■ 野菜・果物と健康 (92)
 
石原結實 著    永岡書店
「石原結實式
野菜ジュース&スープが
病気を治す」
その1
 
 
● はじめに
 
西洋医学では、病気や症状に対する治療が、手術や薬剤が駆使して行われます。
東洋医学では病気や症状は、体内の異常が体外に現れる「結果」であり、根本的な原因を改善しない限り本当の意味での「治療」にはならないと考えられています。
 
本書ではさまざまな病気、症状についてわかりやすく解説し、自分でできる「予防・治療法」を紹介しています。
また、中でも特に野菜や果物を使ったジュース(飲み物)やスープが大きな位置を占めています。
 
野菜や果物にはそれぞれ薬効があります。
漢方では植物の根や葉、茎、果実などを生薬として3000年以上前から活用しています。
また、野菜に含まれるビタミンやミネラル、ファイトケミカルが病気に効くことは科学的にも証明されています。
 
こうした野菜や果物のすばらしい効能を活用して、沢山の方々が健康生活を謳歌されることを祈っています。
石原結實
 
 
 
プロローグ 多くの病気は自分で治せる
 
● プチ断食で病気を防ぐ
すべての病気・症状は「食べ隙」と「冷え」が原因
 
西洋医学では、病気や症状はそれぞれに原因があり、治療法があると考えられています。
確かに中には特別な要因で起こるものもありますが、ガンや生活習慣病、頭痛や発熱などよく起こる病気や症状は、「食べ過ぎ」と「冷え」による血液の汚れが原因で発症するものがほとんどです。
 
漢方では「すべての病気は血液の汚れが原因で起こる」と考えられています。
食べ過ぎて血液中に余剰物や老廃物が多くなると、血液や体内がドブ川のように汚れて病原菌が繁殖しやすくなります。
また、からだが冷えて血流が悪くなると、血液中の栄養が60兆個の細胞に十分に運ばれなくなり、代謝が落ちて種々の病気の要因を作ります。
 
体を動かさない現代人にとって、1日3食は食べ過ぎです。
石原式健康法では、朝はジュース、昼はそば、夜は好きなものを食べる「プチ断食」が必要です。
 
 
 
● 体を温める陽性食品を積極的にとろう
冷えた体を温める野菜の力
 
プチ断食をすると食べすぎを予防することができます。
次は体を温めてあげましょう。
適度な運動、湯船につかる入浴など、体を温める方法はいくつかありますが、毎日の食生活に注意するだけで、体を温めることができます。
 
食べ物にはそれぞれに備わる性質があって、体を冷やす陰性食品。体を温める「陽性食品」、体を冷やしも温めもしない「間性食品」があります。
 
体温が36.5度以上であれば、それほど気にする必要はありませんが、運動不足、食べ過ぎ、過度なストレスなど、現代は「冷える要素」がたくさんあって、冷えを感じている人が増えています。
そうした人は毎日の食事でとるものは、なるべく陽性食品を中心にとりましょう。
体を冷やす陰性食品は加熱する、塩を加える、発酵させるなどして、陽性に傾けてとるようにしましょう。
からだを冷やす陰性食品 からだを温める陽性食品
 精白米、うどん、白いパン
 豆腐、豆乳
 白ごま
 砂糖、化学調味料
 葉野菜、白菜やもやしなど白っぽい野菜
 白身魚、肉の脂身
 南方産の果物(バナナ、パイナップル、マンゴー、みかん、グレープフルーツ、メロンなど)
 牛乳
 緑茶
 酢、マヨネーズ、油
 白ワイン、ビール
 
 玄米、そば、全粒粉のパン(黒いパン)
 納豆、小豆、黒まめ
 黒ごま
 黒砂糖
 根菜類(ごぼう、にんじん、れんこん、ねぎ類、山芋など)、海藻類
 赤身魚、赤身肉、魚介類、佃煮、漬物など
 北方産の果物(リンゴ、サクランボ、ぶどう、プルーンなど)
 チーズ
 紅茶、ウーロン茶
 塩、みそ、しょうゆ、唐辛子
 赤ワイン、日本酒(熱燗)、焼酎やウイスキー(お湯わり)
 
