見えない小さな穴がたくさんあり、そこから果実に水が入り込んで膨らみ、実が割れてしまうのです。
もちろん、割れてしまったサクランボは商品にならないので、サクランボの木を覆うように雨よけのビニールの屋根をつくります。
そのため、農家さんは常に天気予報や雲の流れを見て、雨に注意しつつ、サクランボに日光を当てて、大事に大事に育てていきます。
サクランボの出回り期間が短いのは、収穫が短期間に一気に行われるため。
サクランボの木は樹高があるので、一本あたり5,000個から10,000個の実がなりますが、その全てを昇降機やはしごを使って、人の手で行います。
一つ一つ色づきを見ながら、傷つけないようにそっともぎ取っていきます。
そうして何本もあるサクランボの木から収穫するので、多くの作業要員も必要になってきます。
そうして、手間ヒマがかけられたものであるからこそ、サクランボは高級品といわれるのです。
ぜひ、真っ赤にキラキラと色づいたサクランボを頂く際には、この農家さんの努力に感謝して味わってくださいね。
■ サクランボの見分け方
粒が大きくて果皮に張りとツヤがあり、色が鮮やかなものを選びましょう。
皮が黒っぽくなっていたり褐色の斑点があるものは避けてください。
また軸が茶色ではなく青々としているものが新鮮です
● サクランボがおいしくなる先人の知恵
先人は面白きことを考えたものです。
よくスイカに塩をかけて食べる人が多いが、塩を振り掛けることで、口の甘みを感じる感度が増えたような錯覚をおこします。
サクランボもこれに近いのかもしれません。
まず、塩水をボールなどに用意しサクランボを入れ、半日ほど塩水につけておけば、たったそれだけのことで、一層おいしくいただけます。
■ サクランボの保存方法
サクランボがおいしく食べられるのは収穫してから2〜3日。
購入後は冷蔵庫(野菜室)に入れて、なるべくその日のうちに食べましょう。
ただし、長時間冷蔵庫に入れておくと甘みが薄れてしまうので要注意。
買ってからすぐに食べたい時は、冷水にさっと通して冷やすとおいしく食べられます。
■ サクランボの栄養と効能
サクランボはビタミンCをはじめ、ビタミンB群、カロチン、カルシウム、鉄分、カリウムなどがバランス良く含まれています。
これらの栄養素により、サクランボの健康効果には、風邪の予防、ストレス解消、シミ・ソバカスを抑制する美容効果、貧血の予防、むくみの改善、高血圧の予防、骨粗しょう症の予防などが挙げられます。
また、サクランボの酸味は、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸などの有機酸によるものです。
これらの成分は、疲労回復や食欲増進、血行促進に効果的に働きます。
さらに、サクランボの果肉の赤や紫色は、ポリフェノールの一種アントシアニンという色素であり、毛細血管の強化、目の疲れの回復、また生活習慣病や老化の原因となる活性酸素の生成を抑える働きもあります。
またサクランボに多く含まれる「ソルビトール」は虫歯予防にも使われている天然甘味料で便秘の改善に期待できます。
![]() ■ サクランボの種類
● 佐藤錦
今やさくらんぼの代名詞ともなった一番人気の品種。
親は「ナポレオン」×「黄玉」で、山形の佐藤栄助氏によって育成され、1914年(大正3年)に命名されました。
果肉は乳白色で甘みと酸味のバランスがよく、食味も優れています。
シーズンは6月中旬?下旬頃。
● ナポレオン
粒がやや大きめでハート形をしてます。
ヨーロッパでは古くから栽培されていた品種で、1872年(明治5年)に日本に導入されました。
果肉はクリーム色で果汁が多く、それでいて歯ごたえのある濃厚な味わいです。
収穫時期は7月上旬頃。
● 紅秀峰
「佐藤錦」と「天香錦」を交配したもので、1991年(平成3年)に品種登録されました。
果肉はクリーム色でややかたく、比較的日持ちするほうです。
酸味が少なく糖度が高いため、甘いサクランボとして人気。
7月上旬頃から出回ります。
● 高砂
高砂(たかさご)はアメリカ生まれで、日本へは1872年(明治5年)に伝わりました。
果肉は乳白色で果汁が多く、適度な酸味とほどよい甘さの人気種です。
出荷は6月中旬頃から。
● 北光(水門)
明治時代に北海道小樽市で発見された品種です。
正式名称は「北光(ほっこう)」ですが、「水門(すいもん)」で流通していることが多いようです。
果頂がややとがっていて果肉はやや柔らかく、甘酸が調和したコクのある味わいがあります。
時期は6月下旬頃から。
● 南陽
粒が大きめで甘みがしっかりあるサクランボ。
果肉はややかためですがジューシーです。
山形県で「ナポレオン」の自然交雑から誕生し、1978年(昭和53年)に登録されました。
主に北海道で栽培され、7月下旬頃まで収穫されます。
● 香夏錦
「佐藤錦」×「高砂」で、1984年(昭和59年)に品種登録されました。
果肉や柔らかめで、平均6gくらいの中サイズ。
糖度は高めでやさしい酸味があります。
6月上旬頃から収穫される早生種です。
● 紅さやか
「佐藤錦」×「セネカ」の交配で、1991年(平成3年)に品種登録されました。
サイズは6g前後で、果皮は朱色?紫黒色、果肉はきれいな赤色です。
