■ 野菜・果物と健康 (49)
官報・薬膳料理研究家 池田好子著 家の光協会出版
『野菜がからだに効く!』 より その 6
この食べ方が自然治癒力を高める
● 緑黄色野菜が肝臓に効く
(5) かぶ (別名 すずな、かぶら、蕪菁)
『本草網目(ほんそうこうもく)』(1596年刊行の漢方書)には、かぶのことを「五臓を利し、身を軽くし気を益す、長くこれを食すべし、常に食すれば、中(内臓)を通じ、人をして肥健ならしめ、食を消し、気を下し、咳を治し、消渇を止め、心服の冷通・風腫・乳瘍・寒熱吐乳を去る」とあります。
かぶは、葉の部分と根の部分とを分けて考えます。
栄養素は圧倒的に葉の部分にあります。
ベータカロテン、ビタミンB1、B2、C、鉄分、カリウム、カルシウムなどが豊富にあり、胃腸を温め、冷えを取り、腹痛などを緩和する作用があります。
また、イソチオシアネートという成分は、発ガン物質を活性化させる酵素を阻害して解毒する働きをします。
根の部分には、でんぷん分解酵素であるジアスターゼ、アミラーゼなど、消化剤になるものが含まれています。
また、白い部分は水分が多く、肺の働きを調節し、全身の気をつかさどるといわれています。
■主な食品成分(100g中)
葉には
・ビタミンA 470μg ・ビタミンC 75mg ・ビタミンE 3.2mg
・カルシウム 230mg ・カリウム 330mg ・鉄 2.1mg
根には
・ビタミンA 0 ・ビタミンC 17mg ・ビタミンE 0
・カルシウム 37mg ・カリウム 280mg ・鉄 0.3mg
●かぶの効用
@かぶで特質すべきことは、その消化作用です。
腹痛の予防、胸焼けや便秘のある人は常食するとよいでしょう。 料を多くとっても、長期間食べても害にならないといわれています。 A熱っぽさが感じられたときや、不眠・動悸・冷えにも効果があります。
●かぶの効果的な食べ方
スーパーなどではよく、葉を切り落とした状態のものが売られていたり、葉をわざわざ切ってもらう人もみかけますが、根も葉もあわせて一つの優れた食材ですので、ぜひ両方を食べてください。
お腹にやさしいスープ煮は、かぶの効用を引き出します
●かぶ 牛乳のスープ煮 (かぶ+牛乳+カリフラワー)
【材料】(5人分)
こかぶ・・・1束(6個程度) カリフラワー・・・小1/3 甘塩サケ・・・3切れ
牛乳・・・500ml こしょう・・・少々 *塩はサケから出る。
【作り方】
@株価ねと葉を分け、根の部分を半分に切る。
カリフラワーは小さい房に分ける。
Aなべに水を500ml入れ、かぶの根とカリフラワーを加え、火にかける。
B煮立ってきたらサケを半分に切り、なべに加える。
Cさらに煮立ってきたら牛乳を加えて混ぜ、こしょうをふり、
2〜3cmに切った葉を入れて味をみて火を止める。
■効能・・・消化不良の改善
牛乳は体の水分を調節し、腸を潤し、カリフワーは食物繊維が多いので、消化をよくしてくれます。
●かぶ その他の利用法
■病後やひどく胃腸が弱っていて食欲のないときに
根の部分だけをうす味で煮て食べるとよいでしょう
■日々、シモヤケ、皸、吹き出しものなどに
根と葉を刻み、汁を取り、患部にすり込むと治療や予防になります。
吹き出ものがよくできる人は胃腸虚弱であり、普段からかぶをよく食べるように心がけるとよいでしょう。
■咳や声がれに
根の部分をすりおろしてその汁を飲みます。
はちみつにつけたものを食べるのも効果があります
(6) キャベツ (別名 甘藍)
『神農本草経』(中国最古の薬物書。後漢時代)に、最上の薬とは健康な人が毎日用いてより健康になるもの、つまり薬効があって食事になるものだと記してあります。
キャベツはヨーロッパでは2000年も前から食べられていて、「貧者の医者」といわれていました。
ピタゴラスやヒポクラテスもその薬効に注目していました。
元気になり、気分が落ち着き、腸の薬になるといったと伝えられています。
キャベツといえば、すぐに胃腸薬の名前を思い起こす人も多いと思いますが、1951年にスタンフォード大学のチェニー博士がビタミンUを発見し、今日胃腸薬の特効薬としてあるのです。
せん切りにしたものにうす塩をしておくと、数日で発酵して乳酸菌が生まれ、酸味をもち、独特の風味になり、おいしくなります。
