■ 野菜・果物と健康 (125)
 
日本人のための食養生活
これを食べれば
医者はいらない
若杉友子 社祥伝社刊 より  その7
 
F からだにいい食材、注意すべき食材
 
●なぜ白砂糖は危険なのか?
 
ケーキ、クッキー、チョコレート、コーラ、ジュースなどの世の中には、白砂糖で甘くした食品があきれるくらい多く出回っています。
「消化吸収がよく、すぐエネルギー補給できる」
「能にエネルギーがまわり、集中力がます」
「甘いものを口にすると幸せな気分になる」
といった宣伝文句に釣られ、ついつい甘いものに手が伸びてしまうかもしれないけど、白砂糖は極悪食品。「百害あって一利なし」だから、なるべく食べないようにしてちょうだいね。
 
それにしても、からだを温め、血を作る塩があれだけ目の敵にされているというのに、なぜからだを冷やし、血を汚してしまう白砂糖の害についてはあまり取り上げられないのか?
私は不思議でなりません。
 
何度も言うようだけど、世の中に広く出回っていて、多くの人が口にしているからといって必ずしも安心というわけではないんです。
砂糖の害についてはずいぶん甘口で語られてきたよう泣きがするので、ここで私がびしっと辛口で話しておきましょう。
 
白砂糖は、サトウキビを絞り、石炭、炭素、亜硫酸、亜硫酸ガスを使って煮つめ、不純物を取り除いてからホウ酸塩や塩素を加えて精製し、塩素などの無機酸で漂白して作ります。
精製する過程でサトウキビに含まれていたミネラルやビタミンなどの微量栄養素は全部失われてしまうので、白砂糖は化学薬品のようなもの。
 
消化吸収が早いので、白砂糖が大量にからだに入ると血糖値が急激に上がってしまいます。
そして、それを下げようとしてインスリンが過剰に分泌され、逆に血糖値が下がりすぎて低血糖になってしまうんです。
 
低血糖が続くと、今度は血糖値を上昇させようとしてアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンというのは興奮状態のときに放出されるホルモンで、出すぎると、脳が正常な判断ができなくなってしまう。
イライラしたり、切れやすくなったり、暴力的になったり、眠れなくなったりするんですね。
 
一頃、切れる子供が多い話題となっていたけど、スナック菓子や清涼飲料水に含まれている砂糖が、子供たちの心身を狂わせていたといってもいいくらいです。
手軽に食べられるから、子供が食べたがるからという理由で、親がつい与えてしまうんだろうけど、気性の荒い子供にしたくないのであれば、たとえどんなにせがまれたとしても、砂糖の入ったお菓子やジュースなど与えてはいけません。
 
それからもう一つ。
砂糖は酸性食品なので、大量に取り込むと、中和するのにからだの中にあるミネラル分、特にカルシウムが使われます。
砂糖にカルシウムが含まれていないので、中和に必要なカルシウムはからだの骨や歯から溶かして供給されることになります。
「甘いものを食べると虫歯になる」とよく言われるのは、カルシウムが溶け出すことで歯そのものが弱くなってしまうから。
歯と同じように骨からもカルシウムが溶け出すので、骨ももろくなってしまうんです。
 
また、糖類はからだで分解されるときビタミンB1が欠乏して、疲れ、めまい、貧血、うつ、記憶力の低下といった障害を引き起こしてしまうんです。
 
ご飯やいもなども糖質を含みますが、これらはビタミンを含む野菜や海藻類と一緒に食べることが多いので、ビタミンの欠乏を心配することはありません。
でも、甘いものというのは野菜と一緒に食べたりしませんよね。
だから特に気をつけてなくてはいけないんです。
 
さらに白砂糖な滞在製、増量性、習慣性という特性を持っているから厄介なんです。
滞在性というのは、白砂糖を食べていてもすぐに変化が起きないので、病気の進行に気づかないこと。
増量性というのは、使っているうちに甘味になれ、甘味が感じられなくなり量が増えていくこと。
習慣性というのは、白砂糖の入った甘いお菓子を食べ続けていると、次がほしくなりやめられなくなることです。
甘い誘惑に負けてしまったら、泥沼地獄に陥るというわけです。
 
