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『食は生命なり』 【87】
南清貴著 講談社インターナショナル刊
『究極の食』 より その9
第3章 効率一辺倒の「食」の危険性 の2
● 安さのマジックーー輸入食品
輸入食品がすべてだめだと言うつもりはありません。
でも危険なものがたくさんあります。
そもそも、安いから輸入している、という食品はやめましょうというのが私の提言です。
非常にシンプルな話だと思います。
安いがゆえに外国から仕入れているものは問題があるということです。
食品に関して、安いものを買い求めるととんでもないものをつかまされることになり、結局は高い代償を払うことになります。
最近は非常に安く外食ができるようになり、ファーストフードはもとより、定食のチェーン店のようなものもずいぶん増えてきました。
ただ、一部の良質なものを除いて、そういうところの食事はほとんど味付けが濃いと思いませんか。
味付けが濃くなるには理由があるのです。
先日、輸入食品の現場に見学に行ってきました。
横浜の港です。
私が見せてもらったところは中国からの輸入食材が圧倒的に多かったのですが、三歳、キノコ類、たけのこのようなものが山のように積まれてありました。
野積みです。
倉庫の中に保管されているのではなく、雨、風、日光にさらされている。
だいたいプラスチックの容器に入っていて、塩漬けになったものが多かった。
プラスチック容器の中はポリ袋でしたけれど、容器が破損しているものもあって、液が漏れてしまっている。
何年もおきっぱなしのものもあるのです。
たまたま買い手がつかなかったのでしょうが、3年置いたら捨てるかというと捨てません。
商社も商売ですから買ったものは売るのです。
真夏もそのままの状態で、容器の中の温度は60度を越えてしまいます。
でも、何年経っても野菜の形はそのまま。
塩蔵品ですが、その状況で塩だけで形が変わらないなんて科学的にはありえない。
とんでもなく強力な薬液につかっているとしか考えられません。
そういうものが輸入食品には多いということ。
これ、一部の話ではありません。
重大なことがわが国には起きていると思います。
中国や商社を非難したいのではなくて、国の食のあり方としてどうなのかということを問い直したいのです。
私が見学できたのはほんの一部分ですけれども、他も似たり寄ったりであることは推して知るべきでしょう。
本当にひどい状況だということを多くの人に知ってもらいたいと思いました。
さらに驚くのは、輸入食糧5800万トンの3分の一は廃棄しているという事実です。
年間2000万トン。
2000万トンといえば、概算で発展途上国の人が1億人食べていける量です。
食糧を輸入して、そのうちの3分の1を捨てる、こんな国は日本のほかにありません。
相当ある日本の穀物輸入量のうち60%が家畜の飼料になっているという事実もあります。
それだけの穀物があったらどれだけの人間が助かるでしょう。
食にまつわるひとつの現実として知っていくべきだと思います。
国ぐるみで、一人ひとりが人間として考えなければならない問題ではないでしょうか。
そもそも、家庭の中で一番ごみが多いところは冷蔵庫だそうです。
食べもしないものを買いあさって、冷蔵庫に突っ込んでいる。
こんな無駄はもう犯罪といっていい。
食べものとごみ、区別がついていないのではないでしょうか。
日本のごみの量はものすごい量です。
人口がおおよそ1億2300万人の日本には、ごみの焼却炉が約1800基あります。
対して人口8000万のドイツでは、約50基です。
全世界にあるごみの焼却炉のうち、67%が日本にあるのです。
もし我々一人ひとりが、他のことは一切触らない、何もしない、ただ食は無駄にしない、ということにしただけでも、劇的な変化が起こると思いませんか。
食というのはやはり、インパクトが大きい。
誰も避けて通ることができないですし、1日3回かかわる。
今、真剣に考えないと、このままでは私達の国はとんでもないことになると思います。
世界的な原油価格の高騰によって、日本の農業はさらに苦しいところに追いやられています。
特に畜産農家は瀕死の状態です。
