浅野川の伏流水が育てた
さわやかな香りを楽しむ
やわらかくてあくが少ない
お浸し・和え物・鍋物に
金沢の伝統野菜
金沢せり
加賀野菜の“せり”は、茎の長さが40cmと長く、柔らかくてアクの少ない在来種す。
1株の重さは約4g程度で、全国で最も茎が細く、細葉の部類に属します。
収量は少ないですが、品質は優れています。
冬場の食卓に彩りと香りを届ける野菜として欠かせないものになっています。
前年に収穫せずに4月下旬まで残した株を、4月下旬に代掻きした田に植え付け、以後水管理を行い株を発育させます。
8月下旬に株の抜き取りを行い、1週間堆積し各節から発根を促します。
発根したランナーを15〜20cmに切断し、そのランナーを苗として代掻きをした田にむらなく散播します。
江戸時代は、田んぼに水を溜めておく田井に、せりが自生もしくは栽培されていました。
明治に入ってから弓取郷の上安江・下安江の水田に栽培され、その後、諸江の柿本庄左右衛門が安江より諸江の方が水質がよく、こんこんと湧き出る豊富な水量に気づき、せりを栽培したのが始まりと云われています。
諸江のせりは、明治初期から栽培されており、諸江自慢の特産品として、昭和に入ってからさらに生産が伸びました。
昭和30〜50年頃が最も盛んで、県内生産量の100%を占めるだけでなく、県外各地へも広く販売されました。
諸江地区にせりが良くできたのは、付近の浅野川の伏流水により清潔な灌漑水(湧き水)がせりの栽培に適していたからです。
昭和40年頃から湧く水の量が減ったため、現在は深い井戸を掘って電気ポンプで水をくみ上げて栽培しています。
●せりの栄養と効能
◆「厄年にはセリを食うな」?
セリは春の七草の筆頭にあげられていますが、中国では強力に精がつく食材として珍重されてきました。
日本のことわざに、「セリを食べると3年前の古傷が出る」「厄年にセリを食うな」というのがあります。
これは、セリを食べるとあまりにも精がつくために、かえって無理をしてしまうことを昔の人は知っていて、食べすぎを戒めたものだといわれています。
◆ストレス性&高血圧を伴う肩こりに有効
セリにはビタミンA(β−カロテン)・B群・C、およびカルシウム、リン、鉄などが多く含まれ、特に冬から春にかけての健康増進に欠かせません。
肩こりは流れにくくなった血液が、肩やくび筋、背中などにたまるのが原因です。
セリに含まれている葉緑素、鉄、ビタミン類は、汚れた血液を正常で健康な状態にしてくれます。
また、セリに含まれる特有の香り成分や苦み成分が、ストレスや高血圧によって起きる肩こりに有効です。
また、肩こりからくる目の充血、めまい、頭痛などもとり除きます。
和え物にして酒のつまみにすると飲酒後の熱を取る、生の絞り汁を飲むと鼻血、歯茎からの止血に効くなど、昔からユニークな効用が伝えられています。
◆高血圧、脳出血の予防・治療にも効果
このほかセリには、胃腸の熱をとり、肝機能の異常亢進を抑制する働きがあり、二日酔いから黄疸まで効果があるといわれています。
また、高血圧、動脈硬化や狭心症の補助療法、糖尿病や脳卒中の後遺症の補助治療としても利用されています。
そのほか耳下腺炎、膀胱炎などの炎症をしずめる効果、肝臓を保護する利胆・消炎作用があることも知られています。
他にも、刻んで熱湯を注ぎ、お茶代わりに飲むと利尿作用があり、膀胱炎によいとされています。
また、高血圧、便秘、身体を温め、精を養い、血を清浄に保つ効き目があります。
●せりの食べ方
金沢では正月のお雑煮になくてはならない食材です。
