山ちゃんの食べもの考

 

 

その107
 


 日本人は、米を主食とし、野菜や魚介類、海藻、穀物、それらの加工品を食べてきました。そんなに遠い昔の話しではありません。現在長寿を誇る70代80代、90代の人たちは、子供時代からそのような食生活をしてきました。
 その時期その土地でできるものを、自分たちの手によって生産し、添加物などを使わないで保存したり加工したり調理したりして食べてきました。
 そして、それは日本人の健康な生命にとって最も理に適った食生活をしてきたのです。それが今、最も優れた健康長寿食として欧米から注目されているのです。そんな素晴らしい食を私たちは自覚にないまま失ってしまいかねない状況にしていまっているのです。現在の私たちの食べているものはこれでいいのか、子供たちに食べさせているものはどうなのか。作る人も売る人も買って食べる人自身も真剣に考えて欲しいのです。
 日本人にとって食べる必要のないもの、日本人に合わない物があまりにも多くなっていると思いませんか。
 体質に合わない牛乳や、卵、肉などの動物性食品を摂り過ぎていないでしょうか。焼肉、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、スパゲティ、オムレツ、カレー、インスタント食品などなどについて、子供たちの健全な心身の発育を真剣に考えるならば、その食べものや食べ方がどのようなものであるかを検証していただきたいのです。
 発育盛りの子供たちには、何処で、いつ、どんな方法で生産された、どんな食べものを選び、どのような食べ方をさせなければならないのか。食べものを作る人に、販売する人に、食べさせる人に、自覚と責任をもって、もう少し考えていただきたいと思うのですが。


お米の消費量は、年々減少し続けています。昭和37年には、日本人1人当り約120kgの米を食べていたのが、平成12年には60kg強と半分近くになっているそうです。
 一番大きな原因は、第二次世界大戦における敗戦、そして日本人の小さい体躯についての劣等感、欧米崇拝思想からくる食の欧風化で、パン食、肉や卵、牛乳、脂肪分が増えてきたからです。日本人はごはんばかりたべ、味噌汁や漬物に野菜の煮物、海藻、小魚など粗末なものばかり食べているからだめなんだ、ということで米の消費料、炭水化物の摂取量が減ってきました。
 昭和35年に9300万人だった日本の人口が1億2000万人強に増えているのに、日本人全体で食べる米の量は逆に1260万トンから870万トンほどに減っているのです。農家に減反を強いながら、小麦をせっせと輸入し、それでもなおかつ主食の米あまり現象が続いています。
 米の生産調整が強固に押し進められ、日本の田んぼの35%は米を作らなくなり、荒れ放題に放置される農耕地が増えています。いったん耕作されなくなった田畑は簡単には元に戻りません。
 そんな中で私たちは、外国から輸入する小麦でパンを作ったり麺を作ったりお菓子を作って食べ、外国から輸入した穀物飼料で飼育された畜肉製品を食べているのです。
 私たち日本人は、ご飯を食べなくなったことで栄養バランスの偏りを生じ、生活習慣病の増加につながっているといっても過言でないと思います。ご飯を食べなくなったことが食生活の乱れを生み出し、体の健康面ばかりでなく、子供たちの生活全般にさまざまな問題を生じてきたのだと思います。
 ご飯を食べることの大切さが、国民の健康を考える上でもっと見直され、評価されてしかるべきです。


 今、日本におけるご飯食を中心とした食のあり方が、人間の健康な食性に合った最高なものだと、世界で注目を集めているのです。と言っても、それは現在の私たちの食生活ではなく、現在の長寿社会を支えている高齢者の方々が食べてきた、日本の伝統的な食生活だということです。
 ご飯は、エネルギーのもとになる糖質(炭水化物)と、体内で合成できない必須アミノ酸(たんぱく質)をバランス良く含んでいて、まさに主食といわれるに相応しい食事の要となる食べものなのですね。
 「ご飯を食べると太る」など、とんでもないことを言う人があったりして、いまだに誤解している人がありますが、それはどうも策略らしいですよ。
 「ご飯は偉い」とでも言いますか、パン類や麺類と違い、ご飯は粒で食べるということが一番の特徴です。粒食ですから、よく噛んで食べるという咀嚼が必要です。そして消化・吸収がゆっくりとなりますから血糖値の上がり方は緩やかになります。ゆっくり持続的に糖分が消費されていきますから、人間の活動の源となるエネルギーとして理想的なものといえるのです。
 消化・吸収が穏やかだから、血糖値の上昇を抑制するホルモンであるインスリンの分泌をあまり刺激しません。インスリンは食べ物を脂肪にして身体の中に貯めこむ性質も持っているので、インスリンの分泌を刺激しないごはんは、太りにくく、肥満や糖尿病になる心配も少ないというわけです。
 また、ご飯には食物繊維が豊富で腸の働きも活発にしてくれます。食物繊維と同じような働きをする難消化性デンプンという整腸作用の働きをする成分も含まれていますから、便秘や大腸ガンの予防に効果があるというわけです。だから、ご飯をしっかり食べる人には、便秘になる人も少なく、大腸ガンの予防にもなるというわけですね。それにご飯には、塩分やコレステロールを含みませんから、高血圧や高脂血症、心臓病の予防に効果的な主食だということです。