また、せん切りにしたものはサッと熱湯に通し、ビネガーに漬けておき、肉料理のつけあわせとしてもおいしく食べられます。
常備焼くとしても利用できます。
■主な食品成分(100g中)
・ビタミンC 41mg ・ビタミンK 78μg ・カルシウム 43mg
・カリウム 210mg ・マグネシウム 27mg ・鉄 0.3mg ・食物繊維 1.8g
●キャベツの効用
@塩素やイオウ、ヨードなどが胃腸の浄化作用をして、腸内の老廃物を分解します。その結果腸内の善玉菌を増やし、潰瘍の止血、粘膜の再生を図ります。
Aアメリカの食品学会で、最もガン予防効果の高いものとして認定されています。
Bロシアではキャベツのスープが肝臓に効くといわれています。
●キャベツの効果的な食べ方
以前は、私も家族も虚弱でしたが、食生活を温野菜に変え、キャベツを毎日いろいろなメニューにして食べるようにしました。それを半年も続けるうちに、私たち家族はとても元気になりました。そのときの食べ方の一例を紹介します。
キャベツを煮込んだ料理は胃腸の働きを活発にしますが、栄養分の損失を少なくするためには煮込み過ぎないようにしましょう。
●キャベツの丸ごとスープ煮 (キャベツ+トマト)
【材料】(4人分)
キャベツ・・・1個 ガラスープ・・・適量 トマト・・・2個
塩・こしょう・・・少々
【作り方】
@キャベツは洗い包丁を入れる。芯をくりぬき、一緒に煮る。
A圧手の深鍋に入れ、ガラスープをひたひたに入れる。
B途中でトマトを4つわりにして入れ、塩・コショウで味を調える。
C竹くしがスーッと通るくらいまで煮る。
■効能・・・胃腸障害、ストレス解消
(1)胃腸の障害を修復する作用のあるキャベツと、トマトに含まれるクエン酸が、胃の働きを一層よくします。
(2)緊張をやわらげ精神的なストレスを除く効果があります。
●キャベツ その他の利用法
■キャベツの芯の利用
うま味の成分であるグルタミン酸やしステインなどが含まれています。
煮込んで食べるとおいしい味になります。
■動脈硬化や眼精疲労に
紫色のキャベツをサッとゆでて甘酢につけます。美しい色に仕上がりますが、この色がポリフェノールの一種のアントシアニンであり、有効成分です。。
■気管支炎、去痰、胃や十二指腸の鎮静、鎮痛に
恩野菜にして常食するとよいでしょう。
(7) きゅうり (胡瓜=こり、王(黄)瓜=おうり)
きゅうりは夏にふさわしい寒性の野菜で、熱を冷まし、体内の余分な邪熱を排出します。ですから、夏に汗をかいて渇きの激しいときに、きゅうりはとてもよいものです。
古くから、「甘くて、冷え物であるため、百病の毒なので、多くとらないこと。子供には固く忌め」といわれ、疳(かん)の虫が出るともいわれます。
料理膳の中心にきゅうりもみなど少量の酢の物がありますが、きゅうり、酢はともに体を冷やすもので、多くとるものではありません。
これは食欲を増す程度に、あとの料理をおいしく食べるための料理なのです。
きゅうりは夏ばての秘食とされます。
成分のイソクエルシトリンは利尿作用、苦味のククルビタシンは体を涼しくしてくれます。
むくみ、暑気あたりにも効果があります。
糠漬けにしても10時間ねかせると、ビタミンB1の効力は倍量になります。
■主な食品成分(100g中)
・ビタミンA 55μg ・ビタミンB 0.03mg ビタミンC 14mg
・カルシウム 26mg ・カリウム 200mg ・マグネシウム 15mg
・鉄 0.3mg
●きゅうりの効用
@きゅうりは、もと苦味のあるものであり、つる、へたのところは食中毒や食べ過ぎの吐剤として使われていました。
Aあずき50gときゅうり2本を600mlの水で半量になるまで煎じて1日3回食前に温服すると、利尿作用、腎機能回復、肥満や心疾患でむくみやすい人にも効果があります。
B柔らかく煮たきゅうりにはちみつを加えたものを、子供が発熱して下痢してしまうようなときに与えると効果があります。。
●きゅうりの効果的な食べ方
最近の情報では、きゅうりのつるは、血圧の効果にとてもよいということがわかってきました。
皮もへたの部分を煎じて飲用すれば効果的です。
利尿作用や発毛促進効果もあり、リウマチ性関節炎、皮膚病などにもよいといわれています。