せりは本来、香りと彩りを楽しむもの。
薬味として、雑煮の他にも酢の物、雑炊、茶碗蒸などに添えるのが一般的。ごま和え、おひたし、みそ汁、天ぷらなどにも使われます。
肉の臭みを消す効果があるため、肉を使った鍋に向いています。
味を損なわないよう煮過ぎに注意しましょう。
●せりのおひたし
【材料】 (4人分)
・せり 1束 ・塩 ・だし汁 200cc ・うすくち醤油 大さじ2
・みりん 大さじ2 ・酒大 さじ2 ・削り鰹
【作り方】
1、せりは根を取り、茎を縛り、塩少々を入れた熱湯でせりを茹で、冷水にとる。
2、軽く絞り3cm位に切る。
3、だし汁、うすくち醤油、みりん、酒を火にかけ煮立てる。
4、せりを「3」の半分量にしたし、味をなじませる。
5、しばらくして、軽く絞ったせりを器にのせ、
「3」の残りの汁をかけ、削り鰹を天盛りにする。
●せりのおすまし
【材料】 (4人分)
・せり 1束 ・だし汁 800cc ・醤油 小さじ1 ・塩小さじ1
・麩小 12個
【作り方】
1、せりは2?3cmの長さに切る。
2、だし汁を強火で一煮立ちさせ、醤油、塩を入れ味を調える。
3、麩を入れ煮たたせて、火を止めせりを入れる。
●せりの卵とじ煮
【材料】 (4人分)
・せり 1束 ・鶏肉 200g ・玉ねぎ 1個 ・卵 3個 ・だし汁 200cc
・砂糖 大さじ1 ・酒 大さじ1 ・みりん 大さじ1 ・醤油 大さじ1
【作り方】
1、せりは3cmのざく切り、鶏肉はそぎ切り、玉ねぎは薄切りにする。
2、鍋にだし汁、砂糖、酒、みりん、醤油を入れ煮立てる。
3、鶏肉、玉ねぎを加えて煮る。
4、せりは溶き卵に混ぜておき、「3」の鍋に流し入れる。
5、鍋に蓋をして、30秒間蒸し煮にする。
●せりとアサリの卵とじ
【材料】 (4人分)
・せり 300g(3把) ・卵 2個 ・あさりのむき身 100g
【作り方】 1、せりはきれいに洗い5〜6センチの長さに切る。
2、あさりのむき身はさっと洗う。
3、だし汁と調味料を合わせて煮立て、むき身をさっと煮て取り出し、
その後にせりを加え2〜3分煮てあさりを戻す。
4、卵をだし汁で溶いて流し入れ、蓋をして約30秒、
半熟状に煮えたら器に煮汁ごと盛る。
●せりのごまひたし
【材料】 (4人分)
・せり 300g(3把) ・えのきだけ 100g
【作り方】
1、せりはきれいに洗い塩少々加えた熱湯で約1分茹で、
水にとって色止めし軽くしぼって4センチの長さに切る。
2、えのきだけは熱湯をかけ、根元を除いて半分に切る。
3、せりに醤油、だし汁を合わせたものの1/4量をかけて下味をつけ
固くしぼってからほぐす。
4、Aと炒った胡麻を包丁で細かく切ったものをせりに混ぜ、
残りのだし汁、醤油をかけて和える。
5、器につけ汁ごと盛る。
●せりの治部煮
【材料】 (4人分)
・せり 300g ・生麩 小 1本 ・鶏肉 150g ・しいたけ 4枚
【作り方】
1、鶏肉はそぎ切りにし、小麦粉をたっぷりまぶす。
2、生麩は角切りにし、シイタケはいしづきを取り、飾り包丁を入れる。
せりはきれいに洗い塩少々でゆで水にさらし、
軽くしぼって4センチの長さに切っておく。
3、鍋にだし汁、醤油、みりん、砂糖を入れて煮立て
生麩、しいたけを煮、@をいれて火を通す。
4、器に生麩、しいたけを盛り、せりを煮汁にくぐらせて盛り、煮汁をかけ、
わさびを天盛にする。
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