山ちゃんの食べもの考

 

 

その104
 

 事務所へ通う道すがら可愛い子供たちの登校姿に微笑ましくなる。最近少なくなりつつあると聞くが、それでも目につき、少し気になるのは良く肥えた子ども。いったい何を食べてるのだろう。
 かつては大人の病気とされていた成人病。それがだんだん低年齢化し、いまでは子供たちにまで狭心症や心筋梗塞、あるいはガン、脳卒中、糖尿病などが、子供たちにまで広がってきていると聞く。それは日頃の生活習慣によるものとして生活習慣病と呼ばれるに至った。
 いったん罹ったら厄介な生活習慣病。怪我や不慮の事故と違って、顕在化するまでの長期間は特に異常も感じられず、自覚症状もないという。現在の日本人における食生活や生活スタイルでは、大多数がその予備軍といっても差し支えないくらいだから、この病気の予防には、生活習慣を改めることが肝要ある。
 従って、私が気になるのは、その肥えた子供たちだけのことではない。子供たちの生活習慣病の背後にある、いま元気に遊んでいるこの世代の子供たちの食生活であり、生活習慣である。
 先日も、将来はお相撲さんにでもしたらと思うような児を見かけた。その横に大変見事に肥えられたお母さんがいたのである。家庭における食教育と生活スタイルのしつけは決して疎かにはできない最重要課題だと思う。

生活習慣、なかでも子供の頃の食べものは、その人の生涯の刷り込みとなる。
生産者や製造者には子供たちの未来を考えた食べものの作り方をして欲しい。
お店の方々には安い高いの先に、心身にいい商品を吟味して販売して欲しい。

 お母さん方には、可愛いわが子が今食べている、その食べものと食べ方が、その子の将来を決定づけるといっても過言でないことを知って欲しい。


 食生活からくる不健康。その食生活のあり方を早く改めさせてあげたいものです。子供の食生活や生活スタイルは、成長するにしたがい改め難い生活習慣となっていきます。そして子供の肥満は、やがてりっぱな肥満成人になって、大事な働き盛りに、糖尿病や高血圧、心筋梗塞、脳梗塞などに罹りやすくなる。
 いま、子どもたちの多くが生活習慣病予備軍になる危険にさらされているのですが、これは何といっても動物性食品や脂質、砂糖などの摂り過ぎであり、日本の伝統的な食習慣の荒廃にあると思います。
 子供たちの食の乱れは大人達の作り出したものです。「食の乱れは心の乱れ」につながって行きます。これが恐いのです。食生活のリズムが乱れると生活の乱れも生じます。栄養バランスが乱れ、大切な食習慣形成が壊され、体と心の健康維持が困難になります。
 食べものは単に丈夫な体づくりの面だけでなく、その人の精神面、感情や感性、情緒など、心を育て、知能の発達を含め、子どもの健全な全人格的な育成の基本であることを、忘れてはなりません。


 お父さんやお母さん、あるいはおじいさんやおばあさん、あなた方が子供のころに食べてきたものは何ですか。現在の子供たちが大好きな食べもの多くはかつての日本にはなかったものです。今の子どもたちは、ファーストフードをはじめ、動物性食品の摂り過ぎ、油製品の摂り過ぎ、そして甘いお菓子や清涼飲料水などでの糖分の摂り過ぎになっていませんか。さらには子供たちの食べもので気になるのは、何といっても昔の食べものには入っていなかった食品添加物でしょう。
 飲み物ひとつとっても、添加物で味や香りが付けられたもので、その上、たっぷりと砂糖の入った甘いジュースや炭酸飲料水です。
 こんな報告があります。ラットに普通の水道水だけを飲ませたばあい、「むし歯」もできず、神経も安定し正常ですからおとなしく育っていきます。ところが清涼飲料水を飲んだラットの骨は、顎骨はボロボロ孔だらけになり、精神状態がおかしくなり、たがいに噛みつき合ったりの、異常行動を起こすようになるということです。
 子どもたちは、新鮮な野菜や果物、海藻や魚、伝統的な料理やおやつなどは食べたがりません。加工食品が多くなり、食べているものがだんだん自然から遠のいて行っています。だから健全な発育に必要なビタミンやミネラル、食物繊維が摂取できないのです。


 子供たちが不自然で乱れた食のあり方を続けていたのでは、現在症状が出ていないとしても、それは既に生活習慣病へ向って突っ走っていると言ってもいいのではないでしょうか。
 母親の手づくり料理が中心の“まともな食事”がキチンと摂れている子は少ないという。女性の社会進出、共働き時代でお母さんもついつい手抜き料理、それにやろうと思っても作れる料理の幅がない。先日新聞で驚いたのは、朝食もしっかり摂れていない子が余りにも多いことから、学校給食で朝食を、という議論さえ本気でされているとのことでした。おやつや飲み物が多く、子供たちの食は偏るばかりです。子供の食習慣は、そのまま生活習慣病へと突進し、その子の一生につながることを、社会全体が考えなければならないと思います。
 小児科医の真弓定夫さんは、著書『子供は病気を食べている』の中で、子供たちの成人病の症状などというのは、食事の変化が生み出したものであって、「私は小児科という現場にあって、長年子供たちを診てきた結果、食生活にその大きな要因があることは間違いないと考えています。食生活の面で、今の子供たちに共通した欠点を指摘することができ、かつて私達が普通に食していた食べものが、どれほど安全で、また日本人の心身に適していたかがわかります。」
 「人間が生きていく上で一番大切な食文化が、この40年間に徹底的に損なわれ、子供たちが危険に満ちた食生活の矢面に立たされている」と述べています。


