山ちゃんの食べもの考

 

 

その105
 

 可愛いわが子が今日食べたものは何でしょう。この1週間に何を飲み食いしたでしょう。最近の若い人たちに便秘が多い。本来便秘などがあり得ない子供たちにまで便秘の症状があるといいます。
 先日、NHKテレビの放映で、若い女性に強烈な便秘の方が多いのを聞いて、いかに食生活が間違ったものになっているかを思いに驚きました。どのような食生活をしているのでしょう。朝食、昼食、夕食と、まともな食生活であれば、「一週間以上も……」ということ決してはない筈です。
 真弓定夫先生によると、食物繊維の摂り方が決定的に減ってきているからで、食物繊維を十分含んだ食事さえ摂っていれば、便の容積が大きくなり、色が薄く、軟らかで比重も軽く、快便になる。
 かつてはどこの家庭でも食物繊維の多いゴボウ、イモ、海藻などを手軽に多くを摂取していました。しかも一番良かったのは穀類の外皮・糠の部分で、昔はあまり精白されていない米を毎日沢山食べていたからです。その上に野菜や海藻を食べていましたから、便秘に悩むなどということはきわめてまれだったのです。
 戦後におけるアメリカの余剰穀物のはけ口として採られた小麦戦略で、学校給食をはじめ、政策的にパン食が推し進められました。このパン食と牛乳政策によって日本人の食体系が急変してしまいました。
 「米を食べると頭が悪くなる」「米を食べると太る」など喧伝され、精白された添加物だらけのパン、油っ濃い欧米風のおかず、添加物だらけの加工食品やお菓子などで、伝統食を失った日本人は、急激な食の欧米化が進む中で食物繊維の摂取不足を来たしました。
 現在の子どもたちや若い人たちに、毎日便がないの何の不思議でもなく、中には一週間も10日ない人があるというではありませんか。


 便秘をすると、腸内に溜まった古い便が、アミン、フェノール、アンモニア、硫化水素、その他の毒物が発生し、老廃物が身体に溜まるとそれが発癌性おびるということです。これらの老廃物が腸から再び体内に吸収され、血液ともに全身に回って、体の各所に障害をもたらすことになるわけです。
 また、便の中には発癌性物質が含まれていることもあって、古い便がいつまでも溜まることが大腸ガンの一番の原因だといいますから、便秘は要注意です。
 便秘になって古い便がたまると、腸内には悪玉菌が増えていき、この悪玉菌のだす毒素がアレルゲンとなって、アトピー性皮膚炎やじんましん、喘息などの症状を起こすこともあるといいます。
 そして恐いのは動脈硬化です。便秘をしていると、胆汁として分泌されたコレステロールを大腸が吸収するので体内のコレステロールが多くなってしまう。そうすると、コレステロールが血管に付着して動脈硬化が起るという。


 便秘は間違った食生活の端的な現われです。これは生活習慣病への一つの警告でもあるといえます。健康と美容の大敵である便秘には、徹底した食生活への改善が必要なのです。
 家庭における手づくりの料理で、きちんとしたリズムのある食習慣を身につけること。安心な地場産や旬の良い食材を選び、ごはん中心の伝統食をいただかねばならないでしょう。大豆やニンジン、コンニャクなどとのひじき煮。美味しいです。季節野菜やワカメの味噌汁や酢のもの、その他の海藻類も積極的に摂りましょう。大豆や小豆・いんげんなどの豆類は、たくさんの食物繊維とともに豊富な栄養を含む長寿食品だといいますから意識して食事に取り入れたいものです。
 毎日野菜を食べることは欠かせない健康法です。しかし、生野菜サラダなどに食べる野菜にはあまり食物繊維を期待できませんから、それで野菜を摂っている気にならないでください。やはり、ゴボウやいも類、などの根菜類を煮物で食べるのが最高でしょうか。乾物類、コケ類も食物繊維が多いです。
 子供たちが、食物繊維を豊富に含む食べ物が嫌いだからといって食べさせないのは親の無責任です。何を食べさせるかに、子どもの生涯がかかっているのですから。


 「固いものが、よく噛めない、食べものが、なかなか飲み込めない」。そんな子どもたちが増えているという。 
 そんなことを、園児たちに有機栽培の農産物や無添加の食品を使っての食事をつくり、親を含めた食育をすすめたいという保育園の先生に聞いて驚いた事があります。
 ごく普通の食べものが噛めないなんて大変なことではありませんか。少々固い物でも噛み砕いて食べて栄養にするくらいにたくましさがなくて、その子の将来はどうなるのでしょう。生命力の衰退を思うと恐くなります。
 噛めない子、飲み込めない子にちいて、真弓定夫先生は次のように話されています。「噛むことは生まれた時から始まっている。お母さんの乳首を吸う時には、かなり顎の力を使っている。赤ちゃんは、お乳を吸うのに大変な努力をしており、母乳栄養児と人口栄養児の吸う力は60対1の比である。噛めない子のほとんどは、人口栄養で育った子どもたちと言っていいほどです。」
 「十分に押しつぶしたり飲み込んだり、噛む訓練のされないまま、固形のものへと移行すると丸飲みが当たり前になる。歯が生え揃い、固いものを噛んで食べるべき年齢になってもハンバーグやケーキ、やわらかいパンなどといった軟食ばかりで、それに牛乳やジュースなどで、歯や顎の発達に支障をきたしている。このことは脳の発達にも影響する。」と。