適度な甘みと酸味があり、6月上旬頃から出回ります。
● 豊錦(ゆたかにしき)
主に山梨で栽培されている早生種。
「ジャボレー」、「高砂」、「ナポレオン」などを栽培している農園で偶然発見され、1986年(昭和61年)に登録されました。
果肉がやわらかく、甘みの中に酸味が少しあります。
収穫時期は6月上旬頃。
● 大将錦
「ナポレオン」や「高砂」、「佐藤錦」などが栽培されている農園で偶然発見された品種で、1990年(平成2年)に登録されました。
7月上旬から出回る晩生種で、果肉はやや硬めです。
外観は短心臓形で粒は10g程度と大きく、酸味が少なく甘みの多いさくらんぼです。
● ジャボレー
フランス生まれで、1908年(明治41年)頃に日本に導入されました。
果肉は赤くてやわらかく、甘さは控えめで酸味があります。
収穫の時期は6月上旬頃と早め。
● 月山錦
月山錦(がっさんにしき)は果皮が黄色く、甘みの強い大粒のサクランボです。
中国から導入された品種で、国内では生産高が少ないため希少価値が高く、味もよいので贈答品としても喜ばれます。
収穫は6月下旬?7月中旬頃。
● アメリカンチェリー
アメリカ原産のサクランボ。
大粒で酸味が少なく甘いのが特徴です。
価格は比較的手頃でスーパーでもよく目にします。
黒紫色の「ビング」と赤色の「レーニア(レイニア)」などが代表的。
このほかにも「ブルックス」、「ツラーレ」などの品種があります。
■ サクランボ その他の品種
● フランスワン
このさくらんぼは山形県産の「フランスワン」という品種です。
外観や果肉の色はアメリカンチェリーの「ビング」に似ていますが、サイズはビングに比べるとやや小さめ。
果肉はソフトで多汁です。
糖度は17〜20度ほどあり甘味が強く、酸味も適度で濃厚な味わい。
● 小夏
山形県生まれで親は「セネカ」×「佐藤錦」です。
果肉の色は基本的に乳白色らしいのですが、この小夏はよほど熟していたのか濃い赤でした。
味は、甘酸のバランスがよく濃厚な味わいで、口の中にジュワーっと広がる果汁のおいしさに満足しました。
● 正光錦
1987年に登録された品種で、「香夏錦」の自然交雑実生として誕生したそうです。果肉が少しやわらかめで、1粒8g程度。
糖度は18〜19度と甘く、酸味は少〜中程度でした。
● 山形美人
これは「佐藤錦」の枝変わりとして1998年(平成10年)に登録された品種で、果皮の色は濃い紅色をしています。
甘みが強く、それでいて酸味もほどよく味わい豊か。
しかもジューシーでコクもありとても美味でした。
● サクランボ酒の作り方
疲労回復などの薬用酒としての効果も有り。
毎日寝る前にさかずき1杯飲むと効果が期待できます。 【材 料】
・サクランボ・・・1kg ・ホワイトリカー・・・1.8リットル ・氷砂糖・・・150g〜200g
【手 順】
@ 先に熟成用のびんは熱湯殺菌し、完全に乾かしておきます。
A サクランボを水で洗い、種とじくはつけたまま(お好みでとっても結構ですが、
リカーがにごってしまうのであまりお勧めできません)、
きれいな布で水分をよくふきとります。
B サクランボと氷砂糖を交互にびんに入れていき、
上からホワイトリカーを注ぎこみ、2ヵ月(理想は5ヶ月)間寝かせます。
冷暗所に置いて、砂糖がよく溶けるように時々びんをゆらしてください。
C 数ヶ月寝かせた後、サクランボを取り出します。
(取り出したサクランボは、そのままでも、チョコレートがけ等に使っても
美味しく召し上がれます。)
お酒の方は、別のびんにガーゼをかぶせて濾しながら移し変えます。 この状態でも飲めますが、さらに寝かせた方が味がまろやかになります。
寝かせた場合、それから1ヵ月で飲めるようになりますが、
熟成するまで最低2ヵ月はみておきましょう。
■ サクランボの童話
「ほらふき男爵 シカのサクランボウ」
ビュルガーの童話 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
みんなからは、『ほらふき男爵』と呼ばれておる。
なぜかだって?
それはだな、わがはいの冒険があまりにもすごいので、みんな信用せずにほらだと思っておるからじゃ。
なに、わがはいの話を聞きたいじゃと。
そうか、よしよし。それなら、こんな話はどうじゃな。
ある日、わがはいは狩りをしに森に行った。
すると、大きくて立派なシカが現れたのじゃ。
「よし、こいつをしとめてやろう」
と、鉄砲をかまえたが、あいにく玉切れじゃ。
そこで落ちていたサクランボウのタネを、鉄砲に詰めて、
「ズドン!」と、おみまいしてやった。
ところがシカは、そのまま逃げてしまったのじゃ。
玉は確かに、シカの頭に命中したはずなのに。
さて、次の年の事。
わがはいは、再びそのシカに出会った。
なぜ、同じシカだとわかったのか?
それはシカの頭から3メートルものサクランボウの木が生えており、サクランボウがたくさん実っていたからじゃ。
いやはや、そのサクランボウのおいしかったこと。
ではまた次の機会に、別の話をしてやろうな。
おしまい
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