■ 野菜・果物と健康 (131)
データが語る
『おいしい野菜の健康力』
及川紀久雄・丹羽真清・霜多増雄 著
丸善刊 より その4
2 野菜の健康力とは の2
●7章 体の抗酸化力、免疫力を高める
食事メニューとジュース
■ 野菜1日350gは難しい?
厚生労働省は2001年から推進している「健康日本21」では、10年後の成人1日の野菜摂取目標を350gとしていますが、2007年に発表された中間報告によると、日本人が実際に食べている野菜の量は、この運動が始まった当時の292gから267gへと1割近くも減ってしまいました。
今後、今傾向は逆転するでしょうか。
国が号令して国民の食生活を変える難しさを感じます。
発想を転換してみてはどうでしょう。
1日の目標を350gという野菜の重さで考えるのではなく、350g分の野菜の健康力=抗酸化力を摂ろう、ということです。
主要野菜の抗酸化力を1年間計りました。
同じ野菜で同じ圃場から収穫されたものでも抗酸化力の違いがあります。
また、季節による違いが出ることもあります。
同じ重量の野菜を食べても、摂取できる抗酸化力が違う、ということになるわけです。
抗酸化力の単位は、現段階ではまだ確定されていません。
そこで単位という意の「ユニット」で表してお話します。
平均的な野菜350gには約4000ユニットの抗酸化力があるとします。
この4000ユニットという数字は、抗酸化力の強い野菜なら270gで摂ることができるのです。
「健康日本21」の中間報告で、野菜摂取の実態として報告された量は267gですから、270gは無理ではありません。
今こそ野菜は、量ではなく質で摂るという考え方に転換する必要があるのではないでしょうか。
それは、野菜を重さや外見だけではなく、中身の健康力=抗酸化力という質で評価することにもつながります。
抗酸化力の高い野菜は、値段も少し高くても食べる価値があります。
健康力のある野菜を高く評価することによって、土づくりからしっかり農業生産に取り組んでいる方たちが農業技術を継承していくことを応援することにもなります。
■ 体の抗酸化力、免疫力を高める食事メニュー
素材として野菜そのものが持つコウサンカリョクから発展させ、それを加工する段階での調理方法と抗酸化力の関係について、皿に食べるという始点からコウサンカリョク、免疫力を考えて見ましょう。
米国では既に一部の加工食品に抗酸化力を表示して販売しています。
日本でも、野菜に表示しようという動きが始まっています。
この領域で私たちデイナフーズ(株)には膨大な量のデータがあり、野菜そのものだけでなく、単品のメニュー、食事として考えたときの抗酸化力についても分析しています。
メニューにはいくつかの素材が使われます。
その素材が持つ抗酸化力がわかれば、組み合わせを変えることによって、より健康力の強いメニューを作ることが可能になります。
たとえばレタス、きゅうり、トマトを使ったサラダに、ロメインレタスとパブリカを加えるとスーパーオキシドとヒドロキシラジカルを消去する力を高くして、より抗酸化力の強いサラダを作ることができるということです。
■ ジュースの実験からわかったこと
免疫の中心的な役割をになう白血球。
そのなかの顆粒球とリンパ球の割合は、季節や気象によって変動します。
この顆粒球とリンパ球の増減に、食はどのような影響があるのでしょうか。
免疫と食との関係を調べるために、デザイナーフーズ(株)が行った実験についてお話します。
実験は、3月に、レタス、キャベツ、リンゴ、レモンという、冬の食材を生の状態でミックスしたジュースを毎日200cc、4週間飲み続けるというものです。
実験前に採血して、顆粒球とリンパ球の割合を調べ、2週間後、4週間後とみていきました。
冬の顆粒球とリンパ球の割合は、1対1.7が理想です。
実験の4週間後には、顆粒球とリンパ球の割合は1対1.5〜2.0。