アメリカの有機農法の父といわれ、栄養学の権威とされるJ・I・ローデル博士は「砂糖をもし栄養だというものがあるなら、一度家畜に与えてみるがよい。たちまち病気になり死ぬ。百害あって一利なし。この毒物はむしろ地上から一掃してしまったほうがましである」と言っています。
 
そして私は、「砂糖をなくすだけで、病気の半分以上は改善される」と講演会や料理教室で語っているんです。
 
甘いものをやめるだけで病気が治れば世話がないと思うかもしれませんが、実際に甘いものをやめて体調がよくなった人を、私はこれまでに何十人も見てきました。
甘いものが大好きで、体調が優れないという人は、とりあえず甘いものを断ってみてください。
 
とはいえ、急に白砂糖を排除してしまうのは難しいという人もいるでしょう。
そういう人は精製していない黒砂糖、キビ糖、てんさい糖、メイプルシュガー、水飴など、カルシウム、ミネラルが含まれた糖類を使ってください。
これらは、化学物質の白砂糖と違い、食品だからです。
でも、糖類であることに変わりはないので、くれぐれも摂りすぎないように。
 
ちなみに、三温糖は白砂糖と同じく化学物質です。
褐色なので白砂糖より黒砂糖に近いものと誤解している人がいるようだけど、あれは白砂糖を着色したもの。
白砂糖よりさらに悪いということをしっかり覚えておいてちょうだいね。
 
 
●白砂糖よりさらに悪い人工甘味料
 
白砂糖より、三温糖よりもっと悪いのが人工甘味料。
白砂糖はカロリーが高いということで、白砂糖の数十害、数百倍の甘さを持ちながら、カロリーは何十分の一といった人工甘味料が出回り、さまざまな食品に添加されています。
カロリーが低い=健康的と誤解されがちだけど、人工甘味料は、白砂糖にまさる極悪食品。超極悪食品なんです。
 
アスパルテーム、トレハロース、スクラロース、ステビアなどが人工甘味料の代表選手で、清涼飲料水、発泡酒、ビール、シュガーレスチョコ、ガム、飴、アイス、スナック類、菓子パン、練り製品、お惣菜、ダイエット食品などありとあらゆるものに添加されています。
 
戦後の貧しい時代、砂糖不足からアメリカから入ってきたサッカリン、ズルチンといった人工甘味料が普及しました。
私の家も貧しかったので、白い玉のサッカリンを買って、おかずを炊き、ぜんざいを作って食べてきました。
ところがその後、サッカリンやズルチンは安全性に問題があることがわかり、社会問題になり、発売が中止されました。
さんざんみんながからだに取り入れた後のことです。
 
アスパルテーム、スクラロース、ステビアなど名前は違っていても、サッカリンやズルチンと同じ人工甘味料であることには変わりはありません。
サッカリンやズルチンなどのようにいつ社会問題になることかしれやしません。
 
世界中の国々で認可され使われている人工甘味料ではあるけれど、脳神経や染色体、遺伝子を傷つけると指摘している研究者だって沢山いるんです。
 
逆に「人工甘味料は安全だ」という研究者もいるでしょう。
でも、営利目的の企業やそれらの企業と関係のある研究者が言う「安全」など、鵜呑みにするわけにはいかないんです。
サッカリンの二の舞はまっぴらご免ですからね。
 
ましてや、昨年(2011年)は国家をあげて「安全」といってきた原子力発電所が、大事故を起こした。
それを目の当たりにした私たちは「安全神話」が崩れることを忘れてはいけないんです。
「安全」といわれるものの安全性を疑う目を持たなくてはいけないんです。
 
人工甘味料を毎日とり続けていると、体に大きな悪影響が及びます。
今は本当にいろいろなものに人工甘味料が添加されているので、食品を買うときには、成分表示を必ず確認するようにして、添加物がなるべく少ないものを選ぶようにしなくちゃね。
 
出回っているから大丈夫、安全だといわれているから大丈夫と判断を他人に委ねるのでなく、自分や家族の健康を守るためには、自分でしっかり判断し、添加物の多い食品は買わない、あげない、もらわないという自主的な姿勢を持つことが大事なんですよ。
 
 
●大豆はからだを冷やす、どう食べるか
 
「畑の肉」といわれ、健康にいい食品の筆頭に上げられる大豆。
確かに大豆を原料にしてつくられる味噌、しょう油はからだにいいけれど、熟成・醗酵しない状態の大豆は、からだにいいとはいえません。
 
