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『食は生命なり』 【98】
日野原重明 劉影 著 青春出版刊
『病気なら15の食習慣』
楽しく生きる長寿の秘訣
より その2
習慣2 寝る前に食べても大丈夫
一般的に、夜、寝る前に食べるのは進退に悪いとされています。
内臓に負担をかけるとか、睡眠を妨げるなど、理由はいろいろありますが、多くの人にとって、ゆっくり食事ができるのは夕食のみ。
帰宅時間が相当遅い日と老います。
就寝前の食事を禁止したら、満足に食べられないというストレスに悩む人が増えるのではないでしょうか。。
● 朝、昼、夜のバランスは2対3対5
「身体に負担をかけない食べ方は、まず夕食を軽くすること。そして、食べてから就寝まで、少なくとも3時間は空けてください。できたら、できたら夜9時以降は食べないことです」
医師や栄養士から食事指導を受けた経験のある日とは、必ず、こんな内容のアドバイスを聞いているはずです。
確かに、これを実行できれば理想的ですが、会社勤めの人には、なかなか難しいようです。
残業続きで、深夜11時ごろに帰宅。
それから急いで食事をする人も少なくありません。
明朝、遅れずに出社するためには、なるべく早くふとんにもぐりこまなくてはならず、食後、ゆっくりするというのは、休日の前日でもない限り無理ということになるでしょう。
私も、そういう人たちと同じで、食事のウエイトが一番重いのは夕食です。
割合で言うなら、朝食:昼食:夕食=2:3:5ということになるでしょう。
そんな私に対して、周囲からは身体をあんずる声が聞こえてきそうです。
「朝食や昼食をしっかり取るようにして、夕食を軽くしないと、身体に負担になりませんか?」
けれども負担に感じたことはありません。
特に胃腸が弱いとか、胃腸の調子が悪いという場合を除けば、食べる時間にあまり神経質になる必要はないと思っているからです。
第一、夜9時以降は食べられないということになったら、忙しい人は満足に食事ができない日々を送ることになり、それこそ身体を壊すか、栄養失調になってしまいます。
何年も、夕食にウエイトをおいて食べ続けてきた私が言うのですから確かです。
1日の緊張を解く意味でも、食べることは非常に大切なことなのです。
私の場合、食後に仕事の整理をしたり、原稿を書いたりすることが多いのですが、時には、食べてすぐ寝ることもあります。
けれども、寝苦しかったり、胃がもたれたりすることはまずありません。
あるとき気づいたのですが、食後すぐの睡眠が身体に負担だと感じるのは、寝方に問題があるようです。
あおむけに寝るのはあまり良い方法とは言えず、そこで、私が提案したいのは、うつぶせに寝ることです。
すでに私の身体で実証済みなのですが、うつぶせ寝は、食後でもよく眠れるだけでなく、続けると肺活量も増えるようです。
私は大学生のときに結核を患ったため、肺活量が少なかったのですが、うつぶせ寝によって肺が鍛えられたのか、肺活量が1300から2000に増えました。
体系を考えると、女性には不向きかもしれませんが、胃下垂の人には楽な寝方だと思います。
● 常識は変わるもの
くれぐれも、誤解はしないでほしいのですが、私は寝る前に食べることを奨励しているわけではありません。
ただ、どうしても夕食時間が遅くなってしまう人に、少しでも負担のない方法を提案しようというわけです。
いっぽうで、遅い時間の夕食を、それほど悪いと思っていないことも事実です。
なぜなら、それが科学的に実証されているわけではないからです。
医学の常識に変化はつき物。
極端な言い方をすれば、昨日まで正しいとされていた理論が、翌日には疑問視されることも少なくありません。
医学の限界というよりは、それほどに人間の身体は神秘的であり、解明されていないことが、まだまだたくさんあるということなのでしょう。
たとえば、こんな例があります。
風邪を引いて熱が出た場合、入浴を控えるというのは、いつの間にか常識のように信じられています。
しかし、入浴が悪いという実証はありません。
そこで、私は、ある実験を試みました。
38℃以上の熱が出たときのことでした。
アスピリンによって熱は下がったものの、身体はぐったり。
常識で考えるなら、そのまま床に入ろうとするでしょう。
ところがふっと思ったのです。
“お風呂に入ってから床に付いたほうが、気持ちいいんじゃないかしら。もしかすると風邪も早く治るのではないか”
発熱のすぐですから、普通の医師なら入浴を諦めるでしょう。
ところが、思い切って湯船につかると、とても気持ちがよく、翌日には熱も下がって、さわやかな朝を迎えることができました。
そこで気付いたのです。
風邪の患者さんに、入浴を禁じるのは医師の都合に過ぎないのではないだろうか――。
入浴後に肺炎でも併発したら、医師としての責任を問われることになってしまうからです。
ですから、ときには常識にとらわれることなく、自分自身の感覚を信じたほうが、回復が早まることもあるのです。
80歳で鼠蹊(そけい)ヘルニアの手術をしたときは、「2〜3日で退院させてください」といって、医師を驚かせました。
10日間の入院が必要との診断でしたが、それほど入院しなくても大丈夫だと感じましたし、私のような高齢者が、10日も体を動かさないでいたら、身体がなまってしまうと思いました。
それに何より大事な講演の約束が控えていたのです。
結局、医師がとめるのも聞かずに、痛み止めを通常の倍くらい飲んで講演に出かけましたが、再発もなく、順調に回復しました。
睡眠時間についても、同じことが言えます。
