|
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
![]() 京都大学教授・中野一真氏によると、日本の食糧・農業分野における1998年度海外援助実績は14.7億ドルでアメリカの15.2億ドルと並ぶ世界最大の枠に達している。しかし、アメリカの場合は15億ドル余のうち11億ドルまでが食糧援助向けであるのに対して、日本のそれは6000万ドルにとどまる。残りの大半は農業技術開発、農村インフラ整備、農業環境保存といった農業分野への資金拠出である。 中野一真氏は以下のように述べている。海外食糧援助の実態について詳しく見ていくと99年度の穀物による食糧援助実績は、全世界で1295万トンに達するが、このうち830万トンがアメリカ1国によって占められている。アメリカ側からするとアフリカやアジアの食糧不足地域への食糧援助輸出が、アメリカの穀物輸出全体の1割近くに及ぶ。 ところで日本が海外食糧援助に本格的に乗り出すのは、国際穀物協定に基づいて援助が実施されてきた“KR食糧援助”がスタートした1968年からである。この“KR食糧援助”は食糧不足に苦しむ途上国の食糧買付資金を先進国が無償で供与する方式をとるため、被援助国はこの拠出金をもとにして、穀物輸出大国から、小麦や米、トウモロコシの大半を買い付けることになったわけである。“KR食糧援助”はアメリカの世界穀物市場開発戦略の一角を構成するといわれるゆえんである。 他方、わが国は援助に“カネ”を湯水の如く拠出するばかりで、過剰基調にある国産米の海外市場開発に一向につなげられないまま現状に至っている。 日本政府は1996年になってようやく政府米を食糧援助用に現物拠出する方策をあみ出すが、その実体は次のようなものである。さきの年次報告によると、わが国は1999年に35万トン相当の穀物を援助したが、そのうち20万トンは政府米であった。金額ベースでみると、同年わが国のKR食糧援助総額140億円余のうち、60億円が政府米を利用した現物拠出に、残りの80億円が被援助国による外国産穀物の買付資金に供されたことになる。 ここで問題になるのは援助用政府米の内実である。1999年にはKR食糧援助用政府米の20万トンのうち国産米はわずか5万トンで、残りの15万トンは外国からの輸入米(MA=最低輸入機会=米)、2000年についても国産米1万トンに対して輸入米は17万トンにのぼった。1998年に新設された政府米貸し付け方式の緊急食糧支援事業の場合もほぼ同様で、1998年のインドネシア向け貸付米50万トンのうち20万トン、1999年は20万トンのうち8万トンがMA米であった。 連年の米過剰に悩まされ、100万ヘクタールを越す減反を余儀なくされている昨今、食糧援助の名のもとに、@穀物輸出大国の穀物買付資金を途上国に無償供与したり、Aウルグアイ・ランド農業合意によって買い付けを義務づけられている輸入米(MA米)を“再輸出するだけで、こと足れりと考えていてよいのだろうか。 新世紀を迎えた今“効率的援助”(安い外国産穀物の購入)を建前とする穀物買付資金ではなく、過剰基調にある国産米を援助物資として活用していく方法を、真剣に考える時期がきているのではないか。 ![]() 世界には、やむなく食糧不足に苦しむ多くの人々がいる。この人々に可能な限り援助の手を差し伸べることは大いに意義のあるところである。しかし私たち日本人は自ら口にするものを自らの手で作ることを放棄しようとし、経済力に物を言わせてその60%を世界から買い集めて、美食飽食三昧に耽っている。 後継者も無く、このままでは日本農業は衰退し農地も山村も荒廃する。日本で作れるものを作る。日本で収穫されたものを食べる。それが健康にいいことは誰もが承知である。安心な良い食糧を生産し自給率を上げること。そして恵まれない世界の人々とも手を携え合っていくことが基本とならなければならないと思う。主な先進国の食糧自給率(供給熱量)は、フランスが139%、アメリカが132%に対してドイツが97%、イギリスが59%、そして日本は先進国最下位の日本が41%です。 ![]() 少し古くなりますが、1996年の各国における農産物の輸入輸出に関する農水省の統計です。(単位は億ドル)
約5兆円の農産物を買い付けています。日本にはないわけでもなく、作れないわけでもない農産物が、市場開放、グローバルスタンダードの名の下に輸入が拡大され、食べることをますます外国に依存する方向に向っています。そして輸入農産物の多く、40%近くがアメリカからであり、今中国からの輸入も急速に増大しつつあります。オーストラリア、ニュージーランド、タイ、韓国、台湾などからも開発輸入が進められています。 ![]() 米を中心とする伝統食が後退し、欧米風の食が氾濫して一見豊でバラエティに富んだ新しい食文化が形成されたかのように見えますが、内実は胃袋を外国に預けたことになり、お腹の中は秩序のない食のとり方で混乱しています。畜産物や油脂類の消費が増加したことにより家庭における和食は後退し、学校給食、サラリーマンの昼食、たまの外食も日本食から遠退いています。そして日本人の食体系が崩れ、生活習慣病をはじめ健康上において様々な問題が指摘されるに至っています。 ここでもう一度わが国における平成11年度の自給率を見て見ましょう
わが国の食糧自給率(供給熱量)は、1960年には79%ありました。米も野菜も、魚介類も100%自給していたのです。そして1960年当時の食品ロスは日本人1人1日当たり196キロカロリーであったものが、現在ではその食品廃棄率が600キロカロリーにも上るといわれます。 日本の気候風土にあった作物を自らの手で作り、日本人の食体系のあった食事を中心とし、「身土不二」「地産地消」「旬産旬消」を少し心がけるだけで、食糧自給率は大きく向上し、理想的で豊な食糧事情が開けてくるのではあるまいか。それが次世代のためにも急いで為さねばならない大きな政策課題でもなければならないと思うのだが。
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
|