 子供たちの喜んで食べる食べものはたいがいが極めて柔らかいものばかり。
 赤ちゃんを可愛がるのは結構ですが、離乳食からはじまって赤ちゃんの喜ぶ柔らかくて甘くて食べやすい(飲み込みやすい)ものばかり与えすぎてはいないでしょうか。
 子供たちは、噛む習慣のないまま成長を続け、ほとんど噛まなくてすむカレーやスパゲティ、ラーメン、オムレツ、ハンバーグなどを飲物と一緒に飲み込むような食べ方になっているのですね。おやつも昔のような固いせんべいやあられ、おこし、干し芋などといったものは嫌われ、ケーキやクッキー、ソフトクリーム、ゼリーなどといったものです。りんごさえも丸かじりできません。
 また、子どもたちは加工食品が好きです。子供たちの好む味付けを施し、噛まなくても美味しく食べられる甘いものが、現代の子供たちの嗜好に合わせて、多くなっています。そのことが、噛めない子供たちを増やすことに拍車をかけているようで困ったものです。
 噛まないから顎が発達しない。顎が発達しないから噛めなくなる。「噛めない子供」が柔らかいものばかり食べるから、ますます「噛まない子供」になっていく。よく「噛まない子供」は「噛めない子供」から「噛めない大人」になっていく。これは本当に恐いことです。


 食べものは、口の中でよく噛むことで、食べもの本来の美味しさを味わうことが出来るのです。と同時に、唾液の分泌を促し、消化吸収がよくなって、体に必要なさまざまの栄養が摂取できることになるわけです。
 野菜や果物をはじめ自然な食べものには、それぞれがもつ本来の美味しさがあります。口に含み、よく噛んで自然の恵みを味わう。そうしたことが今の子供たちにはできないのです。人工的に強烈な香料や着色、味付けの、柔らかい食べ物に慣らされてしまって、大切な味覚が発達していないからです。
 自然なもの、本物の美味しさが味わえない、わからない。これでは子供時代に決定づけられるというその人の生涯の味覚が狂ってしまい、「味覚障害」を引き起こしかねません。
 うまく噛めない子供たちは、物を食べる時にお茶やジュースなどをよく飲みます。飲物で流し込んでいるというか押し込んでいるのです。
 食べものをよく噛むことでたくさんの唾液が分泌され、食べものが唾液とよく混ざることで飲み込みやすくなります。それで消化・吸収が促進されるわけですが、噛まないから唾液が十分に分泌されない。だから飲物で押し流すということになるわけです。これでは食べもの本来の美味しさが十分に味わえないばかりでなく、栄養も吸収されませんし、胃腸にも負担をかけることになります。 
 よく噛んで食べる子供は頭が良くなるといいますが、顎を動かしよく噛む運動は、同時に頭の骨や筋肉が活発に動いて血液の循環がよくなり、脳神経が刺激されて脳の働きも活発になるからだといいます。
 固いものも、よく噛んで食べる子供は、記憶力や集中力が増して学習能力が高まり、体の各機能も発達して、心も体も知能も健全に育まれていくとのことですから、子供たちに食べ物を提供する人たちには大いに考えていただきたいものだと思います。


 医学ジャーナリスト・東茂由氏の『子どもの体に異変が起きている』によると、顎が小さく、歯列が乱れている若者が目立つが、それらの芽生えは幼児期にある。その中で、渡辺秀司医師は、「最近の子供は乳歯が自然に抜けないケースが目立ってきました」として次のように述べています。
 赤ちゃんは、生まれてから半年ほどたつと、歯が生え始め、2歳半ぐらいまでの間に、上顎と下顎に各10本、合計20本の歯が生え揃う。20本の歯の内訳は、門歯8本、犬歯4本、小臼歯8本。これらの歯は母親の乳を飲んでいるころに生え始めるので乳歯とよばれる。赤ちゃんが育って顎の骨が発達してくると、乳歯では間に合わなくなり順次、大きな歯に替わってくる。新しい歯は、もう生え替わることなく一生使うので永久歯とよばれる。乳歯が生え揃うころ、その下の歯ぐきには、すでに永久歯が出来始めている。永久歯が育つにつれて、乳歯は押し出され、根元が浅くなってくる。永久歯はどんどん成長し始め、乳歯は抜け落ち、生え替りが終わる。
 何故、最近の子供は乳歯が自然に抜けなくなったのだろうか。渡辺医師は「物を食べるのにあまり噛まなくなってきたことから、歯はもちろん、歯を構成する歯周組織全般の発達が遅れているからでしょう。歯周組織全般の働きが低いので、いつになっても永久歯に生え変わろうとしないのではないでしょうか。」といいます。


 食べ物をうまく飲み込めないという子どもや若い人は、顎が正常に発達していないからで、顎を取り巻く筋肉が未発達なことが、食べものを噛めない飲めないということになる。
 赤ちゃんの時に、オッパイをしっかり吸うことをしない、成長とともに、よく噛む習慣を身に付けないと、物を噛み潰す歯、歯を支える顎、顎の骨を動かす筋肉、上下の顎が関連して動く顎関節、唾液分泌線の発達が遅れ、全体の咀嚼のシステム正常が働かなくなる。それで必然的に良く噛めないし、唾液の分泌も少なく、物をスムーズに飲み込めないということが起ってくるのだといいます。そして、それが大人になっても続くといいますから大問題です。
 そして、山田医師は、顎の発達していない若者は、食事の時によく水や飲料を飲み、最近はその傾向が顕著です。よく噛まないで、水を飲みながら食べ物を流し込む。唾液の分泌の少ないことがそのことに関係し、助長しているといっています。



 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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