■ 野菜・果物と健康 (50)
官報・薬膳料理研究家 池田好子著 家の光協会出版
『野菜がからだに効く!』 より その 7
この食べ方が自然治癒力を高める
● 緑黄色野菜が肝臓に効く
(9) さやいんげん (隠元)
さやいんげんは、いんげん豆の未熟果であり、夏場のビタミン補給源として、青菜同様に栄養素が豊富で、疲労回復に適しています。
いんげんまめには、赤色のものと白色のものとがあり、両方とも煮豆として食べます。
200年ほど前、仏教を学びに僧たちが盛んに中国にわたり、いろいろな文化を日本に持ち帰りました。
いんげんまめも隠元和尚が持ち帰って広めたものといわれています。
ヨーロッパでは、さやがもう少し生長した状態でまめになる前の未熟なものをとり、糖尿病の予防に使用されています。
それはインシュリン性の物質やミネラルの中の亜鉛が多く含まれているからです。
そのほかビタミンB6はタンパク質の代謝に不可欠で、抗アレルギー作用があり、レクチンは免疫増強作用があって、ガン細胞を排除したり、悪性微生物の抗物質として作用するのです。
■主な食品成分(100g中)
・ビタミンA 99μg ・ビタミンB1 0.06mg ・ビタミンB2 0.11mg
・ビタミンB6 0.07mg ・カルシウム 48mg ・カリウム 260mg
・鉄 0.7mg
●さやいんげんの効用
@糖質、タンパク質、食物繊維が多いので、便秘の人はとくに多く食べるとよいでしょう。
A便秘をなくして腸をきれいにすることは、大腸がんの予防、脂肪間の抑制、動脈硬化による血栓予防になります。
B糖尿病になって血管障害が起こると、脳、心臓、腎臓、肝臓すべてが危険にさらされることになりますので、インシュリン性の物質を含むいんげんを常食するのが有効です。
●さやいんげんの効果的な食べ方
さやいんげんでつるのあるものを「どじょういんげん」といい、ゆでただけのものに、おかかをかけて生じょうゆをサッとかけるとたいへんおいしく食べられます。
また、つるのない「三度豆」というものは、煮て食べるのに向いています。
和え物、お浸し、サラダなどいろいろな食べ方を工夫してみてください。
ゆでるとき、少量の塩を加えると、ビタミンの損失が少なくなります。
●さやいんげんとひき肉ボールのトマト煮
(さやいんげん+あいびき肉+トマト) 【材料】(4人分)
さやいんげん・・・200g あいびき肉・・・200g たまねぎ・・・中1/2個
トマト・・・2個 卵・・・1個 スープ・・・2カップ 塩・こしょう・・・少々
【作り方】
@さやいんげんはすじを取り、サッとゆでる。
Aひき肉をボウルに入れ、たまねぎのみじん切りと卵に塩・こしょうをふってよくねる。
B中華なべにスープ2カップ入れ、肉ボールを静かに入れて、煮えてきたらさやいんげんを加える。
C中火にしてトマトを6等分に切って入れ、さらに煮て塩・こしょうで調味する。
■効能・・・便秘解消、肌荒れ予防
食物繊維の多いさやいんげんに、胃腸を丈夫にする牛肉と、体液の不足を補う豚肉、さらに便通をよくするトマトを加えることで、胃腸の働きを活発にします。
●さやいんげん その他の利用法
■疲労が激しいとき
ビタミンB群を全般的に含んでいるさやいんげんには、糖質の代謝に関係する成分があり、単独で食べても疲労物質を取り除いてくれます。
(10) しそ (紫蘇 蘇葉 紫蘇葉)
千年以上前の話ですが、カニを食べていた人たちが食あたりになり、死ぬ寸前に陥り、医師に助けを求めたところ、紫色の草を与えられ、一命を取り止めたそうです。
その医師は後に有名な華佗(かだ)で、その薬は日本では華佗膏という処方名で知られています。
紫色の草でよみがえったことから「紫蘇」という名前がつけられました。
漢方では主に紫色のものは薬として、緑葉のものは食用と考えられ、とくにしその実は、漢方薬の処方に多く使われています。
「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」というポピュラーな処方ですが、この中にしそが使われています。
しわがれ声、咳、胃腸に来るかぜ、更年期、のどのあたりに梅干しの種が詰まっているような感じ、または何かが張りついているような違和感や夜眠れない不安を感じるときなどによく効きます