江戸時代の文献に「米はその性、温なり。小麦はその性、微寒なり。大豆はその性、寒なり」と書かれています。
「寒」というのは、からだを冷やす働きがあるということ。
実際に大豆の組成を調べてみるナトリウムとカリウムの比率がと1対560。
からだを温める元素ナトリウムに対して、からだを冷やすナトリウムが圧倒的に多いんです。
 
昔の人は、ナトリウム元素やカリウム元素のことは知らなかっただろうけど、食習慣の中で大豆がからだを冷やすということを経験的に知っていたんですね。
その証拠に、昔、豆腐は熱取りに使われていました。
子供が熱を出したときに豆腐を額に載せるとあっという間に熱が下がっちゃう。
それくらい、大豆は人のからだを冷やすというわけです。
 
豆乳を飲んでいて血尿が出てきたという人が結構多いけど、大豆に含まれるカリウムが尿細管を切ってしまうことが原因です。
特に妊娠中のお母さんが豆乳を飲んだり、大豆製品を食べると、お腹の中の子供が虚弱になって低体温で、血の気のない状態で弱々しく生まれてくるんです。
 
タンパク質が豊富な上に低カロリーということで、豆腐や納豆、豆乳は、からだにいい食品の王様のように言われているけれど、低体温の人にとっては、からだをますます冷やしてしまう悪い食品。
 
豆腐を食べるときは、からだを冷やす陰性食品だと心得た上で、湯豆腐でからだを温める薬味としょう油を一緒に食べたり、味噌汁の具にして食べるなどしましょう。
陰性の食べものでも調理法や一緒に食べる食材で、中庸に持っていく。
そういう工夫をすることが大切です。
 
ではなぜ、同じ大豆を原料としているのに、味噌やしょう油がいいのかというと、時間をかけて醗酵・熟成させているからです。
長い時間をかけることで、カリウム元素がナトリウム元素に原子転換していくんです。
 
醗酵させることでナトリウムが増えるのなら、納豆も同じじゃないの?
と思うかもしれないけど、今の納豆は人工の納豆菌を使って短時間で大量生産されているもの。
自然の摂理からかけ離れた作り方をしているから、むしろからだに悪いんです。
 
お酢も、血液の流れをよくし疲労を回復してくれるといわれ、健康的なアルカリ性食品というイメージが強いようだけど、これもまたからだを冷やす極陰性の食品。
千枚漬けという漬物があるけれど、陰性のカブを極陰性の酢と極陰性の砂糖で漬けたものであり、陰性が三重になってしまっているので、低体温の人には危険な食べ物なんですよ。
 
広告の宣伝文句に煽(あお)られて、素直に何で「いい」と思うのではなく、自分のからだにとってどうなのかということを考え、自覚して食べ物を摂るべきです。
 
ついでに言っておくと、料理のとろみをつけるときに使う片栗粉もからだを冷やしてしまいます。
片栗粉の原料はジャガイモで、ジャガイモはナス科の植物。
だから私の料理教室では、「片栗粉は使っちゃ駄目よ」といって、代わりに葛粉(くずこ)を使っているんです。
葛粉は整腸作用があるので、とろみをつけるのであれば、片栗粉ではなく葛粉を使おうというわけです。
 
わずかなこととはいえ、その食材が自分のからだにどんな働きをもたらすのかを知り、使っていく。
そうした積み重ねによって、からだが変わり、健康になっていくんです。
 
 
●なぜ魚の干物はからだによくないのか?
 
日本は海に囲まれた島国、水産資源に恵まれているため、日本人は昔から魚や貝を沢山食べてきました。
魚の加工品も多く、干物や鰹節は日本人にとってはお馴染みの食品となっていますよね。
 
干物は日持ちがするし、おいしいし、好んで食べる人も多いと思うけど、なるべく干物は食べないほうがいい。
天日で干しているのなら、野菜と同じように旨味が増してよいのではないかと思うでしょうが、野菜と違って魚には脂肪やタンパクが含まれています。
太陽の熱や光を受けると魚の脂肪やタンパクが酸化現象を起こしてしまう。
いってみれば老化していくわけです。
 
