山ちゃんの食べもの考

 

 

その110
 

 ご存知のように、味覚には基本的に甘味、塩味、苦味、酸味、旨味の5味があります。甘味は糖質を、酸っぱさは酸を、塩辛さはミネラルを、旨味はたんぱく質を、それぞれ感じ取ることが出来るようになっています。
   ・甘味...「糖が存在」エネルギーになる食品
   ・塩味...「ナトリウム、カリウムなどが存在」ミネラル源
   ・苦味...「毒になるものが存在」
   ・酸味...「腐ってる」腐敗物
   ・旨味...「アミノ酸が存在」たんぱく質を含んだ食品
 味覚にはその他に、渋味や、辛味が言われますが味の基本は、上記の甘味、塩味、酸味、苦み、うまみの5つです。私達が食べ物を食べると、口のなかに溶けだした糖や酸が、舌の表面にある味蕾という組織のなかの味覚細胞に触れ、この味覚細胞から神経によって脳に伝わってその味を感じとります。
 どんな人でも生まれたときの味覚にはほとんど差がないと考えられていますが、そのうち、薄味がわかる人とわからない人といった個人差が出てきます。これは、子どものころから、いろいろな食べ物の味を経験することによって、さまざまな味を学んでいくのですが、幼少の頃の食べ物の経験がその人の味覚を決めるわけです。だから、子どものころには、できるだけ素材そのものの味を大事にした薄味がいいわけで、小さい頃から濃い味や人工的に作られた刺激の強い味に慣れてしまうと、微妙な味の違いがわからない人になってしまうのです。 
 また、精神が不安定であったりストレスがあると、唾液の成分が変わり、苦みや酸味を感じる能力を抑制する物質が増えます。また、微妙な味がわかるには、食前の刺激の強い食べものや、食事中の甘いジュースなども避けるべきです。


 味覚障害は味蕾の機能が低下することによって起きます。最近は毎年14万人ずつ新しい患者が増えているおり、特に、20代、30代の女性に増えているそうです。神経の損傷などで味覚障害になることもありますが、原因の7割は亜鉛不足にあります。これはやはり日頃食生活が大きく影響しています。
 「何を食べても味がしない」と訴える若い女性たちを調べてみると、昼食はコンビニ、夕食は毎晩スパゲティだったそうです。また、夫に「みそ汁の味が濃すぎる」といわれて病院を訪れた30代の主婦の食事内容は、ほとんどが加工食品に頼っていたとのことです。
 過度のダイエット、毎日コンビニ食や好きなものだけといった偏食を続けていると亜鉛不足になり味覚に影響が出てくるのです。そればかりでなくビタミンやミネラル食物繊維の不足をきたします。  
 亜鉛は、牡蛎やホタテなどの魚介類、ひじきやアオノリなどの海藻類、黄粉やゴマ、アーモンドなどの大豆・ナッツ類、それにキノコ類、緑黄色野菜、玄米、ソバなどに多く含まれています。コンビニなどのお総菜などは、大量に調理され、水に浸かっている時間も長いので、自宅で作ったものより亜鉛を始めビタミンやミネラルも減ってしまっています。  
 また、食品添加物のなかには、亜鉛の吸収を妨げるものもありますから、加工食品など添加物の多いものを摂ることは、亜鉛不足となり味覚障害につながりかねません
 このように加工食品や外食の多い食生活では、亜鉛の多いものを食べているようであっても、摂取できていないことが多いのです。


 人が「甘味は受け入れ、苦味や酸味は拒否する」という感覚は、ヒトが自分の身を守るために生理的に備わった反射的な機能です。そのために苦味に対してヒトは敏感で、間違って危険な物を飲み込まないために他の味に比べ、いちばん早く発達する味覚であり、ほんの少量の苦味でも「苦い」と感じるようになっているのだといいます。
 その苦味が敏感に感じ取れない「味盲」の子どもたちが増えているというのです。今の子どもたちは、生まれた時から味覚を麻痺させるような食べ物を食べさせ続けられてきたからです。
 いちばん問題なのがグルタミン酸ナトリウムです。この化学物質は粉ミルクやベビーフードにも入っているというのです。生まれた時から、化学調味料をはじめとするクスリの味になじんでしまった舌は、苦味を感じ、危険から身を守る能力が、どんどん低下してしまっているのです。


