山ちゃんの食べもの考

 

 

その108
 

 ヒトはもともと温帯や亜熱帯地域で暮らしていましたが、そこには住めなくなったヒトたちが止むを得ず寒い地方に生活圏を移しました。そのヒトたちがヨーロッパ人や北アメリカの人たちだといわれます。寒くて少雨の乾燥地帯では穀物や野菜、果実が育たず十分には得られない。そこで人間の食べて消化よ吸収のできない草を動物に食わせ、その肉や乳を飲む。人間が肉食を主体とする食生活をするようになったのは、そうした北欧の人たちによってはじまったのだといいます。
 人間が食べることの出来ない草を動物に食べさせ、その肉や乳を飲食するようになったのは、もともと人が住むような場所ではなかったのです。そんな所に移り住んだヒトにとっては、その厳しい気候風土を凌いでいくための食べ物の代表的なものが肉類だったのです。
 しかし、その肉の過食が先進国病といわれる、大腸ガンや、心臓病、肥満などの増加につながっているのです。
 牛の体温は39度から43度と、人間に比べてはるかに高くなっています。私達が牛肉を食べたとき、牛の体内では溶けていた脂肪も、人間の体温では溶けずに、皮下脂肪として沈着します。そのことが、北欧などの寒帯に住む人たちにとっては、寒さに耐えて生活して行くのに都合が良かったのです。
 亜熱帯から温帯に住む日本人が、欧米人の真似をして多量の動物性脂肪を摂取したらどうなるでしょう。深刻な肥満や生活習慣病の増えた大きな原因は、日本の気候風土、日本人の体質に合わない肉類や油脂類の摂り過ぎにあるといわれますが、そもそも住む環境が違うのです。


 戦後の経済復興とともに食生活は急激に欧米化し、これまでに経験のない動物性食品を多量に食べる食生活に変貌しました。それがあたかも文明国の理想的な食生活であるかのように喧伝され錯覚してきたのでした。
 これが魚の場合にはまた違います。魚は冷たい水の中に住む冷血動物ですから、魚の脂肪は人間の体内に入って溶けてしまいます。だから、肥満や成人病につながるというしんぱいはありません。
 海に囲まれた日本人にとって魚介類は動物性食品の基本であり一番適しているのです。子供たちには肉の過食を改めさせ、日本人を育んできた小魚をもっと上手に食べられるようにしたいものです。
 日本人の健康な食生活には、日本の気候風土に合った米を中心としてイモ類や豆類などの穀物、四季折々に産する多彩な野菜、それに海藻や小魚が有ればこれで十分なのです。それどころか、この自然に則した食べ物には、余分な化学物質を多量に使うも必要ないのであり、安全安心であるとともに、栄養バランスもよく、早く取り戻さなければならない日本の伝統的な食体系であり食文化なのです。


 樋渡由岐さんの「栄養と健康」を参考に魚について述べてみましょう。同じ動物性食品でも肉と魚は大違いなのです。日本人が肉を沢山食べるようになってからわずかしか経っていませんが、お魚は長い歴史の中で日本人の素晴らしい食体系を形成してきた良質の蛋白質やカルシウムの供給源です。特に青魚は、不飽和脂肪酸であるEPAやDHAの効果です。「魚を食べると頭が良くなる」といわれるのはこのEPAやDHAの働きで、健脳食として注目を集めていますから、子供たちには大いに食べて欲しいものです。
 この血管の若さを保ち、脳を活性化するEPAやDHAは、特にサバやイワシ、サンマ、アジ、カツオなどの青魚に多く含まれています。青魚の良さをみてみましょう。
 ● EPAは、@血液中の脂質や悪玉コレステロールを減らします。A血栓を予防します。
 ● DHAは、@血管壁につく悪玉コレステロールを減らします。A脳の機能を活性化します。B視力向上に効果があります。
 ● 良質のたんぱく質は、@必須アミノ酸のバランスがとれています。A血圧やコレステロールを下げる作用をします。
 ● ナイアシンは、@糖質、脂質の代謝に働きます。A脳神経の働きを助け、血行をよくします。
 ● タウリンは、@血液中のコレステロールを減らして血圧を安定させます。A肝臓の機能を高めます。