中国では黄瓜と書きますが、完熟の状態にしてスープや煮物として使用します。
生で食べることも多いきゅうりですが、ここでは蒸し料理を紹介します。
●きゅうりの舟型蒸し (きゅうり+カニ)
【材料】(4人分)
きゅうり・・・代3本 カニ身・・・1缶 ねぎのみじん切り・・・少々
しょうが・・・適量 片くり粉・・・大さじ2 塩・・・少々
【作り方】
@きゅうりはたて割りにして中をくりぬく。
A@のくりぬいた中身とカニ身、ねぎに、しょうが汁と塩を加えて混ぜる。
Bきゅうりの舟型に片くり粉をつけ、Aをつめて上にも片くり粉をまぶす。
C蒸し器に入れ、やわらかくなるまで蒸し、皿にとる。
■効能・・・解熱、消化促進
(1)きゅうりも科にも体を冷やす作用があり、解熱・解毒に効果があります。
(2)消化をうながし、免疫力を高めます。
●きゅうり その他の利用法
■暑気あたりに
成熟したきゅうりの実をつぶして足の裏に湿布すると効果があります。
■動脈硬化や眼精疲労に
微量の改組を拭くもので、毛髪や肌をみずみずしくしてくれる効果があります。
低エネルギーなので、ダイエット食に適していますが、冷え性の女性、あるいは胃腸の弱い人の多食は避けるべきです。
(8) こまつな (小松菜) (別名 冬菜=ふゆな)
新年の雑煮の中に入れる野菜は、関西方面と関東方面ではかなり違います。
私の生まれた鹿児島県では白菜を使うのですが、東京ではこまつなと決まっているようです。
こまつなの三大成分は、カルシウム、ビタミンC、そしてベータカロテンです。
カルシウムはほうれんそうよりはるかに多く含まれています。
ベータカロテンはガンの抑制作用があり、活性酸素の除去にすぐれた効果があります。
また、体を温める作用があり、血行をよくし、冷えを取ります。
鉄分が多いので、貧血気味の若い女性にはとくにおすすめです。
ほうれんそうと違って蓚酸が少ないため、とても食べやすく、また栄養素のバランスがよいので、成長期のお子さんがいる家庭ではいろいろ工夫してたくさん食べさせたい食材です。
■主な食品成分(100g中)
・ビタミンA 520μg ・ビタミンB1 0.09mg ・ビタミンB2 0.13mg
・ビタミンC 39mg ・カルシウム 170mg ・カリウム 500mg
・鉄 2.8mg
●こまつなの効用
@ビタミンB2をリボフラビンというのですが、これは免疫力を高め、ガン予防、アレルギー体質を改善するはたらきがあります。
A温めながら代謝をうながすので、利尿作用があり、体内の水分バランスを調整する機能があります。
B糖質をコントロールする作用があるので、ダイエット食材になります。
また癖のない野菜なので糖尿体質の人も多めにとるとよいでしょう。
●こまつなの効果的な食べ方
アクがないので、そのまま炒めたり煮たりして食べると、栄養成分の損失も少なくなります。
さらに、栄養成分の吸収率をよくするためには、油や動物性タンパク質を同時にとると、一層効果があります。
●こまつなのふりかけ (こまつな+ちりめんじゃこ+きくらげ)
【材料】(4人分)
こまつな・・・1/2束 ちりめんじゃこ・・・30g いり白ごま・・・適宜
しそ(梅干しの中につけたものを刻んでおく) なくてもよい
【作り方】
@こまつなをゆで、かたくしぼって刻み、フライパンでからいりする。
A@を、さらに電子レンジでかわかす。
Bもう一度フライパンに戻し、ちりめんじゃこと一緒にして火を通す。
C最後に、いりごまとしそを少々加える。
■効能・・・貧血、骨粗しょう症の予防
(1)こまつなもちりめんじゃこもカルシウム含有量が抜群に高く、一緒に使うと相乗国化で吸収率が高まるので、貧血・骨粗しょう症に最適な組み合わせとなります。
(2)貝のむき身にこまつなを細かく刻み、さっと煮てご飯に混ぜて食べるのも効果的です。
●こまつな その他の利用法
■アレルギー性疾患、アトピーに
体質は薬だけではなかなか治りにくいものです。
食生活で、長い時間をかけて改善しなければ快方には向かいません。
こまつななどの緑黄色野菜で自然性の高い食事を心掛けることにより、心身をすこやかに保つことができます。
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