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『食は生命なり』 【111】
日野原重明 劉影 著 青春出版刊
『病気ならない15の食習慣』
楽しく生きる長寿の秘訣
より その15
習慣1 効率よくカロリーを消化する
良い食習慣を身につけるだけでなく、
身体を動かすことにも気を使いたいものです。
だからといって無理にスポーツジムに通う必要はないでしょう。
私は日常生活の中で簡単にできる運動が
いちばんいいと思っています。
程よい運動ですから、長く続けられるし、
身体や仕事にも負担をかけません。
● 歩く習慣で無理なく効率よくカロリーを消化
健康のためにスポーツジムやダンス教室に通ったり、DVDを見ながら筋肉トレーニングを行うなど、こまめに身体を動かしている人は多いと思います。
もちろん、私もその一人で、なるべく体を動かすようにしています。
かといって、特別に、レッスンを受けたり、ジムに通ったりする時間はありませんから、どこでも簡単にできることを基本としています。
そこで、発案したのが、まず歩くことです。
よく、”1日1万歩”をスローガンに掲げる人がいますが、いきなり、1万歩歩こうと思っても、それは無理。
少しずつならしながら、私は、現在1日800歩を目標にしています。
ただし、ウォーキング専用の時間をとるのは難しいので、移動の時間を見つけては歩くことを心がけています。
例えば、空港などに設置されたオートウォーク、いいかえれば動く歩道。
どんなに荷物が重くても、私がこれを利用することはありません。
オートウォークに乗って、ゆっくりすすむ人を横目に、少し早足で、これを追い越すのが楽しいのです。
ただ、歩くのではなく、追い越すときの爽快感、ここがポイントです。
良い食習慣を身につけ、さらに運動の習慣を身につければ、長寿に、もう一歩近づいたことになります。
ただし、運動にも注意点があります。
若い人の場合、週にどのくらいのペースで運動するかは自由です。
週に1度でも2度でも、自分なりのペースで行ってください。
しかし、高齢者の場合は違います。
最低でも、週に3、4回は運動するようにしたいもの。
1週間に1度、いきなり身体を動かすというペースでは、かえって身体に負担をかけたり、故障の原因になります。
短い時間でもかまいませんから、できれば毎日動かすのが基本です。
激しい運動は避けて、早足で30分ぐらい歩くくらいがちょうど良いでしょう。
● 自分に合った運動を知る方法
エスカレーターを利用しないというのも私の健康法の1つです。
移動の際、駅のエスカレーターを利用しないのはもちろんのこと、病院内でもなるべく階段を使うようにしています。
聖路加国際病院内の私の部屋は5回にあるため、地下1階の駐車場から、私の部屋へ行くときには、約150段の階段を上ることになります。
毎日続ければ、それだけでも、かなり足腰が鍛えられるはずです。
しかし、いきなり、150段も登れるようになったわけではありません。
最初は地下1階から2階まで階段を利用し、後はエレベーターに乗るようにしていました。
慣れたころに、今度は3階まで、次は4階までというように、少しずつ段数を増やしていったのです。
こんなふうに、徐々に身体を慣らし、毎日のように適度な運動をするということが、高齢者の身体の使い方としては理想です。
身体にちょうど良い運動法を決めるときには、脈拍数を測ることです。
手首に軽く指をおいて、脈拍を数えて見ましょう。
一般的には、1分間に男性が60〜70程度、女性は65〜75ぐらいだと思います。
脈拍数は、運動すると当然、多くなります。
そこで、運動の後、再び脈拍数を数えてみてください。
高齢者の場合、このときの心拍数が、120を超えるようでしたら、もう少し、緩やかな運動に変えたほうが良いと思います。
● 代謝を浴する日野原式呼吸法
階段を登るときも、ただ、ゆっくりと上るのではなく、エスカレーターに乗っている人を追い抜くペースであることがポイント。
オートウォークを歩くときと同じように、「やったぁ、また一人追い抜いた」ということが愉快であり、また爽快感につながるのです。
どうせやるなら、どんなことでも楽しくやろうとすることが長続きの秘訣です。