 
 
● こんな生活習慣が病気を招く
食べ過ぎと冷えにプラスアルファで起きる病に
 
ほとんどの病気は食べ過ぎと冷えによる血液の汚れが原因といいましたが、もちろんそれだけではありません。
間違った水分の取り方、運動不足なども病気を招きます。
 
食べ過ぎは血液の汚れを招き、がん、生活生活習慣病を引き起こします。
 
適度の水分は必要ですが、間違った水分のとり方(冷たい水を冷房の効いたところで飲む、汗をあまりかかないのにたくさんの水を飲むことなど)は、水毒症(体内の余分な水分を出そうとするからだの反応。くしゃみ、鼻水、嘔吐、下痢など〉を招き、アレルギー性疾患や頭痛、下痢などさまざまな症状を起こします。
 
そして、忘れてならないのが運動不足です。
人間は「動くもの(動物)」です。
動かないでいると、それだけで病気になりやすくなるといってもいいでしょう。
運動不足による下半身の筋肉の減少は、病気や老化を招く大きな要素です。
 
 
 
● ジュースでビタミンを効率よくとる
野菜の力を存分に引き出すジュース
 
本書では、食生活の改善や運動、入浴、湿布などさまざまな病気や症状の対処法を紹介しています。
からだのひえと食べ過ぎ、水分のとり過ぎ、運動不足がほとんどの病気の要因なのですから、対処法もある程度決まってきます。
 
なかでも、特におすすめしているのがジュースです。
プチ断食は朝のジュースから始まります。
また、病気の予防や症状の予防&治療法でジュースを紹介しています。
これは野菜のもっている病気を治す力、からだに備わっている免疫力を高める力を効率よくとるためです。
 
野菜には免疫力を高めるビタミンをはじめ、それぞれの病気や症状に有効な成分が含まれています。
ただ、それらは水に溶けやすかったり、熱に弱かったりするので、調理で失われやすいという特徴があります。
ジュースにすれば加熱する必要もなく、野菜や果物を丸ごと使うので、含まれている有効な成分を効率よくとることができます。
 
 
 
● 万病に効く野菜 @ にんじん・りんご
がん予防をはじめ病気予防の強い味方
 
にんじんとリンゴは石原式健康法のベースとなる野菜と果物です。
プチ断食には「にんじん・りんごジュース」が欠かせません
それぞれの病気や症状におすすめするジュースでも、ほとんどがこの2つを使っています。
毎日とって欲しいもののひとつです。
 
どちらもからだを温める陽性食品です。
エネルギーのもととなる糖類や代謝に必要なビタミンを多く含んでいるので、1日の活動力の源となります。
 
また、夕食が遅くなりがちな人は、朝は胃腸を休めてあげたほうがいいでしょう。
疲れてもたれた胃には、普通の食事はかえって負担をかけますし、食べ過ぎのもとです。
朝食はジュースにして、食べ過ぎ予防を心がけましょう。
 
さらに、にんじんには人間に必要なビタミン、ミネラルがたっぷり含まれています。
毎日にんじんをとっていれば、医者いらずになるのは当たり前のことなのです。
 
■ にんじん・りんごジュースの作り方
@ にんじんとりんごをタワシで皮つきのまま洗う。
A にんじんの上と下、りんごの芯を取り適当な大きさに切る。
B ジューサーにかける。
C レモンはスクイザーで絞る。
D BとCを合わせる。
しぼりたてを飲む。
 
 
 