他にも「香蘇散(こうそさん):虚弱でかぜのとき」「神秘湯(しんぴとう):喘息の長患いのとき」「紫朴湯(そぼくとう):咳の長びいているとき」などの処方があります。
■主な食品成分(100g中)
・ビタミンA 1800μg ・ビタミンB1 0.12mg ・ビタミンB2 0.32mg
・ビタミンC 55mg ・カルシウム 230mg ・カリウム 500mg
・鉄 1.7mg ・亜鉛 1.3mg
●しその効用
@しそに含まれるペリラアルデヒド、リモネンなどには防腐作用、殺菌作用、発ガン物質の解毒作用があります。
Aしそには辛味成分があり、体を温める薬性があるので、肌を解し、寒を散じ、胃中を和し、悪心嘔吐や食中毒を解します。
B良質の葉緑素は新陳代謝を促進して貧血を治し、かぜの予防、精神・神経の安定作用があります。。
●しその効果的な食べ方
・ しそは大量に食べるものではないのですが、毎日少しずつ薬味として加え食べるとよいでしょう。
・ しそいりパスタ、しそ納豆、イワシのしそ巻き上げ、牛肉のしそ挙げ、だいこんのもみ漬けなどにもお勧めです。
・ しその防腐・殺菌・解毒作用を最大限に生かすには、細く気って使うのが効果的です。
●牛肉とじゃがいものしそ炒め (しそ+牛肉+じゃがいも)
【材料】(4人分)
牛肉・・・150g じゃがいも・・・中1/2個 しその葉・・・2束
塩・こしょう・しょうゆ・・・少々 オリーブ油・・・適宜
【作り方】
@牛肉は細切りする。
Aじゃがいも細切りして水にさらす。
Bフライパンにオリーブ油を入れ、じゃがいもを先に入れさらに牛肉を入れて炒め、塩・こしょうを少々ふる。
C細切りにしてサッと水に通したしその葉を加え、しょうゆで味を調える。
■効能・・・沈静・不眠解消
脳の栄養にはアミノ酸が必要です。
しその精油に含まれる鎮静作用とジャガイモの栄養効果で、精神を安定させ、不眠を解消させます。
●しそ その他の利用法
■しその実の利用
塩漬けやしょうゆ漬けにしておきましょう。炒めもの、漬物、チャーハンに入れたりします。
■ゆかりとして
梅干しの中のしそを乾燥させて砕いて、ゆかりにしておにぎり、パスタ、茶の中にとさまざまに使用できます。
■刺身のつまとして
刺身のつまに穂じそ、大葉が入っていますが、殺菌効果で食中毒を予防しますので、必ず食べるとよいでしょう。
■しそ湯に
入浴剤としても使います。
(11) しゅんぎく(春菊) (別名 ?蒿=とうこう)
しゅんぎくの独特の香りは精油成分ですが、このほかにも、骨や歯の形成に必要なカルシウムやマグネシウムなど数多くの成分を含んでいます。
この香り成分は日本人に好まれ、不安定な自律神経を安定させる効果があります。
中国の明時代の本草書「本草綱目(ほんぞうこうもく)」には、春菊は「性は平にして毒がなく、心気安らかにして、脾胃を養い、痰を消し、胃腸を利す」と書かれています。
葉緑素や各種ビタミンが豊富で食物繊維が多く、解毒作用や排泄作用も促すので、便秘にも効果があります。
便秘の改善食としては、1日に50グラムぐらいは食べるとよいでしょう。
体内でヘモグロビン(赤血球に含まれる色素、体中に酸素を運ぶ働きをします)に変わる鉄分も多く含有しているため、貧血の人には最適の食材です。
また、冬のビタミン補給になり、かぜの予防になります。
■主な食品成分(100g中)
・ビタミンA 750μg ・ビタミンC 19mg ・ビタミンE 1.7mg
・カルシウム 120mg ・カリウム 460mg ・鉄 1.7mg
・食物繊維 3.2mg
●しゅんぎくの効用
@ビタミンAが非常に多く含まれるので、活性酸素を除去し、免疫力を高め、皮膚の粘膜や目を正常に保ち、ガンの抑制効果があるとされています。
A精油成分を持つ香り高い野菜は精神の不安感を取り除き、胃腸を健康に保ちます。
●しゅんぎくの効果的な食べ方
・ しゅんぎくには、10種類ほどの良性成分が多く含まれていて、貧血や脂肪代謝を促し、体内を美しく浄化してくれます。
・ 老化防止に効果のあるビタミンAは、ゆでると薬効が3〜4割高まります。