増減の最大最少では、1対1〜2.5の幅で増えていました。
これは、季節の野菜を食べることによって顆粒球とリンパ球のバランスが取れるということ、そこに冬には冬の野菜を食べる意味のあることを示しています。
とすると、トマト、きゅうり、ナスなどの果菜類を1年中食べることは、少し問題なのではないか。
夏に、ほうれん草などの冬野菜を食べることは、顆粒球とリンパ球のバランスをくずすのではないか、ということが考えられます。
野菜ジュースを飲みつづけることで、血液中の過酸化脂質はどう変化するか。
2週目、4週目と着実に減っていることがわかります。
過酸化脂質が減少しているということは、細胞膜を酸化させない効果があるということです。
それはDNAの損傷を防ぎ、がん予防につながるといっていいでしょう。
●8章 健康に良い野菜は
硝酸濃度が少なく抗酸化力が高い
デザイナーフーズ(株)は、フードサービス業で使う野菜を供給する青果物の販売会社、デリカフーズグループの研究部門です。
東京・大阪・名古屋のデリカフーズの分析担当者は毎日入荷してくる野菜の主要品目の分析をしており、日本中の生産地の野菜のデータがあります。
分析は、ビタミンC、糖度、硝酸イオン、抗酸化力(DPPH法)の4項目について行い、野菜のデータベースを作成しました。
このデータをもとに契約栽培の野菜の機能性の価値判断をしています。
約4年間通して分析したデータからみると、1〜3月の抗酸化力、糖度が高く、硝酸イオンが低いということが。
ビタミンCは年間を通して、それほど変わらないということがわかります。
硝酸イオンの測定は、お客様から、硝酸イオンの少ない野菜を提供してほしいという要望があり、1998年頃から始めたのですが、簡単に測れる方法でもあり、毎日の出荷前の分析項目にしています。
硝酸イオンについて少しお話しすると、10年ほど前に東京都の衛生研究所による野菜の硝酸イオン分析がニュースになりました。
それまで、日本ではあまり問題にされていなかった物質ですから、突然の動きに生産者はとまどいましたし、何も知らされてなかった消費者の不安をあおることになりかねません。
そこで、私たちは、根菜類、葉菜類、果菜類・・・・・・と、ありとあらゆる野菜の硝酸イオン測定をすることにしたのです。
その結果、わかってきたことがいくつかあります。
品目別には、大根は予想より高く、葉菜類では、チンゲンサイ、パクチョい、小松菜などに、非常に高い値のものがありませんでした。
世の中には2500ppmを超えるものが多く出回っていますが、食べておいしいと思える野菜は、500ppmぐらいです。
また、硝酸イオンの少ない野菜は、有機栽培か化学肥料で栽培されたかが問題ではなく、適期に収穫されて、しっかり太陽光線を浴びた野菜であり、必要な栽培期間を経ることによって、窒素がアミノ酸に変化し、おいしくなることもわかりました。
デリカフーズグループの仕事は、フードサービス業に、年間通して同じ種類の野菜を供給することが使命でした。
ところが、分析を重ねていくうちに、分析の結果と、食べておいしいという結果の相関関係が見えてきたことから、季節に季節の野菜を供給することが大事だと実感するようになったのです。
そこで、ほうれん草を旬の時期に使っていただきたい、食べていただきたいと考え、分析した結果をお知らせして、旬の野菜はおいしくチカラがあることをお話してきました。
理解いただくまでに少し時間がかかりましたが、現在、ほうれん草は冬の野菜と決めて使っていただけるようところが多くなりました。
このように、旬や地産地消、おいしいということを数字で裏づけられるようになったことが、この10年間の分析の成果といえるでしょう。
● 9章 葉物野菜も、イチゴも、枝豆も
夕採りがおいしい
市場やスーパーマーケットの売り場に、「朝採り野菜」というキャッチフレーズが出ています。
ケースに並べられたは野菜、トマト、枝豆は新鮮でおいしそうに見えます。