酸化現象が進むと過酸化脂質がどんどん増えていきます。
過酸化脂質というのは血液を汚して血栓の原因になるといわれています。
過酸化脂質の多い干物を焼いて食べると、食べた人の血液まで酸化してしまう。
つまり、血液を汚してしまうんです。
血液が汚れると、肝臓が汚れ、病気の原因になったり、白髪の原因になってしまうんです。
 
ニボシも干しているので酸化しています。
しかもニボシの場合は、魚を茹でるときにオキシフルなどいろいろな薬品を入れています。
その時点で既によろしくないということはわかりますよね。
 
ニボシでとっただしは悪臭がします。
上に浮いてきた脂を和紙でとって臭いを嗅ぐとすごく臭い。
腐敗したにおいです。
ニボシで出汁をとると、悪いものまで一緒に食べなければいけなくなる。
だから出汁はニボシでとるなといっているんです。
お出汁をとるんだったら、鰹節か椎茸か昆布です。
 
なぜニボシが悪くて鰹節がいいかというと、鰹節は湯がいて燻蒸しているからです。
湯がく段階、燻蒸する段階で、それぞれに鰹の脂が落ちる。
だから酸化現象も起こらず、出汁をとったときにもいい香りがするんです。
 
おかずとして魚を食べる場合は、とれたての新鮮なもの、養殖ではなく天然のものにしましょう。
刺身にする場合は、近海で取れた魚は生姜を薬味にし、遠洋でとれた魚はワサビを薬味にする。
そうすれば魚の毒を消してくれます。
 
 
●「有機栽培」の注意点
 
安心で安全な野菜を食べたいと思うなら自分で野菜を作るのが一番いいのですが、都会にすんでいるとそういうわけにもいきません。
自分でつくれないという人は、自然食品店に行くことになるんでしょうけど、一つ注意しておきたいことがあります。
 
「有機栽培」と表示されていれば、何もかも安心・安全というわけではないということです。
有機栽培というのは、農薬や化学肥料の代わりに鶏糞や牛糞を肥料として使っています。
肥料になっているその鶏糞や牛糞がどういうものであるかが、問題なんです。
 
自然に育った牧草を食べて育った鶏や牛の糞であれば、それを肥料として栽培された野菜も安心して食べられます。
でも、人工の合成飼料で薬漬けのようになって飼育された鶏や牛の糞を使って栽培された野菜だとしたらどうでしょう?
 
人工飼料を使っている鶏舎や牛舎の周辺は、鼻が曲がりそうになるくらい臭いがきついけれど、最近はその臭いをとるために、餌の中に脱臭剤を混ぜているそうです。
そうしたところで飼育されている鶏や牛は、早く大きく育つようにと成長ホルモン剤や女性ホルモン剤もいっぱい与えられています。
 
脱臭剤、成長ホルモン剤、女性ホルモン剤がたっぷり入った合成飼料を食べて育った鶏や牛、その糞を粉末にして畑にまいて、「有機栽培」と言ってしまえるのだから、恐ろしいことです。
 
自然食品店で売っているからといって、すべてが100%安全・安心というわけではないんです。
 
やたらめったら買うのではなく、「これはどこのどういう生産者が作っているんですか?」「その方はどういう肥料を使っているんですか?」ということまで確認して、自分が食べる食材を選んだほうがいいでしょう。
 
 
●野草の命は本物。
自然の恵みはどこにでもある
 
私は、自分で作った米や野菜のほか、野山に生えている野草を摘んできては料理して食べています。
人間が栽培しなくても、自分の力で勝手に生えてくる野草はすごい生命力を持っています。
抜いても抜いても次から次へと生えてくる。
だから、百姓が一番嫌がるのが草なんです。
 
私が、この強い生命力を持っている野草を食べ始めたのは、静岡にいた頃のこと。
桜沢如一の食養に出会い、食べ物について勉強するようになったことがきっかけです。
誰の世話にもならず、万古末代、本物の命をつないでいる野草をいただいたら、からだにたまっていた毒素が排出されて、からだが生まれ変わり、今まで以上に元気になるだろうと思われたからです。
 
75歳になっても私がこんなに元気でいられるのも、野草のパワーのお陰というわけです。
 
いくら野草がいいといっても都会には自生していないよ、と言われそうですが、そんなことはありません。
 
4年前に東京都が管理している世田谷の公園で、野草を摘み、それを料理するというイベントを開催したことがあります。
50人を超える参加者みんなでその公園を歩き回り野草を探したんですが、セリがあったり、ノビルがあったり、思っていた以上に食べられる野草が見つかりました。
 