一般的に、身体の疲れを癒すには、6時間から7時間程度の睡眠が必要とされていますが、私の睡眠時間は、5時間を切っていると思われます。
ときには徹夜で原稿を書くことがあるからです。
しかし、睡眠不足による疲れを感じたことはありません。
それより、原稿を書き上げたという達成感のほうが強いため、疲れなど吹き飛んでしまうのです。
一方で、7時間以上睡眠をとらないと体調が悪い人もいると思いますし、季節によって睡眠時間が変化する場合もあるでしょう。
そういう人は、私の習慣を参考にしたら身体を壊してしまうかもしれません。
このように、常識や通年というものは、すべての人に当てはまるものではありません。
大切なのは、そういうものに左右されずに、自分の身体にあった独自のものさしを持つことではないでしょうか。
劉影の養生ガイド
深夜の夕食では何を食べればいいか
● 現代人の生活にあった養生法を
日野原先生の実行されている、朝食:昼食:夕食=2:3:5というのは、まさに現代を生きる人の典型的な食べ方だと思います。
この数字からも、先生が現役として、日々忙しくされていることが想像されます。
いうまでもなく、このような食べ方は、東洋医学の考え方とは相反するものです。
東洋医学では、人間の身体を自然の中のひとつの要素として考えますから、その行動も、自然に即したものでなければなりません。
ですから、朝は日の出とともに目覚め、労働や勉学など日のあるうちに済ませ、日没とともに休むというのが基本です。
理想的な食事のとり方としては、まずウエイトを朝食に起きます。
1日の始まりにこそ、たっぷり栄養補給をすべきであり、しかも食べ物は良質でバランスがとれていなくてはなりません。
昼は適度に空腹を満たせばよいので、朝食ほどたくさんとる必要はありません。
そして、1日のしめとなる夕食のポイントは、何よりも少量であること。
身体を休める前ですから、できるだけ少なくして内臓への負担を減らそうという配慮です。
この養生法を数字で表すことはできませんが、朝食を重視するという点では、日野原先生をはじめ多くの現代人が、東洋医学の養生法に逆らって生きていることになってしまいます。
そして、この傾向は、実は私にも当てはまるのです。
多くの医師と同じように、患者さんには理想的な食事法をすすめながら、自分自身は反対のことをしているのが現状。
もちろん、寝る直前に食べることもあります。
そこで痛感するのは、私たちはこれだけ夜型の社会に生きているわけですから、単に”不養生”と片付けることはできないということ。
東洋医学の教えをもっと現代風に変えていかなくてはと思っています。
● 入口と出口を意識する
ものを食べるということは、人間の大切な欲求のひとつですから、あまり制限が過ぎるとストレスとなって、過食や肥満を招いたりすることにもつながりません。
もし、寝る間際しか食事を取れないのなら、それはそれで仕方のないこと。
寝る前に食べても大丈夫な方法を取り入れることにしましょう。
そこで、私が実践しているのは薬茶を飲むことです。
薬茶といっても難しいことを考える必要はありません。
本格的な中国茶を選ばなくても、最近では、特定保健食品に指定され、さまざまな効果を持ったお茶が売られています。
血糖値の上昇を抑えるもの、コレステロール値を下げるもの、腸内環境を整えて消化吸収を助けるものなど、その効果は多岐にわたります。
また、薬局でも、食べものの脂肪を分解するウーロン茶やプーアール茶、胃腸の働きを活発にするジャスミン茶など、さまざまな薬茶を見かけます。
夜遅い食事の後処理としては、消化吸収を助け、脂肪を燃焼させる作用のあるウーロン茶やプーアール茶を選ぶことにしましょう。
飲み方としては、まず食事の前に少量飲み、さらに食事を取りながら飲むという方法がよいでしょう。
特に特定保健用食品のお茶は、食前や食事中に飲むこと。
食後に飲んでも効果はありません。
このように、入口だけではなく、常に出口を意識して食べることが重要なのです。
ただし、売薬の力に頼るのは避けてください。
「ゆうべのみ過ぎてしまったと」か、「食べ過ぎて胃が重い」と、朝から医薬を探し回った経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
最近では、食べる前に飲む胃腸薬も市販されていますが、これはよくないと思います。
例えば、過食してしまったとしても、こうした薬に安易に手を出すのは危険。
薬には必ず副作用がありますし、飲み続けることで、内蔵が鈍化し、さらに強い薬を求めることにもなりかねません。
遅く食べるのは仕方ないとしても、過食には十分注意してください。
過食予防としては、スープや野菜サラダなど、低カロリーのものでまず空腹を満たすこと。
その後で少量の炭水化物やたんぱく質を摂ります。
動物性たんぱく質を摂取する場合は、肉より、胃腸に負担の少ない魚を選ぶようにしましょう。
深夜の焼肉店で、焼肉をお腹いっぱい食べるなんていうことのないように注意してくださいね。
過食に注意し、入ったものを上手に外に出せれば、寝る前の食事もそれほど負担にはならないでしょう。
そして、日野原先生が推奨するうつぶせ寝にトライしてみるのもよいかもしれません。
うつぶせ寝の効果については、東洋医学の立場から語ることはできませんが、寝しなに食べるにしても、うつぶせ寝ができる程度の量に抑えておくといった、そんなバロメーターとして考えることもできそうです。
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