仮にこのまま高値が続くと、2年後、3年度には畜産農家が全滅する可能性もあります。
さらに外国に頼ることになって、自給率がもっと低くなるということです。
そこまで行くと建て直しができなくなるかもしれません。
ほとんどの農家がいわゆる兼業農家ですし、後継ぎがいないところも多い。
したがって結果的にはますます効率を求めざるを得なくなるのです。
● キケンなのは中国産だけではない
米にしろ、豆にしろ、野菜にしろ、きちんとしたものを育てるには時間がかかります。
それを時間をかけずに作ろうとする効率一辺倒の発想は、食肉や魚の養殖にも、蔓延しています。
自然に放っておいたらそうはならないものを時間をかけずに作るには、成長を促進する薬を科学的に合成して使うしかありません。
その薬品は最終的に私達が摂取することのなるのです。
もちろん無害だとされていますが、根拠はあくまでも動物実験で得られたデータでしかありません。
人間の体内で複合されて、どのような化学物質に変容するかはわかっていないのです。
安全であるといわれていたものが、後々そうではなかったということが明らかになった例は枚挙に暇がありません。
外国産の肉が様々な理由から質のいいものではないということはよく知れれていますが、日本の食肉もよくない状況になっています。
とにかく効率重視ですから、牛だって放し飼いで草を食んで育つわけではありませんし、豚だって豚舎に入れられたまま、脂肪比率の高い餌を、運動もさせられずにどんどん食べさせられる。
そこに成長を促進するホルモンが使われるのです。
私がここで主張したいのは、そんなことをしなくてもいいじゃないですか、ということです。
前にも述べましたように、私達が無駄をやめ、食べ物を捨てない生活をするようになれば、成長促進剤を使ってまで大急ぎで作らなくたって間に合ってしまうのです。
しかも、国内で作れるもので私達の食事は十分まかなえます。
促進剤とは逆の例もあります。
グリーンアスパラ、お好きな方も多いのではないでしょうか。
北海道などでよく作られていますけれども、茎のところでカットして、箱につめて運ばれます。
国産の場合には「予冷処理」といって、この段階で冷蔵処理が行われます。
大体5度の低温で保管されますので成長しません。
当たり前のことですが、放っておくと切った後もアスパラの穂は伸びるのです。
ところが、アメリカとかオーストラリア産のアスパラは、そのままマーケットに並んだ後も、まったく穂が伸びないのです。
これは、植物成長調整剤、いわゆる植調剤を使っているとしか考えられません。
化学合成の植物ホルモンで、成長を止める矮化剤(わいかざい)です。
一方成長促進剤を使って植物や動物を早く成長させ、一方で化学合成の植物ホルモンを使って成長を遅らせる。
単体では安全だといっても、反対の働きをするホルモン剤の両方が身体に入ってくるのです。
単純に考えてもおかしいとは思いませんか。
ホルモン剤の危険についてはメディアでも時々取り上げられますけれども、身体の中で複合汚染が起きている、ということを考えさせられる例ではないかと思いました。
十数年前まで、私は整体の指導を千葉の市原市というところでやっていました。
基本的には付け届けは受け取らないのですが、千葉は農業県ですから、クライアントが畑で作ったものを持ってきてくださることが多かった。
それはありがたく頂戴していました。
するとだいたい、「先生、これ出荷用じゃないから安心して食べてくれ。自宅用に作ったもので、薬使ってねえから」と言って置いていってくれるのです。
よく聞く話かと思いますが、これはつまり、農家の人たちは危険だからと決して食べない農薬に汚染された作物を、消費者が食べているということです。
私達の世代は既にたくさん農薬を摂り込んでしまっていますから、もうそこから逃れることはできません。
でも、それが子の代、孫の代と同じように体内にどんどん蓄積されていくのを見過ごしてはいけないと思うのです。
外国産の野菜だけが危ないのではなくて、国内産もかなり危険なゾーンに入っています。
日本国内で農薬と称されているものを製造している会社は、2003年農薬年度の統計では214社ありました。
農薬の生産量は、国内向けだけで32万トン、出荷金額では3550億円です。