 先日、こだわりの豆腐を作る若い人の話を聞きました。だいたい豆腐はどんな豆腐を食べても味は淡泊なもので、よい豆腐、そうでない安い豆腐でも、その味の判別はきわめて難しい。その淡泊な豆腐を食べて、これはいい豆腐だといってくれる人に、美味しいと感動してもらえるような一流の豆腐職人になることが目標だと話してくれました。
 日本のご飯もまた、淡泊な味であす。その淡泊なご飯に深い美味しさを味わいう感性を日本人の味覚は持っています。このご飯が淡泊な美味しさを持つからこそ、またいろんな食材、いかなる料理とも組み合わせができ、それぞれの持つ美味しさを深く味わうことが出来るのです。だからご飯は、和食的なおかずにも、洋風的なおかずにも、そして中華風的なおかずであっても調和して美味しくいただけるのです。
 パンや麺ではこうはいかないでしょう。日本の伝統的なおかずはもとより、魚であれ肉であれ、海藻であれ野菜であれ、結果として、いろんな季節の食材をバランス良く摂ることができることになります。
 それにご飯食は、一緒に食べて美味しい副食が、おのずからご飯に最も合う季節季節の新鮮な野菜や海産物及びそれらを加工した日本的なものになっていきます。納豆やお漬物、具だくさんの味噌汁、煮魚や焼き魚などです。だから、心配されている動物性蛋白質や脂質の摂取量が自然に調整され、ビタミンやミネラルバランスの良いものになっていくのではないでしょうか。


 現代の人工的な味付けに馴らされた子供たちは、同じご飯を食べても、カレーライスや炒めご飯、混ぜご飯など、あらかじめ味付けされた単品ものを好むようです。これでは幅広い食材からバランスのとれた栄養を摂ることは難しいのではないでしょいか。
 子供たちには、淡泊なご飯を主食とする食事の美味しさを覚えさせることが大事なのです。この淡泊な味のご飯を主食にすることで、子供の頃からご飯に合う、そして体に必要なさまざまな食べ物を、好き嫌いなく食べる習慣が形成させていくのです。
 小さい頃からご飯を主食とする食の美味しさ楽しさを味わわせることによって、その子の生涯にわたっての正常な味覚の発達と豊かな食生活習慣を身につけさせることが出来ることになります。動物性食品や脂肪分の過剰摂取を抑え、ファーストフードやスナック菓子、清涼飲料水などから遠ざけ、頑健な心身を形成して、さまざまな成人病を予防してくれることになります。
 もっとご飯をいただきましょう。食べさせましょう。幼い頃からの、家族揃ってのご飯食が、健康で豊かな人生の土台となり、併せて、地元に取れた旬の野菜や果物、魚介類や海藻、穀物が強靭な心身を育み、将来ともに健康長寿な日本人を保障することになるのではないかと思います。


 おいしいご飯の良さを見直そう。粒のまま食べるから、パンや麺に比べ消化が遅く、余分なエネルギーを脂肪に変えて蓄えるインスリンの分泌が少ない。血糖値が上がりにくい。
 よく噛んで食べるから、少量で満腹感を得られ、しかも腹持ちが良いから、余分な間食をすることがいらない。食物繊維や同様の働きをする難消化性デンプンを含むので、整腸作用を促進し、便秘や大腸がんの予防にもなる。
 しかも、お茶わんに1杯の白米の熱量は約220キロカロリーで、ラーメン1杯の半分以下だから、お腹が満たされながらダイエットにも良い。
 ご飯は理想的なエネルギー源です。炭水化物76%、たんぱく質7%、脂質1%などで、体を動かすガソリンなのです。体を作るたんぱく源でもあり、アミノ酸がバランスよく含まれていているといいます。
 お米は生きています。野菜や果物とおなじで、常温で長期間放置しておくと、ドンドン老化していきます。特に精米したものは時間とともに酸化して行きますから風味も落ちていきます。搗き立てのお米が美味しい訳ですから、10日ないし2週間分ぐらいずつ精米し立てのものをお買い求めになるのがいいのです。
 ある程度まとめてお買いになるときは玄米で購入し、10日分ぐらいずつお好みの搗きで精米するのがいいですね。お米の保存は暗く涼しく、風通しのよいところで。気温が高くて蒸すようなところではいけません。




 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

◎ ご意見、ご教示はこちらまで    掲示板も御座います。是非ご利用下さい。→ 掲示板

最新号へ戻る