これには、ひそかなトレーニングもしました。
病院の階段を一段飛ばしで上がるのです。
今では、2階分ぐらいは1段飛ばしで登れますから、駅の階段で、エスカレーターの人を追い抜くなんて、朝飯前なのです。
このとき気をつけているのが呼吸です。
「吐いて、吐いて、吸う」というリズムが、肺を鍛えますし、血液の流れも良くします。
息を吐ききって、ふっと緩めると、スーッと酸素が入ってきます。
これが腹式呼吸。
階段で足腰を鍛えつつ、腹式呼吸によって、代謝まで高めるという、まさに一石二鳥のトレーニングなのです。
誰にでも簡単にできますから、ぜひ試してみてください。
劉影の養生ガイド
年齢体質に合った運動を
● あなたの体質に合った運動法は
激しい運動でカロリーを消費すればいいというものではありません。スポーツジムに行くと、苦しそうな表情で進退を動かしている人を見かけますが、、かえって身体をいためることにならなければいいけれど・・・・・・。と心配になります。10代、20代ならともかく、中高年になってからの無理な運動は避けたいもの。日野原先生のアドバイスに従って、最大脈拍数が120を超えないように配慮しましょう。
運動も食習慣と同じで、今日、身体に良いことをしたから、すぐに結果が出るというものではありません。気長に毎日続けることが何よりなのです。
強いストレスを感じた際に、普段より運動に時間をかけるという方法もあります。ストレスによって、華燭になってしまうと悩んでいる人もいるでしょう。ストレスを感じたら、まず身体を動かすこと。運動を活用すれば、過食が予防できるかも知れませんん。そこで、運動の選び方ですが、体質に相性のよい食べものと悪い食べものがあるように、運動にも、会うものと会わないものがあります。たとえば、代謝のよいタイプなら、激しい運動をしてもかまいませんが、体力七位タイプには、動きの静かなストレッチ体操が合っています。
タイプ別に、相応しい運動を紹介しておきますので、参考にしてみてください。
【木タイプ】
どちらかというと顔色が青白く、血行の悪いタイプ。
汗をよくかき、筋肉質で太りやすいタイプです。
正確は積極的ですが、反面、せっかちで落ち着きない印象を与えることもあります。
ヒステリックになることも。
⇒ ストレスがたまると、イライラして怒りっぽくなります。
血圧も滞りがちなので、こういうときには、身体を動かして汗を流すことです。
ジョギングやエアロビすくがよいでしょう。
【火タイプ】
赤ら顔っぽく、肌は脂性。
にきびが出やすいタイプです。
体質は木タイプと似ていて、汗っかきで筋肉質、肥満にはなりにくいでしょう。
マイペースで物事に打ち込むタイプですが、精神のバランスを崩すと気分屋の面が出てしまいます。
⇒ ストレスが高じると、息切れ、動悸、不眠、便秘などに悩まされます。
解消法は、身体を動かしてたまった熱を発散すること。
汗を流すスポーツより、水泳などが良いでしょう。
【金タイプ】
乾燥に弱く、肌荒れしやすいタイプです。
身体は中肉で、肥満になることはありません。
健康面でも大きな問題はないのですが、ただ花粉症などに悩む人は多いようです。
性格は冷静沈着。
面倒見も良いので周囲の人から慕われるタイプです。
⇒ ストレスによって、気力が失われて疲れやすくなります。
風邪なども引きやすくなります。
対処法としては、山登りや水泳がピッタリ。
ストレスで衰えた肺の働きを良くします。
【土タイプ】
顔色は黄色っぽく、冷えやすいタイプです。
代謝が悪いので、肥満で悩むことにもなります。
じっくり考えてから行動する思慮深さが長所ですが、一度くよくよし始めると際限なく落ち込み、それが過食の原因になることもあります。
⇒ ストレスに弱く、くよくよ際限なく悩みます。
胃腸の働きが悪くなり、倦怠感に気持ちは沈むばかり。
ストレッチやヨガなど、緩やかな動きでリラックスしましょう。
【水タイプ】
肌はややくすんだ感じ。
土タイプ同様に冷え性で代謝が悪く、むくみによる下半身太りに悩まされます。
性格はやさしくおっとりしていますが、消極的なのが欠点。
うまくいかないことがあるとすぐにめげてしまいます。
⇒ ストレスを受けると、無気力になり、風邪を引きやすくなったりします。