出荷金額を小売に均(なら)すとおおよそ3倍近くといわれていますので、一兆円産業、巨大な市場なのです。
214社の中には、日本では3本指に入る菓子メーカー、明治製菓も入っています。
そこにビジネスチャンスがあれば当然いろんな会社がこの産業に関わってきます。
しかし、もう一歩先まで考えると、農薬を使って農業を営む人口は縮小の一途を辿っている。
後継者もいない。農地を狭まる一方。
農薬産業はこれからどこに向かっていくことになるのか、という疑問も生じます。
一挙に変えることはできなくても、何かを始めなくてはいけない時が来ているのです。
今や就農者の平均年齢は60歳を超えています。
高齢者が農業に従事するのですから、少しでも楽ができるように工夫するのは仕方のないことです。
農家の倉庫を見せてもらいますと薬がたくさん置いてあって、実際には、危険なので数年前に販売が中止されているような農薬も置いてあります。
それでも、農家では処分せず使います。
使うなとはいえませんし、それを咎めることもできません。
危険だとわかっているものを何で使うんだ、と攻めることは簡単ですが、何の解決ももたらしません。
ただ批判をするだけでは世の中を変えることができないのです。
一部のメディアが今の経済活動を煽っているという側面もあります。
30年ぐらい前に、ある経済評論家が日本の農業はなくなってもいい、と力説しているのをテレビで観ました。
日本は、土地が広い国から大規模に作られた安い食料を買えばいい、逆に、工業製品を輸出すればよいし、工場は、土地や人件費の安い外国に建てればよいのだ、と。
日本が国中商社のようになって取引をすればよいということです。
実際にそのようになってしまいましたし、それが今の食料自給率の低さに?がっています。
アメリカの食料自給率は110%を超えており、フランスは130%ぐらいでしょうか。
先進国は、農業立国でもあるのです。
第一次産業ですから国の根幹なのです。
これをないがしろにして本当に国が成立すると思っているのでしょうか。
第一次産業なしに国の発展はありえないと私は思います。
ですが、我々のマーケットはメディアにいわば支配されています。
食べものというのは安ければ安いほどいいという誤った方向に発想が振り向けられているのです。
年齢的にも耐えられなくなった高齢者が離農してゆき、就農人口は減る一方、結果的に輸入食品の量が多くなる――このサイクルを止めるのは誰なのか。
私達消費者以外にありません。
食べるものに正統なお金を払うようになれば、就農者の生活も成り立つようになるので新たに農業に従事しようと思う若い人たちも増えてくる。
また、輸入穀物の大半を消費するのは畜産業ですから、私たちが肉を余計に摂らない食生活に戻りさえすれば、無駄な輸入をしなくても済むようになります。
政治では何も変わっていないことも、消費者には承知しておいてもらいたいのです。
今できることは、消費者が自覚を持って自分の食べるものを選び、そこにまっとうなお金を支払うことしかないのではないでしょうか。
● 危うい電子レンジ
電子レンジに関しては、もう十数年前から知人、親戚に対してとにかく使わないで欲しいと言ってきました。
その頃は電子レンジについての科学的なデータも持っていませんでしたし、またインターネットもありませんでしたから、あくまでも私の感覚として危険を確信していたに過ぎません。
我が家には20年ぐらい前には電子レンジがありました。
私は料理好きの青年でしたので、出始めの頃に父にねだって買ってもらったのです。
エンジニアだった父も新しい物好きでしたから、すぐに買ってくれたのです。
嬉しくていろんなものを作りました。
タンシチューとか、トンカツみたいなものを作って失敗したり、あれこれ試して楽しんでいました。
ところが、だんだん、どうも電子レンジで作ったものを食べると胃がきりきりと痛いということに気付き始めたのです。
私は非常に敏感ですので、なんだか変だということはわかるのです。
けれども電子レンジはヒットしていますし、父にねだって数十万のものを買ってもらった手前、なかなか手放せずにしばらくは使い続けていました。
でもあるとき、これはやはりどうしても変だと直感し、一切使わなくなりました。