● 万病に効く野菜 A しょうが
心身ともに元気にする
 
にんじんりんごジュースとともに忘れてならないものが「しょうが紅茶」です。
しょうがは漢方では「生姜(しょうきょう)」とよばれ、生薬として用いられています。
 
しょうがには、からだを温める、免疫力を高める、熱を下げる、痛みをしずめる、胃腸の調子をよくする、血栓〈血の固まり)ができるのを予防する、血圧を安定させる、利尿作用が強くむくみを解消する、コレステロールを低下させる、強い殺菌力がある、風邪の症状を改善する、憂うつな気分を改善するなどさまざまな効能があります。
 
利尿作用やからだを温める作用が強い紅茶、黒砂糖(はちみつ)が一緒になったしょうが紅茶は、万病予防の特効薬といっても過言ではありません。
 
すりおろした生姜を湯に混ぜ、黒砂糖やハチミツを加えた「生姜湯」も、強力にからだをあたため、しょうがの効能の恩恵を存分に受けることができます
 
 
■ しょうが紅茶の作り方
@ しょうがをたわしであらう。
A すりおろす。
B ティーカップにてぃーばっっぐをいれておゆをそそぐ。
C おろしたしょうがをくわえる。
D くろざとうかはちみつをくわえる。
熱いうちに飲む。
 
 
 
● 万病に効く野菜 B ねぎ類
硫化アリルが病気予防に効く
 
ねぎ、玉ねぎ、にんにく、にら、らっきょうなど、ユリ科アリウム属の野菜は、血栓(血のかたまり)を予防してからだを温めるため、動脈硬化の進行を防ぎます。
 
これらの野菜を切ったときには、つんとした刺激臭があります。
そのにおいのもとになるのが「硫化アリル」というイオウ化合物です。
硫化アリルには血管を拡張して血流をよくする、免疫力を高める、血栓を予防する、ビタミンB1の吸収率を高めるなどさまざまな作用があり、生活習慣病予防の強い味方となります。
 
硫化アリルは切ったとき(細胞が壊れるとき)に変化するので、みじん切り、薄切りなど小さく切るほどより薬効が強くなると考えられています。
また、加熱処理してもビタミンのように失われません。
水に溶けやすいのでスープや汁物にしたときには、残さず飲むようにしましょう。
 
 
 
● 万病に効く野菜 C 山いも
老化予防、滋養強壮の妙薬
 
先に、病気の要因のひとつに運動不足や加齢による下半身の筋肉の減少を上げました。
これにとても有効なのが山いもです。
 
漢方には「似たものが治す」という「相似の理論」があります。
人間を植物に当てはめると、下半身はちょうど根の部分になります。
つまり、下半身を強くするには植物の根に当たる根菜類をとるといいと考えられています。
 
根菜類のなかでも、山芋は特に滋養強壮効果が強く、下半身を強くして病気予防、老化予防に効果を発揮します。
 
なかでも山に自生している「自然薯」は、漢方薬の八味地黄丸の主成分で、足腰の冷え、むくみ、頻尿、インポテンツ、骨粗しょう症、老眼、白内障など老化による症状や病気に対する妙薬として用いられています。
 
自然薯は手に入れにくいので、長いもで代用すると良いでしょう。
 
 
 
● 冷え性の人にはスープがおすすめ
ジュースを飲むとからだが冷えてしまうという人には
 
野菜や果物の栄養素が効率よくとれるジュースですが、冷え性に人には飲みにくい、飲むとからだが冷えるという方もいらっしゃいます。
 
夏場であればジュースをつくる前に、にんじんやりんごなど野菜や果物を冷蔵庫から出して常温に戻しておくと、冷え性の人にも無理なく飲めるのではないでしょうか。
 
また、にんじんやりんごなどからだを温める陽性食品を使ったジュースであれば、冷える心配はそれほどありません。
青野菜や南方の果物を使っているものは、冷え性の人はとり過ぎに注意しましょう。
 
冬場のジュースはつらいという方にはスープをおすすめします。
加熱しているのでジュースに比べるとビタミンは少し減っていますが、溶け出したビタミンやミネラルをスープといっしょに飲むので、他の加熱処理に比べると効率よくとることができます。