そして朝露の中で、採ったばかりのみずみずしいというイメージが湧いてきます。
でも、植物は昼間、二酸化炭素(炭酸ガス)を気孔からいっぱい取り入れ、太陽光の下で炭酸同化作用(光合成)をして、糖分、デンプンを作りますが、夜は人と同じで酸素呼吸になり、昼間蓄えたデンプンを消費します。
一方、根から吸い上げた硝酸態窒素からのタンパク質合成が昼は機能していますが、夜は機能はお休みモードで、硝酸態濃度は葉に多くたまります。
朝採りの野菜やイチゴ、枝豆は、硝酸濃度が高めで、糖度が低めになります。
ということは、朝採り野菜はおいしさが足りないということです。
流通は朝採った野菜を昼ごろまでに出荷準備をして、集荷センターを経由して深夜から翌早朝に東京や大阪の市場に届きます。
その後10時ごろから店頭に並ぶので実際に採ってから30時間から40時間後に食べることになります。
おいしい野菜を食べるには硝酸濃度が低くなり、糖度などのうま味成分が高くなり、おいしさが増した午後3時ごろから採り、夕方に出荷して翌朝市場到着で、10時ごろ開店時には店頭に並ぶという流通スタイルができるのがより新鮮で品質の高いものを食卓に並べられるのです。
■ 枝豆は夕採りがおいしい
夏の暑い盛りに、枝豆をつまみにビールをジョッキでグイと飲むのはビール党にとっての垂涎の喜びです。
糖質の多い食品やアルコールを多量に摂取したときにビタミンB1は不足がちになりますが、枝豆はそのビタミンB1を補うとともに疲労回復に役立ちます。
また、脳の栄養素といわれるビタミンB1だけでなくB群のB2、ナイアシン、B6、B12、葉酸、パテント酸なども多く含まれています。
カロテノイドやビタミンCは抗酸化作用を、必須アミノ酸のメチオニンは、アルコールの分解を促してくれます。
まさしく栄養の宝庫なのです。
山形大学農学部の阿部利徳教授は、だだちゃ豆などの枝豆の成分に、肝機能改善や疲労回復に効果があるとされるアミノ酸の一種「オルニチン」が含まれていることを発見しました。
お酒を飲んだ後に二日酔いにならないようにと「しじみ汁」をいただきますが、これはシジミに含まれるオルニチンがアルコールの代謝をよくすることで肝臓への負担を少なくする効果があるからです。
枝豆からはそのほかγ−アミノ酪さん(GAVA)など23種類の遊離アミノ酸が検出されています。
著者の及川が在職していた新潟薬科大学の環境安全科学研究室が、新潟県観光コンペンション協会と共同して朝採りと夕採りの枝豆ではどちらがおいしいか実験をおこないました。
生産地は新潟市西区黒崎、枝豆の品種「茶豆小平方」で朝4時採取と同日の16時採取のものをビタミンC、総ポリフェノール、硝酸、糖度について、生とゆでたものと比較しました。
その結果、ビタミンCは朝と夕刻では差はあまり見られませんでした。
しかし、明らかに夕採りのほうが糖度も高くなり、そうポリフェノールが際立って高くなっていること、風味、食味を損ねる硝酸イオン濃度が夕刻は低くなっていることがわかりました。
その後の24時間、3時間ごとに採取し、同様の実験を行い、経時的に経過を見ましたが、ビタミンCは夕刻のほうがより高い値となっているほかは、ほぼ同じ結果でした。
枝豆産地は朝2時から採取を始めて、6時頃には調整し、品質を保つためすばやく予冷庫に入れて出荷を待ちます。
しかし実験の結果からは、夕採りのほうが高品質でおいしいという結論でした。
スーパーマーケットには、枝からもぎ採りポリエチレン袋に入れたパック状態で、しかも24時間を経過したものが常態で売られています。
採った枝豆は栄養分や水分の消耗を茎や葉の部分から補っているのです。
またとった後急速に酸素を消費し、二酸化炭素とエチレンガスを大量に放出し、劣化を早め、糖分も減少し食味を損ないます。
流通の便利さだけで、高品質のおいしさを枝豆が食卓に届かないのはどうしてなのでしょう。