 粗悪な食べものであっても、これを食べさせる方法は二つあります。その一つは油を使うことです。揚げたり、炒めたりします。そうすると素材の悪さがわからなくなります。そのまま食べにくくなったご飯でも、チャーハンにすれば食べられるようになるでしょう。刺身ではとても食べられないような魚でも、唐揚げにしたり天ぷらにすれば食べられます。
 子供たちが好んで大量に口にしている食べもの。油を多量に使ったスナック菓子やファーストフード、出来合いのお惣菜など、粗悪な原材料であっても味は十分にごまかせるのです。
 もう一つは、甘味を加えることです。子ども達はちょっと味付けを変えるだけで飛びつきます。質の悪い加工食品業界や外食産業のやっていることは、まさにこれで、甘味と油づけで素材の粗悪さを糊塗しているといえます。油を大量に使って調理しているのです。
 味覚が麻痺してくると危険なものを察知できないわけです。そしてドンドン味付けの濃い刺激の強いものを求めるようになります。
 子供たちにはできるだけ食品添加物、砂糖、脂、精製塩を使わないようにして、食材の持つ本来の美味しさが楽しめるように薄味のものを与えていただきたいものです。


 「旨味」というのは、昆布に含まれているグルタミン酸を発見した池田菊苗博士が、甘味、酸味、塩辛い味、苦味に次いで5番目の味として名付けたものだそうです。 昆布の旨味はグルタミン酸ですが、このほかに昆布の表面についているマニトールも甘味成分であり、粘りのアルギン酸も甘味成分であるという。
 旨味成分には、昆布のグルタミン酸のほかに、鰹節のイノシン酸や干し椎茸のグアニル酸、貝や茸に含まれるのコハク酸などがあります。これらの成分は水に溶け出しやすく、日本料理ではでは伝統的に昆布からグルタミン酸の旨味を、鰹節や煮干しからイノシン酸の旨味を、干し椎茸からグアニル酸の旨味、貝類からコハク酸の旨味を抽出して利用してきました。
 昆布はその昔、北前船で北海道から大阪に運ばれたことから、今でも関西のダシは昆布が主流で鰹節が従となっていますが、関東では逆に鰹節が主流で昆布が従となっています。しかし、多くは昆布の旨味と鰹節のうま味を上手に組み合わせて相乗効果を出しているといいます。


 日本には旨味のかたまりのような醤油や味噌、味醂、お酒、といった伝統的な発酵調味料があります。東アジアでも、穀醤と呼ばれる穀物を発酵させた調味料や、魚の塩漬けを発酵させた魚醤という調味料も多く使われています。
 化学調味料も旨味成分ですが、工業的なプラントで製造されたなものです。化学調味料の味を本当に旨いと感じるかどうかは個人の好みの問題だといいますが。単純で刺激の強い化学調味料の旨味に馴らされると、深みのある自然の旨味や料理の素材が持つの複雑な風味が感じられなくなるでしょう。
 新鮮な良い素材を使っての料理では、素材そのものが持つ味を料理に生かすことが大切で、自然のダシで薄く味付けすることでしょう。純粋で単純で強い刺激の化学調味料や白砂糖、精製塩などを多く使うというのは、大切な自然の恵みの味わいを台なしにしますし、食べる人を味オンチにします。
 化学調味料と違って、自然の素材からダシをとる旨味成分には、単なる旨さだけではなく、私たちの体に必要な栄養成分がたっぷり含まれていることも大切なポイントになります。




 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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