●しゅんぎくとゆりねのごま和え (しゅんぎく+ゆりね+白ごま)
【材料】(4人分)
しゅんぎく・・・1束 ゆりね・・・生小2個
白ごま・・・50g しょうゆ・・・適量 みりん・・・適量
【作り方】
@ゆりねを洗い、1枚ずつはがしてゆでる。
A春菊を洗い、塩を入れた鍋で、色よくサッとゆでる。
B白ごまをいり、すり鉢で油が出るほどする。
Cすり鉢のごまの中に、しょうゆとみりんを入れ、@Aをまぜ合わせる。
■効能・・・美容効果、頭痛・肩こり予防
(1)しゅんぎくにも、ゆりねにも、ともに痰の切れをよくする働きがあります。
また頭痛、肩こりを鎮める作用も両者とも持っています。。
(2)ごまを加えることで、痛んだ細胞を修復する働きがあります。
●しゅんぎく その他の利用法
■肩こり、神経痛に
かたくなっている茎は捨てずに、葉も合わせてかげ干しにし、乾かして入浴剤にすると、肩こりや神経痛を和らげ、精油成分でリラックスします。
■血圧の降下に
生のまますり鉢でつきくだき、しぼり汁を飲用します。
(12) せり(芹) (別名 水芹菜=すいきんさい)
古くから「せりは甘く、毒がないので、誰でも食べてよく、性を養い、気力を増すものなり」といわれています。
小川のほとりや田んぼのあぜ道など湿気のある場所に生え、多年草で毎年同じところで収穫できます。
非常に生命力のある薬草に近い野菜で、旬の時期に食べるとその効果はさらにアップします。
昔から女性の帯した(こしした=おりもの)に効く薬ともいわれ、中国最古の薬物書「神農本草経(しんのうぼんぞうきょう)」にも「婦人の血尿を治し、血を止め、精を養い、血脈を保ち、気を増し、体を壮健にし、食を進める」と書かれており、女性には特におすすめの食材です。
葉、茎、根とも香りが強く、精油成分のステロールには発汗保湿作用や解毒作用があって、肌荒れや美容にも効果があります。
またテルペンは発汗作用があって、血圧調整や老廃物の除去に役立っています。
■主な食品成分(100g中)
・ビタミンA 320μg ・ビタミンC 19mg ・カルシウム 33mg
・カリウム 400mg ・マグネシウム 24mg ナトリウム 19mg
・鉄 1.6mg
●せりの効用
@葉酸、ビタミンB6、パテント酸などは細胞の活性化を促進し、造血作用があり、ビタミンAはガンの予防にも抑制につながっています。
A飲酒後の熱や鼻づまり、頭中の風熱をとり、口や歯を利し、また小腸・大腸も利し、黄疸を改善し、肝機能低下を防ぐことにもつながります。
B精神不安を取り除き、気持ちがすっきりして、考えをまとめるはたらきがあります。
●せりの効果的な食べ方
・ 秋田名物のきりたんぽ鍋や、かきの土手鍋には、しゅんぎくではなくせりが使用されます
・ 田ぜりは短く、川ふちにある野ぜりは長く細く、日本原産のもので香りが高く、とてもよいものです。
この香りのよいせりで、玄米のお粥を作ってみましょう。。
●せりの玄米がゆ (せり+玄米+干し貝柱)
【材料】(4人分)
せり・・・2束 玄米・・・1合 干し貝柱・・・4個
塩・・・少々 酒・・・少々
【作り方】
@玄米は前夜、洗って水につけておく。
A干し貝柱も、水に酒少々を入れて、前夜水につけておく。
B@Aを玄米の8〜10倍くらいの水に入れて火にかけ、40分ほど炊く。
Cせりは塩を入れた湯でさっとゆで、あく抜きをしてきざむ。
Bの中に入れ、混ぜて食べる。
■効能・・・解毒、血圧降下
玄米は完全食。つまり全体食で、命の芽がまだ残っています。
それにミネラルの多い貝柱のうま味が溶け出し、さらにせりの香りも楽しめます。
●せり その他の利用法
■発汗、保湿に
育ちすぎてかたくなったものなどは、乾かして入浴剤として使えます。
■高脂血症などに
きゅうりとせりをジューサーにかけてしぼり汁を飲用すると、二日酔いを改善し、利尿作用を促す効果があります。
■胃腸の弱っているときに
かゆにせりを細かく切って入れ、食べましょう。
■精神の安定に
塩を加えた湯でサッとゆで、おひたしにします。
シャリ感と精油成分が精神を安定させてくれます。
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