■ イチゴの機能性成分の24時間経過挙動
2008年、新潟薬科大学環境安全科学研究室は旬の時期に合わせて、イチゴ、トマト、ブルーベリー、枝豆について機能性成分の24時間の経過的挙動を調べました。
そのほか旬の時期ではありませんが、ほうれん草と小松菜についても同様の24時間の調査を行いました。
昼間は炭酸同化作用(光合成)、夜間は酸素呼吸と植物の生理作用は異なります。
機能性物質、特に抗酸化の状態がどのように経時的に変化するのか、また硝酸濃度や糖度の挙動を見ることによって、1日、24時間の中で目的成分がどのような経時挙動を示すのか、また濃度の高低がどの程度あるのだろうか、おいしいうま味の出る時間帯はどうだろうか、適切な採取時期と時刻はないものだろうかと考え実験を行いました。
24時間3交代制ですので研究室総動員体制で、しかも短い旬の時期の実験だけに繰り返しは困難で大変です。
実験に入る前に技術と手順について個人差があってはなりませんので精度管理の試行を繰り返しました。
本来3〜5年間同一実験を繰り返してその結果についての論文を学会で評価を受けるのが当然ですが、1回だけの試みの結果ですが、採取した試料(n=5)については分析制度を確認するため表著者丹羽のデザイナフーズ(株)と新潟大学のクロスチェック分析の結果がほぼ一致したことから、あえて今後の研究課題として提起したいと考え紹介しました。
イチゴ(品種:イチゴひめ)について2008年5月17日〜18日に実験を行いました。天候状態、気温、品種、植物の生理的栄養状態、生育土壌などの諸条件などによって機能性成分の濃度やこうさんかりょくは変化するものと考えられます。実験成果の精度検証と評価はできませんが、挙動の1例として示すものです。
実験は24時間晴天が継続する日程を選びました。
そのときの外気温とハウス内気温度の変化および二酸化炭素の外気とハウス内の経時的変化を見ましたが、二酸化炭素のハウス内濃度は昼間は外気より少なくなり、逆に夜間は高くなりました。日中は二酸化炭素の吸収が大きく、夜は酸素呼吸になっているわけです。
抗酸化力のORCA法トトロロックス換算値の経時敵挙動と総ポリフェノールの濃度挙動が相似形のように一緒であることがよくわかります。
総ポリフェノールとORCA法トロロックス換算値の相関状況をみましたがR2=0.8155でした。
DPPH法とトロロックス換算値とESR測定の・OH−(パーセント)は多少ずれてはいますが、同じような経時的挙動が見られました。
糖度は午後から夕方に向かって高くなる傾向があることが、硝酸イオン濃度は夜間より昼間に低くなることがわかりました。
夕採りイチゴのほうが枝豆と同様おいしいようです。
しかしこの結果からは、抗酸化力は朝採りのほうがよさそうです。
これはあくまでも2008年5月17〜18日の結果で、いつも同じ挙動であるかは数年に及ぶ旬に合わせた実験結果をみないと評価はできません。
総ポリフェノール量、抗酸化力、硝酸イオン濃度、糖度の濃度のいずれもが1日24時間のなかで大きく濃度変化をすること、また抗酸化力も測定する方法や対象活性酸素・フリーラジカルによって違う挙動であることも垣間見られたのですが、数年経過した結果を見なければなりません。
●10章 抗酸化力の測り方、見方
日本では、以前から「ファイトケミカル」という植物がもつ科学物質についての研究が盛んでしたが、そのなかで特にファイトケミカルの抗酸化力が注目されるようになりました。
抗酸化力は、人間の細胞が酸化していくこと、つまり老化していくことが食い止められるのではないか、と期待されているからです。
超高齢化社会といわれる現代社会では、高齢者の介護や医療が国の財政をますます圧迫していくでしょう。
老化や病気は、食べ物、特に野菜で予防できるのでしょうか。
野菜の抗酸化力を測定し、何を食べれば老化や病気を防げるかということを、きちんと分析することが必要とされる時代になって来ました。