あの時はお母さんに連れられてきた子供も多かった。
自分たちで摘んだ野草を、これまた自分たちで積み上げた石のかまどで、自分たちで拾ってきた薪(たきぎ)で火を起こし、そこに鍋をかけて料理したんです。
 
野草などそれまで一度も口にしたことのない子供が「楽しかった」「おいしかった」「またやりたい」と口々に言うではありませんか。
 
生まれたときから欧米化した食生活を送ってきた子供たちにも、野草のおいしさがわかったんでしょうね。
 
都会だから無理とあきらめることはないんです。
探してみれば何かしら食べられる野草は見つかるだろうし、もしなかったら、田舎に遊びに行ったときに野草を摘んできて、家のプランターで育てていればいいんです。
ひ弱な観葉植物なんか育てているのと違って、野草は手をかけなくても自然に育ってくれますよ。
 
以前私の料理教室に通っていた女性で、結婚してハワイで暮らしている人がいます。
野草のパワーのすごさを知った彼女は、ハワイでの何とか野草を食べたいと思ったんですね。
ためしにヨモギやタンポポ、ノビルを日本からもって行き、ハワイの土地に植えたら、結構増えたということでしたよ。
 
たとえばヨモギは味噌汁や天ぷら、タンポポはサラダ、ノビルはヌタなどに調理できますが、詳しくは『野草の力をいただいて』『若杉友子の野草料理教室』を見てくださいね。
 
今、綾部には農業をやりたいといって、若い人たちがどんどん入ってきています。
田舎という新天地の環境の中で何ができるかを考えて、それを実践、実行すればいいんです。
少しずつでいいから、できることからはじめる。
それが自分のからだを変え、ひいては社会のあり方を変えていくきっかけになるのだと思います。
 
 
 
 
◎若杉ばあちゃんの仲間達ーー[4]
斉藤典加さん
若杉ばあちゃんの長女。
結婚・出産を意識し始めた20代の頃から食養に興味を持ち始め、母から食養と料理を学ぶ。
結婚し一女二男をもうけたあと、1995年、母とともに京都府綾部市に移住。
2006年にきらり上林を立ち上げ、若杉ばあちゃんの野草料理教室・セミナーの開催、在来種農作物の栽培、新規就農支援、しょう油作り講習会の開催、風土祭り主催など地元の魅力を発信し続け、2011年「ココロとカラダが元気になる調理教室」を開催し、2012年レシピ本を発行。
 
 
母が食養を始めたのは私が高校生のときでした。
肉、牛乳、卵などの動物性タンパク食ないといわれ、大好きだったハンバーグも蓮根や小麦グルテンで作られるようになり、切ない思いをしたことを思い出します。
 
食卓が穀物菜食になり、特に女の私には母から食の大切さや西洋栄養学が日本人の体質に合わないこと、現在のお産や難産や流産、早産、生まれてきた子供はアトピーなどの病気で苦しんでいることを聞き、真実の食を知るために短大へ進学し、栄養学を学ぶことにしました。
 
寮生活ではスナック菓子やカップラーメン、炭酸飲料など、それまでめったに口にしたことがなかったものを親の目を盗んで食べたりもしました。
胃痛や下痢、嘔吐など、今まで体験したことのない症状に驚きました。
そのお陰でからだに変調をきたすようなものを食べ続けられないと、自分でご飯を炊き、料理を作るようになりました。
 
自ら台所に立つという新たな習慣が影響したのでしょうか、2年に進級した頃から、母が言う食養の教えが自分の中で回りだしたのです。
カロリー重視の栄養学よりも、母の言っていることのほうが感覚的に納得できると思ったのです。
2年間栄養学を学んだものの、最終的に得られるものは何もありませんでした。
 
短大を卒業後、一般企業に就職しましたが、2年間で退職し、家に戻りました。
短大時代に知り合っていた人と結婚を考えており、「健康な子供を生みたい」という気持ちから、母の食用を学ぼうと思ったのです。
母がやっている料理教室で2年間アシスタントをしながら料理を学び、24歳で結婚しました。
 