腎臓の働きも悪くなり、だるさを覚えることも。
激しい運動は避けて、軽いストレッチやウォーキングなどで身体をほぐしましょう。。
● 心の未病を吹き飛ばそう
オートウォークやエスカレーターを脇に見て、早足で歩く日野原先生の姿が目に浮かぶようです。
きっと、1人抜くたびに嬉しそうな笑顔を浮かべていることでしょう。
どんなことでも楽しんでやるという考え方は素敵です。
本当に、人生そのものを楽しんでいるのですね。
疲れているときには、誰でも階段よりエスカレーターを選びます。
けれども先生は、どんなに疲れていても階段のほうに足を向けるでしょう。
そこに楽しみを見出しているからです。
身体だけでなく、心も健康なのです。
先生の食習慣や運動習慣を見習うと同時に、こうした気の持ち方についても見習ってもらえたらと思います。
なぜなら、身体の未病からではなく、心の未病から病気になってしまう人がとても多いからです。
すべてをマイナスに受け止めて、自分から心配事を作り出していく――。
そういう人は、どんなに食習慣に気をつけても、気持ちを切り替えない限り、健康は望めないでしょう。
この本では、日野原先生の習慣にからめて、先生の貴重な体験も紹介していますが、中には”ちょっと無茶だなあ”と思う体験もあります。
真似をするには勇気がいると感じる人もいることでしょう。
もちろん、それをそのまま実行する必要はありません。
学ぶべきは、先生の前向きな態度、楽しく生きることに対する貪欲さです。
人間はやる気になれば何でもできる。
そして、けっこう強いものだということも学びとってもらえたのではないでしょうか。
● あとがき
この本を出版するに至ったきっかけは、昨年の秋のテレビ収録でした。
「落食美人」(BSテレビ)という、私がパーソナリティーを務める番組に、ゲストの1人として日野原先生をお迎えすることになったのです。
「楽しく食べていつまでも若々しく健康に」をテーマとしたこの番組に、先生がいらっしゃることになり、収録日を楽しみにしていました。
先生とお会いするのは8年ぶりだったと思いますが、私はこの再会に驚きを隠せませんでした。
まず、先生の記憶の確かなこと。
かつて私は、健診学会において先生から表彰をいただいたことがあり、そのことを先生はしっかり覚えておいででした。
さらに、つやつやとした肌と穏やかな笑顔、軽やかな歩き方、そのどれもが若々しく、96歳という年齢をまったく感じさせなかったのです。
この20年間、私は未病を治すための研究に全身全霊をささげてきました。
ことに健診の数値について、異常値との境界域から正常値に戻すことに力を注ぎました。
しかし、これで本当に健康になったといえるのか、幸せといえるのか・・・・・・。
ずっと疑問に思っていました。
その疑問が、日野原先生との再会によって解けていくのを感じました。
先生の表情は生き生きとして、幸福感に溢れていました。
人間にとって、何よりも大切なのは、喜びを持って生きることだと気づかされたのです。
そうだ、未病を治すことをゴールのように考えていたからいけないのだ。
それは、ひとつのプロセスに過ぎない。
大切なのは無病のまま、幸せに生きること。
未病を治すことだけではなく、無病に導くことこそ、私に与えられた使命なのだ。
日野原先生のお元気な姿が、生きているデータにさえ見えました。
では、無病を貫く方法をどのように伝えていくか。
こう考えたとき、医者としてだけでなく、1人の人間として、行き方を伝えることだと思いました。
生き方とは、わかりやすくいえば養生のことです。
養生の中でも、もっとも大切なのが食養生。
つまり食習慣ということになるのです。
「副は口から、病も口から」――中国に伝わるこの諺を指針として、私は、日本人の体質と食事との関係性について長年研究を続けてきました。
日野原先生が実践されてきた食習慣とか私がライフワークとして研究の成果、これらを融合することで、多くの人を未病から無病へと誘うことができれば、これ以上のことはありません。
これからの人生を楽しく生きるために、あなたの食習慣を見直す一冊になればと願っています。
劉影
おわり
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