私は昔から素材の味が生きている料理が好きですから、キャベツはキャベツの味がしないといやですし、大根は大根の味がしないと料理した気にならない。
それが、短時間でも電子レンジを使ってしまうと、味もおかしくなってしまうのです。
その後、特別にデータを入手してわかったことは、やはり電子レンジは食べ物を壊しているということでした。
水の分子にマイクロ波を当てて物理的に激しい振動を起こさせることで温度を上げるというのが電子レンジの加熱システムですが、その激しい動きは自然界では発生しないものです。
この破壊力に耐える有機細胞は存在しませんので、どんなものでも細胞自体が変質してしまいます。
これではおいしいはずがありませんし、電子レンジで調理したものを食べても、本当の意味では身体に栄養が吸収されない可能性があります。
酸素と化合して、油が発ガン物質である過酸化脂質に変化することもわかっています。
さらに、プラスチックの容器をそのまま入れて加熱したり、ラップでチンしたり、化学物質がマイクロ波を当れたときには、どんな分解が起こって、どんな化学物質が溶け出しているのかはわかりません。
はっきりとしたデータが取れないのです。
今では驚くほど普及して、電子レンジがない家なんてないくらいです。
本当に便利ですから、それを今日からやめなさいというのは心苦しくもあるのですけれど、『超不都合な科学的真実』(ケイ・ミズモリ著)という本で挙げられていた電子レンジがもたらす害の例を紹介しますので、参考までに考えていただきたいと思います。
アメリカで1991年に実際に起きたと伝えられている事件です。
手術後輸血が必要な女性の患者に、看護師が電子レンジで温めてしまった(輸血用の血液は温められるのが通例ですが、電子レンジが使用されることはないそうです)血液を輸血したところ、死亡してしまった。
これは現代の科学では完全に解明できないのかもしれないのですが、マイクロ波が血液中の成分を異常なものにしたためにこういうことが起きたと解釈されています。
電子レンジを使った食品が身体に及ぼす影響を分析したデータもあります。
スイスの科学者ハンス・ハーツェルという人が、電子レンジで加熱した食品を被験者に食べてもらい、食前と食後の血液を分析したのです。
すると、ヘモグロビン値の減少、コレステロール値の急激な増加、白血球数の増加が認められたそうです。
ヘモグロビンというのは、肺から全身へ酸素を運ぶ役割を担っている赤血球中のたんぱく質ですから、極端な言い方をすると、電子レンジで加熱したものを食べるとわれわれの身体は微細なレベルで酸欠状態になるということです。
これは高齢者や子どもには、大変な影響があると考えなければなりません。
白血球が増加するというのは、身体に起きた危険な状態を食い止めようとする場合に起きる現象ですから、本能レベルでは、電子レンジで加熱したものを食べると危険だと身体が察知しているということではないでしょうか。
私はそう理解します。
コレステロール値が急速に上がるというデータがすごいのは、加熱した食品がコレステロールを含んでいない食品、つまり野菜だった点です。
食品中にコレステロールがないのにもかかわらず、食べるとコレステロール値が上昇するのです。
異常だと思いませんか。
こうした研究結果の真偽を確かめる術はありませんが、個人的にはとても納得できるものでした。
電子レンジを使った料理のレシピ本はたくさん出回っています。
でも、私は電子レンジを使ったものを料理と呼んではいけないのではないかと思っています。
電子レンジを使ったものがおいしくないということぐらい分ってもらいたいものです。
それがわからないくらい鈍い舌になってしまっているともいえるのかもしれません。
便利という理由だけで電子レンジを使い続けるとしたら、その人は自分に対して大変否定的だということでしょう。
ただ、電子レンジは危険だ、電子レンジで作ったものはおいしくない、とはどこも報道しませんし、誰もいません。
なぜなら、そのことによって金銭的な利益を得る人がいないからです。
消費者には、自分の感覚で確かめた上で選択してもらいたい。
電子レンジがなくてもおいしいものはできますし、もう世の中は十分に便利なのです。
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