ひとりめを妊娠すると、排毒が始まりました。
体中に湿疹が出て、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど、花粉症のような症状が起き、排毒の辛さを体験しました。
保健所では子供の分も3度3度食べなさいと指導されましたが、母からは
「お腹が減ったら食べたらいい」、「お腹が空かないなら子供はいらないっていっているんだから食べなくていい」
と諭され、1日1食の生活が続きました。
 
お腹は臨月が来ても小柄でしたが、体は軽くて体調はとてもよく、助産婦さんがびっくりするほどの安産でした。
 
娘はしばらくすると顔に湿疹が出てアトピーといわれましたが、薬は1度も使用せず、食事に気をつけ、ヨモギ風呂で手当てするなどして半年ほどできれいに完治しました。
 
それから2人の男子を自宅で出産。
野草がからだに入ると、お産がとっても楽で、母乳に困ることなく、みんな布おむつで育ちました。
食事の大切さや昔に育児のことなど、母ゆえに衝突することもありましたが、妊娠、出産、育児を経験することにより、母が言うとおり、食養はすばらしいと感じました。
 
綾部に移り住んだのは今から15年前。
夫が単身赴任で海外へ行ったため、3人の子供を連れて私は静岡の実家へ戻り、母と一緒に田舎の家を1年かけて探し、綾部にご縁をいただきました。
5年間母と暮らし、食用、野草料理、手間隙惜しまない昔ながらの暮らしを教えてもらいました。
 
現在私は、母が暮らす家から車で10分ほどの場所に住んでいます。
食の根本である農業を改革しなければならないと考え、F1種を一切使わずに、在来種による栽培に取り組んでいます。
 
2006年には廃校になった小学校で母の野草料理教室を主宰し、翌年に「食と命と暮らしのセミナー」を開催、そして、高齢化により耕作放棄地にて無農薬・低農薬の米づくり「きらり上林米」を販売、定住促進のサポート活動、しょう油絞り師の夫とともにしょう油造り、そして2010年には風土祭りを主催し、地域の魅力を発信しています。
「風土」は食物を意味する英語の「Food(フード)」をイメージさせるとともに、他の場所から流れてくる「風邪」と地元に根付いた「土」の交流を表しています。
つまり、他所から来た人やもの、もともとそこにある人や物が年に一度交流する場が「風土祭り」と言うわけです。
初年度も次年度も好評を得て、イベント会場には農作物や加工食品を始め、手作りの生活雑貨を販売する店が約100店舗並び、限界集落に1500人もの人々が集まってきました。
 
そして2011年4月、私も母と同じ道を歩くべく、料理教室を開催することになりました。
母の料理教室にこられたグループの方が、私のイベントで野草料理を召し上がっていただく機会があり、依頼されて引き受けていたのですが、私自身、料理をつくることは好きなのですが、母のように魅力や料理の腕があるわけでもなく、ましてや作りながら教えるなんて器用なことができるのか不安でした。
 
半年前まで料理教室をしながら戸惑いもありましたが、1年間続けてきたお陰で、私は私らしく大切な食のことをお伝えさせていただいたらいいのかなと思うようになりました。
 
実際料理教室を開催してみるとからだのこと、子育てに悩んでいる若い女性たちと出会うことで母の思いを感じることができました、
私は母のお陰で食の大切さを知り、子供を菜食で育てることもできましたし、今こうして健康で家族が幸せであることも含めて母のお陰だとつくづく感じています。
私の子育て、食、農を含めた暮らしの体験がどんな役に立つのかわかりませんが、これからもご縁のある方にお伝えさせていただいたらのかなと思うようになりました。
 
娘に生まれてきてよかった」と改めて伝えたいと思います。
出産、子育て、農業、料理教室と忙しかったためかこれまで考えもしなかったけれど、母は私が女性としてからだをつくっていく時期に、そして出産する時期に、私の体に悪いものを入れさせないようにと、守ってきてくれたのです。
そのことにようやく気づくことができました。
私を守ってくれたこと、そして人が食べていく上で大切なことをいろいろと教えてくれたことに、改めて感謝します。
 
母がどういう気持ちで講演活動や料理教室を続けてきたのか、娘としてようやく理解できるようになった今、母と同じことはできないけれど、同じ道を歩き、母の後姿を追いかけて生きたいと思います。