 理想的な「一物全体食」にピッタリな小魚類。小魚類は頭からしっぽまで丸ごと食べましょう。良質のタンパク質やカルシウムだけでなく、各種ミネラルなど、魚一尾を生かしている全ての栄養分が摂取できるのです。
 ● 目――目の後ろの脂肪にはDHAとEPAが特に豊富ですから、頭から食べましょう。
 ● かま――脂がのっておいしい部分ですね。
 ● 皮――皮にはビタミンB1、Aが含まれています。黒い皮にはビタミンB2が豊富だといいます。
 ● 血合い――ここには鉄分が豊富で貧血気味の人にはおすすめです。ビタミンB1も多いとのこと。
 ● 内臓――魚の内臓には各種ビタミンが含まれている。
 ● 卵――ビタミンB群、亜鉛等を含み栄養価が高い。
 ● 身――良質のたんぱく質で不飽和脂肪酸のDHAとEPAを含んでいる。白身魚は青魚ほどDHAとEPAの含有量は多くないが、脂肪が少ない分低エネルギーです。
 この青魚に含まれる不飽和脂肪酸は、非常に酸化しやすく、過酸化脂質ができやすいものなので保存や鮮度に注意しましょう。過酸化脂質は、ガンや動脈硬化の原因になったり、老化を早めるといわれている要注意の物質です。
 青魚は新鮮なうちに食べ、干物の酸化にも気をつけます。また、副菜にビタミンCやβ―カロチン等抗酸化作用が強いたっぷりの野菜等を組み合わせて、体内での脂質の酸化を防ぐようにします。


 DHA、EPAは「あるある大辞典」で内臓脂肪を燃焼させやすくする効果があると紹介されました。またDHA、EPAは血液中の中性脂肪を低下させ、善玉コレステロールを増やします。
 1970年代に、北極圏に住むイヌイット(エスキモー)を対象にした調査で、イヌイットには野菜をほとんど摂取しないにもかかわらず、脳血栓や心筋梗塞などの血栓症が非常に少ないことが知られていました。その血液を調べると、多くのEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)を含んでいました。不飽和脂肪酸のEPAとDHAは、イヌイットが常食している青魚やアザラシに豊富に含まれています。このことから血栓症の罹患の低さは、遺伝ではなく食生活に起因することが明らかになりました。
 日本で漁村と農村に住む人を比較したところ、漁村の住民に血液には農村住民の約2倍のEPAが含まれ、血栓症による死亡率も低いという報告もあります。
 EPAとDHAは、いずれも血中の中性脂肪やコレステロールを低下させる働きを持っていますが、中性脂肪に対してはEPAのほうが、コレステロールにはDHAの方が効果が高いとされています。両者の最も大きな違いは、DHAは脳の構成成分で、脳が必要とする限られた栄養分の一つであるのに対し、EPAは脳の入り口の血液脳関門を通過できないことにあるといいます。
 DHAは細胞膜の流動性を高め、神経細胞を活性化することで、情報の伝達をスムーズにすると言われており、特に記憶力を向上させる栄養素として知られるようになりました。DHAは母乳にも含まれますが、魚をよく食べる日本人女性の母乳は、欧米女性よりもDHAが高濃度に含まれていることが報告されています。