 アレルギーに悩む子供たちも相変わらず多いようで、子も親もとても可哀想です。アレルギーとは「異常な反応」という意味で、昔、自然な環境の中の生活では現在のような極端なまでのアレルギーは存在しなかったといいます。今だって、人間によって不自然に飼われている動物を除いては、自然界の動物にアレルギー疾患などというのはないといいます。
 「他の動物にないアレルギー性疾患が、なぜ人間だけにあるのか。それは人間が長年にわたって不自然な生活をしてきたからだ。」「日本では、昭和30年代に入ってから急激にアレルギー性の疾患が来ており、生活環境が限りなく不自然になり続けてきて、しかも年々加速度がつき、それにともなってアレルギー性疾患がどんどん増えてきている。」と真弓定夫先生は、述べています。
 アレルギーにはいろいろな要因があり、一概には言えませんが、現在の子供たちの食べ物、子どもたちをターゲットとして、次から次へと繰り出される食品を見ると、ドンドン気候風土から遠のき、食体系から遠のき、自然から遠のいて行く食べ物の変化、食生活の変化が第一に挙げられるのではないでしょうか。
 昔に比べて格段に食生活が豊かになった、といいますが、ご飯に野菜や魚が中心だった日本人の食事が、急激な欧米化で、幼い頃から卵や乳製品、肉類を多食します。そしてインスタント食品を始めとする加工食品や外食で、季節感もお国柄もない添加物漬けの食べ物です。
 アレルギーには、住環境や環境汚染の問題もあるでしょう。しかし、少々のことには負けない丈夫な健康体を育むのは、先ず毎日の食事を中心とした正しい生活習慣を身につけさせることこそが第一ではないでしょうか。


 今、日本は世界に誇る長寿国ではありますが、真弓定夫先生は専門家の立場からご覧になって、「現在の子どもたちを見ていると、このままでは将来、おそらく、短命化に向かうことは避けられないと思う。」と述べられています。
 そして、現在も健康に暮らしておられる70歳、80歳、90歳のお年寄りが、大人になるまでに過ごしてきた環境がどんなものだったのか。今から60年から80年前の日本は、水も空気もきれいで、冷暖房などもなく、外遊びを十分にして体を動かしていたし、小さい頃から家事を手伝い働いていた。早寝早起きで生活のリズムは確立していた。食生活は、米や麦、野菜、海藻、小魚を主体にした健全な地場で作られたものの食生活がなされていたのです。
 今の子供たちも、こういう環境や食生活、生活スタイルで、20歳を迎えることができるならば、80歳まで生きられるということなるのです。とのべています。
 アレルギーにしても、間違った粗悪な食べ物が子供たちの体を蝕んでいる一つの現象といえるでしょう。その影に、まだ表面には現れない子どもたちへの多くの蝕みが、深く進行しているのだということを考えねばならないのです。
 農薬などの化学物質を多用しない農産物、余分な添加物や薬品で誤魔化さない自然生命力の豊かな食品を子供たちに食べさせなければならない。


 私たち日本人の食生活における急激な変化。それは昭和33年が一つの分岐点として食生活の欧米化にピッチがかかりました。西村震也先生が、昭和34年以降生れの人は短命になると警告し、有名な『41歳寿命説』を著わして論議を巻き起こしました。極端な食生活や生活環境の変化が寿命を縮めると警鐘を鳴らしたのです。
 この昭和33年には、学校給食に牛乳が取り入れられました。製薬会社の作った水を加えただけで出来上がりの無果汁インスタント“粉末ジュース”が発売されました。日本で最初のインスタントラーメンが製造・発売されました。
 そして、昭和30年代には、合成食品添加物が続々と認可され登場し、これまでに見たことも食べたこともない飲食料品が次から次へと登場しました。
 食べものづくりは、その地場でその季節に取れるものを使って、家庭や町や村の小さな工場で家内工業的に作られていました。それが、海外の安価な原材料を主体とした大メーカー、大工場へと移り、大量生産、大量流通、大量販売の波にのって、工業製品化されていきました。食品添加物によって規格化され腐らなくなった画一的な食品が全国津々浦々まで輸送され、マスコミで繰り広げられる大量宣伝に煽られて大量消費されていくようになりました。
 農薬や化学肥料を多投する現代農法、季節を無視した施設栽培。抗生物質やホルモン剤などの化学物質と人工的な飼料を与えられての養殖魚や食用家畜の密飼い。それに加えて使用原材料の出所不明な外食・中食の急増。
 スーパーの棚や食卓からは、日本の伝統的な食べものが次第に影をひそめ、極端な食の欧米化、外部化、がピッチを上げて進んできました。
 食べものづくりから、健全ないのちの素としての本質的な思想が失われ、単なる簡単・便利・美味・安価が追求されていく。そして、食べものはますます自然から遠のいて行ったのです。
 30年代以降に生まれた人たちは、こんな物を食べて子供時代を過ごしてきたのです。多くの見識・良識ある方々の警鐘にもかかわらず、それは現代の子供たちの食生活においても、ほとんど改善されていないといえます。



 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

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池田 優

 

 

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