こうした研究の基本となるのは、野菜の抗酸化力を測る方法です。
今はまだ、実際に野菜の抗酸化成分が体に吸収され、活性酸素が消去された、という効果を測定することは難しいのですが、食品そのものがどれくらいの活性酸素を消去するかを、測定できるようになりました。
■ DPPH法
DHHP法は、比較的簡単に抗酸化力を測ることができる方法として、日本では多く用いられています。
野菜をすりつぶして薄めた液を、DPPHと呼ばれる試薬を加えると、野菜がもつ抗酸化力の強さによって、試薬の紫色が変化します。
ただの水を加えても色は変わりませんが、抽出液の抗酸化力が強いと色が消え、力が弱いと色が残ります。
さらに、この液をセルに入れて分光光度計という機械にかけ、光を照射し、光が透過する量を測って、溶液の紫色がどのくらい邪魔しているかを見ます。
透過する光が多いということは、紫色が少ないということですから、色を薄くした力、つまり野菜の抗酸化力が強いということになります。
このような方法で数値化するのがDPPH法です。
■ ORAC法
ORAC(オラック)法は、米国の農務省と国立老化研究所の研究グループが中心となって開発したもので、測定法で特許を取っています。
AAPHという人為的に作った活性酸素をどのくらい消すことができるかを蛍光物質で見る方法です。
この蛍光物質は、活性酸素によって分解される性質を持っており、活性酸素に対抗する抗酸化物質があると分解が得られるので、減少するスピードが穏やかになります。
この蛍光が減少するようすを曲線で表し、その現象曲線下の面積と基準の面積との差をもとに計算して、抗酸化力を表します。
米国では、このORAC法で測定した値をチョコレートやお茶など、既に食品に表示しています。
このデータと私たちがDPPHで測定してきた抗酸化力を比較したところ、ある傾向を示しました。
そこで、現在私たちも、ORCAC法を測定方法の一つに採用していますが、DPPH法同様、人為的に作られた活性酸素を消す力を測定していることになります。
PPPH法やORAC法はともに比較的安価に分析ができ産地による違いをはじめ、品種や栽培方法、熟期による違いなど、さまざまなデータを比較できる点が優れています。
■ ESR法
ERS法は、電子スピン共鳴装置という機械で、食品の抗酸化力を測定する方法です。
DPPH法やORAC法が測定できるのは仮想的な活性酸素の消去能ですが、ESR方は、実際に人間の体内で発生する3種類の活性酸素である、「一重項酸素」「スーパーオキシド」「ヒドロキシラジカル」を消す力を測定することができます。
私たち人間は空気中の酸素を呼吸で取り入れることによって生きていますが、体内に入った酸素の2%くらいがスーパーオキシドという活性酸素になります。
スーパーオキシドは体に中で変化したヒドロキシラジカルになり、細胞膜の脂質酸化を起こします。
また、一重項酸素は、紫外線を浴びると発生する活性酸素です。
デザイナーフーズ(株)は、いままで多くの野菜と果物をPPPH法やORAC法で測定してきましたが、同じ検体について、ESR法でも3種類の活性酸素(フリーラジカル)を消去する力を測定し、ESR法とDPPH法やORAC方途のデータの相関を見てきました。
あさつき(浅葱)
あさつき(浅葱)は、ユリ科、ネギ属の球根性多年草で、ネギよりも色が薄く、食用とされるユリ科植物の中では最も細い葉を持つものです。
中国や日本が原産で、山地に広く自生し、古くから葉と鱗茎(球根)を野菜として食用にしていました。
ネギの仲間で球根性多年草。種子を結ばず、らっきょうより小さい鱗茎で増えます。
古くから栽培もされてきており、貝原益軒の『菜譜』(1704年)に小葱(あさつき)の名で記載されていることからも、栽培の歴史が長いことがうかがえます。
あさつきの名の由来は、葉の緑色がねぎより浅いことから浅つ葱(あさつねぎ)と呼ばれ、それが詰まって、あさつきになったという説があります。