 この他にもDHAの効果として、老人性痴呆症の症状改善、高血糖の改善、視力の向上、アトピー性皮膚炎や花粉症などアレルギー疾患の症状軽減などが挙げられます。最近では、攻撃性を抑える、神経を安定させる、集中力を高めるといった作用にも注目が集まっています。
 さらにEPAやDHAは、大腸ガンや乳ガンの発症を抑えることも報告されています。ガンが日本人の死亡原因のトップになった1980年代は、日本人の食生活の欧米化が進み、魚離れが顕著になった時期と符号しています。
 EPAやDHAが多く含まれているのは、マグロ、ブリ、イワシ、サバ、サンマなど、いわゆる青背の魚です。
 EPAやDHAは比較的熱に安定している成分なので、焼いたり煮たりして加熱しても、成分が変化することはほとんどありませんが、煮たり焼いたりすると魚から油がしみだし、約2割くらい損失することになります。調理の工夫で流れ出た油も一緒に食べるようにすることも必要です。問題は揚げた場合です。約半分くらいまで魚の油が流れ出て、揚げ油と入れ替わるといわれています。
 なお、この多価不飽和脂肪酸は光に弱いので、干物のようにすると酸化が進み、EPAやDHAを摂ることはほとんど期待できません。できることなら、新鮮な魚を刺身や酢漬けなどで食べるのが良いのです。
              (参考:NIKKEI Drug Infomation)


 魚は、魚種によっても味が異なりますし、生で刺身として食べられる他、煮る・焼く・蒸す等、さまざまな調理法に向くので飽きることなく楽しめます。
 「生臭さが苦手で・・・」という食べず嫌いの人も多いですね。生臭さの主因物質はトリメチルアミン。鯖の味噌煮はよく用いられる調理法ですが、これは、水に溶けた味噌がコロイド状になり、生臭さを吸着・マスキングしたり、味噌独特の芳香物質で抑えてしまうのです。他にも、刺身の場合には軽く水洗いして湯引きした後、たっぷりのネギとともに食べる。ネギの臭いで魚臭をカバーするのです。その他に、
 蒸し焼――酒蒸しして生姜醤油やポン酢で食べます。醸造酒のカルボニル成分と魚臭成分のアミンが結合して臭いを除きます。
 マリネ――油で揚げたアジを酢漬けし、レモンの薄切りをのせる。魚の揮発性アルカリ物質に、食酢やレモン汁等の酸を加えると不揮発性となり、臭いが減少する。
 揚げ物――衣にカレー粉を混ぜて揚げる。
また、脱水シートでピッチリ包んで冷蔵庫に一晩入れておくと、臭みを取るだけでなく、酸化も抑えます。 この場合、皮に切れ目を入れておくことがポイントです。


アジの見分け方
 1.目は濁らずエラに血が見えないものが新鮮
 2.魚高(魚の幅)の高いものが良い
 3.身が厚く、ハリ、ツヤのあるものが美味しい
 4.黒と銀のコントラストが鮮やかで光っている のが良い

イワシの見分け方
 1.目が赤いのはダメ。
 2.ウロコが銀色にひかっているもの
 3.ウロコがたくさんあるのが鮮度がいい。
 4.太っていて、黒い斑点がはっきりしているのが美味しい。細くやせているのは美味くない。

サバの見方
 1.目の澄んだものが新鮮。
 2.模様がはっきりしているのを選ぶ。
  青と銀の色合いがはっきりしていてきれいなものが鮮度がいい。
 3.身のふっくらしているのものが美味しい。

秋刀魚の見分け方
 1.色が冴えていて肉が締まり腹がしっかりした太目の方がよい。
 2.新鮮なのは尾を持って頭を上に向けると、刀のようにピンとする。尾が黄色いものが大漁秋刀魚といい、脂がのって美味しい。
 3.エラの赤いものが良い。

カツオの見分け方
 1、1尾買いをするときは、背中が青色をしていて表面が剥げてないのが良い。
 2、エラブタの固く閉じているのが、鮮度が良い。できたら大きいのが間違いない。
 3、普通は目が濁っているのは鮮度がおちた証拠だがカツオに限っては例外。
 4、おろし身を買うときは、身の色が赤く、肉の締まったのが良い。



 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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