わけぎに似ていいますが、わけぎより葉が細く、くせのない香りが特徴です。
ネギより辛味が柔らかで独特の風味があることから薬味に多く用いられます。
さっとゆでてからおひたし、酢みそ和え、ぬた、汁の実、鍋物などに用います。
一般にあさつきとして売られているものには、葉ネギを若取りしたものも多く出まわっています。
●あさつきの食べ方
基本的に海辺では岩場や砂浜、山間部では山すそや道端、川べりなどを好んで群落を形成します。
海辺と山地の両方に自生する、珍しい山菜といえるでしょう。
早春にいち早く鮮やかな緑色をした葉を伸ばし、春がきたことを知らせてくれます。
地中にはクリーム色をしたラッキョウの形のような鱗茎があります。
あさつき(アサツキ)の料理方法やレシピとしては青柳とアサツキのぬたがオススメです。
まず葉を適当な大きさにきり、鱗茎の皮はむきます。
そしてさっとゆでて、酢であらった青柳と酢味噌で合えれば出来上がりです。
作るのもとっても簡単で美味しいので、お酒のつまみにも最適の1品といえるでしょう。
*水できれいに洗って、生のまま味噌をつけて頂きます。
多少の辛みはありますがクセは少なく、お酒の肴に最適です。
*さっと湯がいてから(ゆで過ぎに注意、独特の香気が消えてしまいます)流水にさらした後で酢のものやおひたしで食べても美味しいです。
あったかいご飯にもお酒の肴に最適ですね。
*おそばや鍋物などの薬味に用いると食べ物の味を一層引き立ててくれます。
薬味としては小口から刻むだけで、水にさらす必要はありません。
*細かく刻んでお味噌汁の具にも利用できます。
*天ぷらや焼き物、炒め物などにもおいしいものです。
あさつきの用途は幅広く、いろいろな料理にご利用ください。
麺物・鍋物・汁物・丼物・ちり蒸し・刺身などの薬味に。
あさつきの酢みそ和え、あさつきの三杯酢、あさつきのごま和えなどに。
あさつきと豚肉の酢の物、あさつきとまぐろのぬた、
いかそうめんのあさつき和え、あさつきときのこの和え物。
あさつきのごまポテサラ、あさつきとえびのサラダ、あさつきとたこのサラダ。
あさつきの牛たたき巻き、白身魚のあさつき巻き、あさつきの卵焼き、
あさつきの油炒め、あさつき粥、焼肉の具、スープの具などなど。
栽培品のあさつき(アサツキ)の場合には1年を通して店頭で販売されています。
●あさつきの栄養・効能
緑色の葉の部分に栄養素が多く含まれ、ビタミンC、カルシウム、カロチンが豊富に含まれ、ビタミンB群の一種で貧血予防に役立つ葉酸や、便秘解消の働きをする食物繊維も上布です。
香りと辛味の成分である硫化アリルには、消化液の分泌を助け、新陳代謝をよくする効果や血液凝固を遅らせる働きがあります。
また、硫化アリルはビタミンB1の吸収を高め、利尿や発汗の作用を促したり、食欲不振、イライラを防いだり、疲労回復にも効果があります。
■ あさつきの酢味噌和え
1、あさつきは洗ってサッと煮、水に取り水気を良く絞り、適当な大きさに切ります。
2、酢味噌をつくり、あさつきと和えます。
3、器に盛り付けて出来上がりです。
■ あさつきの三杯酢和え
1、あさつきは良く洗ってください。
2、多めのお湯で5分くらい茹で、水にとってから水気を良く絞って食べやすい大きさに切ってください。
3、器に盛り付けをして三杯酢をかけて出来上がりです。
■ あさりとあさつきのみそ汁
1、あさりは塩水に浸して砂出しして殻をこすり合わせて洗います。
2、鍋にのあさり、水、「こんぶだし」を入れて火にかけます。
あさつきは2cmの長さに切ります。
3、あさりの殻が開いてからアクをすくい、味噌を溶き入れ、
さらに「こんぶだし」を加えて、ひと煮立ちします。
4、椀に盛り、